同姓同名

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同姓同名(どうせいどうめい)とは、姓名(氏名)が同じ読みや同じ表記であること。

概要[編集]

同姓同名があり得るために、姓名は必ずしも個人を識別するための鍵とはなり得ない。同姓同名の人物同士が同じ場に居合わせてしまった場合は、単に紛らわしいだけではなく、時に取り違えが重大な医療過誤などを招くことがある。日本では漢字表記は一致するが読みが異なる場合もある。(例:河野(かわの、こうの)や幸子(さちこ、ゆきこ)等。著名人では昭和前期の外交官の加瀬俊一(かせ しゅんいち、かせ としかず)や、歌手の安田祥子(やすだ さちこ由紀さおりの姉)とラジオパーソナリティーの安田祥子(やすだ しょうこ)、女優の香山美子かやま よしこ)と詩人の香山美子こうやま よしこ)などの例がある。

同姓または同名というのはかなり存在するが、姓名両方が同じという例は確率が低い。日本で見られる同姓同名は、数多くいる(主に鈴木田中佐藤など)と、その時期に流行したの組み合わせが多いようである。また、同姓同名で性別が異なる場合もある(例えば著名人では元野球選手女優平田薫、男性競艇選手と女性政治家太田和美、男性競輪選手と女性歌手井上昌己など)。元々は違う姓でも、結婚や養子縁組による改姓で同姓同名になるというケースも起こり得る。秩父宮雍仁親王妃勢津子は結婚前は松平節子だったが、秩父宮雍仁親王との結婚にあたって当時の皇太后(秩父宮の母である貞明皇后、名が節子)と同名(天皇・皇族には姓はない。なお読みは異なる)となるため勢津子と改名している。変わった例では、平安時代の著名人に「源信」という人物がふたり存在する。一人は僧侶ゲンシン、もう一人は貴族でミナモトノマコトと読むが、当時の僧侶は出家すると姓がなくなり、同姓同名同然になっている。

日本では、近親者に同姓同名の人物がいる場合は、役所において戸籍の取り扱いを間違えないように内部向けに注意書きをしておく。また日常生活に不便を感じる場合は、改名が認められやすい。選挙において同姓同名の候補者が立候補した場合には、名前のあとに居住地の町名を括弧で囲んで記載する事が多い。このような例は、歴史的な経緯によってその集落全体が同じ姓を名乗っているような地域では、それほど珍しくないケースであるといえる。

親族や近隣に同姓同名がいて混乱をきたす場合には、どちらか一方が名の変更届を提出すれば改名が認められる傾向がある。なお、結婚したときに女性が男性の姓に改姓し、親族や近隣に同姓同名がいることによる混同を避けたい一方で同姓同名対象者となる当事者が名の継続を望んだため名の変更届の提出を拒否する事案を想定して、事実婚とするケースや、それを理由とした選択的夫婦別姓制度導入を望む声がある。

韓国(朝鮮)や中国では、日本と比べて姓と名の種類が圧倒的に少ないため、同姓同名の人物が非常に多い。そのため、人名を呼ぶ場合は、日本のように姓もしくは名だけではなく、フルネームで呼ぶことが一般的である。古代中国では一字姓(単姓)が多かったものの、前漢末期には二字姓(複姓)が普及しつつあった。しかし王莽により二字姓が禁じられたため、以後しばらく二字姓が抑制されることとなった。

欧米ではキリスト教にちなんだ名前が多く、元々主要な名前の種類がさほど多くないことと、親や親族と同じ名前を与えられることが多いため、同姓同名(ファーストネームとラストネームが同じ)は比較的多い。このため、Jr.(ジュニア)やミドルネーム、II(ザ・セカンド、二世)やIII(ザ・サード、三世)を付けたり、ニックネームを区別したりする(マッカーサーはGHQ総司令官の本人と駐日大使の甥がダグラス、ルーズベルトは大統領を務めた父・陸軍准将の息子・実業家の孫でセオドアの、同姓同名)。アラブ地域でもイスラームに由来する名前は多く、父や祖父などの歴代の名や部族名を後に続けて区別する習慣を持つが、なお同名、すなわち自分自身の名前、歴代の先祖の名、部族名や集落名が同じということはしばしばあり、アメリカではテロリストとされる要注意人物と同名であった別人が飛行機に乗ろうとした際に、同一人物だと判断されて搭乗を拒否されたという事例もある。

記録[編集]

