新九郎、奔る!

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新九郎、奔る!
ジャンル 歴史漫画
漫画
作者 ゆうきまさみ
出版社 小学館
掲載誌 月刊!スピリッツ
レーベル ビッグコミックススペシャル
発表号 2018年3月号 -
巻数 既刊2巻(2019年4月12日現在)
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 漫画

新九郎、奔る!』(しんくろう、はしる)は、ゆうきまさみによる日本歴史漫画。後に北条早雲となる伊勢新九郎を主人公として、その生涯を描く[1][2]

月刊!スピリッツ』(小学館)2018年3月号(2018年1月27日発売)[1][2]より連載中。

単行本第1巻は2018年8月9日に発売されたが、ゆうきの代表作の一つである『究極超人あ〜る』の約31年ぶりの新刊となる10集と同日発売となった[3]

本作では早雲の出自・生年について、近年の研究で通説となっている備中伊勢氏の出自で康正2年(1456年)生まれ説を採用している。父親については通説通り伊勢盛定としているが、母親については伊勢貞国の娘ではなく『北条五代記』に準じて横井掃部助の娘としている。

あらすじ[編集]

時は明応2年(1493年)、伊豆堀越御所に討ち入る一人の男がいた。その名は伊勢新九郎盛時。室町幕府奉公衆として、幕命により足利茶々丸の首を獲りに来た新九郎だが、その心中では一つの決意を固めていた。「明日から、俺の主は俺だ!」

遡ること27年前、文正元年(1466年)8月。宇治の大道寺家で育てられていた少年千代丸(のちの新九郎)は、父の伊勢盛定の手元に引き取られることとなり、父の一家(備前守家)が同居する京の伊勢宗家(伊勢守家)の屋敷に住むことになる。幕府政所執事を世襲する宗家当主伊勢貞親(盛定の義兄)は、将軍足利義政を養育して父と信任され、大名の家督にも介入する強大な権力を握っていた。千代丸は幕政を巡って争う大人たちの「戦さ」を垣間見る。しかし、ほどなく文正の政変が発生。伊勢貞親・盛定は失脚し、都を追われる。父貞親に代わって当主となった伊勢貞宗のもと、伊勢家は大名との関係の改善を図りつつ政務をこなし、千代丸も細川勝元山名宗全らとの知遇を得る。

登場人物[編集]

本作では、武家の男性は官位名に名前の読み仮名をルビで振って呼ばれることが多い。一例では新九郎の父・伊勢盛定の官位は備前守であるため、他の登場人物の台詞で呼ばれる時には「備前守(もりさだ)殿」のように記されている。

主人公[編集]

伊勢新九郎盛時(いせ しんくろう もりとき)
(伊勢千代丸→伊勢新九郎盛時)
本作の主人公。幼名は千代丸(ちよまる)[注釈 1]。正義感が強く、理屈や正論を好む。傅役の大道寺右馬介は千代丸について、置かれた環境と修行によってひとかどの武士にも立派な学識僧にも名のある職人にも容易になりそうだが、気の利いたことは言えないので商人になるのは難しそうだと評している。趣味は造り(伊勢氏の家職[注釈 2]でもあり宗家の邸内に工房がある)で、自作のデザインを書き留めた帳面を持ち歩いている。
第一話の文正元年(1466年)当時11歳。大道寺右馬介の宇治の家に暮らしていたが、京の伊勢宗家の屋敷内に住居がある父一家と暮らすことになる。父盛定を敬愛している。応仁元年(1467年)夏、12歳で元服。元服を急いだのには、生母浅茅が貞藤の正妻となる前に盛定の子として元服したいという思いもあった。「盛時」という名乗りは、「盛」定の子であることを示すとともに、祖父・横井「時」任が一字をくれたもの。

伊勢一門[編集]

伊勢備前守家[編集]

伊勢備前守盛定(いせ びぜんのかみ もりさだ)
新九郎の父。義兄貞親の右腕として働く。文正の政変で義兄の伊勢貞親ともども近江国へ落ちのびる。応仁の乱が起こると今川義忠の軍勢に守られて上洛し、間もなく貞親と共に赦免される。
伊勢八郎貞興(いせ はちろう さだおき)
新九郎の5歳年上の兄[注釈 3]。文正の政変後、足利義視に仕える。応仁の乱が起こると義視とともに伊勢国へ落ち延びる。翌年に帰京するが、人相が変わるほどの大きな刀傷を負っていた。
伊都(いと)
新九郎の3歳年上の姉[注釈 4]。弟たちをとても可愛がっており、立場の弱い新九郎に代わって父・盛定に厳しく意見することもある。駿河守護・今川義忠と婚約した。
須磨(すま)
盛定の正室。貞親の妹。貞興と伊都の実母で、新九郎にとっては義母。家に迎えられた新九郎との間は少々ぎこちない。
盛定が近江国へ落ちのびた際には同行し、まんざらでもない様子であった。盛定の帰京には同行しておらず、近江の朽木家に預けられている。
弥二郎(やじろう)
新九郎の同腹の弟。第六話の文正2/応仁元年(1466年)当時4歳で、新九郎の8歳年下。新九郎に「なんだかモヤっとしている」と言われてしまうほど特徴のない顔立ち。
母・浅茅の手許で育てられていたが、彼女が夫・伊勢貞藤と都落ちする際に新九郎に引き取られる。

