地球防衛軍 (映画)

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地球防衛軍
The Mysterians
監督 本多猪四郎(監督)
円谷英二(特技監督)
脚本 木村武
原案 丘美丈二郎
製作 田中友幸
出演者 佐原健二
白川由美
河内桃子
平田昭彦
土屋嘉男
藤田進
志村喬
音楽 伊福部昭
撮影 小泉一(本編)
荒木秀三郎(特撮)
有川貞昌(特撮)
編集 岩下広一
製作会社 東宝[1][注釈 1]
配給 東宝[1][注釈 1]
公開 日本の旗 1957年12月28日
上映時間 88分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
次作 宇宙大戦争
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地球防衛軍』(ちきゅうぼうえいぐん、英題:The Mysterians)は、1957年に公開された、東宝制作の特撮SF映画

概要[編集]

特撮ものとしては初めてワイドスクリーン版東宝スコープ[注釈 2]を採用した作品。

巨大ロボットが登場する日本初の映画でもある[3]

1978年3月18日公開の「東宝チャンピオンまつり」(最終興行)でリバイバル上映[注釈 3]されたほか、2008年7月にはキネカ大森の円谷英二特集で複数回リバイバル上映された。1959年にはMGM系で全米公開もされた[3]

ストーリー[編集]

のどかな富士山麓の村祭りの夜、地中から炎が噴出するという奇怪な山火事騒ぎが起こる。騒ぎの中、天体物理学者の白石亮一が失踪した。白石の同僚で親しい友人であった渥美譲治は残された白石の論文「ミステロイドの研究」を安達賢治郎博士に届けるが、その内容は途中で終わっていた。その後、白石が住んでいた村に山崩れが起こる。報告を受け、調査に向かった渥美の前に巨大な怪ロボット・モゲラが出現した。火炎放射器機関銃ロケット砲の攻撃すらものともせず村落を次々に破壊するモゲラを、出動した防衛隊は鉄橋ごと爆破するという手段で、ようやくその進行を止めるのだった。

ここに至り、怪ロボットが白石報告書にある異星文明の仕業と推測した安達博士は白石報告書を公表し、富士五湖で円盤状の飛行物体が頻繁に目撃されていたことから富士山麓に調査団が派遣されるが、そこへ突如として巨大なドーム状の物体が出現した。巨大ドームの主は、自らをミステリアンと名乗り、調査団の代表5名をドーム内に招き入れた。ミステリアンは調査団に対し、ドームを中心に半径3キロメートルの土地の割譲と地球人女性との結婚の自由を要求してきた。5千年前に母星のミステロイドを核戦争で失ったミステリアンは、宇宙を放浪の末、地球にやってきたのだった。

すでに数人の女性を拉致し、地球側の出方次第では攻撃も辞さないというミステリアンの要求に疑惑を感じ、これを拒否した防衛隊は通常兵器を中核とした戦力、野戦砲・戦車隊・ジェット戦闘機で、雨あられのごとき攻撃を浴びせるが、いまや要塞と化したミステリアンドームはまったく痛手を受けた様子を見せず、逆にドームから発せられた熱光線の反撃で防衛軍は壊滅的な打撃を受け、撃退される。通常兵器の攻撃では歯が立たないミステリアンに対し、防衛隊本部は頭を痛めていた。そこへ科学戦闘班から、新兵器・電子砲の設計図が持ち込まれる。

一方、緒戦の勝利を境にミステリアンの活動は日に日に目立ち、東京上空に円盤を飛ばし「我々は戦いを好まない」と市民に呼びかける。その頃、渥美の見ていたテレビ画面に行方不明になっていた白石亮一が突如現れる。ミステリアンに寝返っていた白石は、対話を試みてきたリチャードソン博士、インメルマン博士に対して「勝つのは、地球人でもミステリアンでもなく科学だ」と言い放ち、それを受けてリチャードソン博士は「それでも我々は戦わなければならない」と言い返す。諸外国の政治家および軍人は、東京でミステリアン対策会議を開催し、侵略者との決戦を富士山麓にて行うことを決意する。

通常兵器ではまったく歯が立たないミステリアンに対し、諸外国からの援助で、空中戦艦α号、β号、そして長距離からのオネストジョンによる攻撃が決定される。後方のα号の指揮下、前線に出て攻撃を行うβ号はナパーム弾による高熱攻撃をミステリアンドームに試みるが、やはりドームからの熱光線攻撃でβ号は木っ端微塵にされてしまった。

