地誌学

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地誌学(ちしがく、英語: regional geography、ドイツ語: Länderkunde)とは、地理学の一分野で、多種の系統地理学的知識を用いて特定の地域の性格について考察する学問である[1][2][3]地域地理学地方地理学とよぶ人もいる[4]。研究において、特定の地域の自然環境人間活動の相互関係を分析していく[5]

学史[編集]

各地域において地誌の記録は古代から行われていたが、科学として地誌学が成立したのは19世紀に入ってからである[4]フンボルトラッツェルブラーシュなどが地誌学の発展に影響を及ぼした。彼らの後に、ヘットナーが地域論を、オットー・シュリューター英語版景観論を考案した[6]

系統地理学と地誌学の違い[編集]

地理学の考察では、系統地理学的な見方と地誌学的な見方の2種類がある[7]

ドイツの地理学者アルフレート・ヘットナーは、地域の構造を明らかにし、地域の性格を理解することを地理学の目標としたが、その際、地域の構造には、空間的多様性と地域間結合に着目するアプローチと、特定地域における地理的事象どうしの関係性に着目するアプローチの2つがあるとした[8]

この考え方をWeigt (1979)では、世界地図を何枚も重ねていった図で表現している[9]。この世界地図では1枚ごとに特定の地理的事象を表示しているが、横から見て特定事象の空間分布を考察する見方と、上から見て特定地域の諸事象の関係性を理解しようとする見方ができ、前者が系統地理学的な見方、後者が地誌学的な見方といえる[10]

地理行列による地理学のアプローチ(系統地理学・地誌学)の説明。この地理行列では、行は属性、列は地域、各行と各列の交点(行列の成分)は当該地域の地理的事象が示される。

この他、ブライアン・ベリー地理行列を利用した説明を行った[3]。ベリーは、研究対象とするトピックを、地理行列上にて行を列より長くとった場合に系統地理学的に、列を行より長く取った場合に地誌学的な分析になると指摘した[11]

研究対象とする地域[編集]

研究対象とする地域のスケールは一定ではなく、研究対象地域を大陸レベルに設定することもあれば、市町村や一集落に設定することもある[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b 靑野 1985, p. 9.
  2. ^ 靑野 1985, p. 38.
  3. ^ a b 手塚 1991, p. 118.
  4. ^ a b 靑野 1985, p. 20.
  5. ^ 靑野 1985, p. 10.
  6. ^ 靑野 1985, pp. 20-21.
  7. ^ 手塚 1991, p. 119.
  8. ^ 手塚 1991, pp. 116-117.
  9. ^ 手塚 1991, p. 117.
  10. ^ 手塚 1991, pp. 117-118.
  11. ^ 応地 1996, p. 234.

参考文献[編集]

  • 靑野壽郎『地誌学研究 1』古今書院〈靑野壽郎著作集〉、1985年。
  • 応地利明「地誌研究と地域研究―認識論的ノート」『地理学概論』西川治、朝倉書店〈総観地理学講座〉、1996年、229-249頁。ISBN 4-254-16601-X。
  • 中村和郎、手塚章、石井英也『地域と景観』古今書院〈地理学講座〉、1991年。ISBN 4-7722-1230-2。

関連項目[編集]