天久鷹央の推理カルテ

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天久鷹央の推理カルテ
ジャンル メディカル・ミステリー
小説
著者 知念実希人
イラスト いとうのいぢ
出版社 新潮社
掲載誌 小説新潮yom yom
レーベル 新潮文庫nex
掲載号 小説新潮:2013年6月号
2014年2月号、6月号
2015年6月号
yom yom:vol.37 2015夏
刊行期間 2014年10月 -
巻数 既刊11巻
漫画:天久鷹央の推理カルテ
原作・原案など 知念実希人
作画 緒原博綺
出版社 新潮社
掲載誌 月刊コミック@バンチ
発表号 2016年6月号[1] - 2018年5月号
巻数 全4巻
話数 全23話
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 文学、漫画

天久鷹央の推理カルテ』(あめくたかおのすいりかるて)は、知念実希人による日本推理小説。表紙イラストいとうのいぢが担当している。

概要[編集]

女子高生のような見た目の天才女医・天久鷹央が所属している統括診断部に持ち込まれる謎や事件を解決する医療ミステリー。

小説新潮』(新潮社2013年6月号に掲載された短編作品『泡 統括診断部の事件カルテ』に書き下ろしを加え、新潮文庫nex(同)より2014年10月に刊行された。2019年9月の時点で原作小説が10巻、漫画版は2016年6月号から2018年5月号まで『月刊コミック@バンチ』で連載され、全4巻が刊行された。

2017年10月の時点でシリーズ累計発行部数80万部を突破している[2][3]

あらすじ[編集]

天医会総合病院の統括診断部には院内各科で「診断困難」とされた患者や、院外で起きた事件の相談依頼が集まる。それらの中から、天才だが人格破綻者の女医・天久鷹央が気に入った事件の謎を、部下の小鳥遊優と共に、患者の症状から病気を診断する診断医の能力を生かして解き明かす。

時系列は小鳥遊が統括診断部に赴任したばかりの7月に起きた事件を描いた「スフィアの死天使」が最初で、第1巻第1話「泡」は小鳥遊が赴任して4ヶ月経過時点での事件である。

登場人物[編集]

統括診断部[編集]

天久 鷹央(あめく たかお)
一族経営である天医会総合病院の副院長兼統括診断部部長。理事長の次女。帝都大学医学部医学科卒。シリーズ開始時、27歳。小柄で童顔のため、高校生に間違えられることがある。
広義のアスペルガー症候群による超人的な記憶力・計算力・知能の持ち主で、病院の各科で「診断困難」とされた患者や外部から持ち込まれる不可解な事件を〝診察”して〝診断”を下し、何度も難事件を解決している。その反面、不器用で採血が出来ず、運動神経が鈍くてよく転び、視覚過敏で外出時はサングラスを使用し、聴覚過敏で人が多いところが苦手で、予想外のことが起きるとパニックになりやすく、偏食カレーライスと甘いものしか食べない。
副院長という役職にある鷹央に逆らえずに敵意を抱いている病院関係者(主に外科の先生)から「屋上に棲む座敷童」と陰口をたたかれている。 的確な判断を下すが、アスペルガー症候群であるために人の機微に疎く、時には相手を激昂させてしまうこともある。そのため統括診断部にきた医師たちと悉くトラブルを起こして辞められてしまい、引きこもっていた。そこに現れた小鳥遊との事件解決への活躍を経て、徐々にだが周囲へと心を開き始めている。鴻ノ池とも巻を追うごとに仲良くなり、次第に買い物などにも出かけている。男には興味がないと公言しており、合コンに興味を示して男側として参加する[4]など、女性に興味があるかのような言動も見られる。難解な事件の発生を知ると、強引に介入して真相を暴く探偵の役割をする。
姉の真鶴には恐怖を抱き、怒られそうになると舌足らずになるほど恐れている。兄で凄腕の精神科医の翼とは反りが合わずに付き合いを断っている[5]
小鳥遊 優(たかなし ゆう)
本作の語り手
統括診断部に所属している内科医見習い。シリーズ開始時、29歳。鷹央から「小鳥」というあだ名を付けられ[6]下僕扱いされている。
統括診断部での仕事はほとんどが患者の愚痴の聞き役である。また、鷹央の指示で毎週金曜日は救急部に出向している[7]。元々は外科医を目指し、純正会医科大学附属病院の外科医局に5年間勤めていた。内科医に転向[8]後、純正医大附属病院から天医会総合病院に派遣される。愛車はマツダRX-8[9]。大学時代は空手部に所属していて[10]、暴徒相手に戦うこともある。
好みの女性は真鶴の様に年上で色香のある女性で、院内の様々な看護師に粉をかけているが、いつもいいところになって鷹央に振り回されるため振り出しに戻っている。また、鴻ノ池が言い触らしている噂のせいで病院関係者に「鷹央の恋人の『小鳥』先生」として知られわたり、女性に振り向いてもらえないでいる。
傍若無人な言動と行動をする鷹央[注 1]と患者や他のスタッフの間に入って場を取り持つ役割を担う。感情がすぐに顔に出るために他人に隠し事ができず、その性格を鷹央に利用されて犯人を罠に嵌める囮にされることがある。診断医としての能力は鷹央に及ばないが、たまにその何気ない一言が八方塞がりになった鷹央の突破口へのヒントになることがある。

