男はつらいよ 寅次郎忘れな草
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
男はつらいよ 寅次郎忘れな草 | |
---|---|
監督 | 山田洋次 |
脚本 |
山田洋次 宮崎晃 朝間義隆 |
原作 | 山田洋次 |
出演者 |
渥美清 浅丘ルリ子 倍賞千恵子 笠智衆 |
音楽 | 山本直純 |
撮影 | 高羽哲夫 |
編集 | 石井巌 |
配給 | 松竹 |
公開 |
![]() |
上映時間 | 99分 |
製作国 |
![]() |
言語 | 日本語 |
配給収入 | 9億1000万円[1] |
前作 | 男はつらいよ 寅次郎夢枕 |
次作 | 男はつらいよ 私の寅さん |
『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(おとこはつらいよ とらじろうわすれなぐさ)は、1973年8月4日に公開された日本映画。マドンナ(旅回りのキャバレー歌手:松岡リリー)役に浅丘ルリ子をむかえた『男はつらいよ』シリーズの第11作。同時上映は『チョットだけョ全員集合!!』。
あらすじ[編集]
寅次郎が見た夢は時代劇であり、柴又村の農家の娘「おさく」らがヤクザに脅されているところを助ける。
初夏の北海道網走に出向いていた寅次郎は、レコードを売っていた道ばたでドサ回りの三流歌手松岡リリー(浅丘ルリ子)に声をかけられ、お互いの「あぶく」のような生活について語り合い、同じような境遇にあることで意気投合する。別れ際に「日本のどこか」での再会を約束し、寅次郎の「葛飾柴又の車寅次郎」という名乗りに対し、リリーは「じゃ、寅さん。いい名前だね」と言う。[2]
寅次郎は、今のままの放浪生活ではいけないと、職安で紹介された道東の酪農家・栗原(織本順吉)の元で働き始めるが、働き慣れない体力が酪農の重労働について行かずに寝込んでしまい、さくらに迎えに来てもらって柴又へと帰る。
東京に帰ってからずっと寅次郎のことを想い、また会いたいとの気持ちで柴又を訪ねてきたリリー[3]を、寅次郎ととらやの人びとは、温かくもてなす。リリーは、そうした家庭環境に恵まれている寅次郎をうらやましく感じるとともに、「あたしの初恋の人、寅さんじゃないかしらね」と発言する。それまでいろいろな男と付き合ってきたが、心から惚れたことは一度もない、一生に一度でいい、一人の男に死ぬほど惚れて惚れて惚れぬいてみたい、そんな趣旨の発言の流れの中での一言であった。
リリーはある夜、母親との確執・仕事での悩みから、酒に酔い、深夜にとらやを訪れて、クダを巻く。一緒に旅に出ようと言うリリーに対し、寅次郎は同情を示しつつも、あと一歩を踏み出せない。「ここは堅気のうちなんだぜ」とたしなめる寅次郎に対し、リリーは「どうせあたしのような女が来るところじゃないんだろ、ここは」と疎外感・孤独感を覚え、「寅さん、何も聞いてくれないじゃないか…嫌いだよ」と泣きながら飛び出していってしまう。翌日、寅次郎はリリーのアパートを訪ねるが、既に引っ越した後であった。寅次郎は、上野駅にさくらを呼び出し、もしリリーがとらやを訪ねることがあったら下宿させてあげてほしいと、後を託して旅立つ。
夏になり、リリーから寅次郎宛でとらやにハガキが来る。歌手を辞めて、小さな店の女将さんになったとの内容であり、さくらが訪ねると、夫の寿司職人・良吉(毒蝮三太夫)と仲良く店を切り盛りしていた。その頃、寅次郎は栗原の元を訪れ、お互いに元気よく再会を祝すのであった。
かくして例によって結ばれなかった二人であるが、リリーが「あたしほんとはね、この人(良吉)より寅さんのほうが好きだったの」と発言するなど、シリーズの大方の「寅次郎が振られて終わる」という印象[4]とは異なっている。[5]「リリー三(四)部作」と言われる、長い二人の愛の関係の第一歩を刻んだ作品である。
寅次郎の父親で車平造の27回忌が劇中で行われるので1947年に亡くなったことになるが、後の『少年寅次郎』最終話では寅次郎が1949年に家出した後、『少年寅次郎 SP全編』で1年後の1950年に亡くなったことになっている。
スタッフ[編集]
キャスト[編集]
- 車寅次郎:渥美清
- 諏訪さくら:倍賞千恵子
- 車竜造:松村達雄
- 車つね:三崎千恵子
- 諏訪博:前田吟
- 社長:太宰久雄
- 源公:佐藤蛾次郎
- 吾作(夢シーン):吉田義夫
- 栗原久宗:織本順吉
- 石田良吉:毒蝮三太夫
- リリーの母:利根はる恵
- 水原:江戸家猫八
- 諏訪満男:中村はやと
- 栗原紀子(栗原の妻):中澤敦子
- 栗原美由紀(栗原の娘):成田みるえ
- めぐみ(来々軒の店員):北原ひろみ
- 御前様:笠智衆
- リリー:浅丘ルリ子
ロケ地[編集]
タンカバイ[編集]
- 品物 古いレコード/場所 網走
- 品物 スリッパなど/場所 浅草・雷門前
記録[編集]
受賞[編集]
脚注[編集]
- ^ a b c 『日経ビジネス』1996年9月2日号、131頁。
- ^ この段階でリリーは寅次郎に対し、「男くさくて、イキで、不良っぽくて、色気があって、照れ屋で、やさしくて、可愛くて、めちゃくちゃにおかしくて」という印象を抱いている。(「リリーからの手紙」『男はつらいよ2リリー篇』p.460)
- ^ 『男はつらいよ寅次郎忘れな草―寅さんへリリーからの手紙[新潮CD]』。本編では、このあたりの事情については明言されていない。
- ^ シリーズを一定以上に見たファンであるならば、狭義の「振られる」話がそこまで多くはないことは知っている。しかし、「放蕩児の寅さんが葛飾柴又に帰還して一騒動を起こして旅に出る、そこでわけありの美女に出会って恋をする。また故郷に帰ってあれこれ失敗したうえで美女にふられ、妹さくらに慰められつつ寅は旅立っていく」(『男はつらいよ魅力大全』p.17 )というものが「基本パターン」として多くの人のイメージとして存在することもまた事実であろう。
- ^ この部分につき、「リリーの結婚を知って(、寅次郎は北海道へと旅立つ)」という明確な誤解に基づくのを含め、「寅次郎は振られた」とするあらすじを載せる書物も多い。リリーが引っ越したことが原因になって寅次郎が旅立ったという、寅次郎の主観に着目したものであろう。ただ、浅丘ルリ子とリリーの相性という問題についてであるが、山田監督は「『寅次郎忘れな草』を終わったとき、すぐ、もう一回と思いました。このままじゃとても惜しいというか、ようやく出来かけたんだから、これをきちんと作り上げたい」と述べ(『男はつらいよ魅力大全』p.261 。筆者によるインタビューに対する答え)、少なくとも『相合い傘』までは含めてのリリー像を考えていたことを示唆している。そして、全体としてのリリーの “主観” は、「寅さんは、私の初恋の人。私が一目惚れして、それからずっと思い続けている男」(「リリーからの手紙」『男はつらいよ2リリー篇』p.463)である。
外部リンク[編集]
|