東急2000系電車

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東急2000系電車
2000系(田園都市線在籍時)
2000系(田園都市線在籍時)
基本情報
運用者 東京急行電鉄
製造所 東急車輛製造
製造年 1992年 - 1993年
製造数 3編成30両
運用開始 1992年3月29日
主要諸元
編成 10両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V(架空電車線方式
最高運転速度 110 km/h(東急線内)
80 km/h(半蔵門線内)
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
編成定員 1,412(座席522)人
車両定員 先頭車130(座席48)人
中間車144(座席54または51)人
自重 26.2 - 34.7 t
編成重量 312.4 t
全長 20,000 mm
全幅 2,800 mm
全高 4,035 mm
4,050 mm(パンタ付車両)
台車 ボルスタレス台車 TS-1010・TS-1011
主電動機 かご形三相誘導電動機
主電動機出力 170 kW
駆動方式 TD継手式中実軸平行カルダン駆動方式
歯車比 99:14(7.07)
制御方式 VVVFインバータ制御
制御装置 GTO素子・1C8M(更新前)
SiC-MOSFET素子・1C4M(更新後)
制動装置 ATC連動回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
保安装置 東急形ATC新CS-ATC
備考 特記を除き改番前の諸元
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東急2000系電車(とうきゅう2000けいでんしゃ)は、1992年(平成4年)に東京急行電鉄が導入した通勤形電車である。

2019年(平成31年)には、いずれの編成も9020番台に改番されている(後節参照)。また、本記事では編成表記を渋谷・押上・大井町方先頭車の車両番号で表す(例:2003編成)。

概要[編集]

田園都市線の輸送力増強のため、1992年(平成4年)から1993年(平成5年)にかけて10両編成3本が東急車輛製造で製造され、1992年平成4年)3月29日に営業運転を開始した[1]。。

1986年昭和61年)に登場した9000系をベースに設計・製造している。基本的には同系の設計を踏襲しつつも帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄半蔵門線乗り入れへの対応、客室内の改良、乗り心地の向上などが図られた。また、設計に当たっては「より良い居住性」「運転操作性の向上」「省エネルギー化」「保守性の改善」などの9000系からの基本理念に加え「人にやさしい車両」を目指している。

1992年に10両2編成が田園都市線に投入され、1993年2月には1編成(2003編成)が東横線に暫定投入された。同編成はその後、同年11月に中間車2両が落成したため、10両編成化の上で田園都市線に転属した。

田園都市線での運用は2003年(平成15年)3月19日から開始された3者相互直通運転(田園都市線・半蔵門線・東武線)以前は、他に田園都市線に所属している8500系5000系などと共通運用であったが、3者相互直通運転開始以降は東武線への乗り入れ対応機器などは搭載せず、同線には直通しない運用に充当されているため、営業運転区間は最大でも中央林間駅から半蔵門線押上駅までの運用となる。これは、本系列は8500系や5000系と比べ編成数が3本と極端に少なく、東武線内における乗務員教習の手間の問題から東武線乗り入れ編成から除外されたことによる。東武線乗り入れ非対応編成には、その旨を示すため前面非常扉の窓に「K」のマークを貼付している。

東急では1999年(平成11年)ごろまで車両寿命を40年から50年程度とする方針の下で車両の更新を行っていたため、東急における旅客営業用電車の製造は、2000系の導入後、1999年(平成11年)に登場した3000系まで途絶えることになった。その後、車両施策が従来より短い寿命で車両を取り替える方針に転換され、2002年(平成14年)から5000系が、2018年(平成30年)からは2020系がそれぞれ導入を開始している。

車体[編集]

スカートを装着する前の2000系
(2003年11月22日 / 田園都市線つきみ野駅
スカートの装着、行先表示器のフルカラーLED式への交換、ヘッドライトのLED化改造が行われた2000系
(2017年4月19日 / 田園都市線二子玉川駅

9000系とほぼ同様のステンレス鋼製20m級軽量車体の4扉車である。これは車両設計費の低減や構体・扉・窓などの部材を共通化することで予備品の低減、さらに運転時・検修時の取り扱い作業の標準化・統一を図る目的である[2] 。前面と側面には東急のコーポレートカラーである赤色のラインカラーを巻く。

前面は非常口貫通式としており、地下鉄線内での非常用の梯子が設置してある。当初は小形であったが、後年に大形のものへと交換した。2005年(平成17年)1月に3編成すべてに補助排障器(スカート)を装着した。

