積算基準

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積算基準(せきさんきじゅん)とは、主として公共事業に必要な外注業務や公共工事予定価格積算するためのもので、受託業務費や工事費といった発注費用を構成する各費目について、定義と算定方法を明確にしたものである。

具体的には、各費目に含まれる対象品目や範囲、算出にあたっての考え方、費用の算出式、その費目の人工数(にんくすう)を算出するための歩掛(ぶがかり)などが示されている。その他、対象となる作業毎に建設機械の作業能力が示され、機械損料を加味して費用を算出する。年度毎に見直しが行われることが多く、同じ名称の積算基準でも年度が異なると内容が変化している。

概要[編集]

かつては自治体などが使用する積算基準、単価などは非公開資料であることが多かったが、昨今の積算内容の明確化、情報公開の観点などから、積算基準を一般に販売したり、閲覧などをできるように変更していることが多い。

実務上の厳密な運用では、積算基準のほかに、次のような事項についても取り決めがあることが多い。

  • 数値基準
    • 品名ごとの積算数量単位及び位取り(例:鉄筋 kg 0.1kg止め 四捨五入)
    • 計算過程に現れる数値の端数処理(例:各費目の集計は千円単位、千円未満切り捨てとする。)
  • 雑費率・諸経費率
    • ある項目に対して必要な材料だが、厳密に数量をあげるのは難しいものに対して、主要材料費用の○%割り増しを行い、その金額中に含むというような率計上を行うことがある。
    • 各項目を積み上げたあと、それらの合計にさらに工事現場の管理費用や受注した会社の利益分などを率計上して工事価格とすることが多い。

地方自治体所管の水道工事の積算基準では、つぎのとおりの区分にしてある。

  • 水管橋工事 (Ⅰ)は、水管橋下部工事 水管橋の下部に関する工事。国土交通省の土木工事積算基準の〔河川・道路構造物工事〕にあたる。
  • 水管橋工事 (Ⅱ)は、水管橋上部工事 水管橋の上部工及び橋梁添架管に関する工事。国土交通省の土木工事積算基準の〔鋼橋架設工事〕にあたる。
  • 水道施設敷地等での植栽等工事は、水道施設景観整備等工事 植栽・フェンス等に関する工事。国土交通省の土木工事積算基準の〔公園工事〕にあたる。
  • 水道施設整備費国庫補助事業に係る補助金を申請する際の「請負工事標準歩掛」における開削工事及び小口径推進工事 - 水道施設整備に関する工事にあって、施工方法が開削工法又は小口径の推進工法による管渠工事
  • シールド工事及び推進工事 - 水道施設整備に関する工事にあって、施工方法がシールド工法又は作業員が坑内で作業する推進工法による管渠工事
  • 構造物工事(浄水場等) - 水道施設整備に関する工事にあって、浄水場等を構築する構造物工事

こうした「積算基準」は、工事内容の多様化や施工機械 ・施工法の開発改良によって変化するためにおおむねで改正後から7年サイクルで新規の工種を含めて毎年20工種前後を選定し調査を実施し、反映する。これらの工種類や分掛の調査や解析は、土地改良工事の基準の場合は構造改善局設計課や各地方農政局の土地改良技術事務所を中心に実施され、その後構造改善局設計課長を委員長とする土地改 良技術検討委員会で検討された後、主要な歩掛について構造改善局長による通達 で反映がなされる[1]

歴史[編集]

1600年の初め、京都二条城知恩院御影堂の造営では木材値段で、大工は人工手間で入札しており、また必ずしも最低者が受注しているわけではない。このころは単に建物を造る積算基準が定着していなかったことで入札側の考えにバラつきがあったということのようであった。しかしながら以後、積算の基準書にあたるものが編纂がなされていく。

