紅楼夢

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紅楼夢
Hóng Lóu Mèng
徐宝篆の挿絵
徐宝篆の挿絵
著者 曹雪芹
発行日 18世紀中頃
ジャンル 小説
中華人民共和国の旗 中国
言語 中国語
形態 文章芸術、posthumous work
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紅楼夢(こうろうむ、繁体字: 紅樓夢; 簡体字: 红楼梦; ピン音: Hóng Lóu Mèng; ウェード式: Hung2 Lou2 Meng4)は、清朝中期乾隆帝の時代(18世紀中頃)に書かれた中国長篇章回式白話小説。原本の前80回はなお残っており、完本は114回に達しなかったと推定される。今流通している前80回が曹雪芹(そう・せつきん)の原文、後40回は高鶚(こう・がく)の続作といわれている。『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』と並べて『中国四大名著』と位置づけられる、『紅楼夢』はその首であり、現代中国でも紅楼夢賞・世界華文長編小説賞という文学賞が存在する。

石頭記(せきとうき・いしき)・金玉縁・情僧録・金陵十二釵・風月宝鑑ともいう。中国の源氏物語ともいわれている[1]

概要[編集]

上流階級の賈氏一族の貴公子である賈宝玉(か・ほうぎょく)を主人公とし、繊細でプライドの高い美少女の林黛玉(りん・たいぎょく)、良妻賢母型の薛宝釵(せつ・ほうさ)の三角関係を軸に展開する(とは言っても、どろどろした三角関係が小説の中心ではない)。小説は上流階級の生活の細部を描き、主人公たちの交情を克明に記しながら進行する。清代末期から紅楼夢を専門に研究する学問を紅学といい、この言葉は現代でも使用される。毛沢東も愛読し、1950年代の中国で紅楼夢論争も戦わされた。現代中国でも非常に有名な小説であり、映画や演劇、テレビドラマ化されることが多い。

この小説の特徴はストーリー中心のロマンではなく、大貴族の深窓の令息令嬢の心理のひだが繊細に描きこまれていることにある。士大夫経世済民という表向きの世界ではなく、弱くて感じやすい「児女の情」をテーマとするといえる。『三国志演義』の「武」、『水滸伝』の「侠」に対して『紅楼夢』は「情」の文学であるとされる。その一方で、主人公たちは儒教道徳や官僚の腐敗、不正に対する痛烈な批判を口にしており、乾隆盛世と呼ばれた当時の社会に対する批判的色彩も帯びている。また、当時の上流階級の日常生活が登場人物400人を超える規模で細部まで克明に描かれており、文化史的にも価値があるとされる。男女の人情を描いた中国の長篇小説としては『金瓶梅』に次いで古いものであるが、恋愛模様がプラトニックに徹しており情感も洗練を極めている点において好対照の位置にある。 また、主人公である賈宝玉と林薫玉以外にも様々なヒロインが登場し、男女の関係だけでなく、召使や侍女同士での地位や金銭による厳しい派閥争い、主従関係、主人と侍女といったような多くの関係性も描いている作品である。また、道教・仏教の思想も含まれている。

作者と成書背景[編集]

以下の文章の参考文献は[2]である。

『紅楼夢』の作者曹雪芹は、生活の巨大な変化を経験して、最後に鬱々として死んでいった人であった。彼の名は霑(てん)、字は夢阮(むげん)、号は雪芹(せつきん)、またの号は芹圃(きんぽ)、芹渓(きんけい)といった。生年は未詳、死んだ年は乾隆二十七年壬午年の除夜(西暦一七六三年二月十三日)、一説によると乾隆二十八年癸未の除夜とされ、ほぼ四十余歳の生涯であった。

曹雪芹の先祖はもともと漢人であったが、非常に早く満州籍に入り、漢軍正白旗人に所属した。彼の曾祖父曹璽から、父の曹頫(曹寅の養子で、曹寅の弟の曹荃の実子)の代まで、全部でほぼ六、七十年の久しきにわたって江寧織造(宮廷のために各種の御用物品を購入できる官職)を世襲した。そのうえ、曹璽の妻がかつて康熙皇帝の乳母をしたことがあり、また曹雪芹の祖父曹寅が康熙皇帝の「侍読」になったことがあった。だから曹家はそのとき、財力・権勢が天をおおう勢いの「百年の望族」となった。

曹雪芹は少年時代は、一時期、極めて富貴繁華な貴族生活を経験したことがある。しかし、父が任期中に欠損を出し、さらに皇室内部に権位争奪に巻き込まれて免職、家産没収の処分を受けた。彼は最後に非常に貧乏な日々を過ごした。

『紅楼夢』は、曹雪芹が貧乏暮しをしていた時期に書いたものである。書いていた過程では、また周囲の数人の友人の賞賛と激励を得た。『紅楼夢』が完成に近づこうとしたとき(前八十回はすでに基本的に定稿となっており、その後の部分がさらにいくらか書かれていたのだが、その当時すでに「紛失」していた)、曹雪芹は貧乏のために病気になっても治療ができず、そのうえただ一人の愛児が夭折し、非常に悲しんで、ついにある大晦日の晩に「涙尽きて逝った」[3]

あらすじ[編集]

  • 以下にあらすじを摘記する[4][5]

『紅楼夢』真正的主角是誰?還是賈宝玉、離開了賈宝玉甚麼都没有了、作者別的人物也都是為了宝玉。芹筆下的賈宝玉実在写得精彩、他写宝玉就採用多鏡頭、多角度宝(訳:紅楼夢の真の主役は誰だろうか)やはり賈宝玉であり、賈宝玉から離れてしまったらなにもかもなくなってしまう、作者が別の人を書くのはすべて賈宝玉のためである。曹雪芹の書いた賈宝玉は精彩であり、彼は多くの視野を用いて、さまざまな角度から賈宝玉を書いている。*誤訳がある可能性あり』)(『紅楼夢』的筆話」 『献芹集』 三〇五項より)とあるように賈宝玉が主人公なのは賈宝玉であることが裏付けられる。

