新幹線N700S系電車

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新幹線N700S系電車
Shinkansen N700Supreme Musashi-Kosugi Station.jpg
品川 - 新横浜間を走行するN700S系電車
武蔵小杉駅から撮影)
基本情報
運用者 東海旅客鉄道(JR東海)
製造所
製造年
  • 先行試作車: 2018年
  • 量産車: 2020年 -
製造数
  • 試験車: 1編成16両
  • 量産車: 4編成64両
    (2020年9月1日現在)
運用開始 2020年7月1日
投入先 東海道山陽新幹線
主要諸元
編成 16両編成(14Ⅿ2T)
最高運転速度
  • 東海道: 285 km/h(曲線 +25 km/h)
  • 山陽: 300 km/h
編成定員 計1,323名
(うちグリーン車200名)
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N700Sは、東海旅客鉄道(JR東海)に在籍する新幹線電車である。

報道資料等では「N700S系」ではなく単に「N700S」で呼ばれている(「N700A」と同様)が、便宜上、記事名を一部資料[1]でも用いられている「N700S系」とし、以下の記述では単に「N700S」で統一することとする。

概要[編集]

N700Sのロゴ

JR東海の所有する東海道新幹線向けの営業用新幹線車両としては0系100系300系700系N700Aに続く第六世代となる車両[2][注釈 1]で、2016年6月24日に確認試験車(量産先行車)の制作が発表された[3][4]

JR東海と西日本旅客鉄道(JR西日本)の共同開発だったN700系と異なり、300系以来となるJR東海単独での開発車両である[5]。従来の16両編成だけではなく、基本設計をそのまま用いて12両や8両など、海外輸出を意識した様々な編成を構成させることを可能とする「標準車両」を目指して制作される[4]。「S」は、「最高の」を意味する "Supreme(スプリーム)" の頭文字から採ったもの。編成記号の『J』編成はかつて300系で使用されていたものである。

確認試験車、量産車とも日本車輌製造日立製作所笠戸事業所で製造されている。

構造[編集]

車両概観[編集]

先頭車両のデザインはN700系・N700Aの「エアロ・ダブルウィング形」を進化させ、左右両サイドにエッジを立てた「デュアル・スプリーム・ウィング形」(Dual Supreme Wing:ふたつの最高の)とした。これにより、トンネル突入時の騒音を低減させ、走行抵抗も減らすことを目指す[6]。さらに、エッジを立たせたことで前照灯の開口部を広くすることも可能になったという。前照灯は、N700系のHIDから、新幹線では初採用となるLEDを採用しており、省エネにつなげている[7]

車体はN700系と同じくアルミニウム合金製の中空押出型材によるダブルスキン構造を採用している。アルミ合金の一部にはJR東海と日本車両製造、日立製作所、ハリタ金属(富山県高岡市)、三協立山が共同で実証した「アルミ水平リサイクル」の仕組みを導入し、廃車処分となった700系から回収したアルミ合金を再利用している[8]

走行機器[編集]

駆動システムに発熱が少ない炭化ケイ素 (SiC) 製の素子を使用して冷却機構を簡略化し、駆動システムの大幅な小型軽量化を目指した[9]

2019年8月7日の発表では、保線の測定としての「軌道状態監視システム」に加えて「トロリ線状態監視システム」と「ATC信号・軌道回路状態監視システム」も営業用車両3編成にて導入する計画である[10]

また、高速鉄道では初の試みとして「バッテリー自走システム」を採用。車体下部に大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載し、不測の事態により架線からの給電が行われなくなっても、最寄り駅やトンネル等を避けた場所など、乗客の避難が容易な場所まで最低限の自力走行が出来る仕組みを導入すると共に、トイレが使用できなくなる事態も回避できるようにした[11]

車内設備[編集]

N700S普通車の車内

N700系のデザインスキームを踏襲しつつ、曲面を多用したデザインとした[7]。客室自動ドア上部の情報ディスプレイは従来のLEDタイプから液晶ディスプレイとなり大型化[11]。また、防犯機能の強化のため、防犯カメラを従来の出入口付近に加えて客室内天井(1両あたり最大4箇所)にも設置した[11]