天医会総合病院関係者[編集]

鴻ノ池 舞(こうのいけ まい)
研修医。凄腕の診断医である鷹央に憧れている。研修先の様々な診療科で鷹央と小鳥遊の仲のデマを流し、面白そうな事件を見つけては小鳥遊に鷹央へ伝えさせようするなど、鷹央と小鳥遊の仲を何としても縮めようとしている。
初期は鷹央に話しかけるのも恐れ多いと言っていたが、巻を進めるごとに仲を縮め、個人的に連絡を取り合ったり、買い物に行ったりしていて、殺人事件の犯人にされかかったのを助けられて[11]からは増々鷹央を崇拝している。普段はおどけているが、急患者受け入れの際はテキパキと対処し、事件の際も武道の達人並みの強さで被疑者を取り押さえる活躍をする。愛車はKAWASAKI Z1000[12]スズキ・GSX1300Rハヤブサ[13]
天久 真鶴(あめく まづる)
事務長。シリーズ開始時、30歳。鷹央の姉、理事長の長女。鷹央とは対照的な一般人。最近、交際していた中学時代の同級生と結婚したが、仕事上は旧姓を名乗っている。鷹央が苦手とする人の一人。
天久 大鷲(あめく おおわし)
院長。鷹央の叔父。鷹央とは病院の運営方針を巡り対立関係にあり、統括診断部についてもよく思っていない。 
沖田 克也(おきた かつや)
小鳥遊が天医会総合病院へ赴任した時の救急部部長。人員不足に悩み、小鳥遊の助けに感謝していた。「スフィアの死天使」冒頭で、救急搬送されてきた患者[14]にマイナスドライバーで胸部を複数回刺され、治療の甲斐なく命を落とした。
蔵野 正(くらの ただし)
小鳥遊が天医会総合病院へ赴任した時の脳神経外科部長。脳に限れば鷹央と知識で張り合えると豪語している。「スフィアの死天使」終盤で死亡。[15]
小田原 香苗(おだわら かなえ)
産婦人科部長。シリーズ開始時、43歳。7年前まで地味ななりで荘王大学病院の産婦人科に勤めていたが、天医会総合病院に転職する際に29歳を自称する若作りをしだして15歳の息子に嫌がられている。鷹央に好意を抱く数少ない理解者であり、鷹央が苦手とする人の一人。
熊川(くまかわ)
小児科部長。マタギのような風貌をしている。鷹央のことは子供の頃から知っており、好意を抱く数少ない理解者。
酒井(さかい)
腹部外科部長。大鷲派で鷹央を嫌っている。
墨田 淳子(すみだ じゅんこ)
精神科部長。研修医時代の鷹央に誤診を指摘され罵倒された恨みから、鷹央の精神科病棟の出入りを禁止している。ただし、鷹央の診断医としての実力については認めており、命令には従っている。

その他[編集]

成瀬(なるせ)
田無署の刑事。奇妙な刑事事件が起きるたびに探偵気取りで首を突っ込んでくる鷹央に反感を抱いているが、犯人を逮捕するために仕方なく協力している。何度も不本意ながらも鷹央と共に事件を解決したために、上層部や同僚から警察と鷹央の窓口係にされている。
桜井 公康(さくらい きみやす)
警視庁捜査一課刑事刑事コロンボのファンでその格好を真似ている。鷹央の推理力を高く買っており、事件の際には裏で協力し合っている。また、知念実希人の他作品にも登場していて、真鶴と鷹央の兄で凄腕の精神科医の天久 翼(あめく つばさ)が勤めている「神酒クリニック」のスタッフとも繋がりがある。

用語[編集]

天医会総合病院(てんいかいそうごうびょういん)
東京都東久留米市全域の地域医療を担っている総合病院。三次救急指定病院。鷹央の父が理事長を務めている。約600床。少なくとも地下1階地上10階建て。
天医会総合病院 略図
屋上 "家"  統括診断部医局
10階 統括診断部診察室
8階 内科病棟
7階 小児科病棟
6階 脳外科病棟・精神科閉鎖病棟
3階 会議室 医局(統括診断部を除く)
2階

