小夜左文字

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小夜左文字(さよさもんじ)は、鎌倉時代筑前国(現在の福岡県西部)の刀工左文字作の日本刀短刀)。「短刀 銘左 筑州住(名物小夜左文字)」(たんとう めい さ ちくしゅうじゅう めいぶつさよさもんじ)の名称で、昭和27年(1952年7月19日に国の重要文化財に指定された[1]

作風[編集]

刃長は8寸9厘(約24.5cm)で[2][注釈 1]、僅かに反りがついており、元幅は7分9厘(約2.4cm)、元重ねは1分6厘強(約0.5cm強)、茎長は3寸3分7厘弱(約10.2cm)、茎反りは6厘強(約0.2cm)である。 平造りで身幅はやや広く、地鉄は板目肌(いためはだ)がよく約(つ)み、地沸(じにえ)ついて明るく冴え、刃文(はもん)は浅い湾れ(のたれ)に互の目(ぐのめ)交じり、砂流し(すながし)、金筋(きんすじ)しきりに働き、鋩子(ぼうし)は乱れ込み、先は鋭く尖って掃掛(はきかけ)となっている。また、銘字を表は中央に「左」、裏はやや棟寄りに「筑州住」と切っている。

伝来[編集]

小夜左文字の名前の由来に関して、以下の二つの話がによって挙げられている。

一つは平安時代歌人である西行の歌から取ったものだとされる話である[5]

年たけてまた越ゆべしと思ひきや、命なりけり小夜の中山

これは『光甫覚書』に記載のある通り、元来細川幽斎の愛刀だったと刀剣学者の佐藤寒山は記している[5]

もう一つは仇討ちの復讐譚である。遠江国に暮らしていた浪人の死後、その妻が形見である左文字の短刀を掛川(現在の静岡県掛川市)に売りに行く途中、小夜の中山で山賊に短刀を奪われて斬り殺された。その後、遺された息子は母親の妹に育てられ、成人した後に掛川の研師に弟子入りする。そしてある時、その息子の元に浪人が左文字の研ぎを頼みに来るが、息子は彼からその刀が母親を殺して奪ったものであるという話を聞き、左文字を見るふりをしてその浪人を殺し、仇を討ったという。上記の逸話を耳にした当時の掛川城主・山内一豊が仇討ちを果たしたその弟子を召し上げ、担当は山内を通して細川幽斎の手に渡り、前述の歌に基づいて命名されたと伝えられる[6]。しかし大正時代記者である高瀬羽皐の記した『英雄と佩刀』および佐藤の考えによるとこの話は事実ではなく、江戸幕府第8代将軍徳川吉宗が編纂を指示した『享保名物帳』に記載されたもので、小夜山の観音寺にある小説的な話に基づいたものであるとされている[6][5]

所有者[編集]

寛永4年(1627年)に小倉藩大飢饉が起こった際、細川忠利は領民の飢餓を救うために小夜左文字と大名物の茶器「有明の茶入(安国寺肩衝茶入)」を売却したとされている。そして、小夜左文字は黒田家や浅野家などを経て土井家に入った後、寛文5年(1665年)6月に同家より本阿弥家へ鑑定に出され、1500貫の折り紙を付けられた。また、大正から昭和にかけての秋田の愛刀家である柴田政太郎は、小夜左文字を所有していたことから自身の庵号を「小夜左庵」と名乗った[5]。2017年時点での所有者は、「日本刀剣等文化財の保存技術等開発」を事業内容の一つにあげている「株式会社ブレストシーブ」である[7]

所有者 地域 年代 備考 出典
細川藤孝(幽斎) [5]
細川忠興(三斎) [5]
黒田 福岡藩 [8]
浅野 広島藩 [8]
土井
(町家) 京都 1716年 享保名物帳』編纂の際に所持[6] [9]
田村 神戸 戦前 [9]
柴田政太郎 秋田 [9]
柴田恒次 秋田 1952年7月19日 重要文化財に指定[10]
秋田 1962年 1988年には売却されている[11] [12]
1971年 [13]
奈良 1977年[14]
1982年[2]
1999年[15]
株式会社ブレストシーブ 大阪 2017年時点 [7]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 文献によっては24.4cm[3]、あるいは8寸8分(約27cm)とする資料もあるが[4]、本項では重要文化財編纂委員会の資料に合わせるものとする。

出典[編集]

  1. ^ 短刀〈銘左/筑州住〉(名物小夜左文字) - 国指定文化財等データベース(文化庁)、2018年1月9日閲覧。
  2. ^ a b 「重要文化財」編纂委員会 『解説版 新指定重要文化財 工芸品Ⅱ 甲冑・刀剣・刀装具』6巻 毎日新聞社、1982年3月30日、223頁。 
  3. ^ 佐藤 1990, p. 199.
  4. ^ 小和田 2015, p. 268.
  5. ^ a b c d e f 佐藤 1990、200頁。
  6. ^ a b c 羽皐 1912、27頁。
  7. ^ a b 日本刀紹介”. ブレストシーブ所蔵の日本刀紹介. 株式会社ブレストシーブ. 2017年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年12月10日閲覧。
  8. ^ a b 小和田 2015, p. 269.
  9. ^ a b c 本堂 1935、77頁。
  10. ^ 昭和27年12月16日文化財保護委員会告示第25号(指定は昭和27年(1952年)7月19日付け)
  11. ^ 福永酔剣 『日本刀物語』 雄山閣出版、1988年3月5日、77頁。 
  12. ^ 佐藤寒山 『日本名刀物語』 白鳳社、1962年9月30日、69頁。 
  13. ^ 福永酔剣 『日本刀物語』 雄山閣出版、1971年4月15日、77頁。 
  14. ^ 毎日新聞社「重要文化財」委員会事務局 『重要文化財』第27巻 (工芸品 4 刀剣及び刀装具)巻 毎日新聞社、1977年5月20日、109頁。 
  15. ^ 毎日新聞社図書編集部; 毎日新聞社第二図書編集部 『国宝・重要文化財大全 工芸品 下巻』6巻 毎日新聞社〈国宝・重要文化財大全〉、1999年9月30日、517頁。ISBN 4-620-80326-X。 NCID BA35181980 

参考文献[編集]

関連項目[編集]