前立腺肥大症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
前立腺肥大症
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
泌尿器科学
ICD-10 N40
ICD-9-CM 600
MedlinePlus 000381
eMedicine med/1919
Patient UK 前立腺肥大症
MeSH D011470

前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう、英語: Benign prostatic hyperplasia)とは、加齢とともに前立腺の内腺の細胞数が増加し肥大化する疾患である。

概要[編集]

前立腺は尿道を取り囲むように存在する。ここが肥大化(右)すると尿道が狭まり排尿困難に陥り易い。

前立腺は解剖学的に膀胱の下で尿道を取り囲む臓器である。前立腺から分泌される前立腺液は精液の構成成分で、体外に射精された精液中の精子を保護しエネルギーを補充する働きがある。年齢とともに生殖能力の要求値は低下し、前立腺は萎縮と肥大の二者択一となる。昭和30年代ごろの日本人男性は、ほとんどが前立腺は萎縮していた。食生活の変化などにより、現在の日本人男性は80パーセント (%) が80歳までに前立腺肥大症を呈する。罹患率は加齢に比例増加して50歳代で急速に増加する。組織学的な前立腺肥大は30歳頃から始まり、50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%に見られる。前立腺の肥大に排尿症状を伴う治療を要する臨床例は、本症状の4分の1程度である。

原因[編集]

Prostate normal 1.jpg Nodular hyperplasia of the prostate.jpg
正常な前立腺の内腺(左)と肥大化した内腺の結節(右)

加齢、肝硬変、家族歴(遺伝)、高血圧高血糖肥満、脂質異常症、メタボリック症候群喫煙飲酒、性交渉、など多様な要因が疑義されるが判明していない。

発症は未解明だが、中高年以降に男性ホルモンを含む性ホルモン環境変化に起因すると考えられる[1]

野菜穀物大豆などのイソフラボノイドに発症抑制効果があるとする説もみられる。

疫学[編集]

人種や地理的要因が有意で、東洋人が低く、次いで白人、黒人の順序で発症頻度が高まる。緑黄色野菜の摂取量に起因するビタミン類、脂質タンパク質などの過不足と発症率の相関、「社会的環境」や「肉体的特徴」による発症傾向、既往症や合併疾患の関連、血液型、食事内容、などそれぞれに肯定と否定の諸説がある。

症状[編集]

肥大した前立腺による症状は、尿道閉塞に起因する排尿困難や膀胱の機能変化に起因するものなど様々である。

前立腺肥大症は溢流性尿失禁英語版(奇異性尿失禁)排尿障害による尿漏出の原因疾患でもある。

検査[編集]

診断のためには、排尿障害の程度、前立腺の大きさ、前立腺癌との区別が必要になる。

  1. 尿検査
  2. 超音波エコー検査
    断面のサイズとしては、左右径35ミリメートル (mm)、前後径20mm、上下径25mm程度が正常上限とされる。
    前立腺容積としては20ミリリットル (mL) 未満が正常または軽症とされる。
    20mL<前立腺体積<50mL は中等症、50mL以上で重症とされる[2]
  3. 尿流量測定ウロフロメトリー検査
  4. 残尿量測定検査
    正常ではほぼ0mLであるが、残尿量 (RV) 50mL未満が許容範囲とされる。<50mLは軽症、50mL<RV<100mL は中等症、RV≧100mLは重症とされる[2]
  5. 血中PSA検査前立腺癌腫瘍マーカー
  6. 経肛門直腸診 = 肛門から指を入れ、直腸越しに前立腺を触診する
  7. 血清クレアチニン

治療法[編集]

症状を自覚しても日常で不便がなければ治療を要しない。日常生活に支障する場合は、体力や社会生活などに応じて日帰り手術など様々な治療法が選択される。外科的治療で尿道閉塞を解消した後も、約3割の症例で症状は解消しない。

  1. 内服薬
  2. 注射薬
    • 黄体ホルモン剤(抗アンドロゲン剤):カプロン酸ゲストノロン(デポスタット®)
  3. 高温度治療
  4. レーザー光線治療
  5. 電気メス治療
  6. 開腹手術
  7. 民間療法:ノコギリヤシ[5]

獣医学領域での前立腺肥大症[編集]

5歳以上のイヌで見られることが多い。原因として加齢に伴うアンドロゲンとエストロゲン分泌の不均衡が考えられ、食欲不振、体重減少、血尿、排便困難を示す。治療には精巣摘出術や抗アンドロゲン製剤の投与が行われる。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 旭化成ファーマHP(名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学 後藤百万教授)
  2. ^ a b 日本泌尿器科学会 男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン (2017)
  3. ^ アビショット®は、2010年3月31日販売中止見込み。
  4. ^ 前立腺肥大症漢方 - Google 検索” (日本語). www.google.com. 2018年10月18日閲覧。
  5. ^ 藤野(隠岐)知美、鈴木真由美、山田静雄「ノコギリヤシ果実抽出液の排尿機能及び下部尿路受容体に対する作用」、『日本補完代替医療学会誌』第4巻第2号、2007年、 41-50頁、 doi:10.1625/jcam.4.41NAID 130000079381

参考文献[編集]