国際連合事務総長

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国際連合の旗 国際連合
事務総長
Secretary-General of the United Nations
Secrétaire général des Nations unies
Emblem of the United Nations.svg
国際連合紋章
Flag of the United Nations.svg
António Guterres - 2019 (48132270313) (cropped).jpg
現職者
アントニオ・グテーレス(第9代)
António Guterres

就任日 2017年1月1日
呼称His/Her Excellency(閣下)
指名国際連合安全保障理事会
任命国際連合総会
任期5年(非公式の任期)
初代就任トリグブ・リー
グラッドウィン・ジェブ(代理))
創設1945年
職務代行者国際連合副事務総長
ウェブサイトSecretary-General

国際連合事務総長(こくさいれんごうじむそうちょう、: Secretary-General of the United Nations: Secrétaire général des Nations unies)は、国際連合の6つの主要機関のうちの一つである国際連合事務局の代表である。UNSGまたはSGと略称される。

事務局および事務総長の役割は、国際連合憲章第15章(第97条から第101条まで)に規定されている。ただし、事務総長の能力、選考方法、在職期間には解釈の余地があり、慣習的に定められている[1]

概要[編集]

事務総長の任務は国際連合内部の組織運営をめぐるものと国際連合加盟国における紛争などに際しての調停や国際連合が扱う諸問題についての発言などの両方が含まれる。

その多忙さから、「世界で最も困難な仕事」と形容される[2]。初代事務総長のトリグブ・リーは、1953年4月9日に次期事務総長となるダグ・ハマーショルドをアイドルワイルド空港(現・ジョン・F・ケネディ国際空港)で迎えた際に、ハマーショルドに事務総長の職を「世界で最も困難な仕事」と紹介している[3]

選出と任命[編集]

事務総長は、国連憲章の規定するところにより、安全保障理事会の推薦(勧告)を受けて国連総会によって任命される。勧告は安保理からのものでなければならないため、常任理事国は指名に対し拒否権を行使することができる。そのため、これまでの事務総長の多くは中堅国出身の妥協的な候補者である[要出典]

事務総長になれる者の資格について国連憲章に規定はないが、それまでの選考の前例に基づいた非公式な選考資格が設定されている。それによれば、事務総長の候補者は常任理事国の国民であってはならない[4]。1997年の総会決議51/241では、事務総長の「最良の候補者」の選考において、選考される者の出身地域(大陸)と性別の平等に考慮すべきであるとしている[5]:5が、これまでに女性が事務総長になったことはない。出身地域については、前任の事務総長と同じ出身地域から選出された例は、第2代のダグ・ハマーショルドと第7代のコフィー・アナンのみである。これまでに任命された者は全てキャリア外交官だった[6]

安保理における次期事務総長の選考プロセスは不透明で、しばしばローマ教皇コンクラーベと比較される[7][8]。1981年以降、安保理では、次期事務総長を選定するための非公式な調査や投票を行ってきた。安保理は、最終候補者の選定後、総会に勧告し承認を求める。これまでに、総会で否認された候補者は一度もいない。安保理で異議が出たにもかかわらず総会の投票にかけられたのは、1950年の一度だけである[注釈 1][9]

第8代の潘基文までは安保理の非公開会合のみで候補者が推挙されてきた経緯があり、批判も少なからずあった[10]。このため、2016年末で任期切れとなって退任する潘の後継を決定するにあたっては、安保理が最終候補者を推挙する事そのものは変わらないものの、国連発足以来初めて、事前に立候補者を公募し、2016年4月に候補者全員が出席して行われる公聴会を開催し、手続きの透明性を高めた[10]。この手続きで選ばれた最初の人物が、第9代で現任のアントニオ・グテーレスである。ただし、安保理での最終的な候補者の決定は非公開で行われ、これまでの選出と同じプロセスを踏襲したため、総会議長は「加盟国の期待に応えておらず、開放性と透明性という新たな基準にも対応していない」と苦言を呈した[11]

任期[編集]

事務総長の任期の規定も国連憲章にはないが、1971年以降の全ての事務総長は5年の任期で任命されている。1961年以降の全ての事務総長が2期目の選考を受けており、1996年の選考でアメリカに拒否権を行使されたブトロス・ブトロス=ガーリ以外は2期目の再選を受けている。2期までという任期制限が非公式に設けられているが、これは1981年の選出で中国がクルト・ヴァルトハイムの3期目の選出に過去最多の16回の拒否権を投じたことを受けて制定されたものである。1981年以降、3期目の就任を目指そうとした事務総長はいない。なお、第3代のウ・タントは第2代のダグ・ハマーショルドの事故死に伴って約1か月間事務総長代理を務めており、その代理期間も含めると実質的な在任期間は歴代事務総長の中で唯一10年を超えている。

権限と義務[編集]

