国内避難民

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コンゴ民主共和国北キヴ紛争でのIDP(2008年11月7日キバチ)
ウガンダアチョリ地方キトゥグム県ラブジェIDPキャンプの仕立屋

国内避難民(こくないひなんみん)とは、政治的な迫害、武力紛争内乱、武力による強制立ち退き、あるいは自然災害などの理由から自宅(あるいは自宅周辺の地域)には住めず、ある程度以上の遠方での避難生活を余儀なくされている人々のうち、国を出ることなく(国境を越えることなく)自国内で生活している人々をいう。国連は英語で、internally displaced people あるいはinternally displaced person(s)と呼び、またIDPと略す。一方、国境を越えて自国を出た人々は難民とよばれる。難民には条約による明確な定義が存在するが、国内避難民には明確な法的定義が存在しない[1]

概要[編集]

国際社会からは見放された存在であったが、1980年代後半から国際会議などの場で議題に上るようになり、1990年代に入ってからはNGOによる活発な啓蒙活動(アドボカシー活動)もあり、国際的な関心が高まった。とりわけ、1991年イラク北部においてクルド人避難民が大量に流出した事件は、この課題が安全保障とも結びついていることを印象付けた。1992年には国連の人権委員会によって「国内避難民に関する国連事務総長代表」のポストが創設され、スーダンのフランシス・デン大使が就任した(2004年には「国内避難民の人権に関する国連事務総長代表」としてケーリン・ベルン大学教授が就任した)。また、国連のIASCを中心に組織的な対応が協議され、2006年にはクラスター制で対応するとの方針が決まっている。また、法的な点では、国内避難民に特化した条約は現在も存在しないが、1998年に当時のデン代表によって国連人権委員会に提出された「国内強制移動に関する指導原則」(Guiding Principles on Internal Displacement)が存在し、この指導原則が国内避難民を抱える国において国内法や政策を策定する際の指針を提供している。

「国内強制移動に関する指導原則」では

internally displaced persons are persons or groups of persons who have been forced or obliged to flee or to leave their homes or places of habitual residence, in particular as a result of or in order to avoid the effects of armed conflict, situations of generalized violence, violations of human rights or natural or human-made disasters, and who have not crossed an internationally recognized State border.[2]

「これらの原則の適用上、国内避難民とは、特に武力紛争、一般化した暴力の状況、人権侵害もしくは自然もしくは人為的災害の影響の結果として、またはこれらの影響を避けるため、自らの住居もしくは常居所地から逃れもしくは離れることを強いられまたは余儀なくされた者またはこれらの者の集団であって、国際的に承認された国境を越えていないものをいう。」

としている[3]。世界のIDPの総数はUNHCRによる2020年末時点の推計では4,855万7,439人[4]

ユーゴスラビア紛争では、国境線が紛争の度に変わるので、旧来の難民の定義に基づく枠組みでは救済ができず、国内避難民への支援という名目で救済が行われた。UNHCRは人道支援要請として各国空軍による食品・医療品の空輸支援を行った[5]

東日本大震災福島第一原子力発電所事故では、多くの人々が国内で避難生活を送っている。復興庁のまとめによれば、2011年3月時点で34万人余りの避難者数がいたが、2015年3月時点で22万人余りとなり、うち5万5千人余りは元の居住地とは異なる都道府県に避難していた。その後も減少していったが、2021年6月9日時点でも依然として4万128人となっており、うち3万2,524人は元の居住地とは異なる都道府県(福島県から2万8,147人、宮城県から3,555人、岩手県から822人)に避難している[6]

2011年シリア内戦が始まると、人口は約2200万人の半数以上が難民となった。2020年末段階では、少なくとも670万人以上が国内避難民となったが、断続的に隣国のトルコレバノンヨルダンなどに脱出しており[4][7][8]、国内避難民の減少が必ずしも問題の解消につながらない状態となっている。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 内閣府 国際平和協力本部事務局 @PKOなう! 第51回 難民と国内避難民 2015年4月28日閲覧
  2. ^ Deng, Francis, “The guiding principles on internal displacement”, E/CN.4/1998/53/Add.l, February 11. New York, NY: United Nations, New York: United Nations, http://www.reliefweb.int/ocha_ol/pub/idp_gp/idp.html 2009年2月4日閲覧。 
  3. ^ GPID日本語版作成委員会(代表:墓田桂)『国内強制移動に関する指導原則 日本語版』、序(2)
  4. ^ a b UNHCR (2021-06-18) (PDF). Global Trends FORCED DISPLACEMENT IN 2020 > GLOBAL TRENDS - Full annexes> Table 1. Refugees, asylum-seekers, internally displaced persons (IDPs), returnees (refugees and IDPs), stateless persons, others of concern to UNHCR and Venezuelans displaced abroad, by country/territory of asylum, end-2020(グローバル・トレンド 2020年の強制移動>世界的な傾向-完全な付属書>表1.難民、庇護希望者、国内避難民(IDP)、帰還民(難民およびIDP)、無国籍者、UNHCRに関係するその他の人々及び国外避難ベネズエラ人、庇護国/地域別、2020年末) (Report). https://www.unhcr.org/flagship-reports/globaltrends/ 2021年7月4日閲覧。. 
  5. ^ NHKスペシャル「緒方貞子 戦争が終わらない この世界で」
  6. ^ “避難者数の推移 令和3年6月29日” (プレスリリース), 復興庁, (2021年6月29日), https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-1/20210629_kouhou2.pdf 2021年7月4日閲覧。 
  7. ^ UNHCR (2021-06-18) (Excel). GLOBAL TRENDS FORCED DISPLACEMENT IN 2020- Annex tables (グローバル・トレンド 2020年の強制移動) > table 3(グローバル・トレンド 付録表>表3) (Report). https://www.unhcr.org/flagship-reports/globaltrends/ 2021年7月4日閲覧。. 
  8. ^ シリア難民、400万人 避難民と合わせ人口の半数超に”. 朝日新聞 (2015年7月9日). 2020年3月9日閲覧。