実験映画

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実験映画 実験映画とは造形芸術や伝統的映画などから立ち現れた一つの芸術的実践であり、表現における実験を試みた映画である。その多くは商業的な成功を第一の目的とせず、また多くは個人の作家によって作られる。

実験映画と呼ばれる作品の種類は幅広く、物語を実験的に表現した作品、作家個人の日常を撮影した日記的な作品、抽象的なアニメーション作品、ドキュメンタリー、フリッカー映画と呼ばれる作品を含む、映像の視覚効果を実験した作品、またファウンド・フッテージと言われる、他の作家によって制作された映像作品を流用・転用した作品などがある。さらに、拡張映画(エクスパンデッド・シネマ)と呼ばれる、複数の映写機を使って上映する作品、ループされた映像などによるインスタレーション作品、また上映中に映像・音声を加工・編集するパフォーマンス的な作品がある。

実験映画の歴史[編集]

アヴァンギャルド映画[編集]

1920年代に始まった初期の実験映画は、前衛芸術運動・思想と強い関係があり、特にダダイズムシュルレアリスムなどの影響がみられる作品が数多く作られた。その代表作として、1923年にマン・レイが制作した『理性への回帰』(Le Retour à la Raison)、1924年にルネ・クレールが制作した『幕間』(Entr'acte)、1926年にマルセル・デュシャンが制作した『アネミック・シネマ』(Anémic Cinéma)、1928年にルイス・ブニュエルサルバドール・ダリが制作した『アンダルシアの犬』(Un Chien Andalou)、1955年にアラン・レネが制作した『夜と霧』(よるときり、: Nuit et brouillard)などがある。

アメリカの実験映画[編集]

アメリカでは、1920年代よりアヴァンギャルド映画・実験映画と呼ばれる作品が作られており、チャールズ・シーラーポール・ストランドによる『Manhatta』(1921)、ジョゼフ・コーネルの『ローズ・ホバート』(1936)などがあるが、盛んになるのは1940年代で、マヤ・デレンとアレクサンドル・ハミドとの共作『午後の網目』(1943)、ケネス・アンガーの『花火』(1947)、シドニー・ピーターソンの『The Lead Shoes』(1949)などがある。

1950年代になると、戦後、市場に流れた16ミリカメラを使って多くの実験映画作家が出てきた。メリー・メンケンの『Hurry! Hurry!』(1957)など。

日本の実験映画[編集]

日本国内でも戦前から実験映画と呼ぶことができる先品が制作されていたが、個人映画として実験映画が作られ始められたのは1950年代からである。

1960年代、京都、大阪、札幌にて行われたアメリカ実験映画を紹介する上映企画「アンダーグラウンド・シネマ/日本・アメリカ」によって実験映画を知らしめ多くの支持を受けた。このことにより実験映画は鑑賞するのみならず、自身で撮影し創りだす映画であるという意識を日本の観客に植え付けることとなった。

実験映画作家[編集]

海外の実験映画作家[編集]

ヨーロッパの実験映画作家[編集]

主な作家にルイス・ブニュエルサルバドール・ダリルネ・クレールフェルナン・レジェマン・レイハンス・リヒターオスカー・フィッシンガーレン・ライ、ローラ・マルヴェイ、シャンタル・アケルマンサリー・ポッターアイザック・ジュリアンなど。

アメリカの実験映画作家[編集]

主な作家にマヤ・デレンハリー・スミスジョナス・メカスジャック・スミスケネス・アンガースタン・ブラッケージマイケル・スノウ、ホイットニー兄弟、ナサニエル・ドースキー、エクスパンデッド・シネマ、アンディ・ウォーホル、ブルース・ベイリーなど。

日本の実験映画作家[編集]

戦前[編集]

衣笠貞之助岩崎昶中井正一、荻野茂二など。

(以下は今では見られない作品)

森紅『或る音楽』(1932)、岡野卯馬吉『幻想』、金子安雄『水と光の交響楽』(いずれも1933)、阿保祐太郎『或る音楽的感興』、坂本為之『赤と青による習作 アレグロ二重奏』、今枝柳蛙『音を伴ふ習作』(いずれも1935)

戦後~1960年代[編集]

松本俊夫山口勝弘、グラフィック集団(石元泰博大辻清司、辻彩子)、飯村隆彦高林陽一大林宣彦足立正生、城之内元晴、ドナルド・リチー(Donald Richie)、寺山修司三島由紀夫など。

1970年代[編集]

金井勝かわなかのぶひろ田名網敬一鈴木志郎康相原信洋古川タク、奥山順市、居田伊佐雄、山崎博、萩原朔美、出光真子、中島崇、中谷芙二子、中嶋興など。

1980年代[編集]

伊藤高志山田勇男、メタフィルム(映画についての映画)の森下明彦、太田曜、山崎幹夫加藤到、IKIF(石田木船映像工場Ishida Kifune Image Factory、木船徳光と石田園子の二人で結成)、黒坂圭太山村浩二など。

1990年代[編集]

大木裕之和田淳子、寺嶋真里、末岡一郎、帯谷有理など。

2000年代[編集]

石田尚志、牧野貴、宮崎淳、辻直之、和田淳、大山慶など。

実験映画の上映[編集]

日本国内での実験映画の上映に関しては、東京都渋谷区にあるシアター・イメージフォーラムと東京都渋谷区恵比寿にある東京都写真美術館で毎年行われる恵比寿映像祭、アナログメディア研究会、8mmFILM小金井街道プロジェクト 、UPLINK渋谷、LUMEN gallery、マルバ会館、EZO FILM、VIDEO PARTY、スパイスフィルムが挙げあられる。

シアター・イメージフォーラムのイメージフォーラム・シネマテークでは、実験映画に関する特集が組まれた上映が行われる。また、毎年、映像アートの祭典である「イメージフォーラムフェスティバル」(2018年より、「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」が名称に追加された。)が開催され、国内外の実験映画の公募と上映を行なっている。

恵比寿映像祭は、2009年から始まった映像とアートの国際的な祭典であり、上映だけでなく、パフォーマンスやインスタレーション作品の展示、またトークセッションも合わせて行われる。

脚注[編集]

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参考文献[編集]

書籍[編集]

  • A.L.リーズ(著)『実験映像の歴史:映画とビデオー規範的アヴァンギャルドから現代英国での実験実践』犬伏雅一ほか(訳)、晃洋書房、2010年、ISBN 978-4771021372
  • 伊奈 新祐(著)『メディアアートの世界―実験映像1960‐2007』国書刊行会、2008年、ISBN 978-4336049896
  • 西嶋憲生 (著)『生まれつつある映像―実験映画の作家たち』文彩社、1991年、ISBN 978-4938361327

関連項目[編集]

http://nishimuratomohiro.web.fc2.com/200703abst.html