植木雅俊

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(共著)

植木 雅俊(うえき まさとし、1951年 - )は、日本の仏教学者

経歴[編集]

長崎県生まれ。仏教思想研究家。島原高校卒。九州大学理学部物理学科卒、同大学院理学研究科修士課程修了(理学修士)。東洋大学大学院文学研究科博士後期課程中退(文学修士)。1979年からジャーナリストとして学芸関係の執筆・編集に携わる。1991年から東方学院中村元に学ぶ。1992年、小説『サーカスの少女』でコスモス文学新人賞受賞。2002年「仏教におけるジェンダー平等の研究──『法華経』に至るインド仏教からの考察」でお茶の水女子大学から博士人文科学)の学位を取得(男性初)。2008年から2013年まで東京工業大学世界文明センターで非常勤講師を務める。NHK文化センター、朝日カルチャーセンターで講義を行なう。日本ペンクラブ会員。日本印度学仏教学会会員。比較思想学会会員。

岩波文庫と中央公論社版の『法華経』の各サンスクリット語原文翻訳の問題点(前者に関しては500箇所余り)を検討・批判した注釈をそなえ、1.サンスクリット原文、2.鳩摩羅什訳の書き下し文と、3.サンスクリット語からの現代語訳の3つを対照させた『梵漢和対照・現代語訳 法華経』(上・下)で、2008年に第62回毎日出版文化賞を受賞。1999年にはチベットのポタラ宮殿で発見された『維摩経』のサンスクリット原典を現代語訳した『梵漢和対照・現代語訳 維摩経』で、2013年に第11回パピルス賞を受賞。

その他の活動[編集]

2006年10月20日に東京大学仏教青年会で「仏教の女性観─その男女平等思想を考える─」と題して講演を行なう。

2007年3月24日に法政大学国際日本学研究所で「仏教受容の仕方についての日中の比較」と題して研究報告を行なう。後にそれを増補して、『仏教、本当の教え――インド、中国、日本の理解と誤解』(中公新書)として出版。

2008年12月21日放送の『菅原文太 日本人の底力』(ニッポン放送)で俳優の菅原文太と、毎日出版文化賞を受賞した『梵漢和対照・現代語訳 法華経』をめぐって対談。

2010年度後期に東京工業大学世界文明センターで「思想としての法華経」と題し集中講義を行なう。後にそれをもとにまとめた『思想としての法華経』が岩波書店から出版される。

2013年1月20日、NPO法人東京自由大学で「仏教との出会いと、その後」と題して、3時間講演。

2013年に直木賞を受賞した作家の安部龍太郎が小説『等伯』上・下巻を執筆する際に、『法華経』の思想や、長谷川等伯の「松林図」(国宝)についての『法華経』からの思想的意義付けについて、安部にアドバイスした[1]

2013年5月11日、日本近代文学館(東京・駒場)の主催する第73回「声のライブラリー」(自作の朗読と座談会)で『梵漢和対照・現代語訳 法華経』から「長者窮子の譬え」の箇所を朗読(20分)、続いて詩人の伊藤比呂美の司会で、古典エッセイストの大塚ひかりと座談会を行なう[2]。同文学館でDVDを視聴可能。

2013年7月14日、真宗大谷派名古屋別院・信道講座で「鳩摩羅什訳の絶妙さ」と題して2時間講演(「信道 2013年度」2014年10月発行に収録)。

2013年7月26日、創価大学の創価教育研究所の招きで、「絶妙だった鳩摩羅什訳ーーサンスクリット語から『法華経』『維摩経』を翻訳して」と題して3時間講演(「創価教育」第7号に収録)。

2014年1月11日、NPO法人東京自由大学(理事長、鎌田東二京都大学教授)の主催する「人類の知の遺産・第VIII期6:中村元―わが尊敬する恩師」と題して、3時間講演。

2014年2月23日、福岡県文化団体連合会(会長、貫正義)の主催する「パピルス賞受賞記念・植木雅俊文化講演会」で「私の学問人生」と題して、2時間講演。

2014年6月15日、日本現代詩人会H氏賞(詩人の芥川賞)授賞式で記念講演「お釈迦さまも詩人であった」を行う。

2015年1月1日、学士会(理事長=久保正彰・元日本学士院院長)が発行する「學士會会報」(明治20年創刊、6万部発行)910号に、論考「思想としての法華経」が掲載[注釈 1]

2015年3月、4月、5月の3回、計15時間以上にわたって東工大名誉教授・橋爪大三郎と法華経について対談を行った[注釈 2]この記録は、中村元博士没後16年目の日(10月10日)に『ほんとうの法華経』(ちくま新書)として刊行された。

2015年7月11日、インド大使館で行なわれたインドと日本の詩人、文学者、学者ら13人によるシンポジウム「インド文学祭」で、「日本文学に見る大乗仏教の影響――短歌、俳句を中心に」と題して発表。

2017年3月15日、京都深草の元政上人第350遠忌報恩法要が、東京・大田区の池上本門寺で行なわれ、「元政上人の詩歌と仏教」と題して、松尾芭蕉をはじめとするほとんどの江戸期文学者に影響を与えた江戸時代随一の漢詩人・歌人であった元政上人の作品を仏教思想から読み解き、鑑賞する1時間の記念講演を行った[3]

2017年7月2日、日本科学協会主催セミナー「木魂する科学とこころ――科学と文化の交差点(宗教文化篇)」で、「原始仏教の知と信」と題して講演し、科学史家・伊東俊太郎らとシンポジウムを行う。

