盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 盗犯等防止法
法令番号 昭和5年法律第9号
効力 現行法
種類 刑事法
主な内容 盗犯の特例について
関連法令 刑法
条文リンク e-Gov法令検索
テンプレートを表示

盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律(とうはんとうのぼうしおよびしょぶんにかんするほうりつ、昭和5年法律第9号)は、盗犯に対する正当防衛の特例及び兇器を携帯した常習窃盗犯の刑期の下限について定めた法律である。盗犯等防止法と略す。


内容[編集]

  • (第1条)盗犯(窃盗または強盗)に対する正当防衛をより広く認めるための規定である。
    • 次の防衛行為を実行する際に、自他の生命、身体又は貞操に対する現在の危険があり、それを排除するために盗犯犯人を殺傷した場合も、正当防衛として罪に問わないとするものである。
    • 現場において、盗犯を防止もしくは制圧し、盗犯の現行犯人から盗んだ物を奪い返し[1]、凶器を携行しもしくは「門戸牆壁等を踰越損壊し又は鎖鑰を開き」して、「人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若は艦船に侵入」する者を阻止し、または住居侵入罪もしくは不退去罪を犯している者を排除しようとする際。
    • また、上掲の防衛行為に出た場合において、自他の生命、身体又は貞操に対する現在の危険がなく、または危険を排除するために必要でなかったとしても、恐怖、驚愕、興奮または狼狽などに陥って盗犯犯人を殺傷した場合にはやはり罪に問わない(刑を免除する)とするものである。
  • (第2条)凶器携行、複数人での犯行、「門戸牆壁等を踰越損壊し又は鎖鑰を開き人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若は艦船に侵入」または夜間におけるこれらへの侵入と言った、悪質な窃盗または強盗(これらの未遂犯を含む)を常習として行った場合の加重罰則の規定である。「常習」については裁判官の判断(および判例)による。窃盗の場合は3年以上の有期懲役、強盗の場合は7年以上の有期懲役に刑が加重される。
  • (第3条)窃盗または強盗犯人(未遂犯を含む)につき、当該犯罪行為の以前10年間に3回以上、窃盗または強盗の罪(他の犯罪との併合罪を含む)を犯しよって6月以上の懲役の刑を執行された(恩赦その他により執行が免除された場合を含む)者について、必要的に刑を加重すべき事を定めている。第2条と同様の刑となる。
  • (第4条)強盗致傷罪、強盗・強制性交等罪の常習犯への加重罰則の規定である。刑が無期又は10年以上の懲役に加重される。

通説・判例[編集]

  • 盗犯等の防止及び処分に関する法律に規定する正当防衛とは、当該防衛行為が形式的に規定上の要件を満たすだけでなく、現在の危険を排除する手段として相当性を有するものであることが必要である。(最二決平成6年6月30日、平成6(し)71))
    盗犯等の防止及び処分に関する法律第1条第1項の規定は、刑法第36条第1項の正当防衛の相当性の要件を緩和する規定であるが、これは無制限に緩和する趣旨ではない。以下判示
ここにいう相当性とは、同条項が刑法三六条一項と異なり、防衛の目的を生命、身体、貞操に対する危険の排除に限定し、また、現在の危険を排除するための殺傷を法一条一項各号に規定する場合にされたものに限定するとともに、それが「已ムコトヲ得サルニ出テタル行為」であることを要件としていないことにかんがみると、刑法三六条一項における侵害に対する防衛手段としての相当性よりも緩やかなものを意味すると解するのが相当である。

条文[編集]

(原文カタカナを平仮名に変換したもの)

第一条 左の各号の場合に於て自己又は他人の生命、身体又は貞操に対する現在の危険を排除する為犯人を殺傷したるときは刑法第三十六条第一項の防衛行為ありたるものとす

 一 盗犯を防止し又は盗贓を取還せんとするとき
 二 兇器を携帯して又は門戸牆壁等を踰越損壊し若は鎖鑰を開きて人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若は船舶に侵入する者を防止せんとするとき
 三 故なく人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若は船舶に侵入したる者又は要求を受けて此等の場所より退去せざる者を排斥せんとするとき

2 前項各号の場合に於て自己又は他人の生命、身体又は貞操に対する現在の危険あるに非ずと雖も行為者恐怖、驚愕、興奮又は狼狽に因り現場に於て犯人を殺傷するに至りたるときは之を罰せず

第二条 常習として左の各号の方法に依り刑法第二百三十五条、第二百三十六条、第二百三十八条若は第二百三十九条の罪又は其の未遂罪を犯したる者に対し窃盗を以て論ずべきときは三年以上、強盗を以て論ずべきときは七年以上の有期懲役に処す

 一 兇器を携帯して犯したるとき
 二 二人以上現場に於て共同して犯したるとき
 三 門戸牆壁等を踰越損壊し又は鎖鑰を開き人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若は艦船に侵入して犯したるとき
 四 夜間人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若は艦船に侵入して犯したるとき

第三条 常習として前条に掲げたる刑法各条の罪又は其の未遂罪を犯したる者にして其の行為前十年内に此等の罪又は此等の罪と他の罪との併合罪に付三回以上六月の懲役以上の刑の執行を受け又は其の執行の免除を得たるものに対し刑を科すべきときは前条の例に依る

第四条 常習として刑法第二百四十条前段の罪若は第二百四十一条前段の罪又は其の未遂罪を犯したる者は無期又は十年以上の懲役に処す

脚注[編集]

  1. ^ 現行犯人でない場合(盗犯の現認が無い場合)には、例え盗んだ財物であっても、その返還請求は司法機関の執行により、または被害者が法的手続きを執らねばならず、強制的な奪還は犯罪となる(奪還者が強盗又は窃盗に問われる)。

関連項目[編集]