欧州保守改革グループ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
欧州保守改革グループ
欧州議会会派
名称 欧州保守改革グループ
英語略称 ECR[1]
仏語略称 CRE
イデオロギー 保守主義
経済自由主義
欧州懐疑主義
連邦主義
加盟団体 欧州保守改革党
結成 2009年6月22日
代表者 リチャード・ウェグトゥコ英語版
ラッファエレ・フィット英語版
所属議員数 61
ウェブサイト http://www.ecrgroup.eu/

欧州保守改革グループ(おうしゅうほしゅかいかくグループ)[1]とは、反連邦主義保守系の欧州議会の政治会派[2]。2009年の欧州議会議員選挙後に結成された。欧州規模の政党である欧州保守改革党に所属する政党の欧州議会議員を中心に形成されている。

会派内において、とくに大きい政党ポーランド法と正義である。2020年1月のイギリスの欧州連合離脱までは、イギリスの保守党も主要な参加政党であった。

結成時の参加政党の多くは、旧欧州人民党・欧州民主主義グループ内のグループであった「欧州民主主義グループ」から参加している。

沿革[編集]

欧州保守改革グループの起源は2005年、あるいはそれ以前にまでさかのぼる。議員の出身国の構成が1か国のみである場合、欧州議会における会派として正式に認定されない。さらに欧州議会の議院規程では、会派に所属する議員数にも下限が定められている[3]。そのため会派を結成しようとする各政党は友党を探さなければならない。

起源[編集]

2005年にイギリス保守党は党首選挙が実施された。このとき保守党の欧州議会議員は欧州人民党・欧州民主主義グループ内の小グループである欧州民主主義グループを形成していた。党首選挙の候補者のひとりであるデーヴィッド・キャメロンは欧州人民党・欧州民主主義グループからの離脱を主張した。キャメロンと党首選を争っていたデービッド・デービスデイリー・テレグラフ紙に投書し、小グループのままでいたほうが、保守党所属の欧州議会議員が欧州人民党に対して影響力を持ちながら適度な距離を維持できると主張した。これに対して保守党所属の欧州議会議員マーティン・キャラナンはこの翌日に同紙で次のように応じている。

...David Davis (Letter, November 10) is sadly misinformed about our Conservative MEPs' relationship with the European People's Party (EPP) in the European Parliament. He claims that Conservatives are members of the European Democrat group, which forms an alliance with the EPP. In reality, though, the ED does not exist. It has no staff or money and is, in effect, a discussion group within the EPP...Far from being a symbolic step, as Mr Davis suggests, leaving the EPP is the one hard, bankable commitment to have come out of this leadership campaign...

(日本語試訳)…残念ながらデービッド・デービス議員の11月10日の投書は、われわれ保守党所属の欧州議会議員が欧州議会における欧州人民党との関係を誤解しているということを示している。デービス議員は、保守党は欧州民主主義グループに参加しており、欧州人民党と連携を構築していると主張している。ところが実際には、欧州民主主義グループという会派は存在していないのである。グループには職員や金はなく、事実上、欧州人民党の内部の議論グループに過ぎないのである。…デービス議員が示しているように、欧州人民党から離れるということは象徴的なステップでは決してなく、今回の党首選挙で出された、困難ではあるが利益のある公約である… — Martin Callanan、The Daily Telegraph of November 11, 2005

キャメロンはこの党首選挙で勝利し、2005年12月に党首に就任すると、新会派の発足に向けた行動をただちに行なうという意思を表明した。

2006年6月、キャメロンは作業の遅れに不満を感じ、影の内閣外務・英連邦大臣ウィリアム・ヘイグに対して2006年7月13日までに新会派結成ができるように指示した[4]。ところがキャメロンが指定した期日に、新会派の結成は2009年の欧州議会議員選挙後までずれ込むということが発表された[5]

欧州改革運動[編集]

新会派の結成までの当面のあいだ、欧州規模で活動する政党連合「欧州改革運動」が結成され、欧州議会の外部で活動することとなった[6]。同日、ポーランドの 法と正義と市民プラットフォームの両党が新会派の将来的な参加政党と見られていた。ところが市民プラットフォームは欧州人民党から離脱しないということを表明し、また法と正義も諸国民のヨーロッパ連合にとどまるとした[7]。また翌日にはアルスター統一党党首のレグ・エンペイが、同党が2009年の選挙後に新会派に参加することを表明した[8]