2018年4月、NHK-Eテレ「100分de名著」で植木雅俊訳『サンスクリット原典現代語訳 法華経』上下巻が「4月の名著」として取り上げられ、〝指南役〟として出演。小説『等伯』を執筆中の安部龍太郎氏に法華経の思想について教示したことから、最終回では安部氏と対談も行った。

2018年12月22日、二松学舎大学人文学会第118回大会で「インド仏教の日本文学への影響――短歌・俳句を中心に」と題して一時間半の記念講演を行なう。

中村元とのエピソード[編集]

中村が逝去するまでの10年近く毎週3時間、中村から受講した時の講義ノートをもとに、『仏教学者 中村元――求道のことばと思想』(角川選書)を2014年に上梓した。批評家の若松英輔は「書かれるべき人が、書くべき人によって書かれた」と評した[4]

著書[編集]

単著[編集]

  • 仏陀の国・インド探訪――人間主義の源流を求めて』メディア・ルネッサンス、1994
  • 『男性原理と女性原理――仏教は性差別の宗教か?』中外日報社、1996
  • 『仏教に学ぶ対話の精神』中外日報社、1997
  • マザー・テレサ菩薩の精神――仏教の倫理観を求めて』中外日報社、1997
  • Gender Equality in Buddhism, Asian Thought and Culture series vol. 46, Peter Lang Publ. Inc., New York, 2001
  • 『仏教のなかの男女観――原始仏教から法華経に至るジェンダー平等の思想』岩波書店、2004、オンデマンド版2013。博士論文:お茶の水女子大学提出
  • 釈尊日蓮の女性観』論創社、2005
  • 『仏教、本当の教え――インド、中国、日本の理解と誤解』中央公論新社<中公新書>[注釈 3]、2011
  • 『思想としての法華経』 岩波書店、2012
  • 『仏教学者 中村元――求道のことばと思想』 角川学芸出版<角川選書>、2014
  • 『人間主義者、ブッダに学ぶ――インド探訪』 学芸みらい社、2016
  • 100分de名著 法華経 あなたもブッダになれる』、NHK出版、2018。4月放送テキスト
  • 『差別の超克――原始仏教と法華経の人間観』 講談社学術文庫、2018。「仏教のなかの男女観」を改題・改訂
  • 『江戸の大詩人 元政上人-京都深草で育んだ詩心と仏教』 中央公論新社<中公叢書>、2018

その他[編集]

  • Images of Women in Chinese Thought and Culture(Robin Wang 博士、植木真紀子らとの共著), Hackett Publ. Inc., Massachusetts, 2003
  • 『東アジアの日本観』(共著)、法政大学日本学研究叢書、三和書籍、2010
  • 宮沢賢治 イーハトヴ学事典』(共著)、弘文堂、2010
  • 『科学者の本棚』(共著)、岩波書店、2011
  • 『比較詩学と文化の翻訳』(共著)、大手前大学比較文化研究叢書、思文閣、2012
  • 『鳩摩羅什〔訳〕の絶妙さ――仏教との出会いから『法華経』『維摩経』の翻訳まで』、信道講座講演録「信道(2013年度)」所収、真宗大谷派名古屋別院、2014
  • 『思想としての法華経』、學士會会報910号(2015年1月1日)、学士会、2015
  • 『仏教の出会いと人間主義の探求』、中日新聞、2016年9月13、20日付(東京新聞は、9月17、24日付け)
  • 「元政上人の詩歌と仏教」、『深草元政上人墨蹟』(大神山隆盛寺文庫、2016年10月)の解説
  • 「仏教50話」、西日本新聞の文化欄に2017年9月12日から11月28日まで連載
  • 「私の仏教探求の旅」、『フラタニティ』No. 8号所収、ロゴス、2017
  • 「なぜ法華経は『諸経の王』なのか」、『仏教がわかるお経入門』(共著)所収、洋泉社MOOK、洋泉社、2018年
  • 「『白蓮華』批判」、館報「日本近代文学館」282号所収、2018
  • 「原始仏教の知と信」、金子務監修・日本科学協会編『科学と宗教――対立と融和のゆくえ』(共著)、中央公論新社、2018

現代語訳[編集]

紹介[編集]

対談[編集]

  • 大野晋・植木雅俊対談「言葉による意思疎通を可能にするものは何か?」『仏眼』第10号(2000年9月15日)、『仏眼』第11号(2000年11月15日)
  • 『ほんとうの法華経』(社会学者・橋爪大三郎との対談共著)ちくま新書、2015年10月

関連人物[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 編集委員会(編集委員=佐々木毅元東大総長ら7人)より依頼を受け執筆した原稿。
  2. ^ この対談は、橋爪の7年来の念願で実現したという[要出典]
  3. ^ 本書の127頁16行目から129頁13行目までが、2015年の北海道医療大学の入学試験で国語・長文読解の問題として出題された[要出典]

出典[編集]

  1. ^ 『等伯』の「あとがき」[要文献特定詳細情報]、植木雅俊著『思想としての法華経』の「あとがき」[要文献特定詳細情報]、安部龍太郎「直木賞を待つ」日本経済新聞2013年1月20日付、同「直木賞に選ばれて」毎日新聞2013年1月24日付夕刊など。[要文献特定詳細情報]
  2. ^ 第73回 植木雅俊/大塚ひかり/司会・伊藤比呂美 - 日本近代文学館”. 公益財団法人 日本近代文学館. 2018年9月12日閲覧。
  3. ^ 「中外日報」3月24日付、「日蓮宗新聞」4月10日付。[要文献特定詳細情報]
  4. ^ 『読売新聞』、2014年9月7日付[要文献特定詳細情報]