グリーン車は『ゆとりある空間と個別間の演出』をコンセプトに、座席はN700系の「シンクロナイズド・コンフォートシート」を進化させたものとし、座席ごとに荷棚と一体化した大型側面パネルを配置[7]。フルアクティブ制振制御装置を搭載し、乗り心地の向上も図るとしている[11]

普通車は全座席の肘掛け部にモバイル用コンセントを設置[7][11]。座席はシート(座面)と背もたれが連動して動く機構を採用した。座席表地にはJR東海とTBカワシマ(滋賀県愛荘町)が共同開発した、水に濡れると柄のラインが濃く浮かび上がって濡れていることを検知できる「水濡れセンサーシート」を採用している[12]。また、両先頭車とパンタグラフ設置車にもフルアクティブ制振制御装置を搭載した[11]

確認試験車の製造[編集]

N700S確認試験車
京都駅

確認試験車は2018年2月に浜松工場へ順次陸送された[13]。また、2018年3月7日にはN700Sのシンボルマークが決定し[14]、同年3月10日には報道公開された[7][15]。そして同年3月20日に走行試験を開始した[16][17]。この車両は試験研究用車両としても利用され、試験走行試験期間は3年間を計画としており、リチウムイオンバッテリーによる自走走行試験も同年9月に、本来の16両編成の他に8両編成に短編成化での試験走行を同年10月に実施を計画しており[18]、更には同年6月から乗り心地向上での「次期軌道状態監視システム」開発に走行試験をする計画もある[19]。なお、N700Sの確認試験車は、量産車の登場後はN700系Z0編成の後継として、引き続き確認試験車として使用される見込みである[20]

2019年6月6日には360km/h走行の報道公開の試験列車が米原京都行きとして運行され、最高試験速度362km/hを達成しているが、東海道新幹線の営業速度を変更する予定はない[21]

2019年7月10日には災害時の停電対応目的でのバッテリー自走(約30km/h)走行を報道公開している[22]

編成一覧[編集]

運用[編集]

2020年7月1日に「のぞみ1号」「のぞみ3号」で営業運転を開始した[23]

JR東海の公式Twitterアカウント(東海道新幹線(東京~新大阪)運行情報 (@JRC_Shinkan_jp) - Twitter)で7月2日以降の次の日の運行予定を公表することが明らかになっており[24]、8月31日分をもって終了された[25]

7月11日より「ひかり」「こだま」としても運用するようになった[2]。2020年8月現在主に「のぞみ」で運用しており1日1往復以上の運転がある一方、「ひかり」「こだま」に運用するのは極まれとなっている[26][要検証]

運転区間はJR東海の公式車両案内によれば「のぞみ」と「ひかり」は東京 - 博多間、「こだま」は東京 - 新大阪間で運用しているとしている[27]が、山陽新幹線新大阪 - 博多間への乗り入れは運転開始日の2020年7月1日こそ「のぞみ」2往復に運用したものの、翌日の2020年7月2日より1か月以上運転がなかったほか[28]、「ひかり」として山陽新幹線に乗り入れたことは一度もない。そのためほとんどが東京 - 新大阪間での運転となっている。[要検証]

なおJR西日本では自社管内に乗り入れを行う他社車両も車両図鑑で扱っているが、N700Sに関する記載はN700系のページ[29]に「一部の編成(N700S)については、全ての座席にコンセントを設置しています。」という記載がされているのみである。

Supremeコラボレーション[編集]

