区間 (数学)

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実数直線上の和 x + a. x より大きく x + a より小さい数はすべて開区間の中にある。

数学における(区間(じつくかん、: (real) interval)は、実数からなる集合で、その集合内の任意の二点に対しその二点の間にあるすべての数がその集合に属するという性質を持つものである。例えば、0 ≤ x ≤ 1 を満たす数 x 全体の成す集合は、01, およびその間の数すべてを含区間である。他の著しい例として、実数全体の成す集合 R, 負の実数全体の成す集合および空集合などが挙げられる。

実区間は積分および測度論において、「大きさ」「測度」「長さ」などと呼ばれる量を容易に定義できるもっとも単純な集合として重要な役割がある。測度の概念は実数からなるより複雑な集合に対して拡張され、ボレル測度ルベーグ測度といったような概念までにつながっていく。

不確定性や数学的近似および算術的丸めがあっても勝手な公式に対する保証された一定範囲を自動的に与える一般の数値計算英語版法としての区間演算英語版を考えるにあたって、区間はその中核概念を成す。

勝手な全順序集合、例えば整数の集合や有理数の集合上でも、区間の概念は定義することができる。

記法[編集]

ab を含めた ab の間にある実数全体の成す区間はしばしば [a, b] と書かれる。この二数は、この区間の端点 (endpoints) と言う。小数点にコンマを用いる国や桁の区切りにコンマを用いるような場合などでは、紛れの無いように区間の端点の区切りにセミコロンを用いることもある。

区間の端点のそれぞれがその集合に含まれないことを指し示すために、対応する方の角括弧を丸括弧に変えたり逆向けにしたりする記法が用いられる。両記法とも国際規格ISO 31-11にも記載がある。集合の内包的記法英語版で書けば

ただし、a = b のとき、(a, a), [a, a), (a, a] は何れも空集合を表し、[a, a] は一点集合 {a} を表す。また a > b のときは、四種類ともふつうは空集合を表すものと約束する。

注意[編集]

  • 数学において丸括弧や角括弧で括る記法は遍在しているから、区間の記法がそれらと衝突することは注意すべき点である。例えば、(a, b) は、集合論において順序対を表したり、解析幾何学線型代数学においてベクトル座標を記述するのに用いたり、ときに代数学複素数を表すのに用いることもある。それゆえ、ブルバキは開区間を表すのに ]a, b[ なる記法を導入した[1]計算機科学などにおいては [a, b] も順序対を表すのに用いられたりもする。
  • 文献によっては ]a, b[ が区間 (a, b) の補集合(つまり a 以下の実数と b 以上の実数すべてからなる集合)の意味で用いられる。
  • 区間のいずれかの方向に限界がないことを示すために、無限大の端点を用いることができる。具体的には、 a = −∞b = +∞ と書いて、例えば (0, +∞)正の実数英語版全体の成す集合(+ とも書く)の意味であり、また (−∞, +∞)実数直線 に等しい。
  • 文脈によっては補完数直線の部分集合としての区間を定義することもできる。補完数直線ではすべての実数に加えて二つの無限遠点 −∞ および +∞ が元として含まれるから、その文脈では [−∞, b], [−∞, b), [a, +∞], (a, +∞] などの記法も使用できる。例えば (−∞, +∞]−∞ を除く拡大実数全てからなる集合を表す。その解釈のもとでは、[−∞, b], (−∞, b], [a, +∞], [a, +∞) はすべて意味を為し、かつ何れも相異なる。特に (−∞, +∞) は通常の実数全体の成す集合で、[−∞, +∞] は拡大実数全体の成す集合になる。拡大実数で考える場合、通常の実数の中で考える場合と比べて定義や語法などが影響を受けるかもしれないことに注意すべきである。例えば、区間 (−∞, +∞) = R は通常の実数の範囲では閉集合だが、拡大実数の範囲で考えるならばそうではない。

用語[編集]