伊勢伊勢守家[編集]

伊勢伊勢守貞親(いせ いせのかみ さだちか)
新九郎の伯父。政所執事を務め、斯波家の家督争いに介入するなど絶大な権勢を誇ったが、文正の政変によって失脚し近江国へ落ちのびる。将軍義政の育ての親であり、義政の判断に振り回される一方で愛着を持っている。先妻(兵庫助の生母)は越前の甲斐氏出身であったが、離縁して若い夫人(その姉が斯波義敏の妾)を娶る。
応仁の乱が起こると将軍・足利義政に呼び戻され、復権する。
伊勢兵庫助貞宗(いせ ひょうごのすけ さだむね)
貞親の嫡子。将軍・義政の嫡子・春王の傳役。
近江国へ落ちた貞親に代わって伊勢氏の惣領と政所執事職を受け継ぐ。千代丸が元服する際には彼に乞われて烏帽子親を務めた。
福寿丸(ふくじゅまる)
貞宗の嫡子。弥二郎の1歳上。
伊勢備中守貞藤(いせ びっちゅうのかみ さだふじ)
貞親の実弟。反伊勢派大名とも良好な関係を持っていたため、文正の政変後も京に残る。先妻を失っており、新九郎の母・浅茅を正室に迎える[注釈 5]。応仁の乱が起こると、西軍斯波義廉と通じたという謀反の嫌疑をかけられ、都から追放された。
浅茅(あさじ)
新九郎の実母。堀越公方被官・横井掃部助の娘。盛定の側室であったが、同居ではなく、横井家で暮らしている。
応仁の乱勃発後、先妻を失った貞藤の継室に迎えられた。盛定は貞藤に浅茅をとられたことを悔しがっているが、一方で横井家を守るための戦をしていると行動を理解している。貞藤が追放された際、貞藤と行動をともにした。

伊勢家被官[編集]

蜷川新右衛門親元(にながわ しんえもん ちかもと)
家宰として貞親、貞宗に仕える。アニメ『一休さん』に登場する「新右衛門さん」の実子。単行本の解説ページなどでも登場するが、時折未来の事象まで口にするため新九郎から「いつの時代の人なんですか!?」と突っ込まれている。
大道寺右馬介重昌(だいどうじ うまのすけ しげまさ)
新九郎の傅役。妻が浅茅の妹のため、新九郎にとっては母方の義叔父に当る。
大道寺太郎重時(だいどうじ たろう しげとき)
右馬介の嫡子。母が浅茅の妹で新九郎の乳母のため、新九郎とは従兄弟であり乳兄弟である。
新九郎と前後して元服し、共に幕府奉公衆として出仕する。
荒川又次郎
荒川又右衛門の子。奉公衆のお役目のため荏原荘から上京してきた。
在竹三郎
在竹兵衛尉の子。又次郎とともに荏原荘から上京してきた。

足利一門[編集]

足利義政(あしかが よしまさ)[注釈 6]
室町幕府第8代将軍。周囲からは「御所(様)」と呼ばれる。前言を翻すことが多く、新九郎はそのことを嫌っている。
足利義視(あしかが よしみ)
将軍の実弟。今出川の邸に住んでいるため周囲からは「今出川(殿、様)」と呼ばれる。
義政に次期将軍を約されていたが、嫡子・春王が生まれたことで微妙な立場となっている。文正の政変の際に謀反の疑いで讒訴された経緯から伊勢家の人間を嫌っている。
応仁の乱が起こると細川勝元によって東軍の総大将に担がれるが、形勢が東軍不利に傾くと密かに伊勢へと落ち延びた。
春王(はるおう)[注釈 7]
義政の嫡子。傳役の伊勢貞宗の邸で養育されている。

守護大名家[編集]

細川家[編集]

細川右京大夫勝元(ほそかわ うきょうのだいぶ かつもと)
細川京兆家当主。
聡明丸(そうめいまる)
勝元の嫡子。第5話の文正元年(1466年)12月生まれ。
亜々子(ああこ)
勝元の正室。聡明丸の母。山名宗全の養女。

山名家[編集]

山名宗全(やまな そうぜん)
亜々子の養父。「赤入道」の異名で知られる。声の大きい人物として描かれ、殆どの台詞の末尾に「!」が付けられている。
嘉吉の乱平定で武功を挙げ、凋落していた山名家の勢威をかつて「六分の一殿」と呼ばれた時代に匹敵するまでに取り戻した大人物。また豪放磊落な性格のため人望も高い。反対に勝利のためなら武士の作法に外れた戦法も辞さない勝元には怒りを露にしている(その後、西軍も同じ戦法をとったが)。
反伊勢派の大名たちに担がれ文正の政変を起こしたため、新九郎にとっては「親の敵」であるが、前述の性格のため新九郎も悪い感情は持っていない。
当初は娘婿の細川勝元と協調路線をとっていたが、幕府の主導権をめぐって対立を深めて決裂。西軍を立ち上げ応仁の乱を引き起こす。

