感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

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感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 感染症法
感染症予防法
感染症新法
法令番号 平成10年法律第114号
種類 医事法
効力 現行法
公布 1998年(平成10年)10月2日
施行 1999年(平成11年)4月1日
主な内容 感染症の予防及び感染症患者に対する医療に関する措置を定める
関連法令 検疫法
学校保健安全法
新型インフルエンザ等対策特別措置法
条文リンク e-Gov法令検索
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感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(かんせんしょうのよぼうおよびかんせんしょうのかんじゃにたいするいりょうにかんするほうりつ、平成10年法律第114号)は、感染症の予防及び感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本法律。略称は、感染症予防法感染症法感染症新法など。

本法は、従来の「伝染病予防法」、「性病予防法」、「エイズ予防法」の3つを統合し1998年に制定・公布され、1999年4月1日に施行された。その後の2007年4月1日、「結核予防法」を統合し、また人権意識の高まりから「人権尊重」や「最小限度の措置の原則」を明記するなどの改正がなされた。

感染症の分類[編集]

感染力や罹患した場合の重篤性などに基づき、感染症を危険性が高い順に一類から五類に分類する。

この他、人獣共通感染症への対策もある。また、動物の感染症には、狂犬病予防法家畜伝染病予防法の規制もあるが、狂犬病ブルセラ病など双方に指定されている病気もある。

感染症法上の感染症の分類
分類 根拠法令 感染症の名称 伝染病予防法
での分類
学校感染症の指定 検疫感染症 検疫法上の
停留期間
患者の
入国拒否
備考 感染症発生動向調査
一類
感染症
感染症法6条2項 1号 エボラウイルス病 第一種 検疫法第2条第1項 504時間

(検疫法施行令1条の3)

Yes 全数報告
2号 クリミア・コンゴ出血熱 第一種 検疫法第2条第1項 216時間

(検疫法施行令1条の3)

Yes
3号 痘瘡(天然痘) 法定伝染病 第一種 検疫法第2条第1項 408時間

(検疫法施行令1条の3)

Yes
4号 南米出血熱 第一種 検疫法第2条第1項 384時間

(検疫法施行令1条の3)

Yes
5号 ペスト 法定伝染病 第一種 検疫法第2条第1項 144時間

(検疫法16条3項)

Yes
6号 マールブルグ病 第一種 検疫法第2条第1項 240時間

(検疫法施行令1条の3)

Yes
7号 ラッサ熱 指定伝染病 第一種 検疫法第2条第1項 504時間

(検疫法施行令1条の3)