主人公である賈家・栄国府の次男である賈宝玉は、祖先の勲功により代々高官を出し、皇室の姻戚でもある賈氏一族の貴公子である。賈宝玉は勉学は嫌いだが眉目秀麗なため、祖母の史太君に溺愛され、豪邸に同居する美少女たちと風流生活を送っている。科挙に合格するも、現在の名声や富、政治や道徳などを受け入れずに批判し、拒否していた。賈宝玉の父方の従妹である林薫玉は、母の賈敏を亡くした後に賈家へと身を寄せた。そこで賈宝玉は趣味の合う美少女、林黛玉と相思相愛の関係となるが、お互いの気持ちをうまく伝えられない。ある日、賈宝玉は夢の中で、天地や万物の根源であり、あたかも実在するかのように見えるまぼろしの境界・太虚幻境という天上世界に迷い込み『薄命司』を見つけるが、内容を理解できぬまま目が覚めてしまう。そこには、将来少女たちに起こるであろう不幸が記載されていた。薛宝釵が豪邸内に住み始めたことや、気になる夢のことなど、もともと病弱だった林黛玉は心が落ち着かない。その後、父の危篤を知らされた林黛玉は一度帰省する。そのことが一つの悲劇の始まりにつながる。

賈宝玉と林黛玉は真剣に思いあっていたが、金と玉とが対になる「金玉の縁」の金に当てはまるとされる薛宝釵を過剰に意識し始める。このことに薄々林黛玉は嫉妬し不安に感じていることを打ち明け、また賈宝玉も薛宝釵のことを打ち明ける。賈宝玉は賈政に折檻されたとき、晴雯に使い古しのハンカチを林黛玉に届けさせるように命じた。ハンカチを見て林黛玉は賈宝玉の想いを悟り、ハンカチに詩をつづった。これを機に二人が不安を抱いたり、言い争いをすることはなくなった。

やがて林黛玉を中心とする少女たちが詩社を結成してから、大観園はますます少女たちにふさわしい世界へと変化していく。と同時に絶頂を迎え、それぞれの個性が発揮される聯句の会となった。賈宝玉は大観園を外から見ることに喜びを見出すが、大観園の外の世界では、賈家は窮地に追いやられ、危機的状況に置かれていた。それは王夫人の姪であり、栄国府の家事を切り盛りする「王熙鳳」の夫の賈璉が熙鳳の誕生日に浮気をし、そのことが原因で熙鳳が流産してしまったのが発端となり、家庭崩壊へとつながっていった。

家庭内のごたごたがひとまず落ち着いてきたとき、賈宝玉たちの誕生日パーティーが開かれる。そこでは身分関係なく同じテーブルに座りパーティーを楽しむという夢のようなひとときであったが、一夜の過ちであったかのようにその後夫婦の間にさらに亀裂が入り冷め切った関係になってしまったり、側室をもらい損ねる人、主人の威厳が低下、付き人・召使は主人を誹り始めるなど修復不可能なまでに陥り、世界は崩壊の一途をたどる。このことは、少女は少女であってほしいという賈宝玉の願いとは相反する出来事であり、その願いは裏切られていった。

その後、賈宝玉は父に命じられるまま代々賈家の男子が通う塾に通い始める。病気で伏している林黛玉とはめったに顔を合わすことができなくなる一方、賈宝玉と薛宝釵の婚約話はどんどん進められ、途方に暮れた林黛玉は死(自殺)を覚悟する。

そのころ奇妙な出来事が起こる。春を代表する花として知られる怡紅院の海棠が、枯れていたにもかかわらず季節外れに咲いたり、通霊宝玉が行方不明になったり、賈家を象徴する事柄がどんどん失われていき、再び窮地に陥る。賈家の繁栄に不安を感じた史太君は、賈宝玉と薛宝釵の結婚を急ぐ。王熙鳳は、当事者である賈宝玉と林黛玉には知られまいと内密にことを進めていたが、あるきっかけから林黛玉の耳に伝わってしまう。林黛玉は、詩を書きつけたハンカチなどの思い出の品を焼き尽くし、恨みの一言を残すと同時に自殺を図った。

そうとは知らず林黛玉と結婚できると思っていた賈宝玉は、結婚式の最中に相手が林黛玉ではなく薛宝釵だと知る。同時に林黛玉の死と向き合うこととなり一時意識が混濁するも、少しずつ平然を戻していった。これは王熙鳳の考えていた一つの策であった。

追い打ちをかけるかのように、さらに賈家に崩壊の危機が襲い掛かってきていた。林黛玉や薛宝釵といった少女たちがほとんど去ったため、大観園は過疎化し敬遠されて勢いを失った。また、賈家の数々の不正行為も明るみに出るなどお先真っ暗な状態へと変わってしまった。その後、史太君は寿命で亡くなり、筆頭侍女も後を追うかのように首をつって亡くなった。葬儀を取り仕切った王熙鳳では対処ができなくなったため、親戚などの信頼を失ってしまった。さらに釈妙玉は盗賊に誘拐されて行方不明となり、病に伏していた王熙鳳の病状は悪化する一方であった。

賈宝玉は、通霊宝玉を返しに来た僧によって再び夢の中で『薄命司』を読み、僧の導きのもとで出家を決意した。出家する日を密かに科挙の受験日と決め、誰にも別れを告げずに受験終了とともに姿をくらました。江南へと旅立った賈政がその姿を目撃したが、頭を丸めて意志は固いようだった。必死に追いかけたが追いつくことはできなかった。こうして、出会い、別れ、期待、裏切り、決意といった様々な出来事を繰り広げてきた賈宝玉の生涯は、出家によって世の中との関係を断ち切ることで、夢幻劇の終わりを告げたのである。