  • 開区間はその両端点を含まず、そのことをその両側を丸括弧で括ることで表す。例えば (0,1)0 より大きく 1 より小さい数からなる。
  • 閉区間は両端点を含み、そのことを両側を角括弧で括ることで表す。例えば [0,1]0 以上 1 以下の数からなる。
  • 半開区間は端点のうち一つだけを含まないもので、開区間と閉区間の記法を折衷した記法で書く。例えば (0,1]0 より大きく 1 以下を意味し、[0,1)0 以上 1 未満の意味で用いる。
  • 退化区間: 区間が退化しているとはただ一つの実数からなる集合となっているときに言う。文献によっては、さらに空集合を退化区間の一種として含めることもある。
  • 真の区間: 空でなく退化もしていない実区間は真の (proper; 通常の) 区間と言い、無限個の元を含む。
  • 有界区間: 区間が左有界とは区間内のすべての元がそれ以上となるような数(下界)が存在するときに言い、右有界とは区間内の元がそれ以下となるような数(上界)が存在するときに言う(上界や下界がその区間に入っている必要はない)。左有界かつ右有界となるような区間は有界であるといい、さもなくは区間は非有界である。左または右の一方のみに有界な区間は半有界であるという。空集合は有界区間であり、実数直線は両側に非有界となる唯一の区間である。有界区間のことをしばしば有限区間とも呼ぶ。
  • 有界区間はその(この場合両端点の絶体差英語版 |a − b|)が有限であるという意味において有界集合である。この径のことを、区間の長さ測度大きさなどのように呼ぶ。非有界区間の長さはふつう +∞ と定義される。空な区間の長さは 0 と定義したり、あるいは定義しない。
  • 有界区間の中心または中点とは、両端点が ab のとき (a + b)/2 のことを言い、区間の半径とは長さの半分 |a − b|/2 を言う。中心や半径は非有界区間や空区間では定義しない。
  • 区間が左開であるための必要十分条件は最小元(区間内の元であって、区間内の他の任意の元より小さいような数)を持たないことである。区間が右開であるための必要十分条件は最大元を持たないことである。最大元も最小元も持たない区間は開区間となる。例えば区間 [0,1) = {x | 0 ≤ x < 1} は左閉右開区間であり、空集合および実数直線全体は開区間になる。また例えば非負実数全体の成す集合は右開だが左開でない。開区間全体の成す集合は、実数直線における通常の位相に関する開集合系にちょうど一致する。
  • 区間が左閉とは最小元を持つときに言い、右閉とは最大元を持つときを言う。閉区間は最小元も最大限も含む。これらの定義をふつうは空集合も閉区間に含め、また(左または右)非有界区間に対しても適用して、閉区間全体の成す集合は実数直線内の通常の位相に関する閉集合系とちょうど一致する。
  • 区間 I内部とは I に含まれる最大の開区間を言い、それはまた I の両端点を除く I の元全てからなる集合でもある。
  • 区間 I閉包とは I を含む最小の閉区間を言い、それはまた集合としての I に有限な端点を付け加えて得られる集合でもある。
  • 実数からなる任意の集合 X に対して、X区間包絡 (interval enclosure) または 区間包 (interval span) とは、X を含む区間であって、なおかつその区間には X を含むほかのどの区間も真に含まれることがないという条件を満たす唯一の区間を言う。

性質[編集]

  • 実数直線 R 内の区間の概念は、R連結部分集合の概念にちょうど一致する。したがって、任意の区間を任意の実数値連続函数で写した像もまた区間となることがわかる。これは中間値の定理の一つの定式化である。
  • 区間の概念はまた R 内の凸部分集合の概念とも一致する。ゆえに部分集合 X の区間包は X凸包である。
  • 区間からなる任意の族の交わりは必ず一つの区間である。二つの区間の合併がふたたび区間となるための必要十分条件は、両区間の交わりが空でないか、一方の区間の開端点が他方の閉端点に一致することである。後者は例えば、(a, b)[b, c] = (a, c] のようなことを言っている。
  • R距離空間と見るとき、その開球体とは有界開区間 (c + r, c − r) のことであり、その閉球体とは有界閉区間 [c + r, c − r] のことを言う。ここで中心が c, 半径は r であることに注意せよ。
  • 区間 I の任意の元 xI の交わりの無い三つの区間 I1, I2, I3 への分割を定義する。これら三つは順に、Ix より小さい元全体、一点集合 [x, x] = {x}x より大きい元全体である。分割片 I1, I3 がともに空でない(特に内部が空でない)ための必要十分条件はxI の内部に属することである。これを区間に対する三分原理英語版と言う。

