札幌ボデー・トライハート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日本の救急車 > 札幌ボデー・トライハート

トライハート(Tri-Heart)は、札幌ボデー工業が製造・販売している高規格基準救急車である。

初代から2代目(三菱ふそう・キャンターベース)までのモデル[注釈 1]は通称で札消式高規格救急自動車と呼ばれている。

歴史[編集]

初代(1992年-1999年)[編集]

ベースシャーシは三菱ふそう・キャンター(5代目 FE4)、高床ワイドキャブでMT車のみの設定。
主な装備として4WD(パートタイム式)なのはもちろん、ABS、二系統の暖房装置、自動収納装置付防振架台、バックカメラ・モニター、
側面上部赤色点滅灯(左右2個ずつ)、降雪後の凹凸路面やチェーン装着時の振動対策として後輪にエアサスペンションを標準装備。
  • 1994年(平成6年)、前年にベースの三菱ふそう・キャンターがフルモデルチェンジ(6代目 FE5)した為、それに合わせて架装ボディ等もマイナーチェンジされた。(中期型)
  • 1996年(平成8年)、京都市消防局に車体を延長したタイプが大型救急車として導入[注釈 3]された。
  • 1997年(平成9年)11月、人口が30万人を突破していた札幌市豊平区が分区され清田区が誕生。清田消防署開設に伴い、清田救急隊用として
フロントバンパー側面に電球式赤色点滅灯を増設し、ボディ側面上部の赤色点滅灯を電球式からLED式赤色点滅灯[注釈 4]に変更した中期型最終モデル[注釈 5][注釈 6]が配備された。
  • 1998年(平成10年)、フロントバンパー側面及びボディ側面上部赤色点滅灯をLED式赤色点滅灯[注釈 7]に変更した高床ベースの最終モデル[注釈 8][注釈 9]を発売。(後期型)

2代目(2000年-2008年)[編集]

  • 2000年(平成12年)1月、全面改良。前年にベースの三菱ふそう・キャンターがマイナーチェンジ(6代目 FE6)した事により、フロント部分等のデザインが変更された。
ベースも低床ワイドキャブ[注釈 10]になり、初めてAT車が設定された。
さらに、キャブ上部やバンパー上部などの赤色灯がパトライト製から大阪サイレン製へ変更、救急車用電子サイレンアンプも大阪サイレン製に変更された。(前期型)
  • 2004年(平成16年)、フルモデルチェンジ後のキャンター(7代目 FE7)に合うようボディ等がマイナーチェンジ[注釈 11]された。(後期型)

3代目(2代目リニューアルモデル)(2009年-)[編集]

  • 2009年(平成21年) 9月、翌年に8代目へのフルモデルチェンジを控え、三菱ふそうが7代目のキャンターエアサス特装モデルを生産中止にしたため、
ベース車体をいすゞ・エルフ、ロングボデー、エアサス特装モデル[注釈 12]へ変更したリニューアルモデル[注釈 13]を発売。(前期型)
いすゞ・エルフにあわせ架装ボディデザインを変更。特徴的だった後部観音開き式ドアが標準で一般的な跳ね上げ式ドア[注釈 14]になった。
標準仕様はトラックベースの広さを生かし、従来型と同じ患者室スペースのまま乗車定員が国内高規格救急車最大の10名となった。
従来の自動収納装置付防振架台に加え、磁気浮上式防振架台も可能になった。
ドクターカー仕様では搬送用保育器PCPS(経皮的心肺補助装置)、IABP(大動脈バルーンパンピング)などの大型医療機器積載が可能。
また、それら大型医療機器を車内に積載するためのテールゲートリフターも装備可能。
リニューアルモデル第1号車は北海道帯広市消防本部(当時)に、第2号車は大阪府立中河内救命救急センターに納入されている。
  • 2014年(平成26年)11月、ベースのいすゞ・エルフがマイナーチェンジ。フロントラジエーターグリルおよびシート、ステアリングホイールのデザインが変更された。
エンジンも改良され、ベースの車両総重量5トン超用4WDシャーシ車は平成27年度燃費基準+5%を達成。低排出ガス認定制度と合わせて新車購入時の自動車重量税が75%減税、自動車取得税80%減税となった。(後期型)
重体重対応防振架台[注釈 15]やECMO(体外式膜型人工肺)の積載も可能になった。
なお、消防・防災用品専門商社の株式会社 赤尾も後期型よりTri-Heartの受注・契約・販売を行っている。
  • 2019年(平成31年)3月、ベースのいすゞ・エルフがマイナーチェンジ。ベースのワイドキャブ4WD車も燃料噴射量フィードバック制御 i-ART、排気位相可変バルブ、モデルベース EGR制御等の最新技術とともに、
主要コンポーネントを一新した小排気量高過給エンジン4JZ1型エンジンと後処理装置のDPD+尿素SCRを採用。平成28年排出ガス規制に適合した。
また、耐久性とメンテナンス性を上げることでランニングコストの軽減も実現し、エンジンオイル・フィルターの交換時期が最大4万kmまたは1年間となった。(後期 最新型)

