売国機関

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売国機関
ジャンル 政治
漫画
原作・原案など カルロ・ゼン
作画 品佳直
出版社 新潮社
掲載サイト くらげバンチ
レーベル BUNCH COMICS
発表期間 2018年6月29日 -
巻数 既刊4巻(2020年10月現在)
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 漫画

売国機関』(ばいこくきかん)は、カルロ・ゼン原作、品佳直作画による日本漫画。『くらげバンチ』(新潮社)にて、2018年6月29日から連載中[1]ポーランドをモデルとする[2]架空の国家を舞台に、「売国機関」と罵られながらも祖国の平和のために尽力する軍人たちの姿を描く。発行部数は15万部を突破。[3]

ストーリー[編集]

西のクライス連邦、東のガルダリケ王国という大国に挟まれた緩衝国家チュファルテク合同共和国は、連邦寄りの外交方針をとったために、両大国の戦争に巻き込まれ、多大な被害を受けた。両大国の都合による平和が強制されて1年後、共和国は連邦との安全保障条約の締結を発表するが、国内の排外主義者たちは両大国の影響力の排除を訴えて、安保条約に反対し、首相官邸に押し掛けた。

安保条約の調印式は議会で開催されることになっていたが、「実際は首相官邸で行われる」というニセ情報が軍内部に流れ、それに踊らされた群衆が首相官邸に押し掛けたのである。このニセ情報を流したのは、軍務省法務局公衆衛生課独立大隊、通称オペラ座であった。オペラ座の隊長ヨランダ・ロフスキ少佐は排外主義者の掃討を命じるが、部下のジェイコブ中尉が戦死してしまう。

ニセ情報が排外主義者たちに流れたことから、軍の上層部に排外主義者のスパイがいるとにらんだロフスキ少佐はジェイコブ中尉の後任、モニカ・シルサルスキ少尉に情報部と協力してスパイを洗い出すよう命じる。洗い出したスパイを粛正し、排外主義者の残党を内ゲバに追いこんで自滅させたロフスキ少佐は排外主義者の拠点が国内東部にあるという情報を手にし、排外主義者殲滅のために東部へと向かう。

登場人物[編集]

声の項はコミックス発売を記念して制作されたPVのキャスト。

チュファルテク合同共和国[編集]