奥書がないため作者と制作年がはっきりしないようだが研究によれば、法隆寺の筆頭大工棟梁・今奥出羽平政隆が寛文11(1671)年~貞享3(1686)年にかけて編纂したものと考えられている『愚子見記』とよぶ近世の書物の一つとされる建築書で、第九冊は「京大工頭・中井家配下の頭棟梁としての作事実績に基づく積算資料を集成したものであり、積算技術史上の史料的価値は大きいと評されているものである。愚子見記の中の設計や積算に関わる部分に江戸初期の和算書の記述を引用した部分がある。第8冊(算数度量)、第9冊(諸積)には江戸初期に流行した吉田光由の『塵劫記』等からの直接の引用があり、建築積算技術には数学的知識が結びついていたといえる。これらは今日の数量積算にも通じる内容ともいえ、直角多角形に関する数学的知識は屋根勾配の把握に役立ったのであろうし、面積体積度量衡に関するそれは設計や資材の取引に不可欠な知識であったとみられる。また、大工がその製作に直接関わったの大きさの記述なども当然の如く含んでいる。

1700年代の初頭にかけて、幕府は入札制度に改良を加え現代に近いものとするが、改革によりマイナス面も出てきており、その頃の新井白石武家諸法度には「入札は一見公平に見えるが、そうではない。談合賄賂がある」と書かれている。そこで幕府は、1751年に、積算入札に関わる大改革、出入りする業者と役人の癒着を断て、積算をするものと検査をするものを分けよ、その上で検査の方法を確立せよ、積算資料(歩掛り)を作れ(宝暦の制度改革)を行う。幕府の取った積算の三大改革の最初には「この改革の根本の精神は、経費の節約である」ことが書かれているのである。そしてこのときできた積算資料が「本途(ほんと・ほんとう)」、本=もともと・もとづく、途=方法・やり方、である。これをまとめて本にしたのは「本途帳」とよばれ、現在における共通仕様書と積算基準・歩掛りが一緒になったようなものであり、大工手間に関する「大工手間本途帳」や諸物品の値段に関する「諸色値段本途帳」というデータブックが作成され、これに基づいて積算と検査が行われるようになる。

例えば、西和夫『江戸建築と本途帳』鹿島研究所出版会,1974)によると宝暦元年1751年11月の大工手間本途内訳によれば、上の上の屋敷 102人/坪(銅葺屋根・格子天井)、上の屋敷―85人/坪(銅葺屋根・張付天井)中の屋敷―58人/坪(土瓦・猿棒天井)下の屋敷―25人/坪(平屋土瓦)大工の手間賃の基準は、米1升5合、となっている。なお現在のように1人工いくらと金額で決めても、当時は火事凶作物価の動きが激しかったので、1日当たり米1升5合に相当する額が「」で支払われていたという。

安定した人工数がいつも成立するのは往時の設計技術の進展があるからだとされており、これくらいならこれだけの人工数でできるという状況が整ってくるからである。現在でもベテランの大工に聞けば、いくらの予算だったら何坪の家が建てられるかがすぐ分かる。そして間取りさえ決めれば図面などなくても家が建てられる、いわゆる「規矩(きく)術=木割り術」の進歩がみられるのである。

日本で近代積算技術の先駆けとなったのは建築分野から明治30(1897)年、大泉龍之輔が編集した『建築工事設計便覧』という500頁強の小型本だと言われており、大正10年には造園家久恒秀治の父親で福岡工業学校(現福岡工業高等学校)に学んだ久恒治助が『建築工事仕様及び積算法(上下巻)』を出版。500頁に及ぶ大著で、実務者向きの技術書として積算界に及ぼす影響は大きかったと言われている。著者の久恒は辰野葛西事務所で主に積算を担当しており、著作には東京駅では設計主任をした松井清足も参加した。本書は建築工事の仕様書と積算に関しての公刊書としては古典の書と言われているものである。『建築工事仕様及積算法』(初版刊行 1921年,建築書院)は建築積算の分野で重要な書籍として戦後にまで増刷され続けた。

この背景には、建築学会では1913年に仕様予算委員会が設置され、辰野葛西事務所の葛西萬司はその主査として1919年に建築工事仕様書作例として14の建築工事の仕様書を制定している。その2年後に刊行されたのが『建築工事仕様及積算法』である。

葛西の学会での仕様書作成に辰野葛西事務所として,松井や久恒が加わり,『建築工事仕様及積算法』が作成。ここから葛西の主査のもと1923年の『建築雑誌』に「欧米風建築工事仕様書」が発表されたと考えられる。『建築工事仕様及積算法』の目次と葛西のまとめた建築工事仕様書作例の項目は類似している。両者は辰野葛西事務所の関与が大きいと考えられる。各工事はかなり分類され,仕様書と積算に関する体系化が行われている。