Yes
二類
感染症
感染症法6条3項 1号 急性灰白髄炎(ポリオ) 指定伝染病 第一種 No Yes
2号 結核 第二種 No Yes
3号 ジフテリア 法定伝染病 第一種 No Yes
4号 重症急性呼吸器症候群
(病原体がベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る)
第一種 No Yes 2006年(平成18年)12月8日公布の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」により一類感染症から変更[1]
5号 中東呼吸器症候群
(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る)
第一種 No Yes 平成27年1月21日から、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療 に関する法律(感染症法)において、二類感染症に指定。1月21日より前は、二類感染症相当の指定感染症に指定[2]
6号 鳥インフルエンザ
(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH5N1およびH7N9であるものに限る)
第一種 検疫法施行令1条 Yes なお、H5N1およびH7N9以外の鳥インフルエンザは四類感染症に指定されている。
三類
感染症
感染症法6条4項 1号 コレラ 法定伝染病 第三種 No No 2006年(平成18年)12月8日公布の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」により二類感染症から変更[1]
2号 細菌性赤痢 法定伝染病
(赤痢)
第三種 No No 2006年(平成18年)12月8日公布の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」により二類感染症から変更[1]
3号 腸管出血性大腸菌感染症 指定伝染病 第三種 No No
4号 腸チフス 法定伝染病 第三種 No No 2006年(平成18年)12月8日公布の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」により二類感染症から変更[1]
5号 パラチフス 法定伝染病 第三種 No No 2006年(平成18年)12月8日公布の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」により二類感染症から変更[1]
四類
感染症
感染症法6条5項 1号 E型肝炎 No No
2号 A型肝炎 No No
3号 黄熱 No No
4号 Q熱 No No
5号 狂犬病 No No
6号 炭疽症 No No
7号 鳥インフルエンザ
(H5N1およびH7N9を除く)
No No 鳥インフルエンザ(H5N1およびH7N9)は二類感染症に指定。
8号 ボツリヌス症 No No
9号 マラリア 検疫法施行令1条 No
10号 野兎病 No No
11号(政令で定めるもの) ウエストナイル熱 No No
エキノコックス症 No No
オウム病 No No
オムスク出血熱 No No
回帰熱 No No
キャサヌル森林病 No No
コクシジオイデス症 No No
サル痘 No No
ジカウイルス感染症 検疫法施行令1条 No 2016年2月15日追加
重症熱性血小板減少症候群
(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る)
No No 2013年3月4日追加
腎症候性出血熱 No No
西部ウマ脳炎 No No
ダニ媒介脳炎 No No
チクングニア熱 検疫法施行令1条 No
つつが虫病 No No
デング熱 検疫法施行令1条 No
東部ウマ脳炎 No No
ニパウイルス感染症 No No
日本紅斑熱 No No
日本脳炎 法定伝染病 No No
ハンタウイルス肺症候群 No No
Bウイルス病 No No
鼻疽 No No
ブルセラ症 No No
ベネズエラウマ脳炎 No No
ヘンドラウイルス感染症 No No
発しんチフス 法定伝染病 No No
ライム病 No No
リッサウイルス感染症 No No
リフトバレー熱 No No
類鼻疽 No No
レジオネラ No No
レプトスピラ症 No No
ロッキー山紅斑熱 No No
五類
感染症
感染症法6条6項 1号 インフルエンザ
(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く)
第二種 No No 鳥インフルエンザ(H5N1およびH7N9)は二類感染症、その他の鳥インフルエンザは四類感染症に指定。新型インフルエンザ等感染症は独立して類型化されている。 インフルエンザ定点
2号 ウイルス性肝炎
(E型肝炎及びA型肝炎を除く)
No No E型肝炎及びA型肝炎は四類感染症に指定。 全数報告
3号 クリプトスポリジウム症 No No
4号 後天性免疫不全症候群 No No
5号 性器クラミジア感染症 No No STD定点
6号 梅毒 No No 全数報告
7号 麻しん 第二種 No No
8号 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症 No No 基幹定点
(月単位)
9号(厚生労働省令で定めるもの) アメーバ赤痢 No No 全数報告
RSウイルス感染症 No No 小児科定点
咽頭結膜熱(プール熱) 第二種 No No
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 No No
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症 No No 2014年9月19日追加 全数報告
感染性胃腸炎 No No 2013年10月14日よりロタウイルスによる感染性胃腸は基幹定点に追加。 小児科定点
急性出血性結膜炎 No No 眼科定点
急性脳炎
(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)
No No 全数報告
クラミジア肺炎
(オウム病を除く)
No No オウム病は4類感染症に指定 基幹定点
(週単位)
クロイツフェルト・ヤコブ病 No No 全数報告
劇症型溶血性レンサ球菌感染症 No No
細菌性髄膜炎 No No 基幹定点
(週単位)
ジアルジア症 No No 全数報告
水痘(水疱瘡) 第二種 No No 2014年9月19日より「24時間以上の入院例」は全数報告に変更。 小児科定点
侵襲性インフルエンザ菌感染症 No No 2013年4月1日追加 全数報告
侵襲性肺炎球菌感染症 No No 2013年4月1日追加
侵襲性髄膜炎菌感染症 法定伝染病 No No 2013年4月1日「髄膜炎菌性髄膜炎」から変更
性器ヘルペスウイルス感染症 No No STD定点
尖圭コンジローマ No No
先天性風しん症候群 No No 全数報告
手足口病 No No 小児科定点
伝染性紅斑 No No
突発性発しん No No
播種性クリプトコックス症 No No 2014年9月19日追加 全数報告
破傷風 No No
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症 No No
バンコマイシン耐性腸球菌感染症 No No
百日咳 第二種 No No 2018年1月1日より小児科定点から全数報告に変更[3] 全数報告
風しん 第二種 No No 全数報告
ペニシリン耐性肺炎球菌感染症 No No 基幹定点
(月単位)
ヘルパンギーナ No No 小児科定点
マイコプラズマ肺炎 No No 基幹定点
(週単位)
無菌性髄膜炎 No No
薬剤耐性アシネトバクター感染症 No No 2014年9月19日より基幹定点(月単位)から全数報告に変更。 全数報告
薬剤耐性緑膿菌感染症 No No 基幹定点
(月単位)
流行性角結膜炎 第三種 No No 眼科定点
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) 第二種 No No 小児科定点
淋菌感染症 No No STD定点
新型インフル
エンザ等感染症
感染症法6条7項 1号 新型インフルエンザ[定義 1] 第一種 検疫法第2条第2項 240時間

