平均寿命

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平均寿命(へいきんじゅみょう)とは、

平均寿命の「寿命」とはいわゆる「天寿」ではなく、死因にかかわらず生まれてから死ぬまでの時間である。

各国の人間の平均寿命の具体的な数字については国の平均寿命順リストを参照のこと。

人間の平均寿命[編集]

各国の平均寿命(CIA World Factbook 2021 Estimates for Life Expectancy at birth (years).)[2]平均寿命の長さは色別に、緑>濃青>青>水色>橙>黄>赤となっている。

人口統計では、定常な(対象となるの各年齢の死亡率が今後も維持される仮想的な)個体群について平均寿命を求める。つまり、平均寿命とは0歳の平均余命のことである。平均余命は年齢によって異なり、例えば平均寿命が80歳だとしても、今79歳の人が平均であと1年しか生きられないということではないので注意が必要である。2017年現在、80歳まで生きた場合の平均余命はおよそ10年である。

平均寿命は、年齢別の推計人口と死亡率のデータを使い、各年齢ごとの死亡率を割り出す。このデータを基にして平均的に何歳までに寿命を迎えるかを出す。日本の厚生労働省が発表している日本人の平均寿命は、ある程度以上の年齢のデータについては除外して計算している。これは、あまりに少数の高齢の人物のデータを算入すると、その生死によって寿命の統計が大きく影響を受けてしまうからである。データ除外の基準は年度によって異なり、2009年度の調査では98歳以上の男性と103歳以上の女性に関するデータは取り除いている[3]。つまり、日本の「平均寿命」は、正確なデータではなく、実態より短めに計算されていることになる

平均寿命は個体群によって大きく異なるが、寿命の上限はほとんど変わらないため、平均寿命の違いは人口ピラミッドの形の違いとして現れる。個体群が定常的な場合、山型の人口ピラミッドは低い平均寿命、釣鐘型の人口ピラミッドは高い平均寿命が反映されている。ただし、近年に平均寿命が大きく変化した場合、人口ピラミッドは現在ではなく過去の平均寿命を反映している。また、人口が急増しているときは、人口ピラミッドは山型になる。

寿命の平均である平均寿命に対し、寿命の中央値を寿命中位数という。平均寿命が長い個体群では、若者(特に乳幼児)の死亡がロングテールとなり、平均寿命は寿命中位数より少し(日本では男女とも3年程度)低い。逆に、平均寿命が短い個体群では、高齢者がロングテールとなり、平均寿命が寿命中位数より高い。

平均寿命が長くなるということは、それだけ高齢者の数が増えるということを意味する[4]

各国の平均寿命順位[編集]

世界保健機関(WHO)の世界保健統計(World Health Statistics)のデータベースによると、2019年の世界の平均寿命は73.3歳(男性70.8歳、女性75.9歳)。発展途上国で乳幼児の死亡率が低下したため、2000年時点より6.5歳延びたものの、高所得国が80.9歳であるのに対して、アフリカ大陸などにある低所得国は65.1歳と、国の経済水準による格差が大きい[5]

CIA World Factbookによる2021年のデータ[2]によると、平均寿命が特に短い国はアフガニスタン中央アフリカ共和国ソマリアモザンビーク南スーダンなど。一番短いアフガニスタンは平均寿命が53.25歳であり、男性が51.73歳、女性54.85歳しかない。特に長い国はモナコ89.4歳(男性85.55歳、女性93.4歳)、シンガポール86.19歳(男性:83.48歳、女性:89.05歳)、マカオ84.81歳(男性:81.89歳、女性:87.86歳)、日本84.65歳(男性:81.73歳、女性:87.74歳)、サンマリノカナダなど。つまり、アフガニスタンの平均寿命は、日本の約60%程である。

乳幼児以外の平均寿命短縮の要因[編集]

1971年から1980年のデータで糖尿病患者と日本人一般の平均寿命を比べると男性で約10年、女性では約15年の寿命の短縮が認められた[6][7]。このメカニズムとして高血糖が生体のタンパク質を非酵素的に糖化反応を発生させ、タンパク質本来の機能を損うことによって障害が発生する。この糖化による影響は、コラーゲン水晶体蛋白クリスタリンなど寿命の長いタンパク質ほど大きな影響を受ける。例えば白内障は老化によって引き起こされるが、血糖が高い状況ではこの老化現象がより高度に進行することになる[6]。同様のメカニズムにより動脈硬化も進行する。また、糖化反応により生じたフリーラジカル等により酸化ストレスも増大させる[8]