一般化[編集]

高次元区間[編集]

多くの文脈において、n-次元区間は、各座標軸上に各々ひとつ取った n 個の区間の直積集合 I = I1 × I2 × ⋯ × In として書ける Rn の部分集合として定義される。

n = 2 のとき、これは各辺が座標軸に平行な矩形領域(各区間の長さが等しければ正方形領域)として見ることができ、同様に n = 3 のとき、軸に平行な直方体領域(同様に立方体領域)となる。高次元の場合にも、n 個の区間の直積は有界な n-次元超立方体または超矩形英語版である。

いま定義した意味の区間 Iファセット (facet) は、I を定義する直積因子のうち任意の非退化区間 IkIk の有限端点のみからなる退化区間に取り換えて得られる区間を言う。I面集合とは、I 自身および I の任意のファセットの面となるもの全てからなる集合である。I頂点集合とは、Rn の一点のみからなる面全体の成す集合を言う。

いくつかの場合には、一次元の場合の記法を流用した記法も用いられる。a, bRn を成分表示したものが a = (a1, …, an) および b = (b1, …, bn) であるとき、

開区間
閉区間
半開区間(左閉右開)
半開区間(左開右閉)

複素区間[編集]

複素数の区間は複素数平面内の矩形領域もしくは円形領域の何れかとして定義することができる[2]

区間の位相環[編集]

区間は両端点を座標とする平面上の点と対応付けることができ、したがって区間からなる集合を平面上の領域と対応付けることができる。一般に、区間を実数直線の直積集合 R × R に属する順序対 (x, y) と対応付けるとき、y > x はしばしば暗黙の仮定としてあるが、数学的構造を見る目的でこの制約は課さず[3]yx < 0 なる「逆向き区間」("reversed intervals") も許すことにする。そうすると、区間 [x, y] 全体の成す集合は、R 同士の直和に成分ごとの和と積を入れた位相環と同一視できる。

この直和環 (RR, +, ×) は二つのイデアル {[x, 0] | xR} および {[0, y] | yR} を持つ。この環の乗法単位元は退化区間 [1, 1] である。二つのイデアルに入らない区間 [x, y] 乗法逆元 [1/x, 1/y] を持つ。通常の位相のもと、この区間からなる代数系は位相環を成す。この環の単元群は各座標軸(これはいまこの環のイデアルとして与えられているのであった)で分けられる四つの四分象限からなる。単元群の単位成分英語版は第一象限である。

任意の区間は、その中点を中心とする対称区間と考えることができる。M Warmus が1956年に出版した再構成では、「均衡区間」("balanced interval") [x, −x] の軸を点に退化した区間 [x, x] の軸に沿って用いている。 区間の環を、直和環 RR ではなくて、分解型複素数平面に同一視[4]したのは M. Warmus と D. H. Lehmer である。同一視は

z = (x + y)/2 + j(xy)/2

を通して得られる。この平面上の線型かつ環同型な写像は、平面上に乗法構造を与え、そこでは通常の複素数の算術にあるような極分解英語版などの類似物を考えることができるようになる。

参考文献[編集]

  1. ^ http://hsm.stackexchange.com/a/193
  2. ^ Complex interval arithmetic and its applications, Miodrag Petković, Ljiljana Petković, Wiley-VCH, 1998, 978-3-527-40134-5
  3. ^ Kaj Madsen (1979) Review of "Interval analysis in the extended interval space" by Edgar Kaucher from Mathematical Reviews
  4. ^ D. H. Lehmer (1956) Review of "Calculus of Approximations" from Mathematical Reviews