手ぶれ補正

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手ぶれ補正(てぶれほせいきこう 英 image stabilization)とは、カメラデジタルカメラビデオカメラでの撮影、および双眼鏡で生じる、手ぶれによる写真の乱れを軽減させることである。

目次

ケーススタディ

手振れ補正の原理は機器の種類によって大きな差はないが、目的や使用法には若干の違いがある。

静止画撮影

シャッターを押す時に身体が動いてしまい、それによって生じた画像のぶれが手ぶれである。なお、ピントが合っていても生じるためピンボケとは異なる。一般的に、手ぶれは、ピンボケと並び、失敗写真の最大の理由とされている。

物理的には、露光時間の間にカメラ中の露光面が移動することによって、その露光面に当たる光が変化することによって生じる。直接的には、カメラの動きが原因であるが、そのカメラを支えるものは通常「手」であるため手ぶれと呼ばれる。実際、片手で撮影するなど、撮影者の問題であることが多く、撮影時の姿勢や持ち方によってある程度は手ぶれを抑えることができる。しかしながら、撮影者が十分に気をつけていても、人間はカメラを完全に静止させることができないためにわずかな手ぶれは発生してしまう。

また、後述するように、周囲が暗い場合などシャッタースピードが十分に確保できない場合、手ぶれを防ぐのは難しい。そこで手ぶれを防ぐには、三脚などを用いてカメラを固定したり、両手でカメラを持つようにする必要がある。

シャッタースピードが速い場合、つまり露光時間が短い場合には、カメラの動きが殆ど撮影画像に影響を与えないため手ぶれが生じることは少ない。また、レンズの焦点距離が長くなればなるほど、カメラの僅かな動きであっても露光面に当たる光には大きな動きが生じるようになるから、焦点距離が長いとそれだけ手ぶれも生じやすい。

一般的には、「使用レンズの焦点距離分の1のシャッタースピード」が手ぶれしない限界の目安と言われている(ただし、これは基本的に35mmフィルムカメラでの場合であり、デジタルカメラなど他のカメラではこの限りではない)。つまりは、焦点距離が長い望遠レンズでは高速なシャッタースピードが要求され、たとえば、300mm望遠レンズでは、目安として1/300秒以上のシャッタースピードが必要である。但し、焦点距離が短くても絞り値が大きくなればシャッタースピードが遅くなるために、手ぶれが生じやすくなる。

補正効果と注意点

手ぶれ補正を使用した場合、一般的には「シャッタースピードに換算しておおよそ2~3段分」の効果があるといわれている(300mm望遠レンズならば大体1/60秒相当で手持ち撮影が可能)。絞り開放時ではもちろんのこと、絞った状態でもブレを軽減させて撮影する事が可能である。

補正によって完全に手ぶれを除去はできない。また、被写体の動き(特にスポーツ撮影時の激しい動きや長時間露光時の被写体の動き)による被写体ぶれには通用しない。もちろん手ぶれ補正の限界を超えた低速シャッタースピードでは効果は得られない。手ぶれ補正はあくまで有効な補助機能であると考え、写真の基本として手ぶれを起こさないしっかりとした構えをとって撮影する、三脚を使う、高感度フィルムを使用(デジタルカメラの場合は高感度域に設定)する事(これは被写体ぶれに対しても有効)、といったことが手ぶれを抑える一番の対策であるのは言うまでもない。

動画撮影

動画撮影においては、手持ちしたカメラの不要な揺れを言い、視聴時には画面全体が揺れることから不快な映像となる。特に倍率を上げて望遠撮影している時には顕著に現れる。家庭用ビデオカメラで、ビューファインダーを用いずに液晶表示パネルを見ながら撮影する場合は、視聴に用いるテレビに比べて画面サイズが小さいため、撮影者には気にならない(気づかない)場合も多い。顕著なものは左官職人が壁を塗る腕の動きから「壁塗り映像」と呼ばれる。ENGで使用されるビデオカメラは大きさと重量から肩乗せ式であるが、その保持スタイルは不要な揺れを少なくする事にも寄与している。静止画撮影と同じく、カメラの持ち方を工夫したり三脚を用いることで軽減できる。

