日本共産党技術部

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日本共産党技術部(にほんきょうさんとうぎじゅつぶ)は、戦前日本共産党の部署である。別名「テク」。共産党の非公然活動を技術的側面で支援することを目的として作られたが、特別高等警察のスパイ・飯塚盈延の指揮の下で、家屋資金局に再編され、犯罪的手段による資金獲得をも手がけた。

日本共産党の弁解によれば、特高(特別高等警察)のスパイにそそのかされ、赤色ギャング事件を起こしたという一説もある(岩波書店編集部編『近代日本総合年表』1968年11月、292頁)。

概要[編集]

結社の自由が保障されていなかった戦前の日本では、日本共産党は治安警察法治安維持法に違反する非合法組織であり、たびたび一斉摘発を受けた。四・一六事件後、党の非公然活動を技術的側面で支援し、警察の摘発から逃れるため、1929年7月、設けられた。

具体的には以下の通りで、「連絡係」「配布係」「印刷係」「金策係」「住宅係」「倉庫係」の6係で構成された。

  • 党内の連絡
  • アジト設営や変装用衣服の調達
  • 武器の調達
  • 非合法文書の印刷・頒布
  • 資金の調達

中でも資金調達は最重要課題で、初期の頃はインテリ層を中心とする一大カンパ網を構築した。これにより月に3万円を調達したという。しかし、これらのインテリ層も続々と検挙され次第に行き詰まっていった。またコミンテルンからの資金援助も、イギリスによるイレーヌ・ヌーラン逮捕によって、上海太平洋労働組合書記局が壊滅したことにより途絶えた。

そこで始めたのが事業経営である。このころ、特高警察のスパイである飯塚盈延(共産党での偽名は松村昇)の指揮の下、技術部は拡充され「家屋資金局」と変わっていた。当時としては貴重な自動車を購入して円タク事業を始めたり、飛行士養成学校の経営権を掌握し、自前の飛行士養成と学校経営で資金を得ようとした。しかし、両事業とも当局の手入れを受けて失敗している。

次に始めたのが、資産家の子女をそそのかして財産を持ち逃げするという手段である。

共産党資金活動ニ依ル拐帯調査 昭和7年11月調
月日 金額 摘要
3月8日頃 現金1,650円 預金ヲ引出シ党ニ提供シ自ラモ資金局ニ入リ活動中ノ処六月八日検挙起訴保留トナル
5月 現金4,700円 銀行預金ヲ引出シ逃走自ラモ資金局ニ入リ活動中六月二十五日検挙起訴収容
6月28日 株券47,495円 実父ノモノヲ拐帯売却三万円ヲ党ニ提供
8月18日頃 現金4,700円
8月22日 株券10,500円
現金2,500円
実父ノヲ拐帯、株ハ売却、資金局活動中十月三十一日検挙
8月23日 債券2,000円
現金730円
8月25日 現金12,000円 不動銀行白山支店行金拐帯
8月29日 現金3,990円
9月 現金3,000円 父ノ金持逃ゲ
9月 現金16,000円
9月27日 現金1,500円 母ノ上京中、母名義ノ偽電ニ依リ函館ヨリ送金セシメ拐帯
10月15日 債券145円
10月25日 小切手145円[要出典]
(未遂)
父ノ筆跡ヲ真似テ小切手ヲ作リ一銀丸ノ内支店ヨリ引出サントセルモ怪シマレ失敗ス本人ハ其儘家出

そして、更には犯罪的手段で資金を調達しようとした。これらを請け負うために結成されたのが「戦闘的技術団」[要出典]である。戦闘的技術団は4部で構成されている。

戦闘的技術団の部署一覧[要出典]
部署 業務内容
第一部 武道道場を経営し、門下生でギャング団を組織し強盗や恐喝に従事[要出典]
第二部 柔道剣道道場を開き、門下生で似非右翼団体を組織し、似非右翼活動により企業などの恐喝に従事[要出典]
第三部 暴力団に潜入し、シノギで得た資金の党財政組み入れに従事[要出典]
第四部 風俗産業を経営し、美人局や猥褻画像販売による資金調達に従事[要出典]

とりわけ、第四部の活動は世間の注目を浴び、「エロ班」の異名をとることになった。 いわゆる左派的な思想家と考えられていた平塚らいてうは、『婦人公論1933年3月号にて「党のために犠牲となった婦人党員たち自身の性思考について」として次のように述べている。

過日「東朝」神上で、女性共産党員たちが、党の資金調達のために、党資金局の指令をうけて、その性を売つた形跡のあるのを、女性としての自覚を全く欠くものとして抗議したのに対し、多くの識不識の同性のかたがたから共鳴の言葉を送られたのにはわたくし自身も意外とするほどした。〔中略〕
これによつても共産党が、その運動に女性の「性」をああも露骨に、極端と利用したこと、そして婦人党員の幾人かがその犠牲となって踊らされたといふことは一般女性の本能的な憤激と憎悪とを買つたことが十分察せられるやうに思はれます。

—  平塚らいてう「女性共産党員とその性の利用」『婦人公論1933年3月号131頁、(一部引用者により一部漢字修正、省略)

そして、これは「新時代の新しい型の男性奴隷」であるとし、「女性としてのはつきりした自覚をもち、女性の立場にしつかりと足を踏みしめて、社会運動に参加してほしいと思ひます」と締めくくっている。

参考文献[編集]

  • 立花隆 『日本共産党の研究-2』 講談社〈講談社文庫〉、1983年6月。

関連項目[編集]