葛西の仕様書の取組みは 1923年に「欧米風建築工事仕様書」を完成させた後、松井によって標準仕様調査委員会として引き継がれる。1931年までに建築工事標準仕様書として17の工事別にまとめられたが、これは現行の標準仕様書の体系とほとんど変わらないものである。

鉄道工事では長く技術者の裁量にまかされ、積算基準も経験則から割り出されたものを採用していたが、国鉄は1959年に日本の鉄道界では初の積算基準である「請負工事予定価格積算要領」を定めている。このときの予定価格の構成特徴として、当時の国鉄では鉄道独自の規格である日本国有鉄道規格による調達用品のスペックが制定されており、支給材料・貸与品の取り扱い経費が純工事費になっている。

列車運行の路線に近接しての複線化や供用している線路電化、増大する鉄道改良工事と構造物保守工事に対応するため1966年には鉄道改良工事や保守工事の特徴を考慮した積算基準に改めている。特に標準的な時間よりも短時間となる場合の所要人工の積算手法などを標準化している。

電信電話工事はNTTが日本電信電話公社時代に制定した「電気通信設備請負工事予定価格の積算要領(土木)」などがあり、同公社建設局で自動改式、分局開始等の際屋外線、屋内線等宅内装置の取替工事を請負により施行する場合に適用するための標準能率表を基として作成された標準単価や「電気通信設備請負工事予定価格積算のための複合単金表(土木)」といった単価類があり、土工事、石垣工事、鉄骨組立工事等のすべての作業について、マンホール築造工事、管路布設工事等の工事費積算のために公社において制定している各種作業の作業別標準単価を適用して積算している。

各種作業においても標準単価は自動改式、分局開始等の際の屋外線や屋内線等の取替えなどで、取替えの引込位置の選定、配線函、端子函相互の屋外線切替え、連絡線の作成といった作業において作業ごとに施行するための工数を基として作成されており、作業時間および工事実施箇所の移動等のための所要時間を含めて算定されており、これを使用して積算を実施している。

郵政事業などでも 設備工事費の算定などに当たって、郵政省時代は同省制定の「設備工事積算基準」及び「設備工事積算要領」があり、現在の日本郵政では「工事費積算マニュアル」などがある。こうした積算基準に基づいて同省が建築設備積算システムを開発している。この積算システムは材料の所要量を入力した資材構成ファイル、労務歩掛かりを入力した労務構成ファイル、標準材料単価を入力した資材単価ファイル等で構成されている。これらのファイルのデータを用いて算出された地域別、品目別の標準複合単価を記録している標準複合単価ファイルにより構成されている。そして、各工事の工事費の積算に当たって地域別、品目別の標準複合単価に基づいて算定することになっている。委託業務積算に当たっては、標準仕様書及び郵政本省が定めていた「積算の基本的考え方について」や日本郵政では「工事監理補助・検査補助業務委託ガイドライン」などがある。積算はこれら基準類に基づき、たとえば輸送車1日当たりの借上運賃や日額労務費とを合計して日額単価を算出し、これに年間作業予定日数を乗じて予算額を算定している。

旧内務省・建設省時代直営時代は、土砂や人夫などの必要物数や必要工数などは各地方建設局で各出先事務所ごとに、過去の実績に基づき算出されていた。それを関東地方建設局で戦後の1948年に、積算基準書の元祖となる『設計標準書』を刊行する。この書の中身は1)設計心得及び書式、2)歩掛及び単位当材料労務表、3)参考資料となっており、河川道路砂防営繕の各4編に分かれている。1)は設計書作成の際のルールが記載されており、内容として諸経費の限度額、工期の執り方、材料の割り増し率、単位の規定などで、歩掛は総計で178表にわたっている。

おもな積算基準[編集]

測量・地質・基礎調査・台帳整備等[編集]

調査解析計画設計等業務[編集]

請負工事積算基準[編集]

施設設備保守点検・業務支援他[編集]

用地関係[編集]

申請関係その他[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 渡辺博之、「各種の基準はどのようにして作成されるか」 『農業土木学会誌』 1991年 59巻 5号 p.578-579, doi:10.11408/jjsidre1965.59.5_578

関連項目[編集]