また、バネやジャイロを使って手ぶれを防ぐ「ステディカム」が、映画撮影やスポーツ中継などで使われている。

双眼鏡

双眼鏡では手振れ問題により、体感的な解像度低下や疲れ易さの問題が出る。

技術的にはカメラと同様であり(デジタル式は使えないが)、国内メーカーではキヤノンがスチルカメラの技術を応用した製品を出している。

メカニズム

手ぶれ補正にはデジタルカメラ等における記録時に受光素子から受け取った画像データから計算を行い補正をかける電子式と、物理的に光軸を調整する光学式が存在する。

光学式は初期はレンズシフト方式しかなかったため、レンズシフト方式のみ光学式と呼ばれる事が定着しているが、厳密にはレンズシフト方式もイメージセンサーシフト方式も光学式である。

電子式

デジタルカメラやデジタルビデオカメラで搭載されることが多い。撮影可能領域を一定のサイズに狭め、撮影の際にバッファメモリに画像を読み込み、最初に撮影した画像とそれ以降に撮影した画像とを比較、そのはみ出し量を演算し、撮影可能領域を自動的にずらして撮影し記録する。撮影可能領域がイメージセンサーの内の一定部分しか使われないため、イメージセンサーの能力を完全に引き出せないのと、動画には比較的効果があるが、静止画には有効ではないという欠点がある。静止画用の電子式手ぶれ補正には他に撮影後の画像を加工(レタッチ)する事によって見かけ上、ブレを少なく見せるタイプのものもあり、共に電子式、又はデジタル式手ぶれ補正と呼ばれる。この方式もノイズの強調などの画像の劣化を招く。

携帯電話の静止画デジタル式手ぶれ補正技術はNECN902iにはじめて搭載された。

携帯電話向けの静止画補正技術の代表的な例としては、東京大学出身のエンジニアを中心に設立された株式会社モルフォが開発したPhotoSolidがある。N902iSに初めて搭載され、以後、パナソニック製、シャープ製の機種にも搭載された。N905iからは被写体ぶれにも対応したPhotoSolid 2.0が搭載されている。

光学式

レンズシフト方式

写真レンズ内に振動ジャイロ機構を備えた補正レンズを組み込み、ブレを打ち消す方向に補正レンズを動かす事によって光軸を補正する。これにより受光面(フィルムやイメージセンサー)に到達する光の動きを抑えることで手ぶれを軽減させる。電子式手振れ補正よりも画質劣化が少ない。キヤノンのIS(Image Stabilizer)方式、ニコンのVR(Vibration Reduction)方式(COOLPIX S700など一部の機種を除く)、ソニーのSuper Steady Shot方式(Cyber-Shot)、パナソニックのMEGA OIS方式、シグマのOS(Optical Stabilizer)方式、タムロンのVC(Vibration Compensation)方式などがこの方式を用いている。

ニコンが1994年に発売した、光学式手ぶれ補正方式を採用した世界初の35mmコンパクトカメラ「ニコンズーム700VRQD」はこの方式。

これに先がけてキヤノンは1992年にバリアングルプリズム内蔵ビデオレンズ「T10G-RF」を発売、これを搭載した一般向けビデオカメラ「ムービーボーイE1」を1994年に市販した。そして1995年には一眼レフカメラ「EOS」用望遠ズームレンズにIS方式として用いた。また、同年はキヤノン製双眼鏡にも同機構が組み込まれるなど、手ぶれ補正機構が幅広く利用される、その幕開けとなった。

コンパクトデジタルカメラでは、オリンパス2000年8月にCAMEDIA C-2100 UltraZoomでキヤノン製の手ぶれ補正機構を搭載。キヤノンもこれに続いてPower Shot Pro 90ISをリリースした。

パナソニックは1988年に民生機としては世界初となる光学式手ぶれ補正機構を搭載したビデオカメラ「PV-460」(北米向け品番 国内には翌1989年にNV-M900として発売)を世に送り出すも、レンズ鏡筒全体を動かすのでどうしても大型化してしまい、小型化のため電子式に転換せざるをえなかった。しかし、電子式のシステム上の限界や画質向上のため再度光学式に挑み、1999年によりコンパクト化した光学式手ぶれ補正機構を搭載したデジタルビデオカメラ「NV-DS9」を発売、この技術がその後のパナソニック製デジタルカメラにも用いられた。

家庭用ビデオカメラとしてはソニーが1992年にハンディカムCCD-TRV900で成功している。これはレンズと同じ屈折率の液体を2枚のレンズではさみ、蛇腹状に動かすことによって撮像体への投影を補正する方式で、プリズム効果による色分解が出ないぎりぎりのやり方だった。