(検疫法施行令1条の3)

Yes
2号 再興型インフルエンザ[定義 2] 第一種 検疫法第2条第2項 240時間

(検疫法施行令1条の3)

Yes
指定
感染症[定義 3]
感染症法
6条8項
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)[定義 4][注 1] 第一種 検疫法施行令1条 336時間

(検疫法施行令1条の3)

Yes 1年以内の政令で定める期間に限って(必要であれば更に1年以内に限り延長可)、政令で定めるところにより8条、3章から7章まで、10章、12章及び13章の規定の全部又は一部を準用する(7条1項・2項)。
新型コロナウイルス感染症を検疫法第34条の感染症の種類として、2020年(令和2年)2月14日から1年間指定[6]
新感染症[定義 5] 感染症法
6条9項
第一種 No Yes
注釈
  1. ^ 新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの
  2. ^ かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの
  3. ^ 既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、第三章から第七章までの規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの
  4. ^ 病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス2020年1月に中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたもの〉であるものに限る
  5. ^ 人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの

(注)届出を行う医療機関

  • 小児科定点 - 小児科定点医療機関(全国約3,000カ所の小児科医療機関)
  • インフルエンザ定点 - インフルエンザ定点医療機関(全国約5,000カ所の内科・小児科医療機関)及び基幹定点医療機関(全国約500カ所の病床数300以上の内科・外科医療機関)
  • 眼科定点 - 眼科定点医療機関(全国約700カ所の眼科医療機関)
  • STD定点 - 性感染症定点医療機関(全国約1,000カ所の産婦人科等医療機関)
  • 基幹定点 - 基幹定点医療機関(全国約500カ所の病床数300以上の医療機関)

指定感染症[編集]

  指定感染症の定義については前述表を参照。

これまでに指定感染症になった感染症としては鳥インフルエンザSARSMERSがあり、いずれも指定感染症になったあとに2類感染症として定められた[7]。2020年2月1日から1年間、新型コロナウイルス感染症が指定感染症に指定された[4][5]。病原性などを考慮すれば、2類感染症相当として扱われるとみられる[7]

指定感染症に指定されると、

  1. 強制隔離(強制入院)措置が可能になる
  2. 入院費が公費負担となる
  3. 届け出が義務となる。それにより、調査が容易となり、全数把握が正確になる。
  4. 濃厚接触者の把握が容易になる
  5. 医療従事者の感染リスクが減る(感染症対策が十分ではない病院を含めた全ての医療機関で対応するよりも、感染症指定医療機関に限定することで、医療従事者の感染リスクが下がる)[7]

他方、指定のデメリットとしては、

  1. 感染症指定医療機関に負荷がかかる(感染者が増えた場合)
  2. 感染症指定医療機関以外の病院での警戒が緩み、医療従事者の感染リスクが高くなる。
  3. 患者の自由な行動が制限される

ことなどが指摘されている[7]

医師の届出義務[編集]

