平良愛香

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平良 愛香(たいら あいか、1968年 - )は、日本基督教団牧師である。沖縄出身[† 1]

日本のキリスト教会において、男性同性愛者であることをカミングアウトしたうえで、初めて牧師として正式に任用された。現在は日本基督教団川和教会(かわわきょうかい)主任牧師を務めるかたわら、ジェンダー性的少数者問題から平和人権に至るまで幅広いテーマをにない、積極的に教育・講演などの活動を行っている。「いのちの電話相談員全国研修会」講師ほか、キリスト教会外からの出講依頼にも応えている [† 2] [† 3] [† 4] [† 5] [† 6]


経歴[編集]

農村伝道神学校卒業、日本基督教団四谷新生教会伝道師、副牧師を経て、2003年から日本基督教団三・一教会牧師(2017年3月まで)。2018年から日本基督教団川和教会牧師。日本基督教団神奈川教区宣教部委員長、同教団神奈川教区副議長を務めたのち2013年より同神奈川教区総会議長を2期4年務める。そのほかキリストの風集会代表。農村伝道神学校教師。日本聖書神学校特別講師。立教大学非常勤講師、桜美林大学非常勤講師、カトリック・エイズデスク委員など。

牧師としての立場(特にセクシュアリティについて)[編集]

平良牧師は、「神様がつくったものに不良品はない」と語り、同性愛者も異性愛者も変わりなく、同様に祝福されるとしている。しかしキリスト教内では、そもそも同性愛自体認められないとする考え方、その傾向は認めるが行為は認めないとする考え方、また信者が同性愛者であることは受け入れられるが、牧師・司祭が同性愛者であることは容認できないとする派などもあり、それぞれに主張を展開している。一方、特に近年の先進諸国では、同性愛は異性愛と同じく個々人の生まれもった性質であり、人間性を損ねる可能性のある性的逸脱や性的放蕩と同一視すべきではないこと、また、同性愛を含むセクシュアルマイノリティは長年にわたり不当な偏見・差別を受けてきたという理解が一般に広まりつつある[† 7] [† 8] [† 9]

日本においては、同性愛者の勉強会グループが、東京都の公共施設を利用しようとした際に、まさに同性愛者であるという理由で利用拒否されたことをめぐって裁判が争われ、一審(1994)、二審確定(1997)とも、原告である勉強会グループが勝訴し、利用拒否した都側が厳しく批判された。この事件の直接的な原因の一つに、同施設を利用するキリスト教青年団体によるいやがらせ、また彼らによる聖書を用いた同性愛者に対する断罪があった[1]。このキリスト教青年団体の言動は、「聖書によれば同性愛は罪。聖書の言うところをそのまま受け入れなければならない」とする立場を体現するもので、キリスト教内にはこのような見方も根強く存在している。 しかし、古代の諸文献の丹念な調査や、最新の古代宗教史研究などにもとづいて、「聖書によれば同性愛は罪」は、一つの解釈にすぎず、聖書には同性愛を断罪する内容は書かれていないとする研究者も少なくない[2]

平良牧師は、こういった聖書理解について、聖書には身体障害者をけがれとする記述[† 10]や、奴隷制を容認または肯定する記述[† 11]などもあるが、キリスト教には、それらを克服してきた歴史がある[† 12]。たとえ聖書に同性愛などのセクシュアリティに対して、否定的な部分があったとしても、キリスト教は、これを乗り越えてゆくことができるはずだとしている[† 13]

賛美歌(作詞・曲)[編集]

「主につくられたわたし」(1996)[3]

「わたしはおやを」(2012)[4]

著書[編集]

  • あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる 学研プラス 2017年 ISBN:978-4054066113

脚注[編集]