JR東海では、N700S運行開始に伴い、「Supremeコラボレーション」と題した各種宣伝展開を実施[30]YouTubeにも公式チャンネルを開設した。

ポスター
  • 2020年6月27日より各駅で掲示。
  • テーマは「あなたが、走り出す日のために」。
  • 新型コロナウイルスの影響により外出が制限された状況下、「東海道新幹線は歩みを止めない」「将来(新型コロナウイルス終息後)に想いを馳せる人々の想い」が込められた。
テレビCM
オリジナル漫才
  • お笑いコンビ・ミルクボーイ(駒場孝・内海崇)を起用したN700Sオリジナル漫才をYouTubeに公開。
子供向けオリジナルブック
  • おしりたんていとコラボレーションしたオリジナルブック「JR東海からの挑戦状」を制作。
記念オリジナルフード

今後[編集]

JR西日本も500系・700系・N700系の後継車両にN700Sを採用する予定と報じられている[33]。また、2022年に九州旅客鉄道(JR九州)が武雄温泉駅 - 長崎駅間で暫定開業する九州新幹線西九州ルートでの導入が検討されている[34]

海外では、JR東海が技術アドバイザーとなっているヒューストン - ダラス間の高速鉄道(テキサス・セントラル・レイルウェイ)で、N700Sを一部仕様変更した導入予定車両のイメージパースが公表されている[35]

注釈・出典[編集]

注釈[編集]

  1. ^ JR東海によれば、東海道新幹線でも使用された500系はJR西日本の車両であり除外、N700AはN700系の一部改良型とみなして同一系列とカウントしているという[2]
  2. ^ J0編成は1 - 10号車を日本車輌製造、11 - 16号車を日立製作所が製造した。

出典[編集]

