成層不安定

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成層不安定(せいそうふあんてい)とは、大気成層状態が不安定であることを表す気象学の用語。一般的には「大気の状態が不安定」と言い換え、天気予報などではより分かりやすい「不安定な天気」または単に「不安定」と言い換えることが多い。

目次

概説

成層不安定な大気を不安定成層(instable stratification)と言い、成層が安定した大気を安定成層(stable stratification)と言う。大気はふつう、高度が上昇するとともに一定の割合(100mにつき約0.6度程度)で気温が下がり、湿度は少しづつ下がる。長期間大気の調査をするとこれが平均的な状態だが、これが変わると、不安定や安定となる。

安定成層のもとでは、天候の変化は緩やかである。不安定成層のもとでは、大気の対流が発生しやすくなり雲ができることがある。成層の不安定度が高いと、積乱雲が発達しやすく、短時間強雨突風、急激な温度湿度気圧の変化などが起きやすい。

成層不安定には、いくつかの種類がある。

大気の地上に近い層の温度が高く、上空の温度が低いとき、条件付不安定や絶対不安定という状態になる。温度差が大きいほど不安定の度合いは大きい。風の作用で地上の空気が持ち上げられ、その空気中で雲が発生し、更に持ち上げられると、対流が成長し雲も成長する。上空に寒気がやってきたとき、地上が晴天などによって高温となったときになりやすい。

大気の地上に近い層の湿度が高く、上空の湿度が低いとき、対流不安定(または潜在不安定、ポテンシャル不安定、熱的不安定とも)という状態になる。湿度差が大きいほど不安定の度合いは大きい。大気が対流不安定のときに風の作用で空気が持ち上げられると、条件付不安定や絶対不安定の度合いが大きくなる。気流の影響で、地上に湿った空気(湿暖気流)がやってきたとき、上空に乾いた空気がやってきたときになりやすい。

ただし、条件付不安定や対流不安定であっても、対流が発生して発達するかどうかは、その大気中を流れる風(多くの場合上昇気流)に左右される。風が対流のきっかけを作り、風が無ければ対流が起こらないからである。

対流不安定

相当温位(equivalent potential temperature)が高度の上昇とともに低下する大気では、対流活動が活発になる。このような状態を対流不安定(convective instability)という。相当温位が高いと湿度が高い。従って、大気の下層(地表から上空約1,500m付近まで)が湿っているほど、中層(上空約5,000m付近まで)や上層(上空約5,000m以上)が乾燥しているほど、対流不安定の度合いが大きくなる。

また、対流不安定の大気では、擾乱の振幅によって、大気の安定度が異なる状況が発生する。これを潜在不安定(latent instability)という。

潜在不安定は、基本となる大気場が条件付不安定でかつ空気塊が飽和していないときに起こるものである。微小振幅の擾乱では空気塊が飽和せず、対流が成長しないので大気は安定しているが、有限振幅の擾乱では空気塊が飽和して、対流が成長するので大気が不安定になる。微小振幅の擾乱のままであれば安定することから、ポテンシャル不安定(potential instability)とも言う。また、熱的不安定(thermal instability)とも言う。

対流有効位置エネルギー(CAPE)や対流抑制(CIN)は潜在不安定の指標として用いられる。CAPEの値が大きいほど対流が起こりやすく大気が不安定であることを表す。また、CAPEとCINの値を比較して、CAPEが大きい場合は真性潜在不安定、CINが大きい場合は偽似潜在不安定と言う。実際に大気の不安定度を考える際はこれらに加えていくつかの指標を参考にする。

条件付不安定

水蒸気を含んだ大気(湿潤大気)が断熱上昇すると、水蒸気が凝結昇華してなどになる。凝結・昇華の際には潜熱が放出されるが、通常の大気では雨や雪が重力によって落下し、上昇した大気からは分離されてしまう(重力分離)。次にその大気が断熱下降する際、重力分離が無ければ雨や雪が蒸発・昇華する際に潜熱を奪って大気はもとの温度に戻るが、重力分離があると潜熱が空気の中に保存されてしまうため、温度変化が大きくなってしまう。

この変化をエマグラムで見ると、断熱上昇時は湿潤断熱温度勾配をたどり、断熱下降時は、重力分離が無ければ湿潤断熱温度勾配、あれば乾燥断熱温度勾配をたどる。前者は可逆変化、後者は不可逆変化であり、通常の大気は後者であるため、温度の上昇によって対流が成長し、大気が不安定化する。