運用している自治体(地方公共団体)・病院[編集]

商用ワンボックスカーベースの車両より広い患者室スペースなど[注釈 16]を求める自治体三次救急医療指定病院等がトライハートを導入している。

遠軽地区広域組合消防本部、諏訪広域消防本部とかち広域消防局東京消防庁[1][注釈 17]が運用している。
兵庫県姫路赤十字病院[2][注釈 18]
大阪府大阪府立中河内救命救急センター[3][注釈 19]
青森県青森県立中央病院[4][注釈 20]
福島県会津中央病院[5][注釈 21]太田西ノ内病院[6][注釈 22]
宮城県気仙沼市立病院[注釈 23]
新潟県新潟市民病院[注釈 24]
千葉県総合病院国保旭中央病院[7][注釈 25]
群馬県前橋赤十字病院[8][注釈 26]
東京都国立成育医療研究センター[9][注釈 27]東京都立小児総合医療センター[10][注釈 28]で、導入・運用されている。

東京消防庁のトライハート[編集]

2016年(平成28年)に2台導入された日本初の一類・二類感染症患者・CBRNE災害傷病者、多数傷病者、重体重傷病者に対応する高規格救急車で、特殊救急車III型と呼ばれている。
1台は6月に新設発隊した「救急機動部隊[注釈 29]に配備されており、平常時は高規格救急車として運用されている。特殊救急車III型は通常のワンボックスカーベースの高規格救急車にはない次のような機能・装備・特徴をもつ。

  • 車内患者室を陰圧状態[注釈 30]にすることができる。この機能により、病原微生物が車外に漏れ出ることなく患者の容態変化時に追加の処置が可能で、病院まで安全に搬送することができる。
  • 運転席と患者室の間に隔壁及び気密性ドアが設置されており、患者室と運転席を完全に遮断する事ができるため、運転する機関員への感染を防止することができる。
  • 一類感染症のエボラウイルス病や二類感染症のSARSMERSなどの病原微生物を不活性化(殺菌)するオゾンガス発生装置を備えている。
  • 体格の大きい外国人観光客等に対応するため、約230kgまで搬送できる重体重対応ストレッチャーとその総重量に対応する防振架台を装備している。
  • 後輪に車高調整機能付エアサスペンションを装備している。
  • 燃料が軽油の為、大規模災害発生時にガソリンよりも比較的容易に確保が可能で、確保できない場合でも緊急消防援助隊の燃料補給車で給油を受けることが出来る。

札幌市消防局のトライハートと四街道市消防本部のトライハート[編集]

  • 初代高床ベースの最終モデルは2006年(平成18年)、2代目前期型は2008年(平成20年)で第一線を退き予備車になり、2011年(平成23年)で、札幌市消防局のトライハートは全車廃車となった。
現在実働中の高規格救急車は日産・パラメディックトヨタ・ハイメディックになっている。

トライハートが現場に応援出場した大きな事件・災害[編集]

車名の由来[編集]

