直球

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直球(ちょっきゅう)は、野球投手が投じる球種のうちで最も球速が速く、概して直進する球種である。ストレート (straight) 、真っ直ぐ(まっすぐ)、英語の「fast-ball」を直訳した速球(そっきゅう)、フォーシーム・ファストボール (four-seam fastball) 等と呼称される場合もある。なお、straightは和製用語であり、英語においては棒球 (straight ball) という意味になる。

日本球界ではツーシーム・ファストボールジャイロボールの呼称が一般的ではなく訳語が存在しなかった事もあり、これらを含めて「直球」と言われることもある。これらの呼称が普及してからは直球=フォーシーム・ファストボールと定義されることが多い。

目次

投げ方

フォーシームの握りの例(前)
フォーシームの握りの例(横)

直球を投げるには、人差し指中指を並べ、ボールにある縫い目に交差させて握り、リリースの際に強いバックスピンをかける。人差し指と中指の間は若干隙間を開けるのが一般的で、隙間を開けて握る事で制球が安定しやすい。隙間を閉じて握ると強い回転はかけやすいが制球が不安定になりやすく、回転軸も左右に傾いたものになりやすい。回転軸垂直な面とボール表面の接線、つまり人差し指に平行な線がボールを1周する間に縫い目 (seam) の線を4回 (four) 通過するため、フォーシーム (four seam) と呼ばれている。

用途

投球を組み立てる際に最も基本的な球種であり、ほとんどの投手が多投する。力学的には最も打球の飛距離が伸びにくく本塁打を打たれにくい。

しかし、打撃技術の向上した現代野球において単に速い直球だけで打者を打ち取るのは不可能に近い。実例として1993年5月3日伊良部秀輝が投げた当時の日本プロ野球最速記録となる158km/hの直球を清原和博ファウルボールにし、次に伊良部が投げた157km/hの直球を二塁打にした。また、2008年のオールスターゲームではマーク・クルーンが投げた161km/hの直球を日高剛が本塁打にしている。対策として他の球種を交える事により、球の軌道や球速の差を利用して打者を打ち取る事が常態化している。これらを利用することなどの工夫で球速の遅い投手でも相手打者を打ち取ることが可能である。

他の球種を交える以外の工夫として、同じ直球でも内角・外角の左右の距離感や高め・低めの高低差を使い分ける手段もある。

打者心理に与える様々な表現と工夫

野球中継の解説などで、投手の直球に対して「球質」「球威」「球の伸び」などと表現されることがある。科学的根拠を交えれば、これらは投球された球の回転数や球の運動、それによって打者が抱く錯覚が深く関係しているものである。

球質

「球質」とは文字通り球の質で、よく「重い」「軽い」と形容されることがある。これは球そのものの重さが変化するわけではなく、打球の飛距離が予想よりも短い、あるいは長い事を表している。この要因としては球の回転が最もよく知られており、回転が多いほど反発力が増して軽い球に、逆に回転数が少ないと重い球になると考えられている。しかし、速い球ほど飛距離が出難いとしてこれに準じて回転が多いほうが運動エネルギーの総量が多い為に重い球になるという考え方もある。また、回転の少ない球は「棒球(ぼうだま)」と呼ばれる痛打されやすい球とされる事もある。これらの事から球質の重い、軽いに球の回転は直接的な関係が無く、球をバットの真芯で捉えれば高い反発力を生み飛距離は伸びるが、芯から外れると球に力が伝わる効率が落ちて飛距離も出ないため打者が球が重いと錯覚しているとする意見もある。特に純粋な直球ではなくムーヴィング・ファストボールのように打者の手元で変化するいわゆる「癖球(くせだま)」では、芯を外されやすく打球が伸びないということがままある。また、芯を外されるとバットで吸収しきれなかった衝撃が手に伝わることから重く感じる事がある。これら以外にも諸説は有るが、打者自身の感覚以外は検証材料に乏しいのが実情である。

伸び

どんなに速い球でもリリースポイントから捕手ミットに到達するまでに球速が上昇することは物理的法則からして起こりえず、球速は逓減していく。「伸びる」球とはこの逓減率が低いために打者には速度が上がっているように見える目の錯覚であり、ジャイロボールは特殊な回転を与えることによって逓減率を増減させた顕著な例である。これによって打者は打撃のタイミングを誤りやすい。また、ユークリッド幾何学において二点間を結ぶ最短距離は直線であり、回転軸が純粋なバックスピンかそれに近く、かつ回転数が多いほど放物線が直線に近づいていくため、ホームベース上を通過するまでの所要時間が短縮されて打者が「伸び」を感じる場合があり、投手にとって有効な手段となる。