時がたち、空空道人は石に記されたこの物語を見て、寂しさを紛らわすために読み、友達とお酒を飲むのにいいだろう、と言った。絵空事に過ぎないが、二人はお互いに引かれながらも、ささいな嫉妬から大喧嘩をし、結局、病弱な林黛玉は悲しみを抱いて死亡。なお、曹雪芹が執筆したものが残っているのは80回までであり、黛玉の死や賈家の没落は補作部分になる(ただし、そのような展開になるであろうことは伏線として曹雪芹が明らかにしている)。

舞台[編集]

以下の文献は[6][7]

『紅楼夢』の中心舞台である”大観園”は、舞台として、場面として、大観園が『紅楼夢』の世界の中心である。もともとは第十八回の題名にある「天上人間、諸景備わり、芳園応に錫うべし大観の名」のように天上界の風景と人間の風景とを混淆させて作った、真仮相半ばする架空庭園なのであり、元春貴妃の省親のために賈家の中に造営されたものである。第十六回で「東側の一帯からはじめ、東邸の花園を取り囲み、それから北側へかけて、ぜんぶ測量を終わり、三里半の規模でお帰りの別院を建てることになりまして、すでに図面を引かせております」とあるように、庭園部分を占めている。(しかし、現実には大きさが見当もつかないので架空上の屋敷である。)なぜそこにたくさんの女たちがいるのかというと、帰省のためだけに作られた大観園を閉鎖しないために賈宝玉が勉強をそこで一緒に勉強しろと命じられたのが大観園が舞台となるすべての始まりなのだ。また、賈宝玉の他に主人筋の女子としては、林薫玉・薛宝釵・賈探春・賈惜春・賈迎春・李紈・釈妙玉がおり、侍女を含めるとすべてで二十三人ほど常住しており、下働きの女中、下女、園外に住み侍女を連れて移住してきた女怜、始終大観園に出入りしている人たちすべてでおよそ百人近く大観園にいた。大観園の主役はあくまで少女たちであり、宝玉自身の存在価値は少女たちとのかかわりの中で初めて生まれてくる。薫玉が理想の少女として大観園の中心的存在である以上、宝玉はほかの女たちに対してもまた個性を惜しみなく発揮することを願う。少女世界は少女たち自身で築きあげるのだが、宝玉は「汚らわしき」男子なるがゆえに、その世界全体を意識的にとらえ直すことができ、しかもそこで最高の価値を見出すことができる。少女たちが自分自身で築く大観園はそれを保証する場だと先ん験的に信じ込む彼に最初の喜びをもたらす詩社を結成する。しかし詩社には侍女たちが加われないという限界がある。ここで区別を超え、姉妹とともに侍女を加えた世界が築かれることを望む。これは世俗の上下関係をそのまま持ち込んでいる大観園に少女だけを問う世界が築かれることを意味する。この結果、薫玉から詩社、さらに誕生日祝いと、本来では侍女は出席すらできないが、席を用意され一緒に楽しむという大観園は幻想の根拠たるにふさわしく、少女たちが少女として築く世界を成立させている。しかし、賈家の人間関係に初めて亀裂が起き、賈赦が鴛鴦を側室に所有したのが発端である。このことによってわずかな利益も見逃すまいと目を光らせる人間が縄張り意識を持つち、大観園は金儲けの場という性格を押し付けられる。そして侍女たちとばあやたちの争いというかたちで再三火花を散らす。亀裂の重なりが憎悪を深める中で、大観園に対して不審な眼差しが向けられたことによって宝玉は、侍女としてあるべき姿が強制され、少女ということは度外視されたことによって大観園は少女の世界という幻想の現実性の無さを思い知る。

各回の名[編集]

