大津由紀雄

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大津 由紀雄(おおつ ゆきお、1948年2月1日[1] - )は、日本認知科学者(特に言語分野)。Ph.D.(1981年、MIT、言語学)。 明海大学外国語学部・大学院応用言語学研究科教授。 慶應義塾大学名誉教授。 一般社団法人「ことばの教育」代表理事。 アメリカ国立科学財団National Science Foundation)助成金申請書査読委員。日本学術会議会員。

専門分野は、言語の認知科学(文法獲得、統語解析、理論脳科学)、言語教育科学教育など。

人物[編集]

東京都出身[1]立教中学校(現・立教池袋中学校)、立教高等学校(現・立教新座高等学校)を経て立教大学経済学部を卒業。東京教育大学文学部に学士入学し、文学科英語学英文学専攻卒業後、東京教育大学大学院文学研究科修士課程を修了。マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院(言語学・哲学研究科)で、ノーム・チョムスキーのもと、博士号を取得。

慶應義塾大学言語文化研究所教授を経て、現在、明海大学外国語学部・大学院応用言語学研究科教授。 日本認知科学会会長、言語科学会会長、日本英語学会副会長、東京言語研究所運営委員長などを歴任。

認知科学・認知発達における言語理論研究の基盤構築を目指すとともに、言語教育、とりわけ「日本における英語教育のあり方」について積極的な発言を行っている。

小学校における英語教科化について[編集]

「早くから英語を学ばせれば、それだけ英語が身につく」といった主張に対し、認知科学・言語発達、学習科学の専門家として、「根拠もない言説」であると指摘する。さらに、こうした科学的根拠を持たない「主張」に影響され、安易なかたちで小学校の教育現場に、「外国語としての英語」が導入されることに対しても、日本の現状を踏まえ、むしろ「悪影響」の大きさを懸念し、批判的な立場をとっている。

こうした小学校における「安易な英語教科化」への懸念を、波多野誼余夫をはじめとする認知発達・言語発達の日本を代表する研究者、および英語教育研究者たちと共有し、2005年7月小学校での英語教科化に反対する要望書」を文部科学省(大臣)宛てに提出した。

TOEFLについて[編集]

日本で盛り上がりを見せる、TOEFLの中身をよく知らないまま「TOEFLの活用を!」と叫ぶ「TOEFL万能論」や、誤った「TOEFL信仰」などに基づく、「TOEFL等外部試験の活用」の動きについても懸念している。

同様の危機感を共有する、鳥飼玖美子など複数の英語教育の専門家とともに、『英語教育、迫り来る破綻』と題するブックレットを、言語学系の出版社として知られるひつじ書房から緊急出版(2013年)した。

なお、TOEFL対策講座「POKKA PRESENTS PRACTICE FOR THE TOEFL TEST」(テレビ朝日系列)で講師を担当し、TOEFLの中身にも精通している。

著書[編集]

  • 『おとうさんはまんねんひつ』藤枝リュウジ絵 岩波書店 1996 ことばのからくり
  • 『探検! ことばの世界』NHK出版 1996 (2004年にひつじ書房より再刊)
  • 『つかまったのはだれ?』藤枝リュウジ絵 岩波書店 1996 ことばのからくり
  • 『パジャマおばけのおばけパジャマ』藤枝リュウジ絵 岩波書店 1996 ことばのからくり
  • 『ぼくらは赤いうたうさぎ』藤枝リュウジ絵 岩波書店 1996 ことばのからくり
  • 『英文法の疑問---恥ずかしくてずっと聞けなかったこと』NHK出版(生活人新書)2004
  • 『英語学習7つの誤解』日本放送出版協会・生活人新書 2007
  • 『ことばに魅せられて 対話篇』ひつじ書房 2008

共編著[編集]

  • 『ことばからみた心 生成文法と認知科学』編 東京大学出版会 1987 認知科学選書
  • 『認知心理学3 言語』東大出版会 1995
  • 『TOEFLテスト公式問題で学ぶ英文法』堀切一徳,直井一博共著 研究社出版 2000
  • 『小学校でなぜ英語?--学校英語教育を考える』(鳥飼玖美子共著)岩波ブックレット)2002
  • 『小学校での英語教育は必要か』編著 慶應義塾大学出版会 2004
  • 『認知科学への招待--心の研究のおもしろさに迫る』研究社波多野誼余夫共編)2004
  • 『言語科学と関連領域』坂本勉,乾敏郎,西光義弘,岡田伸夫共著 岩波書店 2005 言語の科学
  • 『小学校での英語教育は必要ない!』編著 慶應義塾大学出版会 2005
  • 『15 中学生の英詩が教えてくれること かって15歳だった全ての大人たちへ』中嶋洋一,幸若晴子,柳瀬陽介共著 ベネッセコーポレーション 2006
  • 『日本の英語教育に必要なこと 小学校英語と英語教育政策』編著 慶應義塾大学出版会 2006
  • 『認知科学への招待 2』波多野誼余夫,三宅なほみ共編著 研究社 2006
  • 『ことばの宇宙への旅立ち 10代からの言語学』編 1-3 ラボ国際交流センター・ひつじ書房 2008-2010
  • 『ことばの力を育む』窪薗晴夫共著 慶應義塾大学出版会 2008
  • 『「英語が使える日本人」は育つのか? 小学校英語から大学英語までを検証する』山田雄一郎,斎藤兆史共著 2009 岩波ブックレット
  • 『危機に立つ日本の英語教育』編著 慶應義塾大学出版会 2009
  • 『はじめて学ぶ言語学 ことばの世界をさぐる17章』編著 ミネルヴァ書房 2009
  • 『言語政策を問う!』田尻英三共編 ひつじ書房 2010
  • 『生徒の心に火をつける 英語教師田尻悟郎の挑戦』横溝紳一郎編著 柳瀬陽介共著 田尻悟郎監修 教育出版 2010
  • 『ことばワークショップ 言語を再発見する』編 池上嘉彦,窪薗晴夫,西山佑司共著 2011 開拓社言語・文化選書
  • 佐藤学 内田伸子 大津由紀雄が語ることばの学び、英語の学び』ラボ教育センター 2011
  • 『学習英文法を見直したい』編著 研究社 2012
  • 『英語教育、迫り来る破綻』共著 ひつじ書房 2013

脚注[編集]

  1. ^ a b 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.305