これを期に、ミステリアンは土地の要求を半径120キロメートルに拡大し、さらに女性達を次々と誘拐し始め、白石の妹・江津子と恋人の広子もミステリアンの手に落ちてしまう。彼等の目的はやはり地球侵略だったのだ。焦燥に満ちた危機の中、地球側にもようやく対抗手段が登場した。ミステリアンの熱光線に耐えるマーカライトと、それを応用した超巨大パラボラ戦車・マーカライトファープとマーカライト塗装を施したα号で、決戦に挑もうというのだ。機動力に欠けるマーカライトファープの欠点を補うため、専用輸送ロケットマーカライトジャイロが投入配備され、決戦の準備が着々と整えられる。しかし、マーカライトの効力は75分までと限界があるうえ、ミステリアンドームへ決定的な打撃を与えられる性能を持つ電子砲は未完成であった。

地球軍の3度目の総攻撃が始まった。ジャイロから投下された新兵器マーカライトファープは期待通りの性能を発揮し、ミステリアンドームの光線に耐えながら距離を詰め、ドームにダメージを与えていく。ミステリアン統領は攻撃を中止せよと警告するが防衛軍側は条件として地球からの撤退を要求、激怒したミステリアンは報復手段として湖から濁流を発生させてマーカライトの一部や付近の町を飲み込むという反撃に出た。だがその直後、ドームは一部機能が停止してしまう。実は渥美が江津子と広子を救うべく単独でドームに潜入し、ミステリアンから銃を奪ってドームの装置を破壊していたのだ。

渥美はすぐさまミステリアンに捕らえられ、その中の1人に連行される。だがその先は脱出路であり、そこには江津子や広子らミステリアンに連行された女性達が待っていた。連行したミステリアンは仮面を外す。その正体は白石だった。「俺は奴等に騙されていた。地球はミステリアンの悲劇を繰り返すな!」白石は渥美に安達博士宛の報告書の続きを渡し、再びドーム内へ消えて行った。

マーカライトの効力切れの間近、ついに完成した電子砲を搭載した第二β号が発進する。ミステリアンは反撃のために地中からモゲラを出動させるが、倒れてきたマーカライトに押し潰されて撃破された。戦場に到着した第二β号の電子砲攻撃が始まり、ついにドームは大爆発を起こす。その寸前に脱出した渥美たちの上空で、第二β号の砲撃はまだ続いていた。

電子砲の熱線が、逃げるミステリアンの円盤を次々に撃墜していく。それを見た安達博士は、「彼らは、永遠に宇宙の放浪者です。我々は決して彼らの轍を踏んではならない……」と呟くのだった。

登場キャラクター[編集]

怪遊星人 ミステリアン[編集]

かつて火星木星の間にあったとされる第5惑星ミステロイド[注釈 4]から、地球を訪れた異星人。身を覆うマントとヘルメットが特徴。その色は最高指揮官が赤、中級指揮官が黄、一般戦闘員が青。冷涼な環境でないと生きていけないため、高温が弱点である。

5万年前に母星を核兵器で滅ぼしてしまい、わずかに生き残った一団が火星へ移住して細々と生活してきたが、元の文明を復興・繁栄させることは困難で、恵まれた環境と豊富な資源を有する地球への移住を決意し、「実力行使による侵略」に乗り出す。核戦争の後遺症で肉体は異常を来たしており[注釈 5]、生殖行動もままならず、素顔はケロイドが浮き出している。また、地球より重力の軽い火星で幾世代にもわたって生活してきたせいで、地球上では人類よりもやや動きが鈍い。

地底ロボット・モゲラ[編集]

登場兵器・メカニック[編集]

架空[編集]

