精神保健の歴史

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
メンタルヘルス > 精神保健の歴史

精神保健の歴史(せいしんほけんのれきし、英語: History of Mental health)では、精神保健精神医学精神障害の歴史について記述する。

世界の歴史[ソースを編集]

16世紀、宗教改革[ソースを編集]

  • 1656年、フランスのルイ14世の指導により精神障害者、犯罪者、浮浪者を収容する総合施療院、ビセートル病院L'hôpital de Bicêtre、男性)、サルペトリエール病院Hôpital de la Salpêtrière、女性)が建設される[1]働かない権利の項も参照
  • 1714年、イギリスにて浮浪者取締法が制定される。浮浪者の中の精神障害者の保護について規定[2]
  • 1774年、イギリスにてマッドハウス(madhouse[3])を規制するマッドハウス法を制定する[4]
    • イタリアのレオポルド大公が精神障害者の人道的ケアを謳った精神衛生法を施行。

1789年〜、フランス革命[ソースを編集]

  • 1785年、イタリアでは近代的精神医療をめざした聖ボニファチェ病院が開設され、院長のヴィンチェンツォ・キアルージが精神障害者に対する開放的処遇を発表。病歴記載方法、高度の衛生管理、レクリエーション施設、作業療法、拘束の制限など、人権思想に関する当時としては極めて先進的な手法を提示した。
  • 1793年、フランスのフィリップ・ピネルPhilippe Pinel)、ジャン=バチスト・ピュッサンがビセートル病院の閉鎖病棟の患者を鎖から解放する。ル・クルムラン=ビセートルも参照
  • 1808年、イギリスにて州立アサイラム法が成立、精神障害者の入院環境を改善する多くの規定が盛り込まれる[5]
  • 1817年、アメリカ最初の「道徳療法」を行う精神病院が開設される。
  • 1852年、フランスの精神科医ベネディクト・モレル (Bénédict Morel) によって統合失調症は初めて公式に記述され、Démence précoce(「早発性痴呆」)と呼ばれた
  • 1871年、ドイツのエヴァルト・ヘッカー (Ewald Hecker) が「破瓜病」(Hebephrenie) を著す
  • 1874年、ドイツのカール・カールバウム (Karl Ludwig Kahlbaum) が「緊張病」(Katatonie) を著す
  • 1880年、フランスの医師ジェリーノ(Jean-Baptiste-Édouard Gélineau)がナルコレプシーnarcolepsy)を名付ける
  • 1884年、ルドルフ・ベルリン(Rudolf Berlin)によってディスレクシア(読字障害)が報告される
  • 1899年、ドイツのエミール・クレペリン (Emil Kraepelin) がDementia Praecox(「早発性痴呆」)を著し、破瓜病緊張病妄想病を加えてまとめる
  • 1900年、国際統計協会疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)の初版を公表
  • 1904年、イタリアで法36号(自傷他害・公序良俗を汚す恐れのある患者の強制入院等)が規定される。
  • 1911年、スイスの精神科医オイゲン・ブロイラー(Eugen Bleuler)は、必ずしも若年時に発症するとは限らず、又、必ずしも痴呆に到るとは限らず、この病気の本性は観念連合の弛緩にあるとして、独Dementia Praecox(「早発性痴呆」)を独Schizophrenie(旧称「精神分裂病」)と改名し疾患概念をかえた
  • 1913年、野口英世進行麻痺患者の脳に梅毒病原体を発見する

1918年、第一次世界大戦終戦[ソースを編集]

1945年、第二次世界大戦終戦[ソースを編集]

21世紀[ソースを編集]

日本での歴史[ソースを編集]

日本の現行法「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の対象となる知的障害発達障害の主な歴史も参考程度に記述した。

江戸時代[ソースを編集]

1867年、明治維新[ソースを編集]

東京府立時代の松沢病院(1919年)

1890年、第1回帝国議会開会[ソースを編集]

1918年、第一次世界大戦終戦[ソースを編集]

  • 1918年(大正7年)、呉秀三・樫田五郎『精神病者私宅監置ノ實況及ビ其統計的觀察』を出版。「わが邦十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸の他に、この邦に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」という有名な一節を残す。
  • 1929年(昭和4年)、救護法公布(原泰一
  • 1938年(昭和13年)、新潟大学中田瑞穂、ロボトミーを開始。以後1975年(昭和50年)までロボトミーを受ける者もいた。
  • 1940年(昭和15年)、国民優生法公布

1945年、第二次世界大戦終戦[ソースを編集]

1987年、精神保健法施行[ソースを編集]

