幻想即興曲
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即興曲第4番 嬰ハ短調 | |
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フレデリック・ショパン | |
別名 | 幻想即興曲 |
形式 | 即興曲、複合三部形式 |
調、拍子 | 嬰ハ短調、2/2 |
テンポ | アレグロ・アジタート 速度指定なし |
出版年 | 1855年 |
制作国 |
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作品番号 | 66 |
献呈 | エステ公夫人 |
プロジェクト:クラシック音楽 Portal:クラシック音楽 |
即興曲第4番 嬰ハ短調 遺作 作品66は、ポーランドの作曲家フレデリック・ショパンが作曲したピアノ曲である。ショパンの4曲の即興曲のうち最初に作曲され、ショパンの死後1855年、友人のユリアン・フォンタナの手により『幻想即興曲』(Fantaisie-Impromptu)と題して出版された。
ショパンの作品のなかでもっともよく知られる作品のひとつである。
曲の構成[編集]
複合三部形式(A - B - A')による即興曲。ベートーヴェンの月光と調性、構成、雰囲気が類似している。
- Allegro agitato (A)
- 嬰ハ短調、序奏 + 三部形式(a - b - a) + 経過句。左手は1拍が6等分、右手は1拍が8等分されたリズムとなっている(ポリリズム)。
- トリオ Più lento - cantabile(フォンタナ版はLargo - Moderato cantabile)(B)
- 変ニ長調、序奏 + 三部形式(a - a' - b - a')。後半のb - a'は若干変化して繰り返される。
- (フォンタナ版はPresto)(A')
- 嬰ハ短調、三部形式。Aの再現。
- コーダ
- Bの主題が左手部分で回想され、静かに終わる。
公表の経緯[編集]
上述の通り、ショパンの生前には出版されなかった。ショパンは「自分の死後、この楽譜を燃やして処分して欲しい」と頼んだが、フォンタナが遺言にそむいて公表したとも言われる。
ショパンがこの曲を生前公表しなかった理由としては、モシェレスの即興曲 作品89[1]や、ベートーヴェンのピアノソナタ第14番「月光」第3楽章のカデンツァとの類似性などが考えられるが、定かでない。
複数のバージョン[編集]
この作品の筆写譜はいくつか現存しているものの、自筆譜は長らく見つかっていなかった。ところが、ショパンの弟子であるエステ公爵夫人に献呈された1835年の自筆譜が、1962年アルトゥール・ルービンシュタインによって発見された。これは筆写譜との相違が多く、よりあとに書かれたものとみられる。
この新しい自筆譜に基づくバージョンは、ウニヴェルザール出版社ウィーン原典版(エキエル編)、ポーランド音楽出版社ナショナル・エディション(エキエル編)、ペータース社原典版(今井顕、バドゥラ=スコダ編)、および同社の原典版ショパン全集新批判版(グラボフスキ、アーヴィング編)で見ることができる。
サンプル[編集]
ピアノ以外の楽器による幻想即興曲の演奏[編集]
ピアノ以外の楽器でこの曲を演奏するのは非常に困難であるが、下記の奏者がピアノ以外の楽器で演奏しているほか、アマチュアも演奏に挑んでいる。
- ティト・フランシア『オールモスト・インポッシブル』
- アルゼンチンのギタリスト。ガット・ギターでピアノのニュアンスを再現。
- ロス・インディオス・タバハラス『ワルツ・オブ・ザ・フラワーズ』
- ブラジルの兄弟デュオ。ガット・ギターによる演奏で兄が右手パート、弟が左手パートを担当。サムピックでの演奏。
- 古川忠義『ファンタジー』
- 日本のスタジオ系ギタリスト。ガット・ギター+生バンドによるボサノバ風のアレンジ。原曲とは調を変えている。
- ロン・サール『ニュー・ギター・ヒーローズ '92』
- グランジ&オルタナティヴ系ギタリスト。ヘヴィ・メタル調のバンドアレンジ。原曲とは調を変えている。
- 加茂フミヨシ『ノスタルジア』
- 日本のフュージョン系ギタリスト。ロックギター+ブレイクビーツによるテクノ風のアレンジ。8フィンガータッピング&スウィープピッキングによる演奏。
- 東京佼成ウインドオーケストラ『幻想即興曲』
- ニュー・サウンズ・イン・ブラスシリーズで登場。藤田玄播が編曲したもの。
その他の作品での利用[編集]
- ポピュラー音楽
- "I'm Always Chasing Rainbows" (1917年、ハリー・キャロル作曲、ジョゼフ・マッカーシー作詞) - 幻想即興曲の中間部の楽想が元になっている。
- 『宵闇の唄』 - Sound Horizonのアルバム「Märchen」収録曲
- 『キラーボール』(ゲスの極み乙女。) - 曲中に幻想即興曲のメロディが挿入されている。
- ドラマ
- 『白い滑走路』
- 『正しい王子のつくり方』
- 『MAGISTER NEGI MAGI 魔法先生ネギま!(テレビドラマ版)』
- 『美少女戦士セーラームーン(テレビドラマ版)』
- 『明日ママがいない』
- 『のだめカンタービレ(テレビドラマ版)』
- アニメ
- ゲーム
- 『パロディウス 〜タコは地球を救う〜』
- 『メガブラスト』
- 『金色のコルダ』(アニメ版も含む)
- 『クロックタワーゴーストヘッド』
- 『クロックタワー3』
- 『太鼓の達人』 - ロックアレンジが施されている。
- 『トラスティベル ~ショパンの夢~』
- 『メイドイン俺』
- 『ベヨネッタ』
- 『pop'n music 4』 - 収録曲「Concertare(ジャンル「クラシック4」)」の冒頭部分で使用されている。
- フィギュアスケート
- プロ野球
備考[編集]
フランス語から直訳すると、これは後置装飾なので即興幻想曲であり、音楽評論家の遠山一行はNHk-FMの「名演奏家を聴く アルフレッド・コルトー集」では即興幻想曲と発言して紹介していた。
脚注[編集]
外部リンク[編集]
- 幻想即興曲の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト。PDFとして無料で入手可能。
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