同法12条は医師の届出義務を下記上段のとおり定めている。2019年の新型コロナウイルス感染症発生により新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令が制定され、同法12条を、新型コロナウイルス感染症について準用し、所要の読み替えを行った。従って、2020年2月4日からは、新型コロナウイルス感染症について下記下段のとおり適用されている[8]。なお医師報告についてはこの他、厚生労働省に感染症発生動向調査事業実施要綱が設けられている。

(他の感染症について適用の場合)
第十二条 医師は、次に掲げる者を診断したときは、厚生労働省令で定める場合を除き、第一号に掲げる者については直ちにその者の氏名、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を、第二号に掲げる者については七日以内にその者の年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。

一 一類感染症の患者、二類感染症、三類感染症又は四類感染症の患者又は無症状病原体保有者、厚生労働省令で定める五類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者及び新感染症にかかっていると疑われる者
二 厚生労働省令で定める五類感染症の患者(厚生労働省令で定める五類感染症の無症状病原体保有者を含む。)

(新型コロナウイルス感染症について適用の場合)

第十二条 医師は、新型コロナウイルス感染症の患者又は無症状病原体保有者を診断したときは、厚生労働省令で定める場合[9]を除き、直ちにその者の氏名、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。

都道府県知事による措置[編集]

都道府県知事は以下の措置ができる。保健所設置市は市長が、特別区は区長がする(64条1項)。

健康診断[編集]

一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症等の患者に対し、都道府県知事は健康診断の勧告ができ(17条1項)、感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由があるにもかかわらず勧告に従わない場合には当該職員に健康診断を行わせることができる(17条2項)。

就業制限[編集]

一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症等の患者、無症状病原体保有者について医師の届出があった場合、都道府県知事は感染症を公衆にまん延させるおそれがある業務として感染症ごとに厚生労働省令で定められた業務(食品関係や接客業など)への就労制限を通知することができる(18条1項)。この通知を受けた場合には厚生労働省令で定める一定期間において就業が制限される(18条2項)。

入院[編集]

都道府県知事は一類感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者・保護者に対して医療機関(原則として特定感染症指定医療機関か第一種感染症指定医療機関)に入院を勧告することができる(19条1項)。この勧告を受けた者が勧告に従わないときは、当該勧告に係る患者を医療機関(原則として特定感染症指定医療機関か第一種感染症指定医療機関)に入院させることができる(19条3項)。これらの規定は二類感染症や新型インフルエンザ等感染症の患者についても準用されており(26条)、この場合の医療機関は原則として特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関、第二種感染症指定医療機関となる。

その他の措置[編集]

都道府県知事は、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症又は新型インフルエンザ等感染症などの発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは次のような措置を講じることができる。

  • 消毒(27条)
  • ねずみ・昆虫等の駆除(28条)
    一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症を対象とする。
  • 病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある物件の移動の制限・禁止、消毒、廃棄(29条)
  • 病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある死体の移動の制限・禁止、火葬、埋葬(30条)
    一類感染症、二類感染症、三類感染症、新型インフルエンザ等を対象とする。
  • 感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある水の使用・給水の制限・禁止(31条)
    一類感染症、二類感染症、三類感染症を対象とする。
  • 病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある建物への立入りの制限・禁止、封鎖(32条)
    一類感染症を対象とする。
  • 交通の制限・遮断(33条)
    一類感染症のまん延を防止するために緊急の必要がある場合を対象とする。

病原体等の分類[編集]

感染症の病原体及び毒素は、6条19〜22項により、一種病原体等から四種病原体等までの特定病原体等と、特定病原体等に該当しない病原体等に分類される。この分類に基づいて、標準物質等としての所持、輸入、譲渡し及び譲受け、運搬、帳簿管理を制限し(56条の3〜38)、事故による疫病発生生物兵器としての利用を防止する。

なお、後述「BSLx」の表記は、国立感染症研究所病原体等安全管理規定別表3[10]に基づくバイオリスクグループ分類である。

一種病原体等[編集]

