将棋の戦法

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将棋の戦法(しょうぎのせんぽう)は、将棋における効果的な攻めおよび守りの手順や陣形のことである。守りの陣形である囲いも広義の戦法となるが[1]、本項ではこれを含まない狭義の戦法について記述する。

戦法・戦型の分類[編集]

戦法と戦型[編集]

将棋には様々な戦法があるが、ある場面で効果的な戦法が別の場面でも効果的であるとは限らない。そこで、最序盤の先後双方の指し手を併せた局面の進行を、いくつかの型(戦型)に大別した上で、戦型ごとに先後それぞれの効果的な指し方についてを戦法として分類するのが一般的である。一方で、棒銀戦法のように、様々な戦型で効果を発揮する汎用的な戦法もある。なお「戦型」と「戦法」の両者は、しばしば混用される。 ここでは、戦法の一覧を見る上で不可欠な戦法分類の理解を助けるために、まずは代表的戦型について説明する。なお、どの戦型で対局が行われるのかは攻め・守りの基本方針に関わるから、自ら主導して戦型を選択した側の対局者にとっては、戦型自体が戦法の一つでもある。

対抗型では振り飛車側、相振り飛車では後から振り飛車を明示した側が該当する。相居飛車では両者の盤上の駆け引き・合意によって戦型が決まるため、純粋にどちらか一方の意思とは言えないが、矢倉戦・角換わり(正調角換わり)・相掛かりは先手の主導、角換わり(後手一手損角換わり)・横歩取りは後手の主導で実現することが多いとされている。

△持ち駒 角
Shogi zhor 22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
Shogi zver 22.png
▲持ち駒 角
相居飛車の最序盤の例
(角換わり)

戦法は、最強の駒である飛車の使い方によって居飛車振り飛車に大別される。居飛車は飛車を初期位置である右翼に居たまま使う戦法であり、振り飛車は飛車を左翼に振って(移動して)使う戦法である。なお、飛車の初期位置は厳密には右翼のうち右から2番目の筋(先手ならば2筋、後手ならば8筋)であるが、右から3番目や4番目の筋も右翼であることにはかわりはないから、これらの筋で飛車を使う戦法も居飛車に含まれ、右から3番目の筋で飛車を使う戦法は袖飛車、右から4番目の筋で飛車を使う戦法は右四間飛車と呼ばれる。

飛車を中央である5筋で使うものについては、通常玉将を右翼に囲う点など、他の振り飛車との共通点が多いため、一般的に振り飛車に分類されるが、他の居飛車との共通点が多い戦法、たとえばカニカニ銀(中飛車)や矢倉中飛車など、相居飛車(この場合は相矢倉)で生じる戦法であるために、居飛車に分類されることもある。

また、横歩取りのうち飛車位置が途中で左翼になるものや、ひねり飛車のように右に玉将を囲い途中から飛車の位置を変えるような、どちらかというと相居飛車に分類される指し方もある。

互いに居飛車と振り飛車のどちらの戦法を採るかという基準により、戦型は3つに大別できることになる。すなわち、双方が居飛車の相居飛車、一方が居飛車で他方が振り飛車の対抗型、双方が振り飛車の相振り飛車である。

相居飛車[編集]

相居飛車は、飛車と角の使い方・相手の飛車先の受け方により、矢倉角換わり相掛かり横歩取りといった戦型に分類される。通常横歩取りは飛車先を交換する、矢倉戦や角換わり戦は飛車先を交換しない戦法となるが、相掛かりは両方の種類がある。

矢倉戦のほか、角換わりでも矢倉囲い系の囲いが用いられることが多いが、相掛かり・横歩取りは中住まいやイチゴ囲いなどに組むのが一般的である。居飛車の場合は中央から左側に玉を移動して囲いを築くが、稀に飛車のいる右側に玉を移動して戦うこともあり、これを右玉という。

対抗型[編集]

△持ち駒 なし
Shogi zhor 22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
Shogi zver 22.png
▲持ち駒 なし
対抗型の最序盤の例
(居飛車vs四間飛車)
△持ち駒 なし
Shogi zhor 22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
Shogi zver 22.png
▲持ち駒 なし
相振り飛車の最序盤の例
(向かい飛車vs三間飛車)