α号
地球防衛軍の空中戦艦。主翼がない航空機のような形状をした超大型ロケット機。富士山麓のミステリアンドームに対する攻撃を行った。また、劇中では防衛軍の杉本空将や科学者を乗せ、旗艦の役割を果たしていた。動力は原子炉で、上昇には2基の上昇プロペラを使用する。武装は機首先端の速射砲、ミサイルなど。劇中での改装で機体にマーカライトを塗布し、一時的にドームからの破壊光線を跳ね返すことが可能になっている。
デザインはβ号と同様に小松崎茂によるもので、彼が書いた絵物語『地球SOS』に登場する空中戦艦にデザインの元をたどることができる[要出典]
  • 全長:200メートル
  • 武装
    • 速射砲
    • 超高熱ナパーム弾
  • ミニチュアは大型と小型2種類あり、一番大きなものは遠近法を強調するため、パースがついている。
β号
地球防衛軍の空中戦艦。α号に類似しているが、機体上面が緑色であり(α号は青)、機首先端の速射砲が単なるピトー管になっているのが識別点である。初代は富士山麓のミステリアンドームの第二次攻撃に参加するも光線により撃墜。第二β号はサイクロトロンを使用した電子砲を装備。ミステリアンドームへの第三次攻撃に参加し、ミステリアンドーム撃破に成功する。
マーカライトファープ
英語表記はMarker-light FAHP(FAHP は Flying Attack Heat Projector の頭字語)。直径200メートルの巨大なパラボラを付けた装置とキャタピラ付の高さ140mの4脚(設定では輸送時には折り畳まれている)によって構成されている。ミステリアンドームの破壊光線を反射して相手に撃ち返せるだけでなく、同等の光線を照射することが可能。射程は1.5キロメートルで、作動時間が75分間のみに限られているのが欠点。目標地点までは専用のロケット、マーカライトジャイロによって輸送され、空中で投下された後に下部のロケットエンジン4基を用いて降下する。無人兵器であり、α号からの電波で遠隔操作される。劇中では同時に3台登場している。
ミニチュアは大型と小型の2種類と、脚部だけの大型のものがある。
マーカライトジャイロ
対ミステリアン光線兵器マーカライトファープを、ミステリアンドーム近くまで空輸する超巨大輸送用ロケット
劇中では単に地上から垂直に発進していたが、小松崎茂によるデザイン画には「スキージャンプ式のカタパルトから発進」「ラムジェットエンジンを翼に装備して空中で花びらのように投棄」などのアイデアが書き込まれている[4]
  • 全長:1,000メートル
  • ミニチュアは大型と小型の2種類あり、『ウルトラマン』第4話で惑星開発用原子爆弾を輸送するロケットとして登場した(冒頭の発射シーンは『地球防衛軍』の流用映像、海へ墜落するシーンは小型のミニチュアを使った新撮)[5][6]
人工衛星
国際連合が打ち上げた人工衛星。ミステリアンの地球侵略を機に、宇宙からの侵入者を監視するために打ち上げられる。複数の衛星が、地球を回る軌道上を周回している。
クランクイン当初の時点では登場する予定は無かったが、クランクアップ直前にソ連が史上初の人工衛星であるスプートニク1号を打ち上げたため、急遽登場が決まった。球体とそこから伸びるアンテナというデザインも、スプートニク1号に類似する。
24連装ロケット砲車

実在[編集]

防衛隊
警察・消防
アメリカ軍

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

ノンクレジット[編集]

ロケ地[編集]

その他[編集]

  • 本作に登場するロボット怪獣は今日では「モゲラ」と呼ばれているが、作中では名称に関する言及はない。なお、1994年に製作された『ゴジラvsスペースゴジラ』で、対ゴジラ用兵器MOGERAとして復活している。アメリカではモゲラのシルエットは鳥のように見えるらしく、「バード・ロボット」と呼ばれている。
  • 土屋嘉男によると、ミステリアンのマスクはアイスクリームの容器の改造だという。また、マントは当時最新技術を導入したガラス繊維製で、皮膚に繊維が刺さってとても痛かったという。撮影時のストレスも大きく、ミステリアン役の俳優が1人過労で亡くなったという。
  • 「宇宙人のモノマネ」をするとき、喉を叩きながら「我々ハ宇宙人ダ」という人が多いが、これは本作で土屋が演じたミステリアン統領の話し方が元になっている。詳細は土屋の記事を参照。
  • 前述したように、クランクアップ直前にソ連人工衛星スプートニクを打ち上げたため、急遽ラストシーンにスプートニクとよく似た人工衛星打ち上げのシーンが付け加えられ、その撮影に使用された人工衛星のミニチュアがスピードポスターにも印刷された[3]
  • 学習雑誌『中学生の友 2年』1958年3月号には、本作の原作を務めた丘美丈二郎の作となる、再度のミステリアン襲来を描いた短編小説『ミステリアンまた来襲す!!』が掲載された。なお、舞台は『地球防衛軍』から15年が経過した1975年とされている[7]
  • アメリカ合衆国のバンド「? and the Mysterians」の名は、本作の英題『The Mysterians』に由来する。
  • 今夜は最高!』で本作に出演した白川由美が竹中直人とゲスト出演した時、タモリと本作のパロディを披露した。

