笄町

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笄町（こうがいちょう）は、かつて東京都港区麻布にあった町である。町名としては1869年（明治2年）から1967年（昭和42年）まで存在した。

概要[編集]

麻布地区住居表示対照図

笄町は、江戸時代から1967年（昭和42年）まで存在した町名で、町域には現在の東京都港区南青山六-七丁目から西麻布二-四丁目の一部が含まれる[1]。町は大政奉還後の1869年（明治2年）、それまでの武家地や長谷寺を併せて設けられた[2]。

現在の地理では、西麻布交差点（霞町交差点）から広尾方面に向かう外苑西通りの左右に広がる町域で、青山霊園のすぐ南から、日本赤十字社医療センター（日赤病院）までが含まれる[2]。笄町は、外苑西通りや旧笄川が流れる谷底の低地から、右手は牛坂などが上る高台、左手は笄坂などが上る高台で、かつての町名は港区立笄小学校の名に残されている。一帯は江戸時代には武家地で、現在は外苑西通り沿いや低地部には雑居ビルや飲食店が並ぶが、高台には邸宅やマンションなどがみられる。また、私塾国士舘の発祥地もここ笄町になる。

町名の由来・笄橋[編集]

「笄町」の名称は、町域を流れる笄川にかかっていた笄橋が町名の由来であるが[1]、その笄橋は牛坂及び富士見坂の坂下に係っていた[3]。橋は武蔵野の要路にあって古くからよく知られていたが、大正時代末期に川が暗渠とされたことで消滅した[1]。明治時代後期に出版された地誌 『新撰東京名所図会』は笄橋について、「笄橋はむかしより其の名高けれども、実地に就て検するに笄川と称する一溝渠に架する小板橋なり。長凡そ二間、幅三間に過ぎず。もとは欄干もなかりしが、今は之を附したり。現在のものは明治33年12月の落成に係る」と記している[3]。

町名の「笄」とは女性の日本髪に用いられた「簪（かんざし）」と並ぶアクセサリーのひとつであり、名の由来にはそれにまつわるエピソードもある一方、甲賀と伊賀両家の屋敷にちなみ「甲賀伊賀町」転じて「笄ヶ町」から「笄町」となったという駄洒落のような説もある[2]。

笄坂[編集]

笄坂は笄町にある坂道で、現在の住所では港区西麻布二丁目と四丁目の境界に位置し[4]、六本木通りを西麻布交差点（霞町交差点）から高樹町交差点（南青山七丁目交差点）まで上がる上り坂である。もとは都電の通った坂道であったが[4]、現在では六本木通り上に架かる首都高速道路3号渋谷線の高架と西麻布交差点の外苑西通りをオーバーパスする高架という、二階建ての高架道路に覆われた側道になってしまっている。

笄坂は同じ台地に上る牛坂と平行しており[4]、谷底である西麻布交差点（外苑西通り）を境に霞坂と対面している。1941年（昭和16年）に編まれた『麻布区史』の「麻布笄町」の項には、「笄坂 -　青山六丁目に至る笄町電車通り」との説明が見られる[3]。

旧笄町の町域においては、港区元麻布三丁目の専称寺前から西麻布三丁目三番辺りを西に下る「富士見坂」も、「笄坂」と呼ばれることがある[4]。こちらの笄坂（富士見坂）の坂下はかつて笄橋があったところで、牛坂へと上る道筋である[4]。

大猫伝説[編集]

笄町には大猫の伝説があり、「麻布の大猫」として知られる。

出身・ゆかりのある人物[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 特集・東京の地名 町それぞれの物語 『東京人』（都市出版株式会社） 第20巻第5号 平成17年5月3日発行
  2. ^ a b c 今尾恵介 「失われた地名を手がかりに東京町歩き」 特集・東京の地名 町それぞれの物語 『東京人』（都市出版株式会社） 第20巻第5号 平成17年5月3日発行
  3. ^ a b c 「笄坂」 石川悌二 『江戸東京坂道辞典コンパクト版』（新人物往来社） 平成15年9月20日発行
  4. ^ a b c d e 「笄坂」 横関英一 『江戸の坂 東京の坂（全）』 筑摩書房 平成22年11月10日発行
  5. ^ 古谷敏　『ウルトラマンになった男』　小学館、2009年、2頁。
  6. ^ a b 『人事興信録 第14版 下』モ7頁（国立国会図書館デジタルコレクション）。2019年9月10日閲覧。

参考文献[編集]

  • 人事興信所編『人事興信録 第14版 下』人事興信所、1943年。

関連文献[編集]

外部リンク[編集]

  • 麻布笄町 麻布地区の旧町名由来（笄公園設置） 港区
  • 笄公園 港区ホームページ