  • 以下に各回の名[8]を挙げる。

第1回

甄士隠夢幻にて通霊玉を知るのこと

賈雨村風塵に閨秀思うのこと

第2回

賈夫人揚州城にて仙逝るのこと

冷子興栄国家を演説るのこと

第3回

賈雨村を縁に夤って旧職に復すのこと

林黛玉父を抛して京都に進むのこと

第4回

薄命の女偏に薄命の男に出会うのこと

葫蘆の僧乱に葫蘆の判決を下すのこと

第5回

幻境に遊びて迷いを十二釵に指すのこと

仙酒を酌みて紅楼夢の曲を聞くのこと

第6回

賈宝玉初めて雲雨の情を試みるのこと

劉姥姥一たび栄国府に進むのこと

第7回

宮花を送って賈璉熙鳳に戯るのこと

寧国府の宴にて宝玉秦鐘に会うのこと

第8回

通霊に比し金鶯少しく意を露わすのこと

宝釵を探り黛玉なかば酸を含むのこと

第9回

風流を恋い情友家塾に入るのこと

嫌疑を起こし頑童学童を鬧がすのこと

第10回

金寡婦利を貪って辱を受くるのこと

張太医病の細かきを論じて源を窮むるのこと

第11回

寿辰を慶ぎて寧府家宴を排べるのこと

熙鳳を見て賈瑞淫心を起すのこと

第12回

王熙鳳毒もて相思の局を設くるのこと

賈天祥正に風月の鑑に照らすのこと

第13回

秦可卿死して龍禁尉に封ぜらるるのこと

王熙鳳協けて寧国府を理のこと

第14回

林如海揚州城に捐館るのこと

賈宝玉路に北静王に謁するのこと

第15回

王鳳姐権を鉄檻寺に弄するのこと

秦鯨卿趣を饅頭庵に得るのこと

第16回

賈元春才もて鳳藻宮に選らばるるのこと

秦鯨卿夭くして黄泉路を逝くのこと

第17・18回

大觀園に才を試み対額を題するのこと

栄国府に歸省して元宵を慶ぐのこと

第19回

情は切々として良ろしき宵に花は語を解するのこと

意は綿々として静かなる日に玉は香を生ずるのこと

第20回

王熙鳳正言もて妬意を弾くのこと

林黛玉俏語もて嬌音を謔うのこと

第21回

賢き襲人嬌嗔もて宝玉を箴むるのこと

俏き平児軟語もて賈璉を救くるのこと

第22回

宝玉曲文を聞きて禪機を悟るのこと

賈政燈迷を作りて讖語に悲むのこと

第23回

西廂記の妙詞戲語に通ずるのこと

牡丹亭の艶曲芳心を警むるのこと

第24回

醉金剛財を軽んじ義俠を尚ぶのこと

癡女児帕を遺して相思を惹くのこと

第25回

魘魔の法にて妹弟五鬼に逢うのこと

紅楼の夢にて通霊雙真に遇うのこと

第26回

蜂腰橋に言を設け心事を伝うるのこと

瀟湘館に春に困しみて幽情を発するのこと

第27回

楊妃滴に揚妃彩蝶に戯るるのこと

飛燕埋に飛燕残紅に泣くのこと

第28回

蒋玉函情もて茜香の羅を贈るのこと

薛宝釵羞じて紅麝の串を籠るのこと

第29回

享福の人福深きに還た福を祷るのこと

痴神の女情厚き上に愈々情をば斟むのこと

第30回

宝釵扇を借りて機は雙敲を帯ぶるのこと

齢官薔を劃して痴は局外に及ぶのこと

第31回

扇子を撕きて千金一笑を作すのこと

麒麟に因りて白首雙星を伏すのこと

第32回

肺腑の訴え心は迷う活ける宝玉のこと

恥辱を含み情は烈し死せる金釧のこと

第33回

手足眈眈小しく唇舌を動かすのこと

不肖種種大いに笞撻を承くるのこと

第34回

情中の情情に因りて妹妹を感ぜしむのこと

錯裏の錯錯を以て哥哥に勧むのこと

第35回

白玉釧親ら蓮葉羹を嘗うのこと

黄金鶯巧みに梅花絡を結ぶのこと

第36回

鴛鴦を繍りて夢は絳芸軒に兆すのこと

分定を識りて情は梨香院に悟るのこと

第37回

秋爽斎に偶たま海棠詩社を結ぶのこと

蘅蕪苑に夜菊花の題を擬すのこと

第38回

林瀟湘菊花の詩に魁奪するのこと

薛蘅蕪螃蟹の詠を諷和するのこと

第39回

村の姥姥是れ口に信せて開合するのこと

情の哥哥偏に尋根究底するのこと

第40回

史太君両たび大觀園に宴するのこと

金鴛鴦三たび牙牌令を宣するのこと

第41回

攏翠庵茶に梅花雪に品うのこと

怡紅院却い蝗虫に遇うのこと

第42回

蘅蕪君蘭言もて疑癖を解くのこと

瀟湘子雅謔して余香を補うのこと

第43回

閑ろに樂しみを取り偶たま金を攢めて壽を慶ぐのこと

情を不しえず暫土を撮み香を為すのこと

第44回

変は不測を生じ鳳姐酷を潑すのこと

喜びは望外に出で平児粧を理むのこと

第45回

金蘭の契互いに金蘭の語を剖くのこと

風雨の夕悶みて風雨の詞を製るのこと

第46回

尷尬の人尷尬の事を免れ難きのこと

鴛鴦の女誓って鴛鴦の偶を絶つのこと

第47回

獃覇王情を調して苦打に遭うのこと

冷郎君禍を懼れて他鄉に走るのこと

第48回

情濫るるの人情の誤りて芸を遊ばんこと思うのこと

雅を慕う女雅の集りて詩を吟ずるに苦しむのこと

第49回

琉璃世界白雪と紅梅と

脂粉の香娃腥を割きて膻を啖うのこと

第50回

蘆雪庵にて爭いて即景の詩を聯ぬるのこと

暖香塢にて雅に春燈謎を製るのこと

第51回

薛小妹新たに懐古の詩を編むのこと

胡庸医乱りに虎狼の薬を用うるのこと

第52回

俏き平兒情もて蝦須鐲を掩うのこと

勇いたつ晴雯病みて雀毛裘を補うのこと

第53回

寧国府除夕に宗祠を祭るのこと

栄国府元宵に夜宴を張るのこと

第54回

史後室陳腐の舊套を破るのこと

王熙鳳戲彩の斑衣に効うのこと

第55回

親女を辱め愚妾閒気を争うのこと

幼主を欺りて刁奴険心を蓄うのこと

第56回

敏き探春利を興して宿弊を除くのこと

時き宝釵小惠もて大体を全うするのこと

第57回

慧き紫鵑情辭もて忙玉を試むるのこと

慈き姨媽愛語もて痴顰を慰むるのこと

第58回

杏子の蔭に仮鳳虚凰を泣くのこと

茜紗の窓に真情痴理を撥るのこと

第59回

柳葉渚の辺に鶯を嗔り燕を咤るのこと

絳芸軒の裏に將を召し符を飛ばすのこと

第60回

茉莉紛薔薇硝に替わり去るのこと

玫瑰露茯苓霜を引き来るのこと

第61回

鼠に投ずる器を忌みて宝玉贓みを暪すのこと

冤を判じ獄を決して平児権を行うのこと