1階

外来診察室(統括診断部を除く)
地下1階 検査室(ヘリカルCT・MRI・ガンマナイフ等)
統括診断部(とうかつしんだんぶ)
鷹央の父が鷹央の能力を生かすために設立した。医局は病院の屋上にあるレンガ造りの平屋建ての建物で、鷹央の家でもある。中には本が積み上げられてできた「本の樹」が無数に生えている。


時山病院(ときやまびょういん)
東京都西東京市の丘の上にあった病院で、少なくとも地上10階建て以上の大病院。
天医会総合病院のある東久留米市と同じ北多摩北部保健医療圏(二次医療圏)に属し、西東京市の中核的な病院であった。屋上に時計塔があり、時計山病院と呼ばれている。戦前より100年近く時山家が経営してきたが、11年前の医療過誤が原因で廃院となる。11年の間に15人以上が自殺[16]しており、自殺の名所として知られている。
『魔弾の射手』に登場。

 

既刊一覧[編集]

ナンバリング作品は文芸誌に掲載された短編作品に書き下ろしを加えて刊行されている。ナンバリング外は文庫書き下ろしの長編作品である。

巻数 タイトル 初版発行日 ISBN 収録話 初出
1 天久鷹央の推理カルテ 2014年10月1日
(同日発売[17]
ISBN 978-4-10-180010-3 プロローグ 書き下ろし
小説新潮2013年6月号[18]
人魂の原料 書き下ろし
不可視の胎児
オーダーメイドの毒薬
エピローグ
2 天久鷹央の推理カルテII
ファントムの病棟
2015年3月1日
(同日発売[19]
ISBN 978-4-10-180027-1 プロローグ 書き下ろし
甘い毒 『小説新潮』2014年2月号[18]
吸血鬼症候群 書き下ろし
天使の舞い降りる夜
エピローグ
3 天久鷹央の推理カルテIII
密室のパラノイア
2015年6月1日
(同日発売[20]
ISBN 978-4-10-180035-6 プロローグ 書き下ろし
閃光の中へ 『小説新潮』2014年6月号[18]
拒絶する肌 書き下ろし
密室で溺れる男
エピローグ
4 スフィアの死天使
天久鷹央の事件カルテ
2015年9月1日
(2015年8月28日発売[21]
ISBN 978-4-10-180044-8 スフィアの死天使[22] 書き下ろし
5 天久鷹央の推理カルテIV
悲恋のシンドローム
2016年2月1日
(同日発売[23]
ISBN 978-4-10-180057-8 プロローグ 書き下ろし
迷い込んだ呪い 『小説新潮』2015年6月号[18]
ゴミに眠る宝 yom yom』vol.37 2015年夏号[24]
瞬間移動する女 書き下ろし
エピローグ
6 幻影の手術室
天久鷹央の事件カルテ
2016年9月1日
(同日発売[25]
ISBN 978-4-10-180076-9 幻影の手術室 書き下ろし
7 天久鷹央の推理カルテV
神秘のセラピスト
2017年3月1日
(同日発売[26]
ISBN 978-4-10-180090-5 プロローグ 書き下ろし
雑踏の腐敗
永久に美しく 『小説新潮』2016年6月号[18]
聖者の刻印 書き下ろし
エピローグ
8 甦る殺人者
天久鷹央の事件カルテ
2017年11月1日
(同日発売[27]
ISBN 978-4-10-180109-4 甦る殺人者 書き下ろし
9 火焔の凶器
天久鷹央の事件カルテ
2018年9月1日
(同日発売[28]
ISBN 978-4-10-180133-9 火焔の凶器 書き下ろし
10 魔弾の射手

天久鷹央の事件カルテ

2019年9月1日

(同日発売[29]

ISBN 978-4-10-180162-9 魔弾の射手 書き下ろし
11 神話の密室

天久鷹央の事件カルテ

2020年9月1日

(同日発売[30]

ISBN 978-4-10-1801971 プロローグ 書き下ろし
バッカスの病室
神のハンマー
エピローグ

評価[編集]

これまでの医療ミステリは外科医を中心として医局内の権力闘争を描くものが多かったが、本作は診断医としての能力と知識を駆使して事件を解決に導く[31]

漫画[編集]

緒原博綺による漫画版が『月刊コミック@バンチ』(新潮社)2016年6月号から2018年5月号まで連載された。

巻数 タイトル 収録話 初版発行日 ISBN
1 天久鷹央の推理カルテ 1
  • 人魂の材料1〜2
  • 不可視の胎児1〜2
2016年9月16日
(2016年9月9日発売[32]
ISBN 978-4-10-771912-6
2 天久鷹央の推理カルテ 2
  • 不可視の胎児3〜4
  • オーダーメイドの毒薬1〜4
2017年3月9日
(同日発売[33]
ISBN 978-4-10-771960-7
3 天久鷹央の推理カルテ 3
  • 甘い毒1〜3
  • 吸血鬼症候群1〜3
2017年11月9日
(同日発売[34]
ISBN 978-4-10-772022-1
4 天久鷹央の推理カルテ 4
  • 天使の舞い降りる夜1〜6
2018年6月9日
(同日発売[35]
ISBN 978-4-10-772090-0