  • 1987年(昭和62年)、宇都宮病院事件を受けて、精神保健法施行。精神保健指定医制度が発足し、任意入院制度確立。
  • 1989年(平成元年)、社団法人日本自閉症協会設立[36]
    • 「保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則」が改正。これまでは男性看護師(旧称・看護士)は女性看護師(旧称・看護婦)と異なり、精神科病棟での勤務を前提とした教育体制が取られていた。改正後は男女とも同一の教育カリキュラムとなっている。
  • 1993年(平成5年)、全国精神障害者団体連合会(全精連)結成
  • 1994年(平成6年)、北陽病院事件の民事訴訟判決が確定。患者が起こした事件に対し、県・病院に総額約1億2千万円の賠償責任を認める。
  • 1995年(平成7年)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行。精神障害者保健福祉手帳制度制定
  • 1995年(平成7年)、茨城県障害者虐待等により強制労働水戸事件」が発覚
  • 1996年(平成8年)、優生保護法が母体保護法に変わり、強制断種等に係る条文が削除される。
  • 1997年、大阪市住吉区長居の安田病院系列である、大阪府柏原市の大和川病院(医療法人北錦会)に人権蹂躙の疑いで立ち入り検査。入院患者の不審死が26件明らかになり、大和川病院事件が発覚。保健機関取消、病院開設許可取消、医療法人認可取消処分となったのちに倒産[38][39][40]

2000年、介護保険制度施行[ソースを編集]

2006年、障害者自立支援法施行[ソースを編集]

脚注[ソースを編集]

