公訴棄却
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公訴棄却(こうそききゃく)とは、刑事訴訟における手続打切り制度の一種。日本の刑事訴訟法では、第338条及び第339条に定められている。
公訴棄却の事由(刑事訴訟法条文)[編集]
- ※以下の条文は原文のまま掲載。
公訴棄却の判決(刑事訴訟法第338条)[編集]
- 被告人に対して裁判権を有しないとき。(第1号)
- 第340条【公訴取消しによる公訴棄却と再起訴の要件】の規定に違反して公訴が提起されたとき。(第2号)
- 公訴の提起があった事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき。(第3号)
- 公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。(第4号)
公訴棄却の決定(刑事訴訟法第339条第1項)[編集]
次の場合は、決定で公訴を棄却しなければならない。
- 第271条第2項【起訴状謄本の不送達】の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。(第1号)
- 起訴状に記載された事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していないとき。(第2号)
- 公訴が取り消されたとき。(第3号)
- 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。(第4号)
- 第10条又は第11条【同一事件が数個の裁判所に係属した場合】の規定により審判してはならないとき。(第5号)
公訴棄却により裁判が終結した事件[編集]
※括弧内は事件発生年。
- 三無事件(1961年) - 被告人:川南豊作。福岡地裁にて第一審の審理中、被告人が死亡したため公訴棄却決定。
- 別府3億円保険金殺人事件(1974年) - 被告人:荒木虎美。最高裁への上告中、被告人が死亡したため公訴棄却決定[1]。
- ロッキード事件(1976年) - 田中角栄・大久保利春・橋本登美三郎(最高裁への上告中)・小佐野賢治(東京高裁への控訴中)の4被告人。いずれも被告人死亡のため公訴棄却決定。
- 福山市一家3人殺害事件(1988年) - 第一審(広島地裁福山支部)および控訴審(広島高裁)でそれぞれ死刑判決を受け、上告していた被告人が死亡したため公訴棄却決定[2]。
- 岩手県種市町妻子5人殺害事件(1989年) - 控訴審(仙台高裁)で死刑判決を受け、上告していた被告人が死亡したため公訴棄却決定[3]。
- 豊田2人刺殺事件(1995年) - 名古屋地裁岡崎支部が「被告人は病気で訴訟能力がない」という弁護人の主張を認めて公判を停止し、後に公訴棄却の判決[4]。検察が控訴したところ控訴審(名古屋高裁)では破棄差戻し判決が言い渡されたが[5]、最高裁は控訴審判決を破棄して第一審の判決を支持したため、公訴棄却の判決が確定[6]。
- 宮崎県官製談合事件(2006年) - 安藤忠恕。最高裁への上告中、被告人死亡のため公訴棄却決定[7]。
- 鹿児島高齢夫婦殺害事件(2009年) - 第一審・鹿児島地裁(裁判員裁判)で無罪判決(求刑:死刑)を受けた被告人[8]。検察側が福岡高裁宮崎支部へ控訴していたが[9]、被告人が死亡したため公訴棄却決定[8]。
- ソマリア沖商船三井タンカー襲撃事件(2011年) - 被告人4人のうち1人が起訴後、事件当時は未成年者だった可能性が浮上したため、東京地裁が公訴棄却の判決を言い渡した。その後、家裁送致および逆送致を経て改めて起訴され、懲役11年の刑が確定。
脚注[編集]
- ^ 最高裁判所第一小法廷決定 1989年(平成元年)1月30日 集刑 第251号189頁、昭和59年(あ)第1566号、『殺人、恐喝未遂、恐喝被告事件』「いわゆる別府三億円保険金殺人事件の上告審結果(被告人死亡による公訴棄却)」。
- ^ 吉村時彦「中国新聞地域ニュース > 公判停止のU被告死亡 一、二審死刑▽解説 16年 遅い裁判に疑問」『中国新聞』中国新聞社、2004年7月24日。2004年7月26日閲覧。オリジナルの2004年7月26日時点におけるアーカイブ。
- ^ 『岩手日報』1992年10月20日朝刊第2版17頁「種市の妻子5人殺害 K被告が入院先で病死」(岩手日報社)
- ^ 「17年停止の裁判「打ち切り」判決、愛知2人殺害」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2014年3月12日。2020年10月19日閲覧。オリジナルの2020年10月19日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「裁判打ち切りは「誤り」 愛知の2人刺殺、高裁が差し戻し」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2015年11月17日。2020年10月19日閲覧。オリジナルの2020年10月19日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「「訴訟能力回復見込みなければ裁判所が打ち切り可能」 精神疾患の被告の公判で最高裁が初判断」『産経新聞』産業経済新聞社、2016年12月19日。2020年10月19日閲覧。オリジナルの2020年10月19日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「安藤忠恕氏死去/前宮崎県知事」『四国新聞』四国新聞社(共同通信社)、2010年4月30日。2020年10月19日閲覧。オリジナルの2020年10月19日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b 「無罪被告、死亡で公訴棄却の決定 上級審の判断なく事件終結」『千葉日報オンライン』千葉日報社(共同通信社)、2012年3月28日。2020年10月19日閲覧。オリジナルの2020年10月19日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「死刑求刑、無罪判決の男性被告が死亡 鹿児島」『日本経済新聞』日本経済新聞社(共同通信社)、2012年3月10日。2020年10月19日閲覧。オリジナルの2020年10月19日時点におけるアーカイブ。