窖に通じる階段

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窖(あな)に通じる階段(The Stairs in the Crypt)は、ハイパーボリアクトゥルフ神話の短編小説作品。エイボンの書の一部である。

作者はリン・カーター。『Fantastic』1976年8月号に掲載された。タイトルは、先行クトゥルフ神話で言及された作中作に由来している。同時に、窖に通じる階段=あらゆる墓に開いている秘密の出入口とは、ラヴクラフトとホフマン・プライスの合作『銀の鍵の門を越えて』内の一節からとられている。

ヘンリー・カットナーが『セイレムの恐怖』にて創造した邪神ニョグタを導入し、新たに食屍鬼の支配者という属性を付与している。

アンデッドは食べたものを消化できるのかというジョークが、物語の軸となっている。ロバート・M・プライスは、「『エイボンの書』の中で最も突飛でユーモアに満ちた物語」「怪物のマンガ的な性格によって、恐ろしいものではなくなっている」[1]

あらすじ[編集]

黒魔術師アヴァルザウントが死に、葬儀が行われる。彼は弟子たちに嫌われており、人望が全くなかった。アヴァルザウントの住まいであった塔は、遺産分与にしたがって弟子マイゴンに譲渡される。

数年後、アヴァルザウントのミイラが生命らしき反応を発し始める。学者たちは議論するも、その間に死体は蘇りつつあり、ついに自分が埋葬されていることを自覚できるまでになる。地下納骨所のアヴァルザウントの死体は、副葬品の鏡で己の姿を眺めていたが、墓の出入口は魔術で封印されていたために、外に出ることはできなかった。しかし墓の中のアヴァルザウントは、地の底から食屍鬼が墓荒らしにやって来るのをじっと待ち、彼らを支配下に置くことに成功する。

身体が変質したアヴァルザウントは、生き血を渇望するようになっていた。食屍鬼の群れは主の意志に従って夜になるとさまよい出て、マイゴンらを餌食にする。やがて、未知の吸血怪物の犠牲者たちは全員がアヴァルザウントの弟子たちであることが明らかとなり、神官たちがアヴァルザウントの墓を調べにやって来るものの、墓はしっかりと封印されていたことから、アヴァルザウントとは何の関係もないと結論付けられる。化物たちが用いている「窖に通じる階段」の存在に思い当たった者はいなかった。

アヴァルザウントは既に死体であるために、飲んだ血を消化することも排泄することもなく、ふっくらと膨らんでいった、彼はついに弟子全員を食い尽くし、次にシムバ神の修道士に目をつける。彼らは丸々と太り、熱い血がたっぷりと流れ、まさに御馳走であった。アヴァルザウントは修道院長サーレインに襲い掛かるが、サーレインはたまたま持っていた銀のペーパーナイフで咄嗟に反撃する。歩く死体の膨らんだ太鼓腹にナイフが刺さり、腹ははじけ、大量の悪臭放つ黒い血液が洪水のように噴出する。最終的には、不快な血の湖に、アヴァルザウントの乾燥した皮が浮かんでいた。

危機一髪で難を逃れたサーレインは、以来人が変わったかのように厳格で高潔な人物となり、質素な食事で身体は痩せ、死後には聖人として列せられる。

主な登場人物[編集]

  • アヴァルザウント - 黒魔術師。生前から食屍鬼を使役していた。埋葬された後に、ミイラとして蘇る。
  • マイゴン - アヴァルザウントの弟子。弟子たちの中では最年長。
  • ニョグタ - オールド・ワン。あらゆる墓には異次元に通じる通路が存在しており、その窖に通じる階段の先に居住する神性。
  • 食屍鬼 - ニョグタの奉仕種族。痩せた犬顔の種族。墓場をうろつき死体を喰らう。
  • シムバ - 羊飼いの神。信者におおらかなために、修道士たちは怠惰となり、贅沢な生活をして太っている。
  • サーレイン - 羊飼いの神シムバの修道院長。快楽好きで肥満体。

収録[編集]

  • 新紀元社『エイボンの書 クトゥルフ神話カルトブック』

脚注[編集]

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注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ 新紀元社『エイボンの書』【窖に通じる階段】137ページ。