漫画[編集]

  • 「少年」1958年2月号付録 作画:岡本俊彦
  • 「おもしろブック」1958年2月号付録 作画:小松崎茂

映像ソフト[編集]

  • 1980年代前半にVHSビデオソフトが発売[8]
  • DVD
    • 2001年6月21日にジュエルケース版がされた[9]
    • 2007年2月23日に、公開50周年を記念しトールケース版が発売された。オーディオコメンタリー:川北紘一/樋口真嗣
    • 2013年11月8日に、期間限定プライス版が再発売された。
    • 2015年7月15日に、東宝DVD名作セレクション版が再発売された。
  • BDは2010年3月19日に発売された。

同時上映[編集]

1957年版
1978年版

参考文献[編集]

  • キングコング対ゴジラ/地球防衛軍』東宝〈東宝SF特撮映画シリーズ5〉、1986年。ISBN 4924609161。

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ a b ノンクレジット
  2. ^ 一般に「シネマスコープ(通称・シネスコ版)」と呼ばれる画面だが、そもそもシネマスコープは米国で開発されたもので登録商標となっており、当時の日本の映画界ではまったく同じものを作ることができなかった。そのため、日本の各社は米国のシネスコ版とは微妙に縦横比の違うワイド画面を独自開発し、社名を冠して「××スコープ」とした。「東宝スコープ」の場合、画面の縦横比は1対2.35である[2]
  3. ^ 「東宝チャンピオンまつり」のリバイバルメイン作品では、本作がもっとも古い。
  4. ^ これは「ミステリー(謎・神秘)」と「アステロイド(小惑星)」の合成語によるネーミングだが、劇中の安達博士の台詞ではなぜか「火星土星の間に星屑の群がある」と、小惑星帯の位置を間違って説明している。
  5. ^ 最初の地球側科学者5名との対談時、ミステリアン統領は「生まれてくる子供の80%は異常児なので捨ててしまう」という発言をしている。
  6. ^ DVDの特典である「東宝俳優ギャラリー」では、白川由と誤記。
  7. ^ オープニングでは「坪野之」と誤表記。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 映画資料室”. viewer.kintoneapp.com. 2020年4月21日閲覧。
  2. ^ 『大特撮〜日本特撮映画史〜』コロッサス、朝日ソノラマ、1980年。
  3. ^ a b c 『東宝特撮映画大全集』 ヴィレッジブックス、2012年、24 - 27頁。ISBN 9784864910132。 
  4. ^ それらのアイデアスケッチや設定資料は、DVDの特典映像に収録されている。
  5. ^ 『ウルトラマン研究読本』洋泉社、2014年、92-93頁。ISBN 9784800302625。
  6. ^ 『ウルトラ怪獣DVDコレクション16 ラゴン』(講談社、2012年)[要ページ番号]
  7. ^ 丘美丈二郎『論創ミステリ叢書 70 丘美丈二郎探偵小説選II』論創社、2013年、290・381頁。ISBN 978-4-8460-1298-4。
  8. ^ 『宇宙船』第12号、朝日ソノラマ、1982年、 80頁。
  9. ^ 「綴込特別付録 宇宙船 YEAR BOOK 2002」『宇宙船』Vol.100(2002年5月号)、朝日ソノラマ、2002年5月1日、 170頁、 雑誌コード:01843-05。

関連項目[編集]

  • 宇宙大戦争』 - 本作の姉妹編。安達博士、リチャードソン博士、インメルマン博士が同役で再登場している(ただし安達、リチャードソンを演じたのは別の俳優である)。また、本作の円盤のミニチュアがナタール円盤に流用された。
  • アワモリ君乾杯!』 - 後半、東宝砧撮影所内でアワモリ(坂本九)、カバヤマ(ジェリー藤尾)がギャング団を追って倉庫に入ったシーンで、モゲラが登場。
  • 川北紘一 - 平成ゴジラシリーズの特技監督。中学生の折に本作品を観て感激し、東宝入社を決意した。[要出典]