凸共役性

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数学において凸共役(とつきょうやく、: convex conjugation)とは、ルジャンドル変換の一般化である。ルジャンドル=フェンシェル変換あるいはフェンシェル変換としても知られる(アドリアン=マリ・ルジャンドルウェルナー・フェンシェル英語版の名にちなむ)。

定義[編集]

ノルム線型空間とし、双対空間とする。双対組を次で表す。

拡大実数に値を取る函数

に対する凸共役

は、上限を用いて次のように定義される。

あるいは、同値であるが、下限を用いて次のように定義される。

この定義は、函数のエピグラフ凸包の、支持超平面英語版に関する符合化と解釈することが出来る[1] [2]

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アフィン函数

の凸共役は

である。冪函数

の凸共役は

である。ここで である。

絶対値函数

の凸共役は

である。指数函数 の凸共役は

である。指数函数の凸共役とルジャンドル変換は、凸共役の定義域が厳密に大きいことを除いて一致する。ルジャンドル変換は正の実数に対してのみ定義されるためである。

期待ショートフォール(リスク平均値)との関係[編集]

F確率変数 X累積分布函数とする。このとき、部分積分により

は次の凸共役を持つ。

順序[編集]

特別な解釈により次の変換が考えられる。

これは初期函数 f の非減少な書き換えである。特に、f に対する は非減少である。

性質[編集]

閉凸函数の凸共役は再び閉凸函数である。多面体的凸函数(多面体的エピグラフを持つ凸函数)の凸共役は、再び多面体的凸函数である。

順序の反転[編集]

凸共役は、順序を反転させる。すなわち、 ならば である。ここで

である。函数の族 に対し、上限は交換されうるという事実により、次が従う。

さらに最大最小不等式により、次が従う。

二重共役[編集]

函数の凸共役は常に下半連続である。二重共役 (凸共役の凸共役)は閉凸包、すなわち、 を満たす最大の下半連続凸函数でもある。真凸函数 f に対し、次が成り立つ。

であるための必要十分条件は、f が凸かつ下半連続であることである(フェンシェル=モローの定理

フェンシェルの不等式[編集]

任意の函数 f とその凸共役 f * に対し、次のフェンシェルの不等式フェンシェル=ヤングの不等式としても知られる)は、すべての xXpX * に対して成立する:

凸性[編集]

二つの函数 および数 に対し、次の凸関係が成立する。

この演算 はそれ自身が凸写像である。

極小畳み込み[編集]

二つの函数 fg極小畳み込み(infimal convolution)は、次で定義される(epi-sum とも呼ばれる):

f1, …, fmRn 上の真凸かつ下半連続な函数とする。このとき、これらの極小畳み込みは凸かつ下半連続である(が、必ずしも真凸ではない)[3]。さらに次が成立する。

二つの函数の極小畳み込みは、次のような幾何学的解釈がある:二つの函数の極小畳み込みの(厳密な)エピグラフは、それらの函数の(厳密な)エピグラフのミンコフスキー和英語版である[4]

最大化引数[編集]

函数 が微分可能であるなら、その導函数は凸共役の計算における最大化引数(maximizing argument)である。すなわち、

が成り立つ。したがって

であり、さらに次が成立する。

スケーリング性[編集]

ある に対し、 であるなら、次が成り立つ。

さらにパラメータ α が追加される場合は、次が成り立つ。

ここで は最大化引数であるように選ばれる。

線型変換の下での挙動[編集]

AX から Y への有界線型作用素とする。X 上の任意の凸函数 f に対して、次が成り立つ。

ここで

fA に関する原像であり、A*A共役作用素である[5]

閉凸函数 f は、ある与えられた直交線型変換の集合 G に関して対称である、すなわち

であるための必要十分条件は、凸共役 f*G に関して対称であることである。

代表的な凸共役の表[編集]

次の表では、多くの有名な函数のルジャンドル変換で、有用な性質を持つものが示されている[6]

(where )
(where )
(where ) (where )
(where ) (where )


関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ Legendre Transform”. 2012年9月13日閲覧。
  2. ^ Legendre transformation and information geometry”. 2015年7月13日閲覧。
  3. ^ Phelps, Robert (1991). Convex Functions, Monotone Operators and Differentiability (2 ed.). Springer. p. 42. ISBN 0-387-56715-1. 
  4. ^ Bauschke, Heinz H.; Goebel, Rafal; Lucet, Yves; Wang, Xianfu (2008). “The Proximal Average: Basic Theory”. SIAM Journal on Optimization 19 (2): 766. doi:10.1137/070687542. 
  5. ^ Ioffe, A.D. and Tichomirov, V.M. (1979), Theorie der Extremalaufgaben. Deutscher Verlag der Wissenschaften. Satz 3.4.3
  6. ^ Borwein, Jonathan; Lewis, Adrian (2006). Convex Analysis and Nonlinear Optimization: Theory and Examples (2 ed.). Springer. pp. 50–51. ISBN 978-0-387-29570-1.