一眼レフカメラ用レンズやコンパクトデジタルカメラの中でも大型のものに組み込まれることが多いが、2003年にパナソニックが小型コンパクトデジタルカメラ「DMC-FX5」に同クラスとしては初となる手ぶれ補正機構を搭載して以降、2005年にはソニーが、2006年にはニコンとキヤノンが、いずれも小型コンパクトデジタルカメラなどで、より小型化された補正レンズが組み込まれたものを販売している。一般的に補正機構が大きくなってしまうため、レンズ自体が大きく高価になったが、現在では克服され、小型コンパクトデジタルカメラにも搭載されている。

フィルムカメラでも手ぶれ補正効果が得られる、ファインダーの画像の揺れも補正され撮影しやすい、レンズごとに補正機構を最適化できるので高い補正効果を期待できるという利点もあるが、補正用レンズや駆動系を追加で組み込む結果、レンズが大きく重くなる・画質が若干劣化するほか、補正機構をレンズごとに重複購入することになるため総コストが高くなるという欠点がある。

イメージセンサーシフト方式

振動ジャイロ機構で手ぶれを感知し、CCDなどのイメージセンサー(撮像素子)を手ぶれに応じて移動させる事によって光軸を正確に当てる方式。

当時のミノルタ(現コニカミノルタ)がAnti-Shake方式として、2003年に発売した「DiMAGE A1」に初めて搭載した。その後リコー2005年に発売した「Caplio R3」に、またペンタックス2006年に発売した「Optio A10」にはSR(Shake Reduction)方式という名称で、オリンパスも「μ750」で、2007年には富士フイルムが「FinePix F50fd/Z100fd/S8000fd」で、ニコンが「COOLPIX S700」にVR方式として、共にほぼ同様のシステムを搭載した。

デジタル一眼レフではコニカミノルタが「α-7 Digital」にAnti-Shake方式の機構を搭載、ソニーがコニカミノルタより開発/販売を受け継いだαシリーズでは、名称がAnti-ShakeからSuper Steady Shotへ変更され、更に補正精度等が強化されている。ペンタックスも「K100D/K10D」にSR方式の補正機構を組み込んだ他、オリンパスも「E-510」に「IS(IMAGE STABILIZATION)」を組み込んでいる。

本体に補正機構を組み込む事で、レンズ自体に補正レンズを組み込む必要が無く、一眼レフカメラなどレンズ交換式カメラにおいては既存のレンズをそのまま利用する事が可能、手ぶれ補正の作動によって画質が全く低下しないというメリットがある。この機構を応用して、起動時にイメージセンサーを微振動させ埃を弾き飛ばす「ほこり除去機構」を備えた機種も出てきている。

欠点としては、前述の光学式手ぶれ補正に比べた場合に、特に望遠レンズでファインダー内の像には効果がないこと、すべてレンズで最高の効果を得るためにはレンズごとに最適値が異なる駆動パターンをデータとしてボディーに用意しておく必要があること(データのないレンズでは暫定値での制御となり補正効果が低下する。)が挙げられる。またイメージセンサーが大きくなるとその可動領域を確保するために設計が難しくなるという側面がある。

レンズユニットスイング方式

振動ジャイロセンサーで手ぶれを感知し、イメージセンサー(撮像素子)を含むレンズユニット全体を手ぶれに応じて微小回転させることによって撮影光軸を一定に保つ方式。

2005年コニカミノルタ社が、コンパクトデジタルカメラ向けの新型Anti-Shake機能であるレンズユニットスイング式手ぶれ補正を採用したDiMAGE X1を発売した。

他の手ぶれ補正方式、すなわちイメージセンサーと被写体像の位置関係を補正する方式とは補正の原理が異なり、使用者の手によってカメラ外装に与えられる手ぶれ振動をレンズユニットまで伝えないようにする、いわゆる免振システムの一種である。

イメージセンサーと一体化したレンズユニット全体をカメラ内部で手ぶれに逆らう方向に微小回転させるので、イメージセンサーまでを含めた光学系全体の要素位置関係を崩すことなく手ぶれ補正できる。

原理的には極めて単純な方式であるため、他の方式のような特殊な専用光学設計や画像処理回路などを必要とせず、手ぶれ補正に伴うノイズ強調・画素数ロス・光学収差の劣化対策などの設計的な諸問題とも無縁である。

しかし、レンズユニットが大型である場合は機構の大型化や消費電力増大などの問題が大きく、またレンズユニットの一部が外部に突出している製品には適用しにくいという使用上の制約があるため、一眼レフタイプやレンズユニット繰り出しタイプなどのカメラ形態には適さない。

このため、屈曲光学系を採用したレンズユニット完全内蔵タイプのコンパクトデジタルカメラにしか搭載できず、製品としてもコニカミノルタ社のDiMAGE X1のみとなっている。

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