アルコールの過剰摂取により平均寿命が短縮することが指摘されている。
ロシア人男性の平均寿命は2000年時点で59.0歳と下位中所得諸国並みの水準であった。この原因の一つとして、ウォッカの飲み過ぎによるアルコール過剰摂取が挙げられている(ロシアではストレートで飲むのが普通。但し、健康的なライフスタイルを志向したり、若年世代の場合はその飲み方をする人は少ない)。ロシアがん研究センターや、イギリスオックスフォード大学が、ランセットで発表したところによると、ロシア人の死亡率はウォッカの規制とともに変動してきたと指摘している[9]
この状況に対してプーチン大統領は、アルコールに関する規制政策(午後11時~翌朝8時の酒類の店頭販売禁止、ウォッカなどの蒸留酒の小売店最低価格の引き上げ、マスメディアでの広告禁止などの措置)を行った。更に若い世代を中心に、アルコール飲料を飲まないか、アルコール度数の高いウォッカやコニャックよりも、より度数の低いビールワインを選ぶ人が多くなった[10][11]
その結果、1人当たりのアルコール消費量が2003年から2016年にかけて約43%減少し、ロシア男性1人当たりの消費量はWHOの統計より年間19.1L(2016-2018年の3か年平均)とフランスやドイツの男性よりも少なくなった[12][13]。その影響により、平均寿命は2019年時点で68.2歳と約9.2年延びたが、下位中所得諸国並みの水準のままとどまっている[5]

また、大気汚染や喫煙も寿命を縮める原因になっていると指摘されている。
2020年3月3日に欧州心臓病学会による発表によれば、世界全体の平均寿命に対して喫煙は約2.2年に対して、大気汚染は喫煙よりも多い約3年で寿命が縮まることが指摘された。そして、大気汚染が喫煙よりより多く縮めさせる大きな要因は大気汚染によって引き起こされる病気のうち、心血管疾患であり、化石燃料の使用を止めて大気汚染が減少すれば、世界の平均寿命が約1年延びると推計されている[14]

他の生物の平均寿命[編集]

動物の場合、人間のような正確な統計計算はせず、平均寿命は概数として言うことが多い。 野生動物では、幼生の高い死亡率が平均寿命を著しく引き下げる。 これを「意味のない数値」と見なして、ある程度成長した個体のみの寿命を平均する場合もある。

犬の場合

参考までに、一例として、身近なペットの一種、を選び、平均寿命について解説する。犬は犬種ごとに平均寿命が異なることが広く指摘されている。たとえば「小型犬 / 中型犬 / 大型犬」といったざっくりとした分類でも、平均寿命の違いがあることが知られており、それぞれの大きさの平均寿命を考慮した、「犬→人 年齢換算表」のようなものも知られている[15]

林谷秀樹(2001)「犬と猫における長寿に関わる要因の疫学的解明」(1995~1998年のデータを用いた論文)[1]によると、(日本の)犬の平均寿命が11.9歳。純血種と雑種(ミックス犬)の比較では、純血種が11.3歳、雑種が13.3歳であった。

なお、犬の平均寿命はここ数十年で急激に変化してきており、 1983年(昭和58年)に石垣恒(現・一般社団法人ペットフード協会会長)が私的に行った調査では、犬の平均寿命は7.5歳だったという。つまり、最近30年ほどで、犬の平均寿命は2倍ほどに延びた可能性が高い。ペットをどのように育てるか、ということが変化してきており、特に大きな要因として犬に与える食事の変化が挙げられ、かつては人間の食事の「残りもの」を与えていた(ので犬には合っておらず)、その後、犬独特の栄養事情も考慮した犬専用の餌(ドッグフード)の普及率が高くなったこと(昭和62年で20.9%、近年では90%以上)が大きい、と分析されている[16]

素粒子・放射性同位体の平均寿命[編集]

素粒子放射性核種などでは、平均寿命はそれらが自然対数の底の逆数まで減少するのにかかる時間のことであり、下に示すように崩壊定数 λ とは逆数の関係にある。また、半減期とは平均寿命に比例関係あり、平均寿命の ln(2) ≈ 0.693 倍が半減期に相当する。

平均寿命を τ 、崩壊定数を λ として示すと次式になる。

この定積分は広義積分であるから

これを計算すると

と平均寿命との関係が得られた。あるいは半減期の導出同様、平均寿命が経過すると自然対数の底の逆数にまで減少する関係から

とおいてもこれをτについてとくことによって、まず両辺の自然対数をとり

のようにして得られる。また半減期 t1/2

であるが、これを平均寿命と崩壊定数との関係式と見比べれば、確かに ln(2) 倍していることがわかる。

詳しい式導出は放射壊変の微分方程式も参照せよ。この微分方程式の解の時間に半減期を代入して半減期について解けば、半減期と崩壊定数の関係式が、上でもやったように平均寿命を代入すれば、平均寿命との関係式が得られるわけである。