チェコの市民民主党は欧州改革運動に参加していたが、同党党首のミレク・トポラーネクは欧州人民党・欧州民主主義グループにとどまることを明言しなかった[9]。2007年6月27日、トポラーネクは同党所属の各国政府首脳が集まる欧州人民党サミットに出席し、新会派の脆弱さについての見通しを示した[10]

英国放送協会は2007年に、新会派はおよそ100名の議員が参加する、欧州議会内の第3会派になるという推測を示していた。

2008年7月、欧州議会は会派を形成する要件を引き上げ、所属議員数を25名以上、所属議員の出身国の構成が7か国以上とすることに変更した。この変更により新会派が結成できるかという疑念が生じた[11]。2008年12月7日に市民民主党党首に再選されたトポラーネクは同月11日の欧州人民党サミットに出席し[12]、その場で市民民主党の新会派に対する考え方がただされた。

2009年欧州議会議員選挙[編集]

2009年の欧州議会議員選挙が近づき、キャメロン、トポラーネク、イギリス保守党所属の欧州議会議員で新会派設立の世話人となっているジオフレー・ヴァン・オーデンは、他党の新会派への参加を模索した[13]

新会派の名称が暫定的に「欧州保守グループ」とされ[14]、その後「欧州保守改革グループ」に定められた[15]。当初は84人の欧州議会議員が集まると見込まれていたが[16]、その後およそ60名となった[17]。このとき市民民主党と保守党とのあいだで対立が起きており、市民民主党は新会派にできるだけ多くの欧州議会議員を集めたいとしていた一方で、保守党はデンマークデンマーク国民党イタリア北部同盟といった外国人排斥(外国人嫌悪人種主義)や暴力的過激主義を掲げる政党の参加を拒もうとしていた[18]

結成[編集]

2009年6月22日、新会派参加者の正式な一覧が発表された[2]。同じ日のフィナンシャル・タイムズ紙は社説で、新会派に対する批判を掲載した。

...Mr Cameron may also claim he is acting on the principle of defending UK sovereignty. But he is, in practice, jeopardising British influence on matters of international importance; the EU is now turning its focus to climate change and financial regulation. If Britain becomes a marginal player in the EU, London will lose influence not just in Brussels, but also in Washington; the “special relationship” relies on Britain being a cog in its own continent. For the UK, irrelevance in Europe means irrelevance everywhere...
(日本語試訳)…キャメロン氏は自らがイギリスの主権を守るという原則に基づいて行動していると主張している。ところが実際には、キャメロン氏は国際的に重要な案件におけるイギリスの影響力を損なっている。つまり、欧州連合は気候変動や金融規制といった問題に商店をむけている。かりにイギリスが欧州連合においてわずかな立場しか持たなくなったら、イギリス政府は欧州連合の機関だけでなく、アメリカ政府に対しても影響力を失うことになる。「特別な関係」とは、イギリスがヨーロッパ大陸における歯車の歯であるということが前提となっている。イギリスにとって、ヨーロッパとの冷めた関係は世界中との関係を冷ますものである。… — Editorial of the Financial Times, published on June 22, 2009、FT.COM

その翌日にはデイリー・テレグラフ紙の社説で、欧州保守改革グループがヨーロッパ中の反連邦主義者たちに公民権を与えることになるという考察を示し、デーヴィッド・キャメロンの指導力の本質を示している。