行先表示器は、初期2編成は字幕式であり、2003編成は3色LED式(落成から営業運転開始までは他編成同様字幕式)であった。その後、全編成が5000系列と同じフルカラーLED式種別表示器と白色LED式行先表示器に交換された[3]。なお、2003編成については表示スペースが大きいながら8500系と同じ寸法で種別表示部分が小さく表示され、後に交換された2001・2002編成は表示スペースに適した大きな表示方式となり、さらにその後2003編成もこれに交換された。

この前面の表示器の横には急行灯があり、優等列車として運転される際に点灯していたが、2002年(平成14年)4月より使用が停止され、前述のフルカラーLED化の際に撤去し、その部分は塞がれた。3号車にあたるデハ2200形の妻面と床下には半蔵門線用の誘導無線アンテナと無線送受信機本体を搭載している。また、後年に車両間転落防止幌が設置された。

冷房装置1000系1006編成以降と同一の東芝製で11.6kW (10,000kcal/h) 容量のRPU-2214C形を1車あたり4台搭載しているが、2台をまとめて1つのキセに収めることにより、見ばえの向上とパンタグラフ搭載車と非搭載車での配置の共通化を図った。冷房制御方式は1000系で実績のあるインバータによる能力可変制御を採用し、快適性の向上を図っている。

内装[編集]

第1・第2編成の3・9号車以外の客室内装は9000系とほぼ同じ内装である。ただし、冷房ダクトを用いた冷風拡散方式や網棚の端を延長して物を載せやすくした形状などは1000系に準拠したものとなっている。また、従来客室壁に取り付けていた消火器は収納キセに収めるように変更した。

客室はすべてロングシート(1人の掛け幅は440mm)配置である。各車上り方に優先席がある(クハ2000形は下り方)。天井補助送風機を設置しているが、田園都市線の混雑に配慮して先頭車に9台、中間車に10台と9000系よりも台数が多くなっている。

1992年製の1次車の3・9号車では「快適な空間づくり」を目指して在来各系列では見られなかったアイデアを試験的に施している。これは今後の通勤電車の内装のモデルケースとしての意味合いもある[2]

  • 上り方車端部に車椅子スペースを設置。
  • 7人掛けロングシートを3+4人に区分し、仕切部にスタンションポール(縦握り棒)を新設。形状は2両で異なる(下の写真も参照)。
  • 座席は赤と黄色ベースの柄付きモケットを採用(3号車はストライプ、9号車は花柄)。
  • ドア間の7人掛けロングシート下部の蹴込み板を後退させ、足下のスペースを拡大(車端部の3人掛け部は大形のまま)。
  • カーテンに東急沿線の名所である横浜ベイブリッジ渋谷109・旧田園調布駅舎をデザイン。
  • 新しいデザイン(三角形の窓を縦に2枚配置)の貫通扉を採用。
  • 禁煙表示と消火器表示などの車内表示をピクトグラム化。

これらの試みは2003編成で一部改良の上、全面的に採用した。なお、試作した座席モケットとカーテンは経年により汚れが目立つことが判明したため、後年に従来車と同じ無地のものへ交換された。

座席部の縦握り棒は1次車では3号車(2201号と2202号)に仕切り上に立つ形態を、9号車(2401号と2402号)には仕切り前に立つ形態を採用した。試行の結果、2003編成では後者の形態が採用された。本系列で採用した花柄座席モケットやスタンションポール(縦握り棒)は、同時期に室内更新工事を実施していた7600系8000系においても採用された。

また、2003編成は、東横線において8両で運用していた際、車椅子スペースは編成の3・7号車、座席モケットは渋谷方から奇数号車が花柄、偶数号車がストライプとされた。その後、田園都市線への転属の際、新たに増備されたサハ2703はストライプ、サハ2803が花柄となり、10両編成におけるモケットの順番が不規則となった。

落成時から自動放送装置を搭載しているが、田園都市線だけでなく乗り入れ先の半蔵門線でも自動放送を実施している。側面に車外スピーカーを搭載し、車掌の操作で当時の営団と同じ仕様の「扉が閉まります。ご注意ください」という乗降促進放送を流すことができる。

2003年(平成15年)10月から2004年(平成16年)3月にかけて、側入口の鴨居部にLED式の2段式旅客案内表示器とドア開閉を予告する表示灯を千鳥配置で設置した。ともにドアチャイム用のスピーカーを内蔵している。また、優先席のつり革は後年にオレンジ色で三角形のものに交換されている。