  1. ^ 例えば平成29年度アルミニウム合金製車両生産実績(平成29年4月~平成30年3月) (PDF) (一般社団法人日本アルミニウム協会)など。
  2. ^ a b 日本放送協会 (2020年6月13日). “新型車両「N700S」 現在の車両との違いや歴史は”. NHKニュース. 2020年6月18日閲覧。
  3. ^ “東海道・山陽新幹線 次期新幹線車両 N700S 確認試験車の製作について” (PDF) (プレスリリース), 東海旅客鉄道, (2016年6月24日), http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000030982.pdf 2016年6月25日閲覧。 
  4. ^ a b “JR東海「N700S」東海道・山陽新幹線次期車両の確認試験車、2018年春完成へ”. マイナビニュース. (2016年6月25日). http://news.mynavi.jp/news/2016/06/25/008/ 2016年6月25日閲覧。 
  5. ^ “次世代の新幹線N700S 細かすぎる5つの変更点”. NIKKEI STYLE. (2018年1月10日). https://style.nikkei.com/article/DGXMZO25202380Y7A221C1000000?channel=DF260120166491 2018年1月10日閲覧。 
  6. ^ 【動画】「エッジの効き」特徴の新・新幹線「N700S」姿を現す 「DSW形」採用で能力アップ”. 乗りものニュース (2017年10月1日). 2017年10月7日閲覧。
  7. ^ a b c d e 「N700S」確認試験車が公開される”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2018年3月10日). 2018年3月11日閲覧。
  8. ^ “新幹線廃車から回収したAl合金材を新型「N700S」に再利用”. 日経XTECH. (2020年6月19日). https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/08130/ 2020年7月11日閲覧。 
  9. ^ “次期新幹線車両「N700S」量産車の仕様および投入計画について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 東海旅客鉄道, (2019年1月25日), https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000039300.pdf 2019年1月26日閲覧。 
  10. ^ “東海道新幹線 N700S営業車による地上設備計測の実施について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 東海旅客鉄道, (2019年8月7日), オリジナルの2019年8月7日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20190807054921/https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000039804.pdf 2019年8月11日閲覧。 
  11. ^ a b c d e f 上新大介 (2019年1月25日). “JR東海N700S、新幹線新型車両2020年7月デビューへ - N700系置換え”. マイナビニュース (マイナビ). https://news.mynavi.jp/article/20190125-n700s/ 2019年1月26日閲覧。 
  12. ^ 東海道新幹線N700Sに採用されました - TBカワシマ株式会社、2020年7月3日。2020年8月1日閲覧。
  13. ^ JR東海「N700S」が陸送される”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2018年2月18日). 2018年3月11日閲覧。
  14. ^ “N700Sのシンボルマークを決定!” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 東海旅客鉄道, (2018年3月7日), オリジナルの2018年3月7日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20180307094826/http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000036551.pdf 2018年3月7日閲覧。 
  15. ^ 上新大介 (2018年3月10日). “N700S確認試験車 - JR東海の新幹線新型車両、車内も公開! 写真78枚”. マイナビニュース (マイナビ). https://news.mynavi.jp/article/20180310-n700s/ 2018年3月11日閲覧。 
  16. ^ 上新大介 (2018年2月17日). “JR東海N700S、新型車両の先頭車公開! 3/20から走行試験、写真30枚”. マイナビニュース (マイナビ). https://news.mynavi.jp/article/20180217-585735/ 2018年3月11日閲覧。 
  17. ^ 「N700S」が試運転を実施”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2018年3月27日). 2018年3月27日閲覧。
  18. ^ JR東海,「N700S」確認試験車の走行試験内容を発表”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2018年3月23日). 2018年3月23日閲覧。
  19. ^ “東海道新幹線 次期軌道状態監視システムの開発について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 東海旅客鉄道, (2018年5月30日), オリジナルの2018年5月31日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20180531214314/http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000037346.pdf 2018年6月2日閲覧。 
  20. ^ 松沼 猛 (2018年7月14日). “試運転用「N700S」は営業運転に使わないのか”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社. 2018年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月26日閲覧。
  21. ^ JR東海N700S、速度向上試験で362km/h - 米原~京都間を18分で走行”. livedoor news. livedoor news (2019年6月7日). 2020年1月24日閲覧。
  22. ^ JR東海「N700S」バッテリ走行の様子を報道陣に公開”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2019年7月10日). 2019年7月11日閲覧。
  23. ^ 安全で快適、全ての面で「最高」…N700Sデビュー : 経済 : ニュース” (日本語). 読売新聞オンライン (2020年7月1日). 2020年7月1日閲覧。
  24. ^ 恵知仁 (2020年6月15日). “東海道・山陽の新型新幹線「N700S」確実に乗る方法は? どの列車がN700Sか調べるには”. 乗りものニュース. 2020年8月18日閲覧。
  25. ^ 東海道新幹線(東京~新大阪)運行情報【JR東海公式】(@JRC_Shinkan_jp) 2020年8月28日のツイート
  26. ^ 運転開始から1か月、N700S系が「ひかり」「こだま」運用に入ったのは7月11日、7月12日、7月25日に各日「ひかり」「こだま」それぞれで1往復ずつのみとなっている。
  27. ^ 車両のご案内 N700S (JR東海)
  28. ^ 次に山陽新幹線に乗り入れたのは2020年8月13日であった。[1]
  29. ^ のぞみ N700系:JRおでかけネット”. www.jr-odekake.net. 2020年9月1日閲覧。
  30. ^ “東海道新幹線・新型車両「N700S」デビューに伴う宣伝展開および「Supremeコラボレーション」について”. (2020年6月24日). https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000040574.pdf 2020年6月25日閲覧。 
  31. ^ JR東海×崎陽軒コラボ「N700Sデビュー記念弁当」第1弾 発売について - 崎陽軒 2020年6月24日
  32. ^ JR東海×池利 そうめん新幹線 デビュー - 株式会社池利 2020年4月16日
  33. ^ “JR西日本、山陽新幹線で「500系」後継車開発せず”. 日刊工業新聞. (2018年5月5日). https://newswitch.jp/p/12853 2018年12月19日閲覧。 
  34. ^ “<新幹線長崎ルート>JR九州 武雄温泉-長崎、次世代車両検討”. 佐賀新聞. (2020年2月2日). https://www.saga-s.co.jp/articles/-/483908 2020年7月18日閲覧。 
  35. ^ 大坂直樹 (2020年3月23日). “知らぬ間に進んでいたJR東海「テキサス新幹線」”. 東洋経済オンライン. 2020年7月22日閲覧。