また、次のような理解の仕方もできる。

少数の長生きする粒子が平均を引き上げるため、平均寿命は半減期より長い。素粒子に限らず、一般に、無記憶な個体の群ではこの関係が成り立つ。

その他の平均寿命[編集]

工業製品の場合は、「平均使用年数」、「平均耐用年数」などと言うことが多い。実際の使用実績を述べる場合と、予想を述べる場合とがある。

出典[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b デジタル大辞泉【平均寿命】
  2. ^ a b CIA (2021). CIAファクトブック Life expectancy at birth (Report). https://www.cia.gov/the-world-factbook/field/life-expectancy-at-birth/country-comparison 2021年3月15日閲覧。. 
  3. ^ “相次ぐ高齢者不明 「長寿日本」は信用できる? 平均寿命の計算には「影響せず」” (日本語). 日本経済新聞. (2010年8月16日). https://www.nikkei.com/article/DGXNZO12826280U0A810C1EL1P00/ 2019年11月15日閲覧。 
  4. ^ 『図解入門ビジネス最新人口減少社会の基本と仕組みがよーくわかる本』秀和システム、2007、p.40
  5. ^ a b WHO (2020-12-07) (Excel). World Health Oraganization > THE GLOBAL HEALTH OBSERVATORY >World Health Statistics>Life expectancy and life tables >Life expectancy at birth (years) (Report). https://www.who.int/data/gho/data/indicators/indicator-details/GHO/life-expectancy-at-birth-(years) 2021年3月18日閲覧。. 
  6. ^ a b 坂本信夫、坂本信夫、糖尿病合併症の成因と対策 『日本内科学会雑誌』 Vol.78 (1989) No.11 P1540-1543
  7. ^ Sakamoto N, et al : The features of causes of death in Japanese diabetics during the period 1971-1980. Tohoku J Exp Med 141(Suppl) : 631, 1983
  8. ^ 川上正舒、特集 糖尿病と動脈硬化症 動脈硬化症の分子機構 『糖尿病』Vol.46 (2003) No.12 P913-915
  9. ^ “早死にの一因はウオツカ、ロシア男性25%が55歳までに死亡=調査” (日本語). ロイター通信. (2014年1月31日). https://jp.reuters.com/article/l3n0l51ry-vodka-russia-death-idJPTYEA0U06220140131 2021年3月26日閲覧。 
  10. ^ 小﨑 晃義 (2020-03-31). “ロシアの第2の人口危機とその社会・経済的影響” (日本語). 創価大学ロシア・スラヴ論 (創価大学ロシア・スラヴ学会) 12: 6-7. ISSN 18827403. NAID 120006846764. https://soka.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=40391&item_no=1&page_id=13&block_id=68 2021年3月26日閲覧。. 
  11. ^ 小﨑 晃義 (2016-03-31). “ロシアの人口問題 : 回復の兆しと新たな危機 : アルコール規制の観点から” (日本語). 創価大学ロシア・スラヴ論 (創価大学ロシア・スラヴ学会) 9: 4-12. ISSN 18827403. NAID 120005768153. https://soka.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=36560&item_no=1&page_id=13&block_id=68 2021年3月26日閲覧。. 
  12. ^ 世界保健機関 (2020年5月16日). “THE GLOBAL HEALTH OBSERVATORY> Global Information System on Alcohol and Health > Levels of Consumption >Alcohol, total per capita (15+) consumption (in litres of pure alcohol) with 95%CI(世界健康展望台>アルコールと健康に関する世界情報システム>消費量>アルコール、95%信頼区間での15歳以上の1人あたりの総消費量(L,純粋アルコール) (Excel)”. 2021年3月26日閲覧。
  13. ^ “ロシアのアルコール消費量40%減 WHO報告書” (日本語). AFP通信. (2019年10月2日). https://www.afpbb.com/articles/-/3247453 2021年3月26日閲覧。 
  14. ^ “大気汚染で寿命3年縮む 世界平均、研究発” (日本語). 日本経済新聞. 共同通信. (2020年3月4日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56362080U0A300C2CR0000/ 2021年3月26日閲覧。 
  15. ^ 獣医提供の情報
  16. ^ DIAMOND「犬の平均寿命は30年で約2倍に! 知られざる超高齢化の実態」