ヨランダ・ロフスキ
声 - 内田真礼[4]
オペラ座隊長で法務課長。自称・売国的愛国奴。貴族出身の陸軍少佐だが、戦場で夥しい犠牲を払って難局を凌いだ悔恨を内心に据え続けている故に戦争の惨禍を知らず、無責任に戦争を言い立てる者たちを憎み、たとえ強制されたものであったとしても平和が永続するよう尽力する。共和国国民としての誇りは高く、敵に対しては容赦がない冷酷無比な性格だが、一方でたばこ売りの兄妹のような弱者や戦争を戦い抜いた軍人には優しさを見せることもある。政治や人心に対しては常に懐疑的で辛辣な定見を持ち、内部の敵に対しても事を構える職務上、信頼できる関係の重要さや仲間を失う痛みも熟知しており、部下たちの面倒見は良い。
モニカ・シルサルスキ
陸軍士官学校を首席で卒業した女性士官。階級は少尉。終戦後の卒業で直後にオペラ座からの引き抜きで法務官として配属されたため、残虐行為に対して耐性がない。基本的に真面目で常識人なため人や世間に対しても穏健で、実践教育も兼ねた現場勤務を通じて知ることとなる過酷な状況に辟易することも多く、ゆえに周囲からはうぶな新兵扱いをされている。王国との国交回復後にロフスキから王国大使館付警備要員兼連絡担当官を命じられる。
ジェイコブ
オペラ座隊員で陸軍中尉。首相官邸前で排外主義者を掃討中、投降した少年兵に背後から銃撃されて死亡。ロフスキやロッティとは戦場を共にした間柄で信任は厚く、戦死の報を聞いたときにはロフスキは取り乱し、ロッティは実行犯の少年を容赦なく拷問にかけたほど。また、ジェイコブの死後にロフスキは思わずジェイコブに命令を下したこともあった。死後、少佐に昇格。
ロベルト・ナイマーク
オペラ座隊員で、肩書上は課長代理。陸軍砲兵部隊出身で階級は大尉。法務官として「地下牢」の全管理を担当する。
ベルナルディーノ・バーク
オペラ座隊員で陸軍中尉。カイゼル髭が特徴の紳士的で大柄な男性。爆発物の扱いに長けており、爆破作業においては腕前を遺憾なく発揮する。
ジャコモ・ロッティ
声- 櫻井孝宏[5]
退役軍医中尉で、現在は嘱託の法医学医としてオペラ座での「尋問」を担当する拷問のスペシャリスト。気さくな性格で軽妙な物腰の優男だが危機に際しても憶さず率先して立ち向かう勇敢さもあり、それを裏付ける理想や良識も持ち合わせているゆえに(自身も含めた)祖国の不甲斐なさに憤る心情も理解しており、非情に任務をこなす一方で心を痛めてもいる。シルサルスキの王国大使館付連絡担当官就任に伴い、補佐役に就く。
リーナ・マートン
オペラ座隊員で陸軍准尉。元衛生兵の女性軍人ながらも多少ガサツな性格の持ち主で、暇さえあれば吸い溜めするチェーンスモーカーでもあり、目の下がやつれている。シルサルスキの教育係として様々な「仕事」を教えるポジションでもあり、彼女の王国大使館付連絡担当官就任に伴い警備要員として職場を共にする。戦場で鍛えた高い射撃技能のみならず、戦中の自軍内部における深刻な軋轢にも立ち会った経験からストレスに対する洞察力も鋭く、王国大使館職員たちの不満が危険水域にまで達しつつある様相をいち早く察している。
グスタルボ
戦場ではジェイコブ直属の部下で保護者的存在でもあった叩き上げの陸軍軍曹。戦場で負傷して左足を失った上に捕虜となり、帰国後は物乞いに身をやつしていた折にロフスキに拾われる。オペラ座入隊後は義足を着けて勤務している。シルサルスキの王国大使館付連絡担当官就任に伴い警備要員として職場を共にする。
セルジョ・ハイネマン
オペラ座局長を務める恰幅の良い背広姿の男性。貴族出身の退役陸軍大佐。ロフスキの良き理解者で、マスコミ対応や首相との折衝を積極的に引き受け、彼女がやりたいようにさせている。シルサルスキの着任も彼の推薦による。
デイブ・クローリー
ハイネマンの部下で軍務省嘱託のオペラ座職員。背広組(ケース・オフィサー)だがロフスキたち制服組と行動を共にすることも多く、情報収集や分析、作戦行動のマネジメントなども担っている。自身も含めてオペラ座が汚れ役であることを熟知しており、皮肉屋な言動が多い。
情報部部長
モノクルが特徴の陸軍幹部軍人。氏名、階級は明らかになっていない。職務上ハイネマンとの付き合いも長く、オペラ座とは表向き険悪な関係を装って内部の排外主義者割り出しに力を貸し、ロフスキの手腕を評価しつつも「魔女」と評している。連邦との協調主義政策には現実的観点から妥協しているが内心の不満と不信はハイネマン以上に深く、文民代表としての溝を意識した首相の態度にも諦念と落胆を燻らせている。
首相
連邦への留学経験もある共和国首相。連邦との協調主義のもとで戦後の復興に尽力しており、オペラ座については体制安定のため必要性を認めつつも、やりすぎだと若干難色を示している。ハイネマンは清廉な人格を評価しているが、ロフスキは馬鹿を見た事がない、人間全部を信じるおめでたい頭だと揶揄している。

クライス連邦[編集]

