由旬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

由旬(ゆじゅん)、サンスクリットヨージャナयोजन yojana)は、古代インドにおける長さ単位踰繕那とも書く[1]。「くびきにつける」の意で、をつけて1日引かせる行程のこと[2]

古代インドでは度量衡が統一されておらず、厳密に「1ヨージャナは何メートル」とは定義できないが、一般的には約11.3kmから14.5km前後とされる。また、仏教の由旬はヒンドゥー教のヨージャナの半分とも言われ、仏教経典のひとつ阿毘達磨倶舎論(倶舎論)の記述などでは普通1由旬を約7~8kmと解釈する[4]

古より様々な定義がなされており、例えば天文学書『アールヤバティーヤ』(en:Aryabhatiya)では「人間の背丈の8000倍」となっている。他にも「帝王の行軍の1日分」「 の鳴き声が聞こえる最も遠い距離の8倍」など様々な表現がなされている。

また、「32000ハスタ」とする定義もある[5]。ハスタ(hasta)とは本来「」の意味だが、古代インド長さの単位でもあり、この場合は「肘から中指の先までの長さ」(キュビット)と定義される。以下倍量単位が続き、4ハスタが1ダヌ(dhanu「弓」)または1ダンダ(daṇḍa「棒」)、2000ダヌが1クローシャ(krośa)、2クローシャが1ガヴユーティ(gavyūti)、そして2ガヴユーティが1ヨージャナとなる。仮に1ハスタを45cmとすると、1ヨージャナは14.4kmとなる。

一方、仏教では1拘盧舎(倶盧舎ともいう[6])(クローシャ。500と同じともいわれる[3]。)が1000弓(ダヌ。4000ハスタと同じ。倶舎論では500弓(後述))、そして4拘盧舎(倶舎論では8倶盧舎(後述))が1由旬とされているので、1由旬は7.2kmとなる。

阿毘達磨倶舎論では、物質最小を「極微」とし、7極微(中心に1極微とその前後左右上下に1極微ずつと)を1、7微を1金塵、7金塵を1水塵、7水塵を1兎毛塵、7兎毛塵を1羊毛塵、7羊毛塵を1牛毛塵、7牛毛塵を1隙遊塵(隙間から差し込む光の中に浮遊して見えるほどの粒子の大きさ)、7隙遊塵を1(シラミほどの粒子の大きさ)、7蟣を1(シラミほどの粒子の大きさ)、7蝨を1()、7麥を1、7指を1、24指を1、4肘を1、500弓を1倶盧舎、8倶盧舎を1由旬としている[7]

由旬を使ってその大きさが示されているものとしては、須弥山の高さ8万由旬[8]太陽直径51由旬[9]直径50由旬[9]大気の層の厚さ160万由旬[3]などがある。

脚注[編集]

  1. ^ 櫻部 1981, p. 124.
  2. ^ a b 岩波仏教辞典, p. 814.
  3. ^ a b c 櫻部・上山 2006, p. 28.
  4. ^ 岩波仏教辞典では7kmを[2]、仏教学者の櫻部建は一応の目安として8kmを挙げている [3]
  5. ^ たとえば『マールカンデーヤ・プラーナ』49章では、ここに書かれているものと途中が異なるが2000ダヌを1ガヴユーティ、4ガヴユーティを1ヨージャナとするので、ハスタとヨージャナの関係は同じである
  6. ^ 櫻部 1981, p. 132.
  7. ^ 櫻部 1981, p. 129~132.
  8. ^ 須弥山”. 浄土宗. 2020年5月7日閲覧。
  9. ^ a b 櫻部 1981, p. 125.

参考文献[編集]

  • 櫻部建『倶舎論』大蔵出版、1981年。ISBN 978-4-8043-5441-5。
  • 櫻部建 ; 上山春平『存在の分析<アビダルマ>―仏教の思想〈2〉』角川書店角川ソフィア文庫〉、2006年。ISBN 4-04-198502-1。(初出:『仏教の思想』第2巻 角川書店、1969年)
  • 中村元他『岩波仏教辞典』岩波書店、1989年。ISBN 4-00-080072-8。