第62回

憨湘雲酔いて芍薬の裀に眠るのこと

獃香菱情もて石榴の裙を解くのこと

第63回

怡紅を寿ぎて群芳夜宴を開くのこと

金丹に死して獨艶親喪を理るのこと

第64回

幽淑の女悲しみて五美吟を題すのこと

浪蕩の子情もて九竜佩を遺るのこと

第65回

賈二舎偸かに尤二姨を娶るのこと

尤三姐柳二郎に嫁がんことを思うのこと

第66回

情小妹情を恥じて地府に帰るのこと

冷二郎一たび朝冷めて空門に入るのこと

第67回

土儀を見て顰卿故里を思うこと

秘事を聞きて鳳姐家童に訊すのこと

第68回

苦尤娘賺されて大觀園に入るのこと

酸鳳姐大いに寧国府を鬧がすのこと

第69回

小巧を弄し借剣を用いて人を殺すのこと

大限を覚り生金を呑みて自ら逝くのこと

第70回

林黛玉重ねて桃花社を建つるのこと

史湘雲偶たま柳絮詞を塡するのこと

第71回

嫌隙の人有心に嫌隙を生ずるのこと

鴛鴦の女は無意に鴛鴦に遇うのこと

第72回

王熙鳳強きを恃んで病を説うを羞ずるのこと

來旺の婦勢に倚りて親を成すを覇するのこと

第73回

癡の丫頭誤って繍春嚢を拾うのこと

懦の小姐累金鳳を問わずのこと

第74回

奸讒に惑いて大觀園を抄検するのこと

孤介を矢い寧国府と杜絶するのこと

第75回

夜宴を開きて異兆悲音を発するのこと

中秋を賞でて新詞に佳讖を得るのこと

第76回

凸碧堂に笛を品いて淒涼を感ずるのこと

凹晶館に詩を聯ねて寂寞を悲しむのこと

第77回

俏き丫鬟屈を抱きて風流に夭するのこと

美しき優伶情を斬りて水月に帰するのこと

第78回

老學士閑ろに姽嫿の詞を徴するのこと

癡公子芙蓉の誄を杜撰するのこと

第79回

薛文竜河東の獅を娶るを悔ゆるのこと

賈迎春誤って中山の狼に嫁するのこと

第80回

美しき香菱貪夫の棒を屈受するのこと

王道士妬婦の方を胡謅するのこと

第81回

旺相を占いて四美遊魚を釣るのこと

嚴詞を奉じて両番家塾に入るのこと

第82回

老學究の講義頑心を警むのこと

病める瀟湘の癡魂悪夢に驚くのこと

第83回

宮闈に省して賈元妃恙に染むのこと

閨閫の鬧がせて薛宝釵声を呑むのこと

第84回

文章を試して宝玉に始めて親を提すのこと

驚風を探ねて賈環の重ねて怨を結ぶのこと

第85回

賈存周報ぜられて郎中の任に陞るのこと

薛文起復た放流の刑を惹くのこと

第86回

私賄を受けて老官安牘を翻すのこと

閑情を寄せて淑女琴書を解くのこと

第87回

秋の深きに感じ琴を撫して往事を悲しむのこと

禅寂に坐し心を走らせて邪魔入るのこと

第88回

庭歓を博さんとして宝玉孤児を讃えるのこと

家法を正さんとして賈珍悍僕を鞭うつのこと

第89回

人亡く物在り公子詞を塡すのこと

蛇影杯弓顰卿粒を絶つのこと

第90回

綿衣を失いて貧女嗷嘈を耐えるのこと

果品を送りて小郎叵測に驚くのこと

第91回

淫心を縦にして宝蟾工に計を設けるのこと

疑陣を布きて宝玉妄りに禅を談ずるのこと

第92回

女傳を評して巧姐賢良を慕うのこと

母珠を玩びて賈政聚散を参るのこと

第93回

甄家の僕賈家の門に投靠るのこと

水月庵風月の案を掀翻くのこと

第94回

海棠に宴して賈母花妖を賞でるのこと

宝玉を失して通霊奇禍を知るのこと

第95回

訛に因りて実を成し元妃薨逝するのこと

仮を以て真に混じ宝玉瘋癲となるのこと

第96回

消息を瞞して熙鳳奇謀を設くるのこと

機関を泄らして顰児本性を迷わすのこと

第97回

林黛玉稿を焚きて癡情を断つのこと

薛宝釵閨を出でて大礼を成すのこと

第98回

苦しき絳珠魂は離恨の天に帰るのこと

病める神瑛涙は相思の地に灑ぐのこと

第99回

官箴を守りて悪奴同に例を破るのこと

邸報を閲して老舅自ら驚きを担うのこと

第100回

好事を破りて香菱深恨を結ぶのこと

遠嫁を悲しみて宝玉離情を感ずのこと

第101回

大觀園に月夜に幽魂に感じるのこと

散花寺に神籤異兆に驚くのこと

第102回

寧国府骨肉災祲を病むのこと

大觀園符水妖孽を駆るのこと

第103回

毒計を施して金桂自ら身を焚くのこと

真禅に昧して雨村空しく旧に遇うのこと

第104回

酔金剛小鰍は大浪を生ずるのこと

癡公子余痛は前情に触るのこと

第105回

錦衣軍寧国府を査抄するのこと

驄馬使平安州を彈劾するのこと

第106回

王熙鳳禍を致して羞慚を抱くのこと

賈後君天に祷りて禍患を消すのこと

第107回

余資を散じて賈母大義を明らかにするのこと

世職を復して政老天恩に沐すのこと

第108回

強いて歡笑して蘅蕪に生辰を慶ぶのこと

死して纏綿たり瀟湘に鬼哭を聞くのこと

第109回

芳魂を喉ちて五児錯愛を承くるのこと

薛債を還して迎女真元に返るのこと

第110回

史後君寿終わりて地府に帰るのこと

王熙鳳力詘きて人心を失うのこと

第111回

鴛鴦女主に殉じて太虚に登るのこと

狗彘の奴天を欺きて伙盗を招くのこと

第112回

冤孽に活きて妙尼大劫に遭うのこと

讎仇に死して冥曹に赴くのこと

第113回

宿冤を懺いて鳳姐村嫗に託するのこと

旧憾を釈きて情婢癡郎を感ずること

第114回

王熙鳳幻を歴て金陵に返るのこと

甄應嘉恩を蒙りて玉闕に還るのこと

第115回

偏私に惑いて惜春素志を矢うのこと

同類を証して宝玉相知を失うのこと

第116回

通霊を得て幻境に仙縁を悟るのこと

慈柩を送りて故郷に孝道を全うするのこと

第117回

超凡を阻んで佳人双り玉を護るのこと

聚黨を厭んで悪子獨り家を承くるのこと

第118回

微嫌を記して舅兄弱女を欺るのこと

謎語に驚きて妻妾癡人を諫むのこと

第119回

鄉魁に中りて宝玉塵緣を却くるのこと

皇恩に沐して賈家世沢を延ぶるのこと

第120回

甄士隠太虚の情を詳説すること

賈雨村紅楼の夢を帰結すること


『紅楼夢の現状』[編集]