  • Tri-Heartとは、人命救助に当たって最も重要な「愛」「信頼」「誠実」の三つの心を表している。

艤装・製造・販売[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]

注釈

  1. ^ リニューアルモデルから札幌ボデー工業の単独開発。
  2. ^ 冬季の積雪など自然環境が厳しい寒冷地北海道で安全かつ迅速に運用できる4WD方式の高規格救急車1991年(平成3年)の救急救命士制度発足当時、国内・国外共に無かった事から。
  3. ^ この年にまでに納入されたモデルは初代ハイメディック等と同じ佐々木電機製作所(現 パトライト)製救急車用電子サイレンアンプを装備していた。擬音から(ピーポーではなくフィーヨーに聞こえたことから)俗にいう「フィーヨー」サイレン。
  4. ^ パトライト製
  5. ^ 後期型プロトタイプとも呼ばれる
  6. ^ パトライトが救急車用電子サイレンアンプをモデルチェンジしたため、1997年納入車からサイレンの音色が変わり、「フィーヨー」サイレンから鉄琴の音色に似ている事から俗にいう「キンコン」サイレンになった。
  7. ^ パトライト製
  8. ^ パトライトが救急車用電子サイレンアンプをモデルチェンジしたため、1997年納入車からサイレンの音色が変わり、「フィーヨー」サイレンから鉄琴の音色に似ている事から俗にいう「キンコン」サイレンになった。
  9. ^ 恵庭市消防本部にパトライト製エアロブーメランと後部にLED式赤色点滅灯などを追加装備した車両も存在していた。
  10. ^ 従来の高床パートタイム4WDから低床フルタイム4WDになったことで不評だった取り回し部分(最小回転半径を初代の7.6mから2代目パラメディックと同等の6.4mに縮小)も改良された。
  11. ^ 特別仕様として四街道市消防本部に通常の倍赤色点滅灯を装備したスーパートライハートという車両があった。
  12. ^ 後輪に車高調整機能付きエアサスペンションを装備している。
  13. ^ リニューアルモデルと付いているのは札幌ボデー工業の公式HP上にリニューアルモデルとして発表されていたため。
  14. ^ オプションで従来標準だった観音開き式ドアも選択可能。
  15. ^ 株式会社 赤尾では重体重対応防振架台が標準仕様となっている。
  16. ^ 患者の両側から同時に処置できる活動スペース、大型医療機器の搭載、多数負傷者の搬送、移動応急救護所、食料・医薬品・資機材・人員の搬送、燃料の補給が難しい被災地でガソリンよりも容易に確保することができる軽油を採用している点など。なお、緊急消防援助隊の燃料補給車で給油出来るのは軽油のみである為、トライハートは現在販売されている高規格基準救急車で唯一給油を受けることが可能。
  17. ^ 2台導入されている。
  18. ^ 総合周産期母子医療センタードクターカー(2代目モデル後期型)として運用されている。
  19. ^ ドクターカー(リニューアルモデル前期型)として運用されている。
  20. ^ 総合周産期母子医療センタードクターカー(リニューアルモデル前期型)と救命救急センターのドクターカーDMAT運用高規格救急車(2代目モデル後期型)として2台運用されている。
  21. ^ 会津中央病院救命救急センタードクターカーとして運用(リニューアルモデル前期型)されている。予備車だった2代目モデル後期型(キャンターベース)は2019年に乗用車型ドクターカー(5代目 SK系スバル・フォレスター)に更新された。
  22. ^ 太田西ノ内病院救命救急センタードクターカー(リニューアルモデル前期型ロングボデー仕様)として運用されている。
  23. ^ リニューアルモデル前期型。
  24. ^ 通常時は総合周産期母子医療センタードクターカーとして運用され、災害発生時は新潟県DMATのDMAT Carとして運用される(リニューアルモデル前期型)。
  25. ^ 総合周産期母子医療センタードクターカーとして運用されている。(リニューアルモデル後期型)。
  26. ^ 通常時は高度救命救急センターで Mobile ECMO(体外式膜型人工肺)対応ドクターカーとして運用され、 災害発生時は群馬県DMATのDMAT Carとして運用される。(リニューアルモデル後期型)。
  27. ^ 小児救急センター・PICUの ドクターカー として運用されている。(リニューアルモデル後期型)
  28. ^ 総合周産期母子医療センター・NICU ドクターカー として運用されている。(リニューアルモデル後期型)
  29. ^ 日中は救急要請の多い東京駅で待機し、東京駅並びに駅周辺で発生する救急事案に対応、夜間は深夜・早朝帯に救急要請の多い新宿駅周辺に移動し、新宿駅並びに駅周辺の救急事案に対応する、日本初の救急需要地域前進待機型救急隊。
  30. ^ 車外より気圧を低くして車内の空気が外部に漏れ出ない状態のこと。気圧の差が生じると、気圧が高い場所(陽圧)から 低い場所(陰圧)へ流れる仕組みを利用している。なお、車内患者室の空気は酵素HEPAフィルターと紫外線殺菌ランプにより病原微生物を含む空気は浄化されてから車外へ排出される。この仕組みは感染症用陰圧室に設置されているCDC(アメリカ疾病予防管理センター)ガイドラインに準拠した陰圧装置と同じ仕組みである。
  31. ^ 通常の倍赤色点滅灯などを装備しアメリカの救急車のような外見をもっていた特別仕様のトライハート。
  32. ^ スーパートライハートに搭載された大阪サイレン製フェードイン・フェードアウト機能、住宅モード機能付救急車用サイレンアンプMK10は四街道市消防本部と大阪サイレンが共同開発した製品で、スーパートライハートが日本で初めて装備した救急車両である。 スーパートライハートに搭載以降、フェードイン・フェードアウト機能(サイレン吹鳴開始時は音が徐々に大きくなり、サイレン停止時は徐々に音が小さくなって止まる)、住宅モード機能(音色が半音下がりソフトな音色になる)付救急車用サイレンアンプは、 現在では救急車の標準仕様になるほど全国に普及している。