ディアナ・フォン・バルヒェット
連邦軍大佐。双子2児の母。共和国内における公式・非公式の政策折衝を担う合同調整局の実務を統括する立場で、オペラ座にとっては連邦の窓口的存在でもある。共和国に連邦軍が駐留することを肯定する世論づくりのための工作に従事しており、オペラ座やマスコミなどにフェデラル・ビルをばらまいている。ロフスキに対しては同じ女性軍人として友好的である一方、ロフスキは連邦国民としては嫌っているが、軍人としては優秀だと評価している。家庭では優しい母として子育てに励む一方で仕事においては野心家で抜け目ない一面もあり、同じ連邦軍人でも自分が優位に立つ好機は見逃さず、仕切りを阻む存在に対しては容赦が無い。司令系統の違う15師団の麻薬密売スキャンダルを利用して師団長の排除と軍の裏金喝取に成功し、政治的権限拡大も進めつつある。
師団長
王国に隣接する共和国東部地域に駐屯する連邦陸軍第15師団の師団長。戦後においては合同調整局が同盟維持に不都合となる情報を揉み消す陰で民間での不祥事や軍用麻薬の製造密売による裏金調達などを横行させていたが、東部地域の社会不安が深刻化した上に麻薬が排外主義者の資金源にもなっていることを嗅ぎつけたオペラ座が調査に乗り出したため、表向きは不祥事を認めつつも自身の責任追及をかわすべく証拠隠滅を画策。しかし実務関係者を口封じで殺したことが裏目に出て内部告発が生じ、合同調整局に弱味を握られてしまう。事後処理でも借りをつくる結果となってしまい、最終的には陸軍省恫喝の邪魔と判断したバルヒェット大佐によって自裁の形式で謀殺される。
ロイド・クランゲル
連邦の新聞『フェデラル・アライアンス』で記事を書く年配記者。連邦軍の麻薬密売スキャンダルを隠蔽する対外宣伝工作のために共和国に招待され、オペラ座の案内で東部国境地域の麻薬取り締まり現場へ取材に赴くが、巧妙に状況を利用した事実の「仕込み」に勘付き、あえて共和国側の意図とは距離を置いた記事を書いた。その後も特派員として共和国で取材活動を続けており、オペラ座との付き合いも保っている。
テオドール・バッハ
ロイドの部下で『フェデラル・アライアンス』の若手記者。穏便に立ち回りつつ相手の様子を探るような老獪さを未だ持ち合わせてないゆえに疑問や意見は率直に言う性格だが、現場の印象操作を見抜くことが出来ずにオペラ座の誘導に嵌った記事を書いたためロイドに差し替えられる。納得できずにロイドに抗議するが、ジャーナリストが欺かれる危さを説かれる。その後の動向は不明。

ガルダリケ王国[編集]

シスター・テレサ
声- 下屋則子[6]
表向きは修道女として共和国で活動する潜入工作員。神父に同行して民間の慈善活動に勤しみつつ共和国と連邦の分断工作に従事しており、首相官邸での安保条約調印に反対する排外主義者扇動にも裏で関与していたが、本人は決起は時期尚早と判断していた。戦争の被害が大きい東部地域で活動していたこともあり、任務を超えて戦争を「美しくない」ものとして否定する真情を抱くようになり、冷徹に任務を遂行しようとする神父を見限って、独自の行動で体制側に謀略戦を仕掛ける。
神父
シスターと共に聖職者として共和国で活動する潜入工作員。慈善活動のほかにも懺悔の告白も情報源に活用しているが教会は不祥事とは無縁で、地域社会からの信頼も厚いためオペラ座のマークからも完全に外れている。東部地域で収集した連邦軍の麻薬密売スキャンダルの情報をマスコミにリークして共和国の世論操作を企てるが、予想外の情報拡散と民心の過熱による暴動に巻き込まれ死亡。報道では教会も犯罪の温床とする情報も流れたが、最期までシスターの裏切りを知ることはなかった。
オルロフ
駐チュファルテク大使。貴族出身の元陸軍軍人で、軍人時代の階級は中将。戦争で息子を亡くしたことから、共和国に対して遺恨を持ち、共和国を対等な国家と認めず、傲岸不遜な態度をとる。共和国を分断し、再び戦争を起こす気運を作るために人道支援物資を東部に送り、王国系住民を露骨に優遇するなど、共和国民の感情を逆撫でする施策を連発する。また、貴族の特権を信じて疑わない典型的な貴族主義者であり、部下からの信任は薄い。そのため、オペラ座や連邦からは許し難い存在として嫌悪されており、抹殺対象とされている。シスター・テレサにも見限られ、テレサに使嗾された元捕虜の大使館員に襲撃される。
ルィバルコ
オルロフと共に赴任した駐在武官。海軍少佐。オルロフの警護と情報収集、対外工作を担当しているが、陸戦主体の戦争であったため海軍の意向が軽視された経緯もあって戦争には消極的でオルロフとは全く反りが合わず、彼の独断専行に振り回されて気苦労が絶えない。真面目な性格で共和国に対しては基本的には穏健派だが、共和国分断を進める任務にも忠実であるためシスター・テレサからは「つまらない上司」と見なされる。シスターの仕組んだ大使館分断工作に利用され、大使館の命で人道支援団体で働く元捕虜たちの不満を高め、オルロフ襲撃の原因を作ってしまう。オルロフ襲撃時に目を負傷し、襲撃犯と間違えて、ロッティに発砲する。