今川家[編集]

今川義忠(いまがわ よしただ)
今川家当主。駿河国守護。官位は冶部少輔→冶部大輔。伊都には「黙っていれば、いい男」と評される性格の明るい若干お調子者の美男子。
享徳の乱では鎌倉を攻め落とした英雄。伊勢盛定に請われ、将軍御所警護を名目に上洛。その実は東軍に味方することで、かつて失われた分国・遠江国の守護職を今川家に取り戻すことにある。
柴屋軒宗長(さいおくけん そうちょう)
義忠の近習。

斯波家[編集]

斯波左兵衛督義敏(しば さひょうえのかみ よしとし)
斯波家当主。貞親に接近し当主の座に復帰した。義敏の妾の妹が貞親の継室である。文正の政変後、身の危険を感じ貞親と同時期に逐電する。

畠山家[編集]

畠山尾張守政長(はたけやま おわりのかみ まさなが)
管領の任を大過なく務めていたが、従兄弟の畠山義就が上洛し宗全と手を結ぶと、強そうな方につくという義政の方針によって畠山家の家督と管領職を剥奪された。上御霊神社の戦いに敗れ行方をくらます。
畠山右衛門佐義就(はたけやま うえもんのすけ よしひろ)
政長の従兄弟。政長との家督争いに敗れて京を追われていたが、上洛し宗全と手を結ぶと、強そうな方につくという義政の方針によって畠山家の家督を与えられた。

山内上杉家[編集]

上杉龍若(うえすぎ たつわか)
将軍の指名によって元服前の若さにして山内上杉家の家督を継ぐ。関東管領も継ぐ予定。この家督相続は単行本1巻時点では挿話的に描かれており、後に新九郎(早雲)と関わりを持つことが、蜷川新右衛門による解説ページでメタフィクション的に指摘されている。
長尾左衛門尉景信(ながお さえもんのじょう かげのぶ)
山内上杉家家宰。

幕臣[編集]

横井掃部助時任(よこい かもんのすけ ときとう)
堀越公方被官。新九郎、弥次郎、大道寺太郎の母方の祖父。尾張国衆で、京都に屋敷を構える。盛定は横井家の取次を務めていた(文正の政変後、取次は貞藤に引き継がれる)。
応仁の乱で屋敷を焼かれたため、娘婿の伊勢貞藤の邸に避難していた。西軍斯波義廉(尾張守護)と通じたという嫌疑をかけられ、一度は切腹も考えたが思いとどまり、国許の息子に家督を譲って剃髪し、裁きを待つ身となる。
多賀豊後守高忠(たが ぶんごのかみ たかただ)
侍所所司代。
細川勝元の命で足軽大将・骨皮道賢を雇う。

書誌情報[編集]

  • 第1巻:2018年8月14日発行(同8月9日発売) ISBN 978-4098600014
  • 第2巻:2019年4月17日発行(同4月12日発売) ISBN 978-4098603343

脚注・出典[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 北条早雲の幼名は不詳のため、ゆうきが早雲の息子・北条氏綱と孫・北条氏康の幼名が同じ「伊豆千代丸」であることに着目し、当時の長男は父親の幼名・仮名を受け継ぐことが多かった事実から類推して創作した[4]
  2. ^ 2巻までの時点で触れられてはいないが、史実において伊勢家は有職故実の一環として鞍の作成も手掛けていた。足利義満に仕えた伊勢貞長は馬術家の大坪慶秀から作鞍の秘伝を受け、伊勢流と呼ばれる鞍打ちの一派を生んだ。
  3. ^ 第一話の文正元年(1466年)当時16歳。
  4. ^ 第十話の応仁元年(1467年)当時15歳。
  5. ^ 早雲の出自をめぐってかつて提唱され、一時有力視された説の一つに、貞藤の子とする説がある。
  6. ^ 元服した新九郎と始めて対面した際は、「右近衛大将 源義政」と本姓を名乗っている
  7. ^ 足利義尚の幼名は不詳のため、同時代を描いた大河ドラマ『花の乱』の設定を借用した[4]

出典[編集]

  1. ^ a b 月スピでゆうきまさみが戦国時代描く新連載、次号「あげくの果てのカノン」完結”. コミックナタリー (2018年1月29日). 2018年8月9日閲覧。
  2. ^ a b 新九郎、奔る!:ゆうきまさみの新連載は歴史マンガ 「月刊!スピリッツ」で伊勢新九郎を描く”. MANTANWEB (2017年12月27日). 2018年8月9日閲覧。
  3. ^ 今週の新刊:「究極超人あ~る」31年ぶりの新刊 話題の「名探偵コナン ゼロの日常」も”. MANTANWEB (2018年8月5日). 2018年8月9日閲覧。
  4. ^ a b ゆうきまさみ (2018). “ゆうきまさみのはてしない物語 回の383「新九郎戦記 2」”. 月刊Newtype2018年4月号: P171.