日本においては同姓同名に関する公式なデータはないが、森岡浩が1990年代に行った調査では「田中実」が推計3000人以上、1986年に明治生命が行った調査では「佐藤和子」がトップだったが、変わった名前が増えたことにより同姓同名は減ったと森岡浩は見ている[2]

アメリカで一番多い同姓同名はジェームズ・スミス(James Smith)[3]。1969年に設立されたジム・スミス協会(Jim Smith Society)という会員約2000人の団体が存在、入会資格は姓名がジム・スミスであることで、女性メンバーもいる[4]

2005年、実業家のマーサ・スチュワート(Martha Stewart)がテレビ番組の企画で集めた自身と同姓同名164人という記録がギネス世界記録として認定されている[2]

日本では「一般社団法人 田中宏和の会」という団体があり、同姓同名を集める田中宏和運動を展開している。1994年、プロ野球ドラフト会議近鉄バファローズから1位指名を受けた田中宏和がいることを知った同姓同名の人物が全国の田中宏和を探し始めたことが事の始まり[2]。2011年には同時に同姓同名が何人集まれるかでギネス世界記録を目指して田中宏和71人(要件を満たしたのは67人)が集合したが、ギネス社から事前に知らされた50人という基準は超えたものの記録の審査中、前述のマーサ・スチュワートの記録が発見されたためにギネス記録とはならなかった[5]

中国では2007年の統計で「張偉」が一番多い同姓同名で、29万607人いる[6]

同姓同名に注意が必要な品類[編集]

ともに名前の読み方しかカードに印字されないうえにローマ字での印字になるため、「大隈重信」と「奥間繁乃武」など、漢字だけ見るととうてい同姓同名には見えないものも混同される可能性がある。そのために本人確認書類の提示・提出を行っているが、2012年6月頃、オウム真理教の元信者が同姓同名である実在の人物の名前を偽名として使用し、成りすましたことが明らかになっている。

戸籍上の同姓同名[編集]

同一戸籍内にすでにある名と同名は出生時に名づけられない。例えば、母「洋子(ひろこ)」から生まれた娘は「洋子(ようこ)」と名づけられない。「弘子」「ひろこ」「ひろ子」などは認められるが、これはそもそも戸籍には読み仮名や読み方の概念がなく、字そのものの同一性が問題となるからである。戸籍の異なる同姓間では、たとえ血縁関係があってももちろん制約はないから、例えば祖父と同じ名前を新生児に名づけることは可能。未婚の母(父)でまだ親の戸籍に入っている場合でも、「三代戸籍禁止の原則」[7]により、子の出生(認知)により母(父)となった人は親の戸籍から独立した戸籍を編成するので、母(父)となった人の兄弟姉妹・父母と同名を新生児に名づけることは可能。

ただし、次のような例外もあり、同一戸籍内に同名が存在することもある。

  • 出生時に同じ名の人物が死亡離婚婚姻などで除籍済み(例えば、息子を見ずに死んだ父と同じ名前、新生児期に死んだ長女と同じ名前の次女、結婚して自分自身の戸籍を持つ兄と年の離れた同じ名の弟など)
  • 結婚(例えば「薫」夫妻同士)や養子(養父「真一」と養子「真一」)など、出生以外の原因による同一戸籍

同姓同名による選挙[編集]

1971年那珂湊市市長選挙[編集]

1971年7月18日投開票の茨城県那珂湊市市長選挙では、有力候補Aと同姓同名のBを含む4人が立候補した。Bは立候補当日、水戸市内の病院に入院しており、電話で氏名不詳の者から市長選への立候補を持ち掛けられ、返事をしないうちに勝手に立候補の届出を出されてしまったという。選挙は、前市長のリコールを受けて行われたもので、Aはリコール派の支持を受けて立候補していたことから、前市長派の妨害である可能性もあるとして、警察の事情聴取も行われたが立候補は成立した[8]。選挙では、候補者の前に住所を記載する手法で立候補者の特定が行われたため案分票の発生は少なく、那珂湊市に居住するAが他の候補者に大差をつけて当選することとなった。

2019年勝浦市議会議員選挙[編集]

