有職読み

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有職読み(ゆうそくよみ)は、漢字で書かれた語を伝統的かつ特別な読み方で読むこと[1]。しばしば人名を音読する慣習を示す俗語として用いられるが、近年ではこれが誤用であることが指摘されている[2]

故実読み(こじつよみ)、名目(みょうもく)、名目読みと同じ。例として「笏(こつ)」を「しゃく」と読む、「定考(じょうこう)」を「こうじょう」と読むなどがある[3]

「人名の音読み」の意の誤用[編集]

高島俊男によると、戦前には名前の音読みは一般的な慣習であり、例えば滝川事件瀧川幸辰については「タキガワ コウシン」以外の読みを戦前では聞いたことがなかったという[4]

角田文衛歌学の世界などで、特定の歌人(俊頼(しゅんらい)、俊成、定家、式子(しょくし)内親王など)が音読みされることを有職読みの例とした[5]小谷野敦は、ブログで 「『名前とは何か なぜ羽柴筑前守は筑前と関係がないのか』(青土社)のp.100に「有職読み」という語が出てくるが、このような言葉は存在しない。これは2006年何者かによってWikipediaに立項され、その内容がいかにもありそうだったため、以後増補が続けられてきたもの」と記していたが、後に付記として角田文衞『日本の女性名』に使用例があったことを記している[6]。一方、三浦直人によれば、これは人名音読に限らない「有職読み」=「故実読み」に含まれる一例として、角田が挙げているものに過ぎないという[7]

しかし、この角田の記述を誤読した者が、人名音読の慣習一般を「有職読み」という用語で扱うようになった[7]。この影響を受け、ウィキペディアに「有職読み」が人名音読の慣習を扱う記事として立項されたことにより、これ以後、書籍などにおいても、有職読みの語が人名音読の意として誤用されることが急増した[8]

脚注[編集]

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  1. ^ 三浦直人 2017, p. 24.
  2. ^ 三浦直人 2017, pp. 21-22.
  3. ^ 大辞林 第三版『故実読み』 - コトバンク(三省堂)
  4. ^ 高島俊男「お言葉ですが…」(文春文庫)より
  5. ^ 角田文衞『日本の女性名 歴史的展望』(上)(教育社歴史新書30、1980年)、173頁。
  6. ^ 猫を償うに猫をもってせよ”. 小谷野敦 (2011年5月1日). 2011年12月7日閲覧。
  7. ^ a b 三浦直人 2017, pp. 23-25.
  8. ^ 三浦直人 2017, pp. 25-27.

出典・参考文献[編集]

初出:三浦直人「伊藤博文をハクブンと呼ぶは「有職読み」にあらず:人名史研究における術語の吟味」『文学研究論集』45, pp. 207-226, 明治大学大学院, 2016年9月。

関連項目[編集]