寛保津波

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渡島大島

寛保津波(かんぽうつなみ)は、1741年寛保元年)8月29日に、北海道西南沖で発生した、渡島大島噴火ないし火山性地震に伴う大津波である[1][2][3]。死者2,033人。北海道津軽地方を中心に大きな津波被害があった。

概要[編集]

1741年8月29日(寛保元年7月19日)の早朝に、北海道渡島大島の寛保岳が大噴火したことによる大津波が発生した。火山性地震 (M6.9)・山体崩壊が発生し、噴火の翌日に岩屑なだれに伴う津波が発生したのである。

津波により、対岸の熊石から松前にかけて、1,467人の死者が出た[4]佐渡島でも津波を観測。能登若狭にも津波が押し寄せた。家屋791棟が流出・破壊。船舶被害1,521隻に達した。大島の対岸である江良地域の被害が最も大きく、「津軽藩日記」によれば、450人ほどの死者が出たという。「相沼無量寺過去帳」によると、熊石地方でも男性32人、女性40人、子供38人の合計110人の死者が出た。死者数は合計で2,033人に達した。被害の状況は、松前藩の記録「福山秘府」などに記載されている[5]。なお渡島大島では、噴火活動は山体崩壊発生前の8月18日から始まっており、最初は西山から噴火した。25日からは、降灰のため江差町などでは昼でも暗くなったという[6]

この津波の原因は、噴火による大規模な山体崩壊によるという説[7][8]と、低周波地震によるもの[9][10]との説がある[11]気象庁は山体崩壊説[6]を採っており、東京大学地震研究所らの研究によれば地震説が有力である[12]。また、津波マグニチュード(Mt)は8.4であり[2]、日本海域における過去最大級の津波とされる。津波の高さは、北海道渡島半島で最高15m、津軽半島の日本海側沿岸で4 - 8m、佐渡で3 - 5m、島根県江津で1 - 2mであったと推定されている[13]奥尻島や檜山沿岸などでは、津波堆積物が確認されている[14]。津波堆積物調査により、この地域では13世紀にも、地震性の津波により被害が出ていた可能性があることがわかった[15]

寛保津波の碑[編集]

現在、北海道の光明寺正覚院、泉龍院や法華寺無量寺などには、寛保津波の犠牲者を供養する「寛保津波の碑」があり、いずれの碑も北海道指定文化財となっている。松前藩の記録「福山秘府」によると、同年8月18日に、光善寺発願もあって寺院の僧らが集まり、現在の光明寺の境内に卒塔婆を建てて施餓鬼供養した[16]

脚注[編集]

  1. ^ INC, SANKEI DIGITAL. “【温故地震】北海道・渡島大島大噴火の巨大津波 絵図に残った凄まじい風景 建築研究所特別客員研究員・都司嘉宣” (日本語). 産経ニュース. 2021年3月15日閲覧。
  2. ^ a b 日本海における大規模地震に関する調査検討会 報告書 - 国土交通省
  3. ^ [講演要旨]寛保津波の被害と北方諸藩の対応 - 弘前大学大学院 地域社会研究科 白石睦弥
  4. ^ 碑の記憶 特別号外| 寛保津波の碑(北海道)” (日本語). IWATE NIPPO 岩手日報. 2021年3月15日閲覧。
  5. ^ 論文「北海道渡島大島津波 (1741年) の供養碑」羽鳥徳太郎
  6. ^ a b 渡島大島 有史以降の火山活動 - 気象庁
  7. ^ 崩れた大地震説 1741年の渡島西部大津波は「火山崩壊」”. shima3.fc2web.com. 2021年3月15日閲覧。
  8. ^ 日本海東縁, 奥尻海嶺および周辺の大地震と海底変動 (PDF)”. 海洋研究開発機構(JAMSTEC) (1998年1月14日). 2003年7月26日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2008年12月3日閲覧。
  9. ^ 日本海東縁海域の活構造およびその地震との関係 (PDF) (独)産業技術総合研究所 地質調査総合センター
  10. ^ 噴火により発生する津波の見積り 1741年渡島大島の場合 ‐ 【津波ディジタルライブラリィ】”. tsunami-dl.jp. 2021年3月15日閲覧。
  11. ^ 渡島大島の大津波”. nature.blue.coocan.jp. 2021年3月15日閲覧。
  12. ^ 相田勇:噴火により発生する津波の見積り:1741年渡島大島の場合 東京大学地震研究所彙報. 第59冊第4号, 1985.3.30, pp. 519-531
  13. ^ 『津軽藩御国日記』の追加による寛保渡島沖津波(1741)の詳細調査
  14. ^ 1741年渡島大島山体崩壊による 津波の浸水シミュレーション
  15. ^ 過去の北海道南西沖津波:1741 年の津波と 13 世紀頃の津波(解説)
  16. ^ 光明寺寛保津波の碑 こうみょうじかんぽうつなみのひ”. 2020年11月8日閲覧。