以下の文献は[9]である。 文化大革命以後、芸術手法、芸術弁証法、芸術技巧、芸術結構といった言葉が頻用され、『紅楼夢』の芸術性が追求された。『紅楼夢』の価値となると、中国小説の中では本当に得難い。従来の小説が善玉はあくまで善、悪玉はあくまで悪としたものとは違い、登場人物が皆本物だということ。それゆえ反面人物について高い芸術性が評価された。曹雪芹は生活の弁証法を尊重し、王熙鳳のことを邪悪な性格を浮き彫りにするに伴い、読者に好かれるような彼女の一面も描く。これが反面文学典型の創造である。『紅楼夢』は事実上政治闘争を描いたものだという人もいる。賈雨村・甄士隠を用いたことで愛情と婚姻という仮語村言から政治闘争という真実に気付かせようとした。こうした絶妙な解釈は紅楼夢の持つ豊富な社会内容や完璧な統一体という芸術的成就である。この政治闘争を描いた背景には、曹雪芹は中国封建社会最後の専制王朝に生まれ、文字獄とうい厳しい思想統制のために真実を隠し、仮語村言を使ってごまかすという芸術手段をとらざる負えなかったからだ。曹雪芹の死後、脂硯斎は名を盗み世を欺き、80回だけ世の出して後の40回については曹雪芹在世中に迷失として人々をだました。これが現在私たちが知る『紅楼夢』の現状である。


登場人物[編集]

以下に、主な登場人物とその紹介を列記する[10]

賈宝玉(か・ほうぎょく)
林黛玉(りん・たいぎょく)
薛宝釵(せつ・ほうさ)
上京する黛玉
太虚幻境(たいきょげんきょう)を訪れる賈宝玉
黛玉が花を埋める場面『黛玉葬花

主人公[編集]

賈宝玉(か・ほうぎょく)
主人公の少年。賈家・栄国府の賈政の次男。才能はありや恋愛小説(当時小説や戯曲は下等なものとされていた)には興味を示すが、科挙方面の勉学は大嫌いで、詩の腕も黛玉や宝釵には及ばない。「女は水でできた体、男は泥でできた体。僕は女を見るとせいせいし、男を見るとむかむかしてくる」、また、「天地の霊淑なものは、女にだけ集まっている」といってもっぱら一族の美少女・美女たちを相手に様々な趣きの交際や交流を楽しんでいる。黛玉を好きだが素直になれず、時々悲しませたり泣かせたりしてしまうこともある。海棠詩社でのは怡紅公子。

金陵十二釵[編集]

十二人の主要美少女・美女。

林黛玉(りん・たいぎょく)
宝玉の父方の従妹で幼なじみ。字は顰児。詩才と機知に富む一方病弱で繊細。厭世的悲観的かつ神経質で極めて感受性の強い美少女。母を亡くした後父の林如海の指示により賈家に身を寄せる。宝玉が好きだがプライドが高いためか素直になれない。西施趙飛燕にたとえられる。華奢で嫋やかで儚げな絶世の美少女。西施同様よく眉を顰めている。海棠詩社での号は瀟湘妃子。
薛宝釵(せつ・ほうさ)
メインヒロインその二。宝玉の母方の従姉。頭脳明晰、人格円満、優等生タイプの美少女。実は冷淡な性格で他人と距離を置くようになった。詩も学問も人に優れてよくできるが、それらが女性にとって価値あるものとは思っていない。林黛玉とは正反対の楊貴妃にたとえられる。肥満体で大らかで華やかな容姿。控えめに振る舞うことを心掛け、海大人びた性格。詩社での号は蘅蕪君。
黛玉とはよく対比され、中国には「恋をするなら林黛玉、妻にするなら薛宝釵」というフレーズもあるという。
史湘雲(し・しょううん)
賈母の実家である史家の一族の美少女。宝玉の祖母方の従妹に当たる。両親を早く亡くして叔父に養われているが、快活で率直な物言いをする。豪快な性格で、おしゃべり好き、いたずら好き。人々に愛されている人物。海棠詩社での号は枕霞旧友。
王煕鳳(おう・きほう)
王夫人の姪賈璉の妻。宝玉の母方の従姉でもある。賈赦の息子の賈璉に嫁いだが、栄国府の家事をきりもりする賈家随一のやり手で、気が強く頭脳明晰。奥向きの采配を一手に引き受ける実力者。公金を流用して高利貸を営んでいた。あまり学問はない。
秦可卿(しん・かけい)
宝玉の曾祖父初代栄国公の兄初代寧国公の玄孫賈蓉の妻。幼名は可卿。従って年上ながら宝玉を「おじさま」と呼ぶ。優しく落ち着いた人柄で「黛玉と宝釵の長所を併せ持つ」と讃えられ、誰からも慕われる佳人。仙界では、警幻仙姑の妹・兼美(字は可卿)。「の賈珍と密通していたという描写があったが作者が思い直して削除した」という説もあり。また、何かいわくのある死に方をした謎の多い人物。
賈元春(か・げんしゅん)
宝玉の実の姉。皇帝に召されて貴妃となった。賈家の繁栄を象徴する人物のひとり。後世の解釈で曹雪芹の生家曹家を庇護していた康煕帝に対比されることがある。里帰りする元春を迎えるために大観園が造営された。
賈迎春(か・げいしゅん)
宝玉の伯父の賈赦の娘で賈璉の異母妹(宝玉の従姉)。宝玉より年上善良だが無力な人物。他人の言いなりになることしばしば。渾名は二木頭。海棠詩社での号は菱洲。
賈探春(か・たんしゅん)
宝玉の庶妹(腹違いの妹)。賢明で詩才のある美少女で、異母兄宝玉とも親しくしている。同腹の弟がいるが、こちらは愚鈍で母共々なにかと宝玉を陥れることを考えており、探春とはあまり仲が良くない。大観園に詩社(海棠詩社)が結成されるのは探春の呼びかけによるもの。渾名は玫瑰花(バラ)。詩社での号は蕉下客。
賈惜春(か・せきしゅん)
賈敬の娘で賈珍の妹(宝玉の族妹)。潔癖症で、兄に代表される屋敷の淫蕩な空気を嫌っている。賈母に引取られ、栄国府で養育された。孤独を好み、早く出家することを望んでいる。絵心があり、大観園の絵図を描いたことがある。詩社での号は藕榭。
釈妙玉(しゃく・みょうぎょく)
賈家に招かれた有髪の尼僧。聡明にして文筆の才あり、若くして大観園内の草庵に庵主として招かれたが、性狷介、俗人と交わるを潔しとしない孤高の美少女。俗塵にまみれることを一切断り修行に励む。
賈巧姐(か・こうしゃ)
賈璉と王熙鳳の一人娘。大姐(だいしゃ)ともいう名前は、劉ばあさんが七夕に生まれたことに由来して名付けた。
李紈(り・がん)
宝玉の同母の兄である賈珠の妻(未亡人)。字は宮裁。詩社での号は稻香老農。夫に先立たれて以後、息子の賈蘭の教育に専念し、時に姉妹たちの監修役を務めていた。

