木村定跡

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△持駒 角
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91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
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▲持駒 角
図1(木村定跡基本図)

木村定跡きむらじょうせき)は、初代実力制名人木村義雄が発表した将棋定跡角換わり腰掛け銀のうち、先後同型角換わり腰掛け銀と呼ばれる戦型の定跡で、先手勝利まで研究が終わっていることから、完成された定跡とも言われている。

手順[編集]

△持駒 角
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91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
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▲持駒 角
図2(図1の2手前。升田流基本図)
△持駒 歩四
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91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
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▲持駒 角
図3(木村定跡途中図)
△持駒 飛桂二歩五
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91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
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▲持駒 金銀歩二
図4(木村定跡投了図)

基本図[編集]

初手▲7六歩から始まり、△8四歩▲2六歩△3二金▲7八金△8五歩▲7七角△3四歩▲8八銀△7七角成▲同銀△4二銀と角換わりに。その後▲3八銀△7二銀▲4六歩△6四歩▲4七銀△6三銀▲6六歩△5二金▲5八金△4一玉▲6八玉△5四銀▲5六銀△3一玉▲7九玉△1四歩▲1六歩△9四歩▲9六歩△7四歩▲3六歩△4四歩▲3七桂△7三桂▲2五歩△3三銀(図2)と進む。ここから▲8八玉△2二玉(図1)の後に、先手が▲4五歩の突き捨てから戦端を開く。

投了[編集]

図1から、先手は▲4五歩△同歩▲3五歩と仕掛けて先手の勝勢。以下、△4四銀[1]▲7五歩△同歩▲1五歩△同歩▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2八飛△6三角[2]▲1三歩△同香[3]▲2五桂(図3)△1四香[4]▲3四歩△2四歩[5]▲3三桂成△同桂▲2四飛△2三金▲1一角△3二玉[6]▲3三歩成△同銀▲4四桂△同銀▲2三飛成△同玉▲4四角成(図4)が代表的な投了までの手順。図2以降、△4三金としても▲4五銀△4四金▲同銀で振りほどけない。

補足[編集]

▲7五歩の突き捨てが入っているため、▲1五歩の突き捨てに手を抜けず、2筋の歩交換も後の先となっているのが巧妙。以下手順に3筋の取り込みを実現させる。▲3三歩成ではなく▲3三桂成とするのも、細かいながら飛車先を通す好手。結果、図1となった時点で致命的なミスを起こさない限り先手の勝ちとなる。なお、後手番が△2二玉を省略し△6五歩と仕掛けた場合、最終手は△6六飛になる。

略歴[編集]

誕生[編集]

この定跡誕生の切っ掛けは、常勝将軍の異名を持っていた木村を倒すため、若手達が躍起になったことから始まる。躍起になった若手が打倒木村の有力候補としたのが、持ち時間の短い将棋に有利な角換わり腰掛け銀戦法であり、コレに苦戦を強いられた木村は、第6期名人戦で塚田正夫に2勝4敗で敗れ名人位を奪われてしまう。この苦杯を切っ掛けとし実戦譜を参考に考え出したのがこの定跡であり、現在でも先手必勝で間違いないと言われている。

問題点[編集]

このように、基本形態である図1になった瞬間に後手の敗北がほぼ決定する。したがって、後手はこの形を避けなければならない。そもそも△2二玉と囲いに入るのが敗着なので、この手を省略して△6五歩と後手側が木村定跡の攻めを仕掛けると後手が良いのではないかと考えられている。ただし、木村定跡では先手が飛車を捨てるが、後手が△6五歩と先攻した場合は、玉が3一にいて、飛車を持たれると王手がすぐに掛かるために捨てにくい。そのため、△6五歩で後手が勝てるのかには疑問が残る。しかし、先手にとって後手から先攻されるのは面白くないし、攻めている方が工夫しやすいなどの理由で、先手も▲8八玉を指さなくなった。つまり、『先手の疑問手(▲8八玉)に後手が悪手(△2二玉)で返す』という条件がつくのが、木村定跡最大の欠点とも言える。

その後[編集]

このような理由から、今では公式戦で木村定跡が現れることはまずない。代わって升田幸三実力制第4代名人が▲7九玉△3一玉の形(図2)で▲4五歩と仕掛ける升田流を考案。千日手が起因する停滞時期があったものの、腰掛け銀は角換わり戦法の一戦型として形を変えながら指され続けた。その後、2011年に現れた富岡流によって、現在は図2の局面では先手勝ちとされてる。そのため、角換わり腰掛け銀は指され続けているものの、図2のような先後同型の局面に達する前に変化するようになった。また、図5からの塚田新手の出現などによって、先後同型であっても、図2とは端歩の形が異なる先後同型角換わり腰掛け銀が増加している。

△持駒 角
Shogi zhor 22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
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▲持駒 角
図5(図2と比べて後手が△9四歩を省略して△6五歩と先攻を狙っている)

脚注[編集]

  1. ^ △同歩は、▲4五桂△同銀▲同銀△3七角▲2九飛△4六角成▲5六銀打の手順で先手優勢。
  2. ^ 手持ちの角を温存し△6三金の変化は升田流では有効であるが、木村定跡では▲7四歩△同金▲4一角があり先手優勢。
  3. ^ △同玉は、▲1五香△1四歩▲同香△同玉▲2二歩△同金▲3六角で先手優勢。
  4. ^ ここで△2四歩は、▲1三桂成△同玉▲1五香△1四歩▲同香△同玉▲1二角で先手勝勢。
  5. ^ △4三金右とする手は、▲3三歩成△同桂▲同桂△同金上▲2六桂と進めて先手優勢。
  6. ^ △同玉は▲2三飛成で万事休す、△1三玉は▲3三歩成が決め手となり、飛車とと金の何方を取っても先手勝勢。

参考文献[編集]

  • 『新版 角換わり腰掛け銀研究』 ISBN 4839900663

関連項目[編集]

  • 木村義雄(定跡創始者)
  • 升田幸三(升田流腰掛け銀考案者)
  • 富岡英作(先後同型角換わり腰掛け銀富岡流によって第43回升田幸三賞を受賞)