  1. ^ 精神障害者をどう裁くか 岩波明 光文社 2009年 ISBN 9784334035013 p67
  2. ^ 精神障害者をどう裁くか 岩波明 光文社 ISBN 9784334035013 p74
  3. ^ Overview of the Development of Alternatives to Community Care-200 Years Experience(コミュニティケアをめぐるイギリス精神保健の200年)John B. Jenkins 佐藤久夫訳 リハビリテーション研究 日本障害者リハビリテーション協会 1994年3月(第79号)11頁〜15頁
  4. ^ 精神障害者をどう裁くか 岩波明 光文社 ISBN 9784334035013 p74-75
  5. ^ 精神障害者をどう裁くか 岩波明 光文社 ISBN 9784334035013 p75
  6. ^ 1冊でわかる狂気 ロイ・ポーター著 田中裕介、内藤あかね、鈴木瑞実訳 岩波書店 2006年 ISBN 9784000268882 p170
  7. ^ MJ Sakel (1956) The classical Sakel shock treatment: a reappraisal. In F. Marti-Ibanez et al. (eds.) The great physiodynamic therapies in psychiatry: an historical reappraisal. New York: 13-75.
  8. ^ a b 岩井一正「70年間の沈黙を破って : ドイツ精神医学精神療法神経学会(DGPPN)の2010年総会における謝罪表明」、『精神神經學雜誌』第113巻第8号、2011年8月25日、 782-796頁、 NAID 10030968313
  9. ^ 医薬品インタビューフォーム 「イミドール」 (PDF) 田辺三菱製薬 吉富薬品 2010年9月25日閲覧
  10. ^ Overview of the Development of Alternatives to Community Care-200 Years Experience(コミュニティケアをめぐるイギリス精神保健の200年)John B. Jenkins 佐藤久夫訳 リハビリテーション研究 日本障害者リハビリテーション協会 1994年3月(第79号)11頁〜15頁
  11. ^ アメリカにおける脱入院化――ケネディ教書以前とその後 三野宏治 立命館大学大学院 2009年
  12. ^ 現代精神衛生学ノート 村田忠良 サンパウロ 122〜123頁
  13. ^ 精神病院を捨てたイタリア捨てない日本 大熊一夫 岩波書店 2009年 ISBN 9784000236850 p106
  14. ^ Wing, Lorna. Asperger syndrome: a clinical account.
  15. ^ 小俣和一郎 2005, p. 117.
  16. ^ 小俣和一郎 2005, p. 120,242.
  17. ^ 小俣和一郎 2005, p. 120,243.
  18. ^ 東京都健康長寿医療センターのご紹介 山口雅庸 2011年4月15日閲覧
  19. ^ 養育院事業と歴史 都庁養育院支部
  20. ^ “東京都立松沢病院の沿革” (プレスリリース), 東京都立松沢病院, (2012年10月24日), http://www.byouin.metro.tokyo.jp/matsuzawa/shiru/enkaku.html 2012年10月24日閲覧。 
  21. ^ わが国の精神保健福祉 平成14年度版 精神保健福祉研究会 16頁
  22. ^ わが国の精神保健福祉 平成14年度版 精神保健福祉研究会 563頁
  23. ^ 現代精神衛生学ノート 村田忠良 サンパウロ 61頁
  24. ^ 財団法人川越病院「沿革」
  25. ^ 日本の障害者施策の経緯 文部科学省 2011年4月15日閲覧
  26. ^ わが国の精神保健福祉 平成14年度版 精神保健福祉研究会 16頁
  27. ^ 小俣和一郎 2005, p. 149.
  28. ^ 「日本の精神医療史―明治から昭和初期まで」 ISBN 4787233343
  29. ^ 根岸病院:年表
  30. ^ “文教委員会”. 30. 第26回国会. (1952-07-10). http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/026/0462/02607110462030c.html 
  31. ^ 精神病院を捨てたイタリア捨てない日本 大熊一夫 岩波書店 2009年 ISBN 9784000236850 p18
  32. ^ 平成13年度に実施した評価の結果:中間・事後評価書(確定):精神障害者通院医療費 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課 2010年4月24日閲覧
  33. ^ D.H. Clark (1968-02). Mental health advisory services (Report). http://www.max.hi-ho.ne.jp/nvcc/CK5a.HTM.  和訳は国立精神衛生研究所精神衛生資料第16号
  34. ^ a b 小俣和一郎 2005, p. 218.
  35. ^ 共同作業所の実態とその役割─精神障害者の働くことの意義について─ 藤井克徳、岩崎晋也 リハビリテーション研究 1992年1月(第70号) 財団法人日本障害者リハビリテーション協会 2010年10月8日閲覧
  36. ^ 社団法人日本自閉症協会定款 (PDF) 社団法人日本自閉症協会 2010年10月8日閲覧
  37. ^ 関西医科大学心療内科学講座「心療内科とは? 心身症とは?」
  38. ^ 精神病院不祥事件が語る入院医療の背景と実態 ──大和川病院事件を通して考える」、『立命館大学生存学研究センター,生存学研究センター報告11』、 167-195頁。
  39. ^ a b c 藤野 ヤヨイ「精神科病院の特質と入院患者の人権」、『現代社会文化研究』、新潟大学、2013年11月、 NAID 110000563822
  40. ^ 原昌平 (2016年5月27日). “貧困と生活保護(32)患者が食い物にされていた安田系3病院事件”. yomidr (読売新聞東京本社). https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160526-OYTET50017/ 2017年6月14日閲覧。 
  41. ^ “朝倉病院:埼玉県が入院制限命令 入院形態が不適切と”. 毎日. (2001年3月29日). http://web.archive.org/web/20040228054032/http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200103/29/0329e091-400.html 
  42. ^ 隔離・身体拘束時の事故事例・判例について - eらぽーる”. 吉富薬品株式会社. 2015年2月1日閲覧。
  43. ^ “平成13年度における保険医療機関等の指導及び監査の実施状況について(概況)” (プレスリリース), 厚生労働省, (2002年12月19日), http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283092/www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1219-1.html 
  44. ^ “大阪の患者拘束死事件で有罪 「医療行為の正当性欠く」”. 共同. (2011年4月5日). http://www.47news.jp/CN/201104/CN2011041501000746.html 
  45. ^ “厚労相、生活保護指標見直し指示 障害者自立支援法は廃止明言”. 47NEWS (共同通信社). (2009年9月19日). http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009091901000707.html 2014年9月25日閲覧。 
  46. ^ “倉敷森下病院に入院制限命令”. CBnews. (2011年2月22日). http://www.cabrain.net/news/regist.do;jsessionid=F2F210E50920E0AB81A2A85065D10A8F 
  47. ^ “精神科病院に対する医療の一部制限の延長について” (プレスリリース), 岡山県, (2011年8月30日), http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3498399/www.pref.okayama.jp/site/presssystem/detail-233986.html 
  48. ^ 国際連合人権理事会 (2013-03-31) (doc). Concluding observations on the second periodic report of Japan, adopted by the Committee at its fiftieth session (Report). United Nation Human Rights. http://www2.ohchr.org/english/bodies/cat/docs/co/CAT.C.%20JPN.CO.2-%20AUV_en.doc 2014年6月4日閲覧。. 
  49. ^ 佐藤光展 (2015年4月28日). “放置された指定医の暴走”. 読売新聞 (読売新聞社). http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=117820 2015年9月1日閲覧。 
  50. ^ 精神科病院 看護師による暴行(医療法人石郷岡病院) - YouTube
  51. ^ 佐藤光展 (2015年6月16日). “暴行ビデオあっても警察動かず”. 読売新聞 (読売新聞社). http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=119969 2015年9月1日閲覧。 
  52. ^ “千葉・石郷岡病院准看護師暴行:精神科病棟、2人逮捕。傷害致死容疑、県警。”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2015年7月8日). http://mainichi.jp/shimen/news/20150708dde041040048000c.html 2015年8月29日閲覧。 
  53. ^ “映像解析し「暴行が原因」と判断…千葉患者死亡”. 読売新聞 (読売新聞社). (2015年7月9日). http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=120895 2015年8月29日閲覧。 
  54. ^ 原昌平 (2017年4月28日). “精神保健福祉法の改正案はなぜ、つまずいているか”. 読売新聞 (読売新聞大阪本社). https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170428-OYTET50006/ 2017年10月3日閲覧。 
  55. ^ 山田泰蔵 (2017年9月28日). “精神保健福祉法 改正案が廃案に 相模原事件受け政府提出”. 毎日新聞 (毎日新聞社). https://mainichi.jp/senkyo/articles/20170929/k00/00m/040/055000c 2017年10月3日閲覧。 

参考文献[ソースを編集]

関連項目[ソースを編集]