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ 漫画版『天久鷹央の推理カルテ』開幕! - 編集部打ち合わせブログ”. 新潮社 (2016年4月20日). 2016年9月9日閲覧。
  2. ^ 新潮文庫nex Twitter2017年10月9日の発言2017年11月15日閲覧。
  3. ^ 新潮文庫nexのTwitter” (2016年9月7日). 2016年9月9日閲覧。
  4. ^ 4巻収録「ゴミに眠る宝」など
  5. ^ 「神酒クリニックで乾杯を」シリーズ
  6. ^ 小鳥が遊べるから「鷹無し」だが、この病院には央という鷹がいるため。
  7. ^ 小鳥遊が外科医としての腕が落ちると危惧してる、と鷹央が勘違いしたため
  8. ^ その理由は「スフィアの死天使」で語られる
  9. ^ 『火焔の凶器』で犯人に放火されて廃車
  10. ^ 現実の外科医は外科手術に絶対的に必要な指の感覚を痛める格闘技をやることは有り得ない
  11. ^ 『幻影の手術室』
  12. ^ 『火焔の凶器』で小鳥遊を救出するために激突させて廃車
  13. ^ 『火焔の凶器』で小鳥遊を救出するために犠牲にした前の愛車の弁償として『魔弾の射手』で小鳥遊が購入
  14. ^ 真犯人の刺客
  15. ^ 沖田に対する殺人の間接正犯及び小鳥遊に対する傷害の現行犯で逮捕される直前に自殺
  16. ^ 二人目の自殺者とされている元院長・時山剛一郎については持病のQT延長症候群に起因する事故死と思われる。
  17. ^ 知念実希人『天久鷹央の推理カルテ』”. 新潮社. 2015年7月15日閲覧。
  18. ^ a b c d e バックナンバー|小説新潮”. 新潮社. 2015年7月16日閲覧。
  19. ^ 知念実希人『天久鷹央の推理カルテII―ファントムの病棟―』”. 新潮社. 2015年7月15日閲覧。
  20. ^ 知念実希人『天久鷹央の推理カルテIII―密室のパラノイア―』”. 新潮社. 2015年7月15日閲覧。
  21. ^ 新潮文庫公式Twitterの2015年8月28日の発言
  22. ^ 鷹央と小鳥遊コンビの最初の事件
  23. ^ 知念実希人『天久鷹央の推理カルテIV―悲恋のシンドローム―』”. 新潮社. 2016年9月4日閲覧。
  24. ^ yom yom vol.37 2015夏”. 新潮社. 2015年8月11日閲覧。
  25. ^ 知念実希人『幻影の手術室―天久鷹央の事件カルテ―』”. 新潮社. 2016年9月4日閲覧。
  26. ^ 知念実希人『天久鷹央の推理カルテV―神秘のセラピスト―』”. 新潮社. 2017年3月21日閲覧。
  27. ^ 知念実希人『甦る殺人者―天久鷹央の事件カルテ―』”. 新潮社. 2017年10月29日閲覧。
  28. ^ 知念実希人 『火焔の凶器―天久鷹央の事件カルテ―』 | 新潮社」『』。2018年9月10日閲覧。
  29. ^ 魔弾の射手―天久鷹央の事件カルテ―”. 2019年8月30日閲覧。
  30. ^ 神話の密室―天久鷹央の事件カルテ―”. 2020年11月6日閲覧。
  31. ^ 見た目は女子高生? 空気が読めない? キュートな天才女医が巻き起こす、新感覚医療ミステリー!”. ダ・ヴィンチニュース (2015年10月5日). 2015年10月24日閲覧。
  32. ^ 知念実希人/原作、緒原博綺/漫画 『天久鷹央の推理カルテ 1巻』”. 新潮社. 2016年9月9日閲覧。
  33. ^ 知念実希人/原作、緒原博綺/漫画 『天久鷹央の推理カルテ 2巻』”. 新潮社. 2017年3月9日閲覧。
  34. ^ 知念実希人/原作、緒原博綺/漫画 『天久鷹央の推理カルテ 3巻』”. 新潮社. 2017年11月9日閲覧。
  35. ^ 知念実希人/原作、緒原博綺/漫画 『天久鷹央の推理カルテ 4巻』”. 新潮社. 2018年6月9日閲覧。