用語解説[編集]

チュファルテク合同共和国
連邦と王国の緩衝国家。両大国の戦争により国土は荒廃し、経済も疲弊している。通貨はレパブリカルだが、国民は自国の通貨を信用しておらず、連邦か王国の通貨を使用している。連邦と安全保障条約を結び、連邦軍が駐留しており、思いやり予算を払っている。列車内の臨検も連邦軍がおこなっており、実質的に連邦の属国に近い。
クライス連邦
共和国の西に位置する大国。軍隊を共和国に進駐させている。通貨はフェデラル・ビル。
ガルダリケ王国
共和国の東に位置する大国。通貨はロイヤル・ノート。
オペラ座
ロフスキ少佐が所属する共和国軍務省法務局独立行動大隊の通称。
首相直轄で共和国軍内の防諜を担当する。公式任務においては憲兵としての権限も持つ。
新任のシルサルスキ少尉を除き、実戦経験者「塹壕貴族」で構成されている。
出所不明の資金源を持ち、情報局に怪しまれる程に金回りは良い。
塹壕貴族
ロフスキ少佐が好んで使う造語で、「血と鉄の試練(実戦)」を経験した戦友、彼女曰く「国のための義務を果たした勇者」を指す。
これに該当しないと言う一点においてシルサルスキ少尉の配属に対し、ロフスキ少佐は断固反対の意を見せた。
彼女たち[オペラ座]所属隊員が信頼するに足るかを判断する基準として、経験者であるか否かが重要な要素である。

書誌情報[編集]

  • 原作:カルロ・ゼン、作画:品佳直 『売国機関』新潮社〈BUNCH COMICS〉、既刊4巻(2020年10月9日現在)
    1. 2019年2月15日発行(同年2月9日発売[7])、ISBN 978-4-10-772153-2
    2. 2019年8月15日発行(同年8月9日発売[8])、ISBN 978-4-10-772205-8
    3. 2020年3月15日発行(同年3月9日発売[9])、ISBN 978-4-10-772263-8
    4. 2020年10月15日発行(同年10月9日発売[10])、ISBN 978-4-10-772325-3

ゲーム[編集]

三国志大戦
セガアーケードゲーム
2020年12月2日より、本作のロフスキをモデルにした呂姫(声 - 種崎敦美)が登場している。

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ “「幼女戦記」カルロ・ゼンが原作、愛国者同士の暗闘描く新連載「売国機関」”. コミックナタリー (ナターシャ). (2018年6月29日). https://natalie.mu/comic/news/288953 2019年2月13日閲覧。 
  2. ^ 単行本1巻118頁。
  3. ^ 単行本3巻205頁。
  4. ^ “カルロ・ゼン原作「売国機関」PVに内田真礼が出演、冷酷な少佐に声当てる”. コミックナタリー (ナターシャ). (2019年2月6日). https://natalie.mu/comic/news/318887 2019年2月13日閲覧。 
  5. ^ “「売国機関」3巻発売、PVに元プレイボーイのエリート軍医役で櫻井孝宏”. コミックナタリー (ナターシャ). (2020年3月9日). https://natalie.mu/comic/news/370362 2020年3月9日閲覧。 
  6. ^ “「売国機関」PVで陰謀を愛するシスター役に下屋則子、直筆色紙も当たる”. コミックナタリー (ナターシャ). (2019年8月9日). https://natalie.mu/comic/news/343105 2020年3月9日閲覧。 
  7. ^ カルロ・ゼン/原作、品佳直/漫画 『売国機関 1巻』”. 新潮社. 2019年2月13日閲覧。
  8. ^ カルロ・ゼン/原作、品佳直/漫画 『売国機関 2巻』”. 新潮社. 2019年8月9日閲覧。
  9. ^ カルロ・ゼン/原作、品佳直/漫画 『売国機関 3巻』”. 新潮社. 2020年3月9日閲覧。
  10. ^ カルロ・ゼン/原作、品佳直/漫画 『売国機関 4巻』”. 新潮社. 2020年10月9日閲覧。