...This development is to be welcomed on several levels. First, as Mr Cameron prepares for what is likely to be a Conservative government, it is important that people can believe he means what he says. ... Second, it is a good thing that the millions who vote for non-federalist parties should have a group in the parliament to represent their interests. The existing centre-Right and centre-Left blocs both have integrationist ambitions, with all they entail - an EU army and police force, a common judicial area and a single UN seat for Europe. [The] people .. have invariably said no ... Power...needs to be repatriated, not surrendered further. The new body... will give the Tories more clout than if they had remained a small part of a much larger group.
(日本語試訳)…今回の結成はさまざまな次元で歓迎されることになるだろう。まず、キャメロン氏が保守党政権を樹立しようとしているのであるから、人びとがキャメロン氏が言おうとしていることを信じられるということが重要である。…2つめに、非連邦主義系の各政党に票を投じた数百万人が欧州議会において自らの利益を代表するために会派を持つということは望ましいことである。既存の中道右派中道左派ブロックは統合志向を持っている。両ブロックが取り組んだ結果、欧州連合は軍隊警察、共通の司法分野、そしてヨーロッパとして単一の国際連合における発言権を得てきた。イギリス国民はいつも 'no' と答えてきた。…イギリスが持つべき権限を欧州連合から取り戻す必要があり、これ以上明け渡すようなことがあってはならない。今回の新しい会派は…保守党がはるかに大きい会派の小さな一部としてのこっているよりもずっと大きな影響力をもたらすことだろう。 — Editorial of the Telegraph, published on June 22, 2009、Telegraph.co.uk

6月24日、欧州保守改革グループは初会合を開き、イギリス保守党所属の欧州議会議員ティモシー・カークホープを暫定代表に任命した[19]。その後、正式な代表を選出する選挙を7月14日に行うこととなり、カークホープのほかにジオフレー・ヴァン・オーデンが立候補していたが[20]、欧州議会の副議長にポーランドの法と正義に所属するミハウ・カミンスキが選出されなかったことを受けて、カークホープ、ヴァン・オーデンともに立候補を取り下げ、カミンスキを代表とすることとなった[21]

結成宣言[編集]

欧州議会において混成的に結成された会派は強制解散に至った。これ以降、欧州議会の政治会派にはイデオロギー的な一体性を示すことが求められている。欧州保守改革グループでは結成宣言を発表しており、このなかで会派所属の議員に結束が期待される原則がうたわれている。この欧州保守改革グループの会派宣言は「プラハ宣言」とも呼ばれている。文書においてはいかの理念が述べられている。

  1. 自由な起業、自由で公正な貿易と競争、規制緩和、低課税、個別の自由と個人および国家の財産のための究極的な触媒としての小さな政府
  2. 個別の自由、個人のより大きな責任、より民主的な説明責任
  3. エネルギー安全保障を重視した、持続可能でクリーンなエネルギー供給
  4. 社会の基盤としての家庭の重視
  5. 国民国家の主権性の保持、欧州連合の連邦主義に対する反対、真の補完性原理の再確認
  6. 再活性化された北大西洋条約機構における大西洋横断的な安全保障関係の尊重とヨーロッパの若い民主主義国の支援
  7. 効率的な移民規制と亡命手続きの濫用の終焉
  8. 効率的かつ近代的な行政サービスと地方と都市両方の共同体のニーズに対する感度
  9. 無駄が多く過剰な官僚制度の終焉と欧州連合の機関および欧州連合の財政支出に対する透明性と適切性への関与
  10. 新旧や大小を問わず、すべての欧州連合加盟国に対する尊重と平等な対応

参加政党・議員[編集]

国内政党 欧州規模の政党 議員数
ベルギーの旗 ベルギー 新フラームス同盟
Nieuw-Vlaamse Alliantie (N-VA)
EFA 3
 ブルガリア ブルガリア国民運動英語版
Българско Национално Движение (ВМРО-БНД)
ECR-P 2
クロアチアの旗 クロアチア クロアチア保守党英語版
Hrvatska konzervativna stranka (HKS)
ECR-P 1
 チェコ 市民民主党
Občanská demokratická strana (ODS)
ECR-P 4
ドイツの旗 ドイツ ドイツ家族党英語版
Familienpartei Deutschlands
ECPM 1
ギリシャの旗 ギリシャ ギリシャの解決策英語版
Ελληνική Λύση (ΕΛ)
(無所属) 1
イタリアの旗 イタリア イタリアの同胞
Fratelli d'Italia (FdI)
ECR-P 6
 ラトビア 国民連合
Nacionālā Apvienība (NA)
ECR-P 2
 リトアニア リトアニア・ポーランド人選挙活動=キリスト教家族連合
Lietuvos lenkų rinkimų akcija – Krikščioniškų šeimų sąjunga (LLRA–KŠS)
ECR-P 1
オランダの旗 オランダ 民主主義フォーラム英語版
Forum voor Democratie (FvD)
ECR-P 3
改革政党英語版
Staatkundig Gereformeerde Partij (SGP)
ECPM 1
ポーランドの旗 ポーランド 法と正義
Prawo i Sprawiedliwość (PiS)
ECR-P 24
連帯ポーランド英語版
Solidarna Polska (SP)
ECR-P 2
合意 (en:Agreement (political party))
Porozumienie
ECR-P 1
スロバキアの旗 スロバキア 自由と連帯英語版
Prawo i Sprawiedliwość (PiS)
ECR-P 2
スペインの旗 スペイン Vox ECR-P 4
 スウェーデン スウェーデン民主党
Sverigedemokraterna (SD)
ECR-P 3
合計
61