病原性を有し、国民の生命及び健康に「極めて重大な」影響を与えるおそれがある以下の病原体等。

  1. アレナウイルス属ガナリトウイルス、サビアウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス及びラッサウイルス[11] (BSL4)
  2. エボラウイルス属アイボリーコーストエボラウイルス、ザイールウイルス、スーダンエボラウイルス及びレストンエボラウイルス[11] (BSL4)
  3. オルソポックスウイルス属バリオラウイルス(別名痘そうウイルス)[11] (BSL4)
  4. ナイロウイルス属クリミア・コンゴヘモラジックフィーバーウイルス(別名クリミア・コンゴ出血熱ウイルス)[11] (BSL4)
  5. マールブルグウイルス属レイクビクトリアマールブルグウイルス[11] (BSL4)

所持、輸入、譲渡し及び譲受けは一部の例外を除いて禁じられる。運搬には都道府県公安委員会への届出が必要である。所持者には帳簿を備える記帳義務が課せられる。

二種病原体等[編集]

病原性を有し、国民の生命及び健康に「重大な」影響を与えるおそれがある以下の病原体等。

  1. エルシニア属ペスティス(別名ペスト菌[11] (BSL3)
  2. クロストリジウム属ボツリヌム(別名ボツリヌス菌[11] (BSL2)
  3. ベータコロナウイルス属SARSコロナウイルス (BSL3)
  4. バシラス属アントラシス(別名炭疽菌[11] (BSL3)
  5. フランシセラ属ツラレンシス種(別名野兎病菌)亜種ツラレンシス及びホルアークティカ[11] (BSL3)
  6. ボツリヌス毒素(人工合成毒素であって、その構造式がボツリヌス毒素の構造式と同一であるものを含む。)[11] (BSL2)

所持、輸入、譲渡し及び譲受けには厚生労働大臣の許可が必要である。運搬には都道府県公安委員会への届出が必要である。所持者には帳簿を備える記帳義務が課せられる。

三種病原体等[編集]

病原性を有し、国民の生命及び健康に影響を与えるおそれがある以下の病原体等。

  1. コクシエラ属バーネッティイ (BSL3)
  2. コクシジオイデス属イミチス (BSL3)
  3. シンプレックスウイルス属Bウイルス (BSL3)
  4. ハンタウイルス属アンデスウイルス、シンノンブレウイルス、ニューヨークウイルス、バヨウウイルス、ブラッククリークカナルウイルス及びラグナネグラウイルス (BSL3)
  5. ハンタウイルス属ソウルウイルス、ドブラバーベルグレドウイルス、ハンタンウイルス及びプーマラウイルス (BSL3)
  6. フレボウイルス属SFTSウイルス (BSL3)
  7. ブルセラ属アボルタス(別名ウシ流産菌)、カニス(別名イヌ流産菌)、 ブルセラ症、スイス(別名ブタ流産菌)、メリテンシス(別名マルタ熱菌) (BSL3)
  8. ヘニパウイルス属ニパウイルス (BSL3)
  9. ヘニパウイルス属ヘンドラウイルス (BSL3)
  10. ベータコロナウイルス属MERSコロナウイルス (BSL3)
  11. マイコバクテリウム属ツベルクローシス(別名結核菌)(イソニコチン酸ヒドラジド及びリファンピシンに対し耐性を有するものに限る。) (BSL3)
  12. リッサウイルス属レイビーズウイルス(別名狂犬病ウイルス) (BSL3)

所持、輸入には厚生労働大臣への届出が必要である。譲渡し及び譲受けに関する規定はない。運搬には都道府県公安委員会への届出が必要である。所持者には帳簿を備える記帳義務が課せられる。

四種病原体等[編集]