この見方では、エマグラムにおける基本となる大気場の温度勾配によって、対流の安定性は3つに分類される。

  • 乾燥断熱温度勾配よりも大きい - 絶対不安定(absolute instability)
  • 湿潤断熱温度勾配と湿潤断熱温度勾配の中間 - 条件付不安定(conditional instability)
  • 湿潤断熱温度勾配よりも小さい - 絶対安定(absolute stability)

絶対不安定の状態では、上昇気流は周囲よりも高温、下降気流は周囲よりも低温となるので、ともに対流を促進し限りなく対流が成長する。一方、絶対安定の状態はその逆で、ともに対流を抑制し対流が次第に解消される。

条件付不安定の状態では、上昇気流も下降気流も周囲よりも高温となるので、上昇気流は対流を促進し、下降気流は対流を抑制する。鉛直流(上昇気流と下降気流の総称)の符号(上か下か)という条件によって対流の成長が左右されるので、条件付不安定と言う。地球の対流圏のほとんどは条件付不安定である。

条件付不安定のうち、小規模な対流が多数集まって、それらの相互作用により大きな対流までもが成長するものを第2種条件付不安定(CISK)と言う。これ以外の、大きな対流が成長しないものを第1種条件付不安定(SIFK)と言う。CISKの主なものが熱帯低気圧であり、熱帯地方でよく起こる。

成層不安定時の天気

成層不安定時の典型的な気象、雷雨

強い成層不安定の状態が続くと、積乱雲が発達して、短時間強雨、雷、突風、急激な温度・湿度・気圧の変化などの特徴的な気象現象が発生する。これらの多くは局地現象といって、現象は激しく、現象が続く時間は短い。

典型的な成層不安定時の現象である夕立の例を挙げれば、ほんの1~2時間の間に、晴れた状態から急に曇りになり、雷が鳴り始め、冷たい風が吹き、大粒の雨が降り出して急激に雨が強まったかと思えば、降ったり止んだりを繰り返し、やがて曇りになり、次第に晴れてくる。

夕立は不安定成層の範囲が狭いので、雨風などの現象が続くのは数時間である。一方、不安定成層の範囲は大小さまざまであり、細長い前線が長時間かかり続けるなどすると、現象が数日続くこともある。

成層不安定の際には、積雲積乱雲乱層雲ができやすく、不安定な状態が強まっているときにはこれらの雲が次第に成長していく。そのため、特別な気象観測の道具などが無くても、こういった空の状態から成層不安定による天候の急変を察知することが可能である。

大気の上下で気温の差が大きいほど、また、(特に下層の)大気に含まれる水蒸気の量が多いほど、成層不安定になりやすい。これは、前節で説明した対流の成長過程に関係している。

条件付不安定の状態では上昇気流は対流を促進するが、上昇気流は普通、空気塊の温度が上昇に伴って周囲と同じ温度まで冷やされるまで上昇し続ける。ここで、空気塊の温度が高いほど、上昇により冷やされる時間が長くかかり、高く上昇する、つまり強い上昇気流になり、より大きな対流を作り出す。また、空気塊の温度が高いと、飽和水蒸気量が多くなるため、含むことができる水分の量も多くなる。含まれる水分が多ければ、空気塊の上昇時に凝結して(雨や雪となって)重力分離する量が増え、その後の下降時に残される潜熱の量も増える。つまり、(上昇→下降という一連の)対流の前後での気温の上昇幅も大きくなり、先に述べた空気塊の温度をさらに高くして、対流をより促進する結果となる。

このような、大きな気温差や多湿の環境を作り出しやすいコンディションは、前線が通過するとき、上空に寒気が流入したとき、湿暖流(湿暖気流)が流入したとき、日差しが強く地上の気温の上昇が著しいときなどである。

また、成層不安定の起こりやすさは地形にも関係している。山沿いでは山谷風で上昇気流が発生するため、対流のきっかけができやすい。また、海陸風の影響で、陸地では日中の特に夕方ぐらいに上昇気流が起こりやすく、海上では夜中に上昇気流が起こりやすい傾向がある。

成層不安定度を示す指標にCAPEやCINなどがあるが、これらは不安定の度合いを示すもので、実際の対流の強弱とは異なる場合があり、これらのみを用いて予報を行うと誤りにつながる。気象予報では、対流や荒天の状態をより実態に近い指標を用いて表現し、予報に利用している。雷雨の有無を判断できるショワルター安定指数(SSIまたはSHOW)、雷雨の度合いを判断できるリフティド指数(LIFT)、雷の発生確率を判断できるK指数(KINX)、雷雨の規模を判断できるトータルトータルズ指数(TOTAL)などがある。

出典

関連項目

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