乗務員室[編集]

乗務員室についても乗務員が取り扱う機器を統一するため、9000系と基本的に大きな変更はない。本系列では左側の壁に半蔵門線用の誘導無線の送受話器がある。乗務員室内アイボリー色、運転台計器盤はつや消し茶色のカラースキームを採用している。主幹制御器はT字形ワンハンドルマスコン(デッドマン装置)付である。フロントガラスの日除けにはロール式のカーテンが設置してある。また、後年に非常扉部にもカーテンが追加された。

乗務員室仕切りは前面窓と同じ配置で仕切窓が3枚あり、そのうち客室から見て左側2枚の窓には遮光幕を設置するが、遮光幕は一般的なロールアップ式ではなくアルミ製・板状のものである。

車掌スイッチは当初は機械式であったが、2007年(平成19年)に間接制御式(リレー式)に交換された。

走行機器[編集]

GTO素子を用いた日立製作所VVVFインバータ制御装置(VF-HR-132形)を採用、1台の制御器で2両分8個のモーターを制御する1C8M制御方式である。

主電動機はTKM-92形かご形三相誘導電動機(出力170kW、端子電圧1,100V、電流115A、周波数64Hz、回転数1,860rpm)である。

ブレーキ装置は回生ブレーキを併用したアナログ指令式の全電気指令式空気ブレーキで、ATCの連動式である。また、ブレーキ制御には遅れ込め制御を併用している。

空気圧縮機 (CP) はレシプロ式低騒音形のHS-20-1形を編成で4台搭載している。補助電源装置は東芝製GTO素子を使用した170kVA出力静止形インバータ (SIV) であり、編成で3台搭載している。集電装置剛体架線に対応した菱形パンタグラフ(PT44-S-D-M形)であり、9000系と同一品である。

現在の保安装置はいずれも東急線・東京メトロ用のATC装置を搭載している。

台車[編集]

9000系(試験車を除く)から採用しているボルスタレス台車を基本としているが、円筒形積層ゴム式軸箱支持装置の採用などにより、高速時の乗り心地を向上させた。形式はTS-1010・TS-1011形である。基礎ブレーキは電動車が片押し式踏面ブレーキ付随車ディスクブレーキとしている。本系列での採用を前に9000系クハ9015号において1991年(平成3年)3月から6月にTS-1009台車として実車試験を実施して、採用に問題がないことを確認した。

運用[編集]

  • 全車が長津田検車区に配置され、田園都市線から東京メトロ半蔵門線への直通運用に使用していた(前述のとおり東武線には直通できない)。現在は全編成が大井町線に転属している(後節参照)。

転属前の編成[編集]

  • 電動車 (M) 6両と付随車 (T) 4両による6M4T構成の10両編成
 
← 押上・渋谷
中央林間 →
製造年
号車 1 2 ◇3 4 5 ◇6 7 8 ◇9 10
形式 クハ2000
(Tc2)
デハ2250
(M2)
デハ2200
(M1)
サハ2700
(T2)
デハ2350
(M1)
デハ2300
(M2)
サハ2800
(T1)
デハ2450
(M2)
デハ2400
(M1)
クハ2100
(Tc1)
搭載機器   SIV,CP CONT   SIV,CP CONT CP SIV,CP CONT  
車号 2001
2002
2251
2252
2201
2202
2701
2702
2351
2352
2301
2302
2801
2802
2451
2452
2401
2402
2101
2102
1992年
2003 2253 2203 2703 2353 2303 2803 2453 2403 2103 1993年
凡例
CONT:主制御器 (1C8M) 、SIV:補助電源装置(静止形インバータ)、CP:空気圧縮機、◇:パンタグラフ、<>:シングルアームパンタに換装、太字:リニューアル車

リニューアル[編集]

大井町線仕様の2003F
(2018年12月30日 / 緑ヶ丘駅

2018年に2003編成の付随車を除く8両に機器更新、内装リニューアル工事を施工した。パンタグラフが2丁・シングルアーム化され、サハとパンタ付き車両以外に車椅子スペースが増設されたが、パンタ付き車両は増設準備工事となっている[4]