事務総長の役割は、提唱者、外交官、公務員、最高経営責任者(CEO)のそれぞれの機能と責任を組み合わせたものと説明されている[12]。国連憲章では、事務総長を国連の「最高行政責任者」(chief administrative officer)に指定し、事務総長に他の国連機関から委託された機能を実行することを認めている。国連憲章はまた、事務総長に対し、国際平和と安全の維持を脅かす可能性があるとの見解を示すあらゆる事項を安保理に報告する権限を与えている。これらの規定は、事務総長が自らの選択、技能、状況に応じて様々な役割を果たすことができるよう、事務総長に対し幅広い自由度を与えていると解釈されている[6]

事務総長の日常的な職務には、事務局の活動と職務を監督すること、国連機関の会合に出席すること、世界の指導者・政府高官・その他の利害関係者と協議すること、世界各地を飛び回って世界の有権者と関わり、特定の国際問題に注意を喚起することなどがある[12]。また、事務総長は、国連の活動に関する年次報告書を発行する。年次報告書には、国連の活動の評価と今後の優先事項の概要が含まれている。事務総長は、国連システム事務局長調整委員会(CEB)の議長を務める。これは、全ての国連基金、プログラム、専門機関の代表で構成される年2回の会合で、国際連合機関が直面している実質的・管理的な問題について議論する[12]

事務総長の権限の多くは、国連憲章などの成文法にない非公式のものであり、事務総長個人の解釈に委ねられている。歴代の事務総長の中には、活動的な役割を選択した者もいれば、技術的・管理的な役割を選択した者もいる[6]。事務総長はしばしば、加盟国間の紛争や問題の調停(good office)を行う。事務総長が行う調停は、「国際紛争の発生、エスカレート、拡大を防ぐために、独立性、公平性、誠実性を活かして、公私にわたって行われる措置」である[12]。その結果として、事務総長は「世界で最も目に見えるすばらしい講壇英語版」や「世界の司会者」などと表現されてきた[13][6]。例としては、中東戦争の休戦を推進したダグ・ハマーショルドイラン・イラク戦争の停戦交渉を行ったハビエル・ペレス=デ=クエヤルキューバ危機の緩和におけるウ・タントの役割などが挙げられる[6]

公邸[編集]

事務総長の公邸は、ニューヨーク市マンハッタン区サットンプレイス3番地にあるタウンハウスである。この建物は、1921年に慈善家アン・モーガン英語版のために建てられ、1972年に国連に寄贈された[14]

歴代国連事務総長[編集]

肖像 事務総長 就任日 退任日 在任期間 出身国
 

Sr. Gladwyn Jebb.jpg グラッドウィン・ジェブ[15]
Hubert Miles Gladwyn Jebb
1945年10月24日 1946年2月1日 00年03か月 01欧州/イギリスの旗 イギリス
欧州
1 Trygve Lie 1-1.jpg トリグブ・リー[16]
Trygve Halvdan Lie
1946年2月1日 1952年11月10日 06年9か月 01欧州/ ノルウェー
(欧州)
2 Dag Hammerskjold, Bestanddeelnr 912-9460.jpg ダグ・ハマーショルド[17]
Dag Hjalmar Agne Carl Hammarskjöld
1953年4月10日 1961年9月18日 08年5か月 01欧州/ スウェーデン
(欧州)
3/

3
 
U-Thant 2.jpg ウ・タント[18]
U Thant
သန့်
 1961年11月30日
 1962年1月1日
 1962年1月1日
 1971年12月31日
10年1か月 02アジア/ビルマの旗(1948-1974) ビルマ連邦
アジア
4 Bundesarchiv Bild 183-M0921-014, Beglaubigungsschreiben DDR-Vertreter in UNO new.png クルト・ヴァルトハイム[19]
Kurt Josef Waldheim
1972年1月1日 1981年12月31日 10年 01欧州/ オーストリア
(欧州)
5 Javier Pérez de Cuéllar.JPG ハビエル・ペレス=デ=クエヤル[20]
Javier Pérez de Cuéllar y de la Guerra
1982年1月1日 1991年12月31日 10年 04南米/ペルーの旗 ペルー
南米
6 Boutros Boutros-Ghali in Davos.JPG ブトロス・ブトロス=ガーリ[21]
Boutros Boutros-Ghali
بطرس بطرس غالي
1992年1月1日 1996年12月31日 05年 03アフリカ/ エジプト
アフリカ
7 Kofi Annan.jpg コフィー・アナン[22]
Kofi Atta Annan
1997年1月1日 2006年12月31日 10年 03アフリカ/ ガーナ
(アフリカ)
8 Ban Ki-Moon Davos 2011 Cropped.jpg 潘基文(パン・ギムン)[23]
Ban Ki-moon
반기문
2007年1月1日 2016年12月31日 10年 02アジア/大韓民国の旗 韓国
(アジア)
9 António Guterres - 2019 (48132270313) (cropped).jpg アントニオ・グテーレス[24]
António Guterres
2017年1月1日 (現職) (現職) 01欧州/ポルトガルの旗 ポルトガル
(欧州)
  • 第2代のハマーショルドは、在任中に事故死。次のウ・タントは事務総長代理を務め、1962年1月1日から正式に事務総長になった。
  • 第4代のヴァルトハイムは、3期目を目指していたが、中国の拒否権発動により2期で退任。
  • 第6代のブトロス・ガーリは、2期目を目指していたが、アメリカの拒否権発動により1期で退任。