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  1. ^ 1968年当時は沖縄は日本から切り離されて米軍司令下にあり沖縄「県」ではなかったため、本人はあえて沖縄県出身という言葉を避けている。出典『あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる』
  2. ^ 『日本いのちの電話連盟通信 No.50』(リンク切れ)
  3. ^ 『神奈川人権センター・人権ホットニュース』
  4. ^ 『横浜市人権啓発講習会出講』
  5. ^ 『とちぎ男女共同参画センター県民講座出講』
  6. ^ 『浄土真宗講師養成中央実習出講』
  7. ^ 1994年3月30日、東京地裁は、同性愛と異性愛を並立して同等に定義したうえで、同性愛を異常視する従来の傾向の見直しが行われている状況にあるとした。(判例時報1509号) 参考;http://www.ne.jp/asahi/law/suwanomori/special/supplement3.html アメリカでは、オバマ大統領が、同性婚を認めない同国婚姻保護法について、同性カップルに対して差別的であり違憲との判断を表明。司法長官もこれを全面的に支持した。2015年6月、アメリカ連邦最高裁判所は同性婚の権利を「法の下での平等な尊厳」として同性婚禁止は違憲との判断を下した。 ルクセンブルクでは、2015年1月に同性婚が合法となり、同年5月にグザヴィエ・ベッテル首相が同性パートナーと正式に結婚した。参考;http://www.afpbb.com/articles/-/3048755?pid=15838682 また、パリ市長、ベルリン市長、ドイツ外相、アイスランド首相らが同性愛者であることをカムアウトしたうえで有権者の支持を得ているなど、幅広い層で理解が深まりつつある。こうした一般市民の良識と、伝統的キリスト教会の価値観との乖離も深刻である[誰によって?]
  8. ^ 2014年2月にロシア・ソチで開催される冬季五輪では反同性愛法を制定した同国の人権政策への抗議のため出席を見送る欧米首脳が相次いだ。米国オバマ大統領夫妻、フランスのオランド大統領およびファビウス外相、ドイツのガウク大統領、ポーランドのコモロフスキ大統領およびトゥスク首相らが2013年12月の段階で出席見送りを明らかにしている。米国はさらに同性愛を公言するの元テニス選手、ビリー・ジーン・キングを米政府代表団に加え、反同性愛者法抗議の意図を明確にしている。参照;http://sportsspecial.mainichi.jp/news/20131219k0000m030039000c.html
    「欧米主要国は欠席 同性愛禁止・人権を問題視」http://sankei.jp.msn.com/sochi2014/news/140207/soc14020709220033-n1.htm
  9. ^ 先進国以外の国々、特にアフリカ諸国では同性愛者への弾圧・暴力が激しさを増している。原因として、国民の攻撃性を身近なマイノリティーに向けさせようとする政治家の存在、アメリカの原理主義的なキリスト教派からの影響、また多くの場合、旧植民地宗主国の法律を今も引き継いていることなどがイギリス・ガーディアンのウェブ英文記事により指摘されている。(参照:http://www.mg.co.za/article/2010-04-04-tutu-leads-fight-to-halt-antigay-terror-sweeping-africa
  10. ^ たとえば、レビ記21章16-17節:「主はモーセに仰せになった。アロンに告げなさい。あなたの子孫のうちで、障害のある者は、代々にわたって、神に食物をささげる務めをしてはならない。」 同23節:「ただし、彼には障害があるから、垂れ幕の前に進み出たり、祭壇に近づいたりして、わたしの聖所を汚してはならない。わたしが、それらを聖別した主だからである。」
  11. ^ コリントの信徒への手紙一7章21節、エフェソの信徒への手紙6章5節、テトスへの手紙2章9節など
  12. ^ 南アフリカ共和国の白人至上主義と人種隔離政策を聖書を用いて正当化したオランダ改革派教会が、その誤りと罪を認めたのは1998年のことであった。参考;『アパルトヘイトと南アフリカの「見えざる国教」』(森孝一神戸女学院院長)http://doors.doshisha.ac.jp/webopac/bdyview.do?bodyid=BD00004402&elmid=Body&lfname=630208.pdf#search='%E3%82%A2%E3%83%91%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%88+%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E6%95%99'
  13. ^ 平良牧師の「キリスト教は発展途上の宗教」という緊張をはらむ言葉も、伝統を十分に尊重しながらも、今を生きる私たちの世界に、一牧師として真摯にかつ積極的に応答していくというダイナミックな神学的態度のあらわれである。キリスト者としての信仰と自身の経験に裏打ちされると同時に、プロテスタントとしての面目をも明らかにしているといえる[誰によって?]

出典[編集]

  1. ^ 東京都青年の家事件 『同性愛と異性愛』(風間孝・河口和也、岩波書店、2010年)41-71頁
  2. ^ 「虹は私たちの間に-性と生の正義に向けて」(山口里子著、新教出版社 2008年 ISBN:978-4-400-42706-3)など
  3. ^ KOREMO SANBIKA NETWORK 0509
  4. ^ KOREMO SANBIKA NETWORK 1309

関連文献[編集]

  • 『現代牧師烈伝―治癒と希望の物語』(新井登美子著、教文館、2006年) ISBN 4764264145
  • 『虹は私たちの間に-性と生の正義に向けて』(山口里子著、新教出版社 2008年)ISBN:978-4-400-42706-3
  • 『いのちの糧の分かち合い』(山口里子著、新教出版社 2013年)ISBN:978-4-400-12757-4
  • 『中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド』(松本俊彦・岩室紳也・古川潤哉編、日本評論社 2016年)ISBN:978-4-535-90440-8

関連項目[編集]