その他[編集]

襲人(しゅうじん)
宝玉付きの侍女の筆頭格。もともと史太君(賈母)に仕えていたが、まじめな仕事ぶりを買われて宝玉付きになる。宝玉の初体験の相手でもあり、正式ではないが宝玉の役でもある。主人思いの良識的な人格者だが、その「主人思い」はえてして「宝玉に科挙方面の勉強に打ち込んでもらおう」という方向に発揮される。本名は花珍珠で、宝玉が陸游の詩にちなんで襲人と命名した。
晴雯(せいぶん)
宝玉付きの侍女。損得にとらわれない純粋さは襲人以上であり、針仕事や口が上手く、艶やかな美人。高級侍女としてお嬢さんのような生活を送っている。宝玉にとっては必要不可欠な存在であったが、その傲慢な性格が宝玉の母の王氏の怒りを買い、大観園から追い出された。
平児 (へいじ)
王煕鳳付きの侍女の筆頭格。賈璉の側室でもある。有能で情け深い人柄で煕鳳の秘書役もこなす。煕鳳の勧めで賈璉の妾の立場になったが、これは煕鳳が嫉妬深い本心を隠すためにやったことで(男子が出来ない妻が妾を夫に勧めるのは旧中国では婦人の美徳の一つであった)、それを心得てめったに同衾せず侍女の分を守っている。
香菱 (こうりょう)
宝釵の兄薛蟠の妾。本名は甄英蓮で、甄家の令嬢だったが、4歳で誘拐されたという経緯を持つため、自分の姓名や出自を知らない。薛家に買い取られる。宝釵によって香菱と命名された。その姿は可卿に似ている。容姿も性格も申し分ない美少女。無邪気な性格で作詩が好き、大観園で黛玉に弟子入りする。
賈母 (かぼ)
宝玉の祖母(宝玉の父賈政の母)。一族の最長老で最高実力者。宝玉と黛玉を溺愛しており、賈政が宝玉に厳しくできないのは賈母を恐れてのことである。信心深い。平凡社ライブラリー版[誰によって?]では「後室」と訳されている。
劉ばあさん(りゅう・ばあさん)
賈宝玉の母王氏の遠縁の家に娘を嫁がせた老女。素朴で陽気なばあさん。わずかな縁を頼りに賈家を訪れ、王鳳熙に手厚くもてなされ、機知が受けて援助を引き出す。
賈政(かせい)
宝玉の父(史太君の次男)。賈母とその夫賈代善の次男。几帳面で謹厳な人物で、宝玉が勉強に熱心でないことをよく思っていないが、官職が多忙であることと賈母が宝玉を溺愛していることから半ば放任状態。
賈赦(かしゃ)
宝玉の伯父。賈母とその夫賈代善の長男。好色で賈母も「いい年をして」とあまりよく思っていない。賈母お気に入りの侍女をにもらい受けようとして大騒ぎを引き起こしたこともある。隠居の身だが、側室を多く置いている。
賈璉(かれん)
宝玉の従兄。賈赦の長子で栄国府の当主。王鳳熙の夫。遊び好きで女色を好み、口八丁手八丁で召使いの妻と関係を持つようになった。その才能は妻に及ばず、太刀打ちできない。
賈敬(かけい)
宝玉の祖父である栄国公賈代善の従兄弟である寧国公賈代化の子。物語の時点では隠居の身で、郊外の道教寺院で仙人修業に凝っている。俗塵を嫌うと称して自分の誕生祝いの宴会にも出て来ないほど。
賈珍(かちん)
賈敬の子で寧国府の当主。威烈将軍の職にあるが戦争に行っている様子は全くない。こちらも好色漢で息子の嫁や妻の妹にまで手を出している背徳的な人物。なお、系図上の世代からいうと宝玉と同世代になるが、この世代の賈家の男子は皆名前に玉の字が入るように命名されている。
同様に宝玉の父の世代は敬・赦・政とつくりが共通であり、宝玉の祖父の世代は名前に代の字が入り、宝玉の甥の世代は草冠の付く名前が命名されている。また、賈珍は既婚の息子がいる年齢なので、宝玉とは親子ほども年が離れているうえ親戚としても祖父同士が従兄弟という遠い関係だが、中国の大家族制の慣習上、宝玉は賈珍を「兄さま」と呼ぶ(平凡社ライブラリー版2巻P85[誰によって?])。
薛蟠(せつ・ばん)
宝釵の兄。母の溺愛の中で成長し、贅沢な暮しを送っていた。御用商人としては全く無能な人物。渾名は呆覇王。正妻はステレオタイプの悪女、薛家で大騒ぎを起こした。
鴛鴦(えんおう)
史太君の筆頭侍女。主人のことをすべてわきまえており、誰からも信頼されている。どちらかといえばきびきびした性格。
金釧児(きんせんじ)
王氏の筆頭侍女。王氏の侍女の中では宝玉にとって最も親しみやすい存在。
紫鵑(しけん)
黛玉の侍女。史太君付きだったが、黛玉が賈家にやってきた際に仕えるようになる。病弱で繊細な薫玉を気遣っている。
史太君(したいくん)
宝玉の祖母。賈母。賈家で最も権力がある人物。経験豊富で視野も広く、ユーモアあふれる人物。
薛のおばさま(せつのおばさま)
王氏の妹で、宝釵の母。姉よりものんびりした性格だが、息子の薛蟠にはたえず悩まされている。
秦鍾(しんしょう)
宝玉の学友で、秦可卿の義理の弟。
焦大(しょうだい)
寧国府(賈珍の曹祖父)に従って戦場に赴いたこともある老僕。先祖の苦難を忘れて贅沢にふける主人や召使を罵る。
警幻仙姑(けいげんせんこ)
太虚幻境を司る仙女。絳珠草と神瑛侍者の因縁に決着をつけるべく、大勢の仙女たちを地上につかわす。
甄士隠(しんしいん)
姑蘇の名士。娘の英蓮(香菱)をさらわれ、屋敷を火事で失うなど、運命の激変に襲われる。
賈雨村(かうそん)
一族が落ちぶれたのち、姑蘇まで流れてくすぶっていたが、甄士隠の助力によって都に上がり、科挙の中央試験に合格して官界にデビューする。俗世の欲望を超越した甄(しん)士隠とそれにしがみつく賈(か)雨村は、前者が真(しん)、後者が仮(か)として、物語の主旨を体現する。