(2020年4月現在)[22][23]

脚注[編集]

  1. ^ a b ECR formation: press release” (英語). Scribd (2009年6月22日). 2009年7月10日閲覧。
  2. ^ a b Conservative MEPs form new group”. BBC NEWS (2009年6月22日). 2009年7月10日閲覧。
  3. ^ Rules of Procedure of the European Parliament - July 2009 - Rule 30” (英語). European Parliament. 2009年7月10日閲覧。
  4. ^ Kite, Melissa (2006年6月11日). “Cameron gives Hague month to get MEPs out of Brussels group” (英語). Telegraph. 2009年7月10日閲覧。
  5. ^ Kubosova, Lucia (2006年7月13日). “Plans to form new MEP group kicked into 2009” (英語). EUobserver. 2009年7月10日閲覧。
  6. ^ In full: Cameron Euro declaration” (英語). BBC NEWS (2006年7月13日). 2009年7月10日閲覧。
  7. ^ Mulvey, Stephen (2006年7月13日). “Q&A: The Tories and the EPP” (英語). BBC NEWS. 2009年7月10日閲覧。
  8. ^ “Could the UUP be ready to leave the European Democrats?”. The Belfast News Letter. (2006年7月14日) 
  9. ^ Prague considering referendum on revised EU constitution” (英語). EUObserver (2007年3月7日). 2009年7月10日閲覧。
  10. ^ 16 heads of State and Government, and the presidents of Council, Commission and Parliament meet at EPP Summit” (英語). European People's Party (2007年6月20日). 2009年7月10日閲覧。
  11. ^ European Parliament increases threshold to form a political group” (英語). European Parliament (2008年7月9日). 2009年7月10日閲覧。
  12. ^ EPP calls on the EU for a solution for ratification of the Lisbon Treaty” (英語). European People's Party (2008年12月11日). 2009年7月10日閲覧。
  13. ^ EU Consevatives Stand Firm behind Bulgaria's Order, Law and Justice Party” (英語). Novinite (2009年4月5日). 2009年7月10日閲覧。
  14. ^ Smyth, Jamie (2009年3月13日). “Tories to set up new parliamentary group”. The Irish Times. 2009年7月10日閲覧。
  15. ^ Charter, David. “David Cameron’s new European allies set to include odd bedfellows” (英語). Times. 2009年7月10日閲覧。
  16. ^ Taylor, Simon (2009年3月12日). “UK Consevatives to leave the EPP-ED group” (英語). EuropeanVoice.com. 2009年7月10日閲覧。
  17. ^ Banks, Martin (2009年3月25日). “UK Tories 'well on track' to forming new EU grouping” (英語). theParliament.com. 2009年7月10日閲覧。
  18. ^ Tory party upsets Czech partners with choice of anti-federalist MEPs” (英語). Times (2009年6月17日). 2009年7月10日閲覧。
  19. ^ Banks, Martin (2009年6月25日). “Tory MEP voices 'real concern' over new European grouping” (英語). Telegraph. 2009年7月10日閲覧。
  20. ^ Banks, Martin (2009年7月9日). “British Tories fight it out for leadership of new Eurosceptic group” (英語). theParliament.com. 2009年7月10日閲覧。
  21. ^ Willis, Andrew (2009年7月15日). “Pole heads new anti-federalist group” (英語). EUobserver. 2009年7月15日閲覧。
  22. ^ Members of the European Parliament”. European Parliament. 2020年5月1日閲覧。
  23. ^ About”. ECR Group. 2020年5月1日閲覧。