2019年4月21日投開票の千葉県勝浦市議会議員選挙(第19回統一地方選挙)には、定数15に対し、17人が立候補した[9]。うち、現職の一人(当時、64歳)と新人の一人(当時、60歳)とが実質的に同姓同名であった(現職は戸籍名の2文字目が「已」である一方、新人は名の2文字目が「己」だが、姓名の読みは同じで、現職も普段は「己」の字を使用する。選挙ポスターでは二人とも名を平仮名で記載した)[9]。現職と新人は、勝浦市役所の上司と部下であった時期があり、都市建設課長を最後に退職した経歴まで同じであった[9]。市選挙管理委員会は、全候補者の所属政党・氏名に加え住所(大字名のみ)を投票所に掲示した[9][10][11]。同姓同名の二人のみの住所を掲示した場合、この二人が掲示で目立ってしまい公平でないとの判断であった[10]。二人の候補者は、選挙ポスターの氏名の前に住所の大字名を平仮名で記載し[10]、有権者に対しては、投票用紙に大字名を忘れずに書くように訴えた[11]。疑問票の確認には、前回選挙の2倍となる10人が従事した[10]。疑問票は39票あり、二人に按分された。現職は788票で当選し、新人は241票で落選した[10]。当選ラインは434票であったため、疑問票の取扱いは現職・新人の当落に影響しなかった[10]

2020年衆議院静岡県第4区補欠選挙[編集]

2020年4月26日投開票の衆議院静岡県第4区補欠選挙には、年当初より立憲民主党など野党4党が推薦する無所属の田中健が立候補を表明していたが、同年4月1日NHKから国民を守る党も別人の田中健を擁立することを発表。同姓同名による選挙となることとなった。公職選挙法の規定では投票用紙に候補者の氏名以外を記載すると無効となるが、静岡県選挙管理委員会は投票所の掲示に候補者名などに加えて年齢を掲載。投票用紙に年齢を付記して個人を区別することとし、年齢が書かれていなければ得票数に応じて案分することとなった。最終的に選挙の立候補者は4人となり、2人の田中健はいずれも落選した。同姓同名の案分票は3708票となったが、選挙の大勢に影響はなく波乱は起こらなかった[12][13]。なお、NHKから国民を守る党が擁立した田中は選挙公報掲載・ポスター掲示をせず、選挙活動を全くしなかった。

出典[編集]

  1. ^ デジタル版 日本人名大辞典+Plus『伊藤武雄』 - コトバンク
  2. ^ a b c 朝日新聞 2017年11月7日 29面
  3. ^ “More Evidence James Smith Is The Most Common Name In The U.S.” (英語). FiveThirtyEight. (2014年11月24日). http://fivethirtyeight.com/datalab/more-evidence-james-smith-is-the-most-common-name-in-the-u-s/ 
  4. ^ “同姓同名の不思議、ギネスに挑戦する田中さん”. (2014年9月19日). p. 3. https://style.nikkei.com/article/DGXMZO77158420X10C14A9000000 
  5. ^ “ギネス記録認定ならず! 164人のマーサ・スチュワート集会が存在した!!”. (2012年2月5日). http://www.tanakahirokazu.com/?p=426 
  6. ^ “中国の張偉さん29万人、同姓同名が社会問題に”. http://www.china-news.co.jp/node/6035 
  7. ^ 三代戸籍禁止の原則”. 清水綜合法律事務所 (2008年10月5日). 2014年8月6日閲覧。
  8. ^ 「出直し市長選も波乱 同姓同名の候補 本人知らぬ間?に届出」『中國新聞』昭和46年7月10日7面
  9. ^ a b c d ““同姓同名”現職だけ当選: 千葉・勝浦市、39票区別できず”. 産経ニュース. (2019年4月22日). https://www.sankei.com/politics/news/190422/plt1904220041-n1.html 2021年1月23日閲覧。 
  10. ^ a b c d e f 金子, ひとみ (2019年4月24日). “投票用紙には、◯◯も書いて”. NHK政治マガジン. https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/16936.html 2021年1月23日閲覧。 
  11. ^ a b 熊井, 洋美 (2019年4月19日). “同姓同名の2人、市議選に立候補: 珍事態に選管の対応は”. 朝日新聞デジタル. https://www.asahi.com/articles/ASM4J3GBMM4JUDCB009.html 2021年1月23日閲覧。 
  12. ^ 同姓同名、年齢付記で区別も 野党は案分に困惑―衆院静岡補選”. 時事通信 (2020年4月18日). 2020年4月28日閲覧。
  13. ^ 同姓同名波乱なく 衆院静岡4区補欠選挙、N国党戦略に批判も”. 静岡新聞 (2020年4月28日). 2020年4月28日閲覧。

同姓同名の項目[編集]

同姓同名を扱った作品[編集]

関連項目[編集]