対抗型では、角行と飛車の位置関係を見れば明らかなように、当初から居飛車側と振り飛車側で全く異なる非対称な形で駒組が始まる。そのため、相居飛車と比べるとある程度相手の駒組から独立して自分の駒組を進めることができ、居飛車側・振り飛車側の双方で様々な戦法が使用できる。

対抗型は、振り飛車側がどの筋に飛車を振っているかによって中飛車四間飛車三間飛車向かい飛車に分類される。これに対し居飛車側の対応は、速攻を仕掛ける急戦と、固い囲いを組む持久戦に大別される。

相振り飛車[編集]

互いに飛車を振る相振り飛車については、従来は振り飛車党同士の対戦で互いに譲らなかった場合などに出現する限定的な戦型とされていた。しかし、近年では相手の出方に応じて相振り飛車にする作戦が試されるようになり、居飛車党の棋士もしばしば指すようになった。とは言え、相居飛車や対抗型と比べて実戦例が少ないのは事実であり、相居飛車や対抗型ほど細かく戦法が整備されているわけではない。

その他[編集]

△持ち駒 角歩
Shogi zhor 22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
Shogi zver 22.png
▲持ち駒 角歩
奇襲戦法の例
(後手番角頭歩vs居飛車)

通常の戦型の分類に当てはまらない進行を見せる将棋は、力戦型と呼ばれる。力戦型ではゴキゲン中飛車のようにもともとの正統戦法に近い戦型の戦法を応用して使うこともあれば、まったく独自に工夫して攻め方・守り方を構想する場合もある。戦型分類については一間飛車筋違い角のように両方の場合があるもの、出だしは相居飛車で途中から変わる陽動振り飛車坂田流向かい飛車のようなものや、英春流嬉野流のように相手の戦型によって上記3つのものに当てはまる戦法などがある。

相手に正しく対応された場合には自分が不利になってしまうことが明らかになっている戦法を奇襲戦法(またはハメ手、B級戦法など)と言い、奇襲戦法の多くは、初見の相手を惑わせて罠に嵌める目的で使われるが、序盤から戦型が固まらずに激しくなるものも多く、このため早石田鬼殺し向かい飛車、ノーガード戦法など明らかに上記3つの対抗系戦型に当てはまるものと、鬼殺しパックマンのような戦型分類の意味をなさないものまで、多様にある。

なお、現在奇襲戦法扱いされている戦法の中には、矢倉の急戦型雀刺しなど元々正統な戦法だったものの完全な対策が確立されて奇襲でしか成立しなくなったものもあり、奇襲戦法に分類されるか否かは程度の問題である。

駒落ち将棋では、平手では通用しない駒落ち専用の戦法が存在する。

この他に、戦法として成立していないがやってしまいがちな手を冗談として戦法扱いすることがあるが、プロの公式戦でも多くみられるようになった後手一手損角換わりなどは、もともとそうした類の戦法であった。

相居飛車の戦法[編集]

対抗型居飛車の戦法[編集]

急戦用

  • 対三間飛車急戦
    • 対ノーマル三間飛車他:三間飛車破り4六銀急戦・7五歩早仕掛け・棒銀・斜め棒銀、4五歩早仕掛け・二枚銀、三歩突き捨て急戦、鳥刺し・嬉野流、英春流右四間、地下鉄飛車、雁木・引き角
    • 対石田流三間飛車:棒金、きmきm金、二枚銀3八飛(7二飛)型、、鳥刺し・嬉野流
  • 対向かい飛車急戦
    • 棒銀・斜め棒銀・4六銀(左銀・右銀)戦法、5七金戦法、鳥刺し・嬉野流

持久戦用・その他

対抗型振り飛車の戦法[編集]

  • 三間飛車
    • 角道クローズド:
      • ノーマル三間飛車:腰掛け銀型・玉頭銀・ダイヤモンド美濃、▲5六歩(△5四歩)型、△3筋(▲7筋)位取り型、石田流(本組)、大野流三間飛車(▲5七銀(△5三銀)型)、真部流三間飛車(▲6筋(△4筋)位取り)、中田功XP、下町流三間飛車、トマホーク、カナケンシステム、久保システム
      • 角交換三間飛車:初手▲7八飛2手目△3二飛、▲6七金(△6三金)型三間飛車
    • 角道オープン:

相振り飛車の戦法[編集]

その他の戦法[編集]

  • 奇襲戦法
奇襲戦法を参照。鬼殺し早石田4四歩パックマンアヒル戦法(大阪囲い)、嬉野流など、多数。


  • 駒落ちの戦法
  • 下手棒銀
八枚落ち[5]、四枚落ち[6]、香落ち
  • 灘定跡
八枚落ち[6]
  • 下手9筋攻め
八枚落ち[6]、六枚落ち[5]、四枚落ち[5]
  • 下手1筋突破
六枚落ち[6]
  • 二歩突っ切り定跡(右三間+カニ囲い)
四枚落ち[6][5]、二枚落ち[6][7][5]
二枚落ち[6][7][5]
  • 上手五筋位取り
二枚落ち(5五歩止め)[6][7]、飛車落ち、角落ち
  • 上手8四歩型・7四歩型・7五歩交換型
飛香落ち
  • 2五桂ハネ定跡
飛香落ち[7]
  • 下手腰掛け銀
飛香落ち[5]
  • 上手三金止早仕掛
飛車落ち
  • 下手右四間飛車(金無双、銀冠型)
飛車落ち[5]、飛香落ち
  • 上手雁木
二枚落ち、飛車落ち
  • 上手お神酒指し
飛車落ち
  • 金開き3四銀型
飛車落ち
  • 上手3手目△5四歩戦法
飛車落ち
  • 居飛車引き角
飛車落ち[5]
  • 下手矢倉
六枚落ち[6]、角落ち[5]
  • 下手三間飛車
飛車落ち、角落ち[5]
  • 下手角交換型中飛車
飛車落ち
  • 下手中飛車
角落ち[5]
  • 上手6四金戦法
二枚落ち、角落ち
  • 上手5四銀-6二飛型
角落ち
角落ち
  • 上手三間飛車△3四歩型
香落ち[5]
  • 下手三間飛車(相振り飛車)
香落ち
  • 上手角交換型中飛車
香落ち[5]
  • 上手△1二飛型
香落ち[5]
  • 下手1八飛戦法
香落ち

戦法の流行[編集]

2019年に刊行された『将棋世界Special 将棋戦法事典100+』(将棋世界編集部編、マイナビ出版)で、2019年時点での人気戦法の順位が取りまとめられている。順位については以下の通り。

脚注[編集]

  1. ^ 例えば、居飛車穴熊は囲いであるが、戦法とされることもある。
  2. ^ 超速▲3七銀や丸山ワクチンには急戦・持久戦どちらの変化もある。
  3. ^ 一度四間飛車に振り、角交換をした後に向かい飛車に振り直す。
  4. ^ 角交換四間飛車に対して、ダイレクトに向かい飛車に降るため、こう呼ばれる。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 所司(2010)
  6. ^ a b c d e f g h i 先崎(2012)
  7. ^ a b c d 花村(2001)

参考文献[編集]

  • 塚田泰明監修、横田稔著『序盤戦! 囲いと攻めの形』、高橋書店、1997年
  • 原田泰夫 (監修)、荒木一郎 (プロデュース)、森内俊之ら(編)、2004、『日本将棋用語事典』、東京堂出版 ISBN 4-490-10660-2
  • 上野裕和、2018、『将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編(増補改訂版)』、マイナビ出版
  • 上野裕和、2018、『将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編(増補改訂版)』、マイナビ出版
  • 上野裕和、2017、『将棋・序盤完全ガイド 相振り飛車編』、マイナビ出版
  • 先崎学、2012、『駒落ちのはなし』日本将棋連盟刊 マイナビ
  • 所司和晴、2010、『【決定版】駒落ち定跡』日本将棋連盟刊 マイナビ
  • 花村元司、2001、『復刻版・よくわかる駒落ち』東京書店刊

関連項目[編集]