評価[編集]

大観園(北京市)

台湾出身の著作家張明澄によれば、胡適蔡元培などの大御所たちは『紅楼夢』をいつもカバンに入れ、数百回も繰り返し読んでいたという。しかも第一回は非常に読みづらく、最後までまともに読める人がいない。二回目はやや面白くなるが二回目くらいではあまり熱中する人はいない。第三回を読み始めると中毒状態になり、仕事や学習をさぼってでも読むようになるという。中国人からアヘン麻雀、『紅楼夢』を取りあげたら、たちまち大発展してアメリカを追い越すだろうとさえ言った。また、『源氏物語』が(日本統治時代も含め)台湾で全く流行しなかったのも『紅楼夢』が原因だという。張明澄自身何度も『紅楼夢』を読んでゆくと、どうしても『源氏物語』が退屈に思えてしまうと述べた[11]

中華民国時代になって胡適らの新紅学派は作者曹雪芹の人生をありのままに描いた自然主義文学であると提唱した。これに対してマルクス主義の文学者からは「ブルジョワ階級主観唯心主義」であるとする批判が起こり、新中国成立後の1950年代に紅楼夢論争が展開した。マルクス主義派は、紅楼夢を男尊女卑封建主義に反抗する階級闘争文学であると主張したのである。毛沢東も紅楼夢を愛読していたが、公式の発言としては「紅楼夢は歴史政治小説として読むべきで、読み解く鍵は第四回の(賈家をはじめとする豪族高官の情報を記した官界情報の)護官符のくだりにある」と述べた[12][誰によって?]。この解釈の例として蒋和森の「紅楼夢入門」(日本語訳は1985年、日中出版)には、宝玉を論じた章は「封建貴族家庭の反逆児」と題され、「封建制度に不満を抱きながらも人民から大きく遊離した人物」と評されている(P63)。もっとも、こういう中国の政治の影響を受けた解釈には当時から批判もあった。

宮崎市定は「そんなことならなにも<紅楼夢>でなくともよいことだ。(中略)<紅楼夢>に描かれたのは、あくまでも繊細な、優美な感触である」[13]と述べている。合山究は「紅楼夢=仙女崇拝小説」[14]という説を提唱しており、また宝玉が性同一性障害であったという説も唱えている[15]。訳者である伊藤漱平は、大著『「紅楼夢」論』を長年かけまとめた[16]。また近年、フランス語英語ドイツ語訳も相継いで出版されている。

中国本土では何度か映画やテレビドラマにされている。その中で特に評価が高いのが1987年に放映された連続テレビドラマ『紅楼夢』(王扶林監督)で、中国テレビドラマ制作センターと中央電視台(CCTV)の共同制作による。日本でもDVD等で入手可能である。

梁啓超の評価以下の参考文献は[17] 梁啓超は中国近代史上、西方に真理を尋ね求めた代表的な人物の一人であり、著名な階級の政治家、啓蒙思想家、学者であり教育者であった。彼の啓蒙思想は辛亥革命後において大きな影響を与えた。「啓蒙」は当時否定的に定義され、知識と権力の問題を見出すことは梁啓超の評価を下げることにつながっていたが現在では「啓蒙」に取り込まれるニュアンスなど問題にしないかのように当時の梁啓超えお啓蒙は偉大だったとした。具体的には革命の提唱という形で現れた。あらゆる既存の枠組みをその根本から洗いなおして批判を加えようとする梁啓超の決意は、政治、経済、社会、教育、学術思想、史学、宗教などさまざまな分野に及んだ。また、中国における未熟さを痛烈し批判した。国家経済発展を重視する時代が到来したことを告げ、国民的コンサンサスを得るために絶えず試行錯誤することで中国の一切の問題の根源をすべての国民の素質の低下に帰着させ、中国根本的活路を新国民の成形に託した。これは問題を絶対化するものである。国民の問題は全体的意義を帯びている。こういった考えが人々を変え、形成していった。

日本語訳書[編集]

日本語訳も、早くから多数の抄訳[18]が出版された、以下は完訳版。

版本[編集]

北京の曹雪芹

紅楼夢の写本は、当初約110回存在したと推定されるが、稿本が流出後80回以降が何らかの原因で散佚し、そのまま補足されない状態で作者と思われる曹雪芹が死去。その約三十年後、出版者程偉元の請求のもとで、高鶚が40回を付け加え、活字印刷版の120回本が世の中に出回ることになる。この高鶚の40回にも、もともと存在した前80回の