記録[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ トリグブ・リーの2期目の任期に対しソビエト連邦が異議を申し立てたが、総会で強行採決され、賛成46反対5で承認された。
  2. ^ 事務総長代理を含めると、グラッドウィン・ジェブの45歳5か月が最年少となる。

出典[編集]

  1. ^ Urquhart, Brian (2009年1月28日). “The Next Secretary-General: How to Fill a Job With No Description” (英語). Foreign Affairs: America and the World. ISSN 0015-7120. https://www.foreignaffairs.com/articles/2006-09-01/next-secretary-general-how-fill-job-no-description 2020年9月3日閲覧。 
  2. ^ “次期国連事務総長選始まる その4 次期事務総長に望ましい資質”. (2016年7月24日). http://japan-indepth.jp/?p=29186 2018年3月27日閲覧。 
  3. ^ (英語)Character Sketches Trygve Lie by Brian Urquhart”. 国連ニュースセンター. 2018年4月3日閲覧。
  4. ^ Kofi Annan: Job at a Glance”. KOFI ANNAN Online. 2021年2月26日閲覧。
  5. ^ (PDF) Appointing the UN Secretary-General. Research Report. 2015. New York: Security Council Report, Inc.. (16 October 2015). pp. 4–5. http://www.securitycouncilreport.org/special-research-report/appointing-the-un-secretary-general.php 
  6. ^ a b c d e The Role of the UN Secretary-General”. Council on Foreign Relations. 2020年9月3日閲覧。
  7. ^ Sengupta, Somini (2016年7月21日). “Secrecy Reigns as U.N. Seeks a New Secretary General”. The New York Times. https://www.nytimes.com/2016/07/22/world/americas/united-nations-secretary-general.html 
  8. ^ “A Well-Read Secretary General”. The New York Times. (1981年12月13日). https://www.nytimes.com/1981/12/13/opinion/a-well-read-secretary-general.html. "With a figurative puff of white smoke, the United Nations Security Council finally selected a new Secretary-General – a seasoned and soft-spoken diplomat from Peru, Javier Perez de Cuellar." 
  9. ^ Barrett, George (13 October 1950). "Position of U.N. Chief Aide is Thrust Into Uncertainty". The New York Times. p. 1.
  10. ^ a b “史上初、次期国連事務総長候補9名との公開面談、 4月12日〜14日のプログラム決定 【情報をアップデートしました】” (プレスリリース), 国際連合広報センター, (2016年4月13日), http://www.unic.or.jp/news_press/info/18566/ 2017年2月26日閲覧。 
  11. ^ Letter from Mogens Lykketoft to All Permanent Representatives and Permanent Observers to the United Nations, 21 July 2016” (2016年7月21日). 2021年2月26日閲覧。
  12. ^ a b c d The role of the Secretary-General”. United Nations Secretary-General (2015年4月22日). 2020年9月2日閲覧。
  13. ^ The Secretary-General Is Dead; Long Live the Secretary-General” (英語). Observer (2016年10月10日). 2020年9月2日閲覧。
  14. ^ Teltsch, Kathleen. "Town House Offered to UN", The New York Times, 15 July 1972. Retrieved 27 December 2007.
  15. ^ (英語) Stout, David (1996年10月26日). “Lord Gladwyn Is Dead at 96; Briton Helped Found the UN”. New York Times. https://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9403E2D61E30F935A15753C1A960958260 2018年3月28日閲覧。 
  16. ^ (英語) The United Nations: Trygve Haldvan Lie (Norway). 2018年3月28日回覧
  17. ^ (英語) Linnér, S. (2007). Dag Hammarskjöld and the Congo crisis, 1960–61 Archived 2012年4月5日, at the Wayback Machine.. Page 28. Uppsala University. 2018年3月28日回覧。
  18. ^ (英語) United Nations: U Thant (Myanmar). 2018年3月28日回覧。
  19. ^ (英語) The United Nations: Kurt Waldheim (Austria). 2018年3月28日回覧。
  20. ^ (英語) The United Nations: Javier Pérez de Cuéllar (Peru). 2018年3月28日回覧。
  21. ^ (英語) The United Nations: Boutros Boutros-Ghali (Egypt). 2018年3月28日回覧。
  22. ^ (英語) The United Nations: The Biography of Kofi A. Annan. 2018年3月28日回覧。
  23. ^ (英語) Ban Ki-moon is sworn in as next Secretary-General of the United Nations”. United Nations. 2010年2月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月28日閲覧。
  24. ^ “国連事務総長 ポルトガル元首相のグテレス氏、声明を発表”. 毎日新聞デジタル. 毎日新聞社. (2017年1月1日). http://mainichi.jp/articles/20170102/k00/00m/030/035000c 2017年1月2日閲覧。 

関連項目[編集]