地雷処理戦車

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第二次世界大戦で使用されたシャーマンフレイル
アメリカ陸軍が使用していたM60パンサー
地中の地雷をかき出すための鋤(mine plow)を付けたM1A1
Assault Breacher Vehicle(M1 ABV

地雷処理戦車(じらいしょりせんしゃ)は、埋められた地雷の処理を行う戦車

概要[編集]

地雷は、直接的に触れた対象を破壊するだけではなく、戦術の上において「どこに設置されているかわからない爆発物」という脅威をもって相手の行動を遅延させる兵器である。このため、仕掛けられた側はこれを速やかに除去ないし無力化させないことには、活動を阻害される。地雷処理戦車はこういった地雷を速やか且つ安全に除去するために開発されてきたもので、特に第二次世界大戦では陸上戦において強固な装甲と強力な火砲で威力を発揮する戦車の行動を妨害するための対戦車地雷が防衛線の機能強化に用いられ、攻勢側は戦車で防衛線を突破する前に、まずこの地雷を処理する必要から、開発が進んだ。

このため、戦車をも破壊する対戦車地雷に対して有効な防御能力が求められ、起動輪・誘導輪を持ち上げ車高を高くして爆破のショックを抑えた地雷処理戦車が試作された。また、戦車の前面にローラーハンマー鎖付きの鉄球などを回転機構に取り付け、地雷を掘り起こす・押しつぶす・叩き潰す・長い鎖で打ち据えるなどといった地雷処理用(器具付き)戦車が使用され、鋤式は現代の戦車にも見受けられる。さらに、戦車に巨大なローラー式の車輪を取り付け、地雷原を突破しようという戦車も作られた。戦車ではない専用設計の地雷処理車両もある。

珍しいのはドイツ国防軍で、ミーネンロイマーと呼ばれる地雷処理戦車を開発した。これは巨大な車輪(車体前部左右に2つ、後部下に半分くらいの直径のが1つ)の外周に分厚い鉄板を取り付けたもので、これで地雷を処理しようというものである。因みに上部にはI号戦車砲塔7.92mm機銃2門搭載)が防御用につけられていた。

第二次世界大戦におけるノルマンディー上陸作戦では、フランス海岸線(砂浜)に敷設された地雷を手早く処理する事が作戦成功の可否を握っていた事から、戦車の前にローラーを取り付けるなどした車両の活躍が期待された。しかし大掛かりな装置である上に、真っ先に敵防衛線に突入せざるを得ない事から損耗が激しく、期待された性能を発揮する事無く破壊されている。また、こうした戦車は前にあるローラーがもうもうと砂煙をあげるため、通常どおり砲塔を前にしておくと砲口から砂塵が入り、戦車砲が詰まるので砲塔を背後に向けたりした(いらない袋を何枚も用意しておくことで防げるが、当然撃つ度に交換する必要あり)

今日では長い爆薬の帯付き竿を通常の戦車や工作車両の動力で地雷原に押し込んだり、爆薬が数珠のようにつながったワイヤーをロケット弾に牽引させる形で地雷原に伸ばし、これらの爆薬を起爆させて地雷を一掃する方式が用いられている。こういった地雷処理装置の一部は一般の戦車を対象とした付属装備となっているものの、大規模な地雷原にあっては、作戦行動直前に気化爆弾で対象地域ごと爆破してしまう戦術も取られている。

近年に実戦で使用されたのは湾岸戦争イラク軍が設置した地雷に対してである。

しかし、近年における実際の紛争において使用される地雷の多くが対人地雷で、対戦車地雷がむしろ珍しくなってしまった事もあり、高密度に敷設して戦闘車両などの行動を阻む対戦車地雷の処理を目的とした地雷処理戦車が必要になる機会は減り、広範囲・低密度に敷設された対人地雷を手作業で取り除く事の方が多い。

その一方で、過去の紛争国における対人地雷の問題は根強い物があり、旧来の戦車を流用した地雷処理戦車では運用性に難が在る事から、これらに代わって強力なマイクロ波を照射・遠隔爆破させようというアイデアや、小型で自走式のロボットによる探査と処理を行おうという研究も行われているほか、大型クレーン車を改造した地雷処理機も考案されている。

関連項目[編集]