 
← 押上・渋谷
中央林間 →
リニューアル日
号車 1 2 <3> 4 5 <6> 7 8 <9> 10
形式 クハ2000
(Tc2)
デハ2250
(M2)
デハ2200
(M1)
サハ2700
(T2)
デハ2350
(M1)
デハ2300
(M2)
サハ2800
(T1)
デハ2450
(M2)
デハ2400
(M1)
クハ2100
(Tc1)
搭載機器   SIV,CP SiC   SIV,CP SiC CP SIV,CP SiC  
車号
2003 2253 2203 2703 2353 2303 2803 2453 2403 2103 2018年

その後、再び長津田車両工場へ入場し5両編成の大井町線仕様となって出場した[5]

2018年中に7両が除籍廃車された[6]

 
← 大井町
二子玉川・溝の口・鷺沼
転入年月
号車 1 <2> 3 <4> 5
形式・車種 クハ2000
(Tc2)
デハ2300
(M)
デハ2450
(M2)
デハ2400
(M1)
クハ2100
(Tc1)
搭載機器 CP SiC SIV,CP SiC CP
車号 2003 2303 2453 2403 2103 2018年11月


9020番台への改番[編集]

2019年2月11日に2002×10Rの3両と2003×10Rの2両を組み込んだ編成が大井町線で営業運転を開始した。これに際し、当該編成は9022編成となる[7]。また、2003編成の2号車が旧デハ2303から旧デハ2302に差し替えられ、改番を行い9023編成に変更。その後3月18日に抜いたデハ2303を入れた9021編成が出場した。これで全3編成が大井町線に出揃っている。

また、本系列の形式名は「9020系」か「9000系9020番台」であるかについては、東急電鉄公式の本系列に関する車両紹介は2019年9月時点で存在しないが、東急電鉄公式サイト内「安全報告書2019」においては「9020系」の表記が見られる[8]


大井町線用(長津田検車区)[編集]

 
← 大井町
二子玉川・溝の口・鷺沼
転入年月 更新 備考
号車 1 <2 3 <4> 5
形式・車種 クハ9020
(Tc2)
デハ9220
(M)
デハ9320
(M2)
デハ9420
(M1)
クハ9120
(Tc1)
搭載機器 CP SiC SIV,CP SiC CP
車号 9021
(2001)
9221
(2402)
9321
(2353)
9421
(2303)
9121
(2101)
2019年3月 4号車のデハ9421は(元デハ2303)は、2018年11月16日から2019年1月までは2003編成の2号車で運行。
2003編成が9023編成に変更された際にデハ9421として9021編成の4号車に移転。
9022
(2002)
9222
(2202)
9322
(2253)
9422
(2203)
9122
(2102)
2019年3月
9023
(2003)
9223
(2302)
9323
(2453)
9423
(2403)
9123
(2103)
2019年2月 2018年11月16日大井町線営業運転開始時から2019年1月までは2003編成として運行。
改番時に2号車をデハ2303からデハ2302に変更。

脚注[編集]

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  1. ^ 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」1992年9月号89頁「東京急行電鉄の話題 2000系営業運転開始」によれば同年3月29日から営業運転を始めたと記載されている。
  2. ^ a b 「レイルマガジン」1992年5月号
  3. ^ 鉄道友の会「RAIL FAN」No.661記事「2006年度 東急総決算」
  4. ^ 交友社「鉄道ファン」2018年6月号
  5. ^ 東急2000系2103編成が大井町線仕様に - 交友社「鉄道ファン」railf.jp 鉄道ニュース 2018年9月30日
  6. ^ 鉄道ダイヤ情報2019年1月号
  7. ^ 東急2000系改め,9020系が登場 - 交友社「鉄道ファン」railf.jp 鉄道ニュース 2019年2月18日
  8. ^ https://www.tokyu.co.jp/railway/service/activity/safety/webcate_list.html

参考文献[編集]

  • 渡辺峰男「新車ガイド 東急2000系」『鉄道ファン』1992年5月号(通巻373号)、交友社
  • 尾崎正明「東京急行電鉄2000系」『鉄道ピクトリアル新車年鑑1992年版』1992年10月臨時増刊号(通巻566号)、鉄道図書刊行会
  • 川口雄二「東京急行電鉄2000系電車」『鉄道ピクトリアル』1992年5月号(通巻559号)、鉄道図書刊行会。
  • 渡辺峰男「東京急行電鉄 2000系」『電気車の科学』1992年4月号(通巻528号)、電気車研究会。
  • 川口雄二「東京急行電鉄2000系について」『レイルマガジン』1992年5月号 、ネコ・パブリッシング

関連項目[編集]