病原性を有し、国民の健康に影響を与えるおそれがある以下の病原体等。

  1. インフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルス(血清亜型がH2N2H5N1H7N7H7N9であるもの(新型インフルエンザ等感染症の病原体を除く。)又は新型インフルエンザ等感染症の病原体に限る。) (BSL3)
  2. エシェリヒア属コリー(別名大腸菌)(腸管出血性大腸菌に限る。) (BSL2)
  3. エンテロウイルス属ポリオウイルス (BSL2)
  4. クリプトスポリジウム属パルバム(遺伝子型が一型又は二型であるものに限る。) (BSL2)
  5. サルモネラ属エンテリカ(血清亜型がタイフィ又はパラタイフィAであるものに限る。) (BSL3)
  6. 志賀毒素(人工合成毒素であって、その構造式が志賀毒素の構造式と同一であるものを含む。) (BSL2)
  7. シゲラ属(別名赤痢菌)ソンネイ、デイゼンテリエ、フレキシネリー及びボイデイ (BSL2)
  8. ビブリオ属コレラ(別名コレラ菌)(血清型が01又は0139であるものに限る。) (BSL2)
  9. フラビウイルス属イエローフィーバーウイルス(別名黄熱ウイルス) (BSL3)
  10. フラビウイルス属ウエストナイルウイルス (BSL3)
  11. フラビウイルス属デングウイルス (BSL2)
  12. フラビウイルス属ジャパニーズエンセファリティスウイルス(別名日本脳炎ウイルス) (BSL2)
  13. ベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る)(2019新型コロナウイルス )(BSL3)
  14. マイコバクテリウム属ツベルクローシス(三種病原体等第二号に掲げる病原体を除く。) (BSL3)

所持、輸入、譲渡し及び譲受け、運搬、帳簿管理に関する規定はない。

特定病原体等に該当しない病原体等[編集]

本法において特定病原体等に掲げられていない病原体等全般。つまり、病原性を有し、国民の健康に影響を与えるおそれがあるとはいえない病原体等。所持、輸入、譲渡し及び譲受け、運搬、帳簿管理に関する規定はない。

感染症指定医療機関[編集]

以下、平成31年4月1日現在[12]

特定感染症指定医療機関[編集]

第一種感染症指定医療機関[編集]

  • 一類、二類感染症の患者に対する医療機関として都道府県知事が指定する。
  • 全都道府県に計55医療機関(計103床)ある。

第二種感染症指定医療機関[編集]

  • 二類感染症の患者に対する医療機関として都道府県知事が指定する。
  • 全都道府県に計351医療機関(計1,758床)ある。結核病床(稼働病床)を有するのは184医療機関(計3,502床)。

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 2020年(令和2年)2月1日から1年間指定[4][5]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 感染症のページ(青森県)
  2. ^ 中東呼吸器症候群(MERS)に関するQ&A 厚生労働省
  3. ^ 百日咳の全数届出への移行について”. 愛知県衛生研究所 企画情報部. 2018年1月15日閲覧。
  4. ^ a b 新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令(PDF)”. 官報 (2020年1月28日). 2020年3月22日閲覧。
  5. ^ a b ウィキソース新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令令和2年政令第11号/2020年1月28日公布・同年2月1日施行)
  6. ^ 新型コロナウイルス感染症を検疫法第34条の感染症の種類として指定する等の政令”. インターネット版 官報 (2020年2月13日). 2020年2月14日閲覧。
  7. ^ a b c d 忽那賢志https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200127-00160618/ 新型肺炎】指定感染症になるとどうなる?]1/27(月) 23:02
  8. ^ これはあくまで、新型コロナウイルス感染症についてのものであり、同法12条1号・2号と同法施行規則第4条1号~8号の規定自体を改正するものではない。
  9. ^ 感染症法施行規則を参照。
  10. ^ 病原体等の名称と疾患名称の対照表 感染症法に基づく特定病原体等の管理規制について - 厚生労働省
  11. ^ a b c d e f g h i j 米国CDCが作成した生物兵器として利用されるリスクの高い病原体のリストにおいて、最も優先度、危険度の高いカテゴリーAに分類された病原体である。
  12. ^ 感染症指定医療機関の指定状況(平成31年4月1日現在)|厚生労働省” (日本語). www.mhlw.go.jp. 2020年3月22日閲覧。

関連項目[編集]

ウィキソースには、新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の原文があります。