落差

前述のように球の運動は放物線を描いて地面に落下していくため途中で球が浮き上がることはまず起こりえないが、球速の逓減率を減らした上で高低差を少なくすることにより打者に”浮き上がる”ような錯覚を与えることは可能である。リリースポイントの関係からサイドスローアンダースローの投手にこの特徴を活用した例が多い。また、回転軸の傾きが少なく回転数の多いバックスピンをかけた直球はマグヌス効果により、重力に従った放物線から離れた直線に近い軌道になる。打者は見慣れた軌道よりも上を通過する球を浮き上がると錯覚する事がある。いずれにしても打者の予測、経験を実際の球の軌道が裏切る事により発生する錯覚である。ちなみに硬式球では160km/hで毎秒40回転以上の純粋なバックスピンが与えられた場合に実際に浮き上がる事が証明されている。

球持ち

マウンド上の投手板とホームベース間の距離は公認野球規則により18.44mと定められているが、実際には18.44mの距離から球が放たれる訳ではなく、投球動作に伴いリリースポイントはホームベースよりに近付くのが一般的である。リリースポイントが打者に近いほどボールの飛行距離は短縮され、それにより球速が保存されて初速と終速の差が小さくなる。これを「球持ち」が良いと表現し、投手は少しでもリリースポイントを打者寄りにするため様々な工夫を行う。その一貫として球を長く持つようにする事でリリースするのを遅らせようとする。より打者にリリースポイントを近付けるには基本的に身長が高く手足が長い方が有利である。  

角度

投手と相対する打者はリリースポイントや目線を見ていることが多いため、高低差が大きいとアッパースイングになりがちになったり、左右の角度が大きいと打者から見て逃げる、または向かってくるような軌道になるためフォームが崩れやすく、打ちにくさを増す事が出来る。より大きい角度をつけるためには球持ちと同様に長身で手足が長い投手が体格的に有利で、高低差はオーバースロー、左右の角度はサイドスローかそれに近い投法が有利なことが一般的である。投げる腕と対角のコースを突く直球をクロスファイアと呼ぶことがある。

キレ

球のキレとは変化球に対する打者への有効性について与えられる場合が多い言葉で直球とは直接関係しないが、球の伸びと同じような意味合いの言葉として用いられることが多々ある。

球威

球威とは「球の威力」で球速などを表す言葉であるが定義は曖昧で、球に伸びがあり球速以上の威力があることを示す場合や球速、球質、伸びなどの総合的な評価の場合もある。

最高球速

日本プロ野球における最高球速記録は、2008年6月1日読売ジャイアンツ福岡ソフトバンクホークス戦(福岡Yahoo! JAPANドーム)でマーク・クルーンが記録した162km/h。メジャーリーグでは1995年の春季キャンプの際に記録されたマーク・ウォーラーズによる164.8km/hが最速となっている。

ただし、上記はいずれの記録も精度に個体差のあるスピードガンで測定されたものであり、公式な世界記録は1997年ワールドシリーズフロリダ・マーリンズロブ・ネンが投げた164.1km/hである。

スピードガンが野球場によって「甘い」「辛い」と評されるほど差があり正確さに欠けるため、メジャーリーグではスピードガンで記録された球速が公式記録とされなくなっているが、非公式にはジョエル・ズマヤが104mph(約167.4km/h)を4度記録している。

日本球界における球速ランキング(非公式)

※登録名、球団名、球場名は当時のもの。五十嵐の相手チーム・球場は6月3日のものである。また、表中の数字はその投手の最高球速でありそれ以外はカウントしていない[1]

順位 球速 氏名・所属 日時 相手チーム・球場
1位 162km/h マーク・クルーン・(読売ジャイアンツ 2008年6月1日 福岡ソフトバンクホークス・(福岡Yahoo! JAPANドーム
2位 160km/h 林昌勇・(東京ヤクルトスワローズ 2009年5月15日 阪神タイガース・(明治神宮野球場
3位 158km/h 伊良部秀輝・(千葉ロッテマリーンズ 1993年5月3日 西武ライオンズ・(西武球場
山口和男・(オリックス・ブルーウェーブ 2002年7月29日7月31日 福岡ダイエーホークス・グリーンスタジアム神戸
五十嵐亮太・(ヤクルトスワローズ) 2004年6月3日9月20日 阪神タイガース・(阪神甲子園球場
寺原隼人・(横浜ベイスターズ) 2008年6月6日7月31日 阪神タイガース・(阪神甲子園球場

脚注

  1. ^ クルーンは158km/h以上を複数回記録している。

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