出典

  1. ^ 東京消防庁 http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/ma.html 救急機動部隊 Mobility Ambulance Unit
  2. ^ 姫路赤十字病院 http://himeji.jrc.or.jp/category/annai/setsubi.html 緊急車両
  3. ^ 大阪府立中河内救命救急センター http://www.nmcam.jp/ACTIVITES_DrCAR.htm 中河内ドクターカー
  4. ^ 青森県立中央病院新生児科 http://aomori-nicu.jp/date/2013/03?cat=7 二代目ドクターカー
  5. ^ 会津中央病院 https://www.onchikai.jp/hospital/kyumei 救命救急センター
  6. ^ 一般財団法人太田綜合病院 https://www.ohta-hp.or.jp/n_nishi/04hos/center/99cen_n.htm#01 ドクターカーのご紹介
  7. ^ 総合病院国保旭中央病院 http://www.hospital.asahi.chiba.jp/section/center/newborn/index.html 周産期母子医療センター新生児科
  8. ^ 前橋赤十字病院 高度救命救急センター https://drheli-gunma.blogspot.com/search/label/%E7%97%85%E9%99%A2%E3%83%89%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC 新ドクターカーが誕生しました!~ECMO Car DMAT Car & 地域病院救急車~
  9. ^ 国立成育医療研究センター https://www.ncchd.go.jp/news/2018/doctorcar.html 高規格救急車(ドクターカー) 記念式典を開催
  10. ^ 東京都立小児総合医療センター http://www.byouin.metro.tokyo.jp/shouni/top_torikumi/torikumi04.html ドクターカー
  11. ^ 札幌市消防局
  12. ^ 東広島市消防局
  13. ^ 札幌市消防局
  14. ^ 青森県立中央病院会津中央病院
  15. ^ 東京消防庁緊急消防援助隊 https://twitter.com/Tokyo_Fire_D/status/1037585925876772865 東京消防庁 Twitter 災害派遣情報 第2報(2018年9月6日) 2018年9月11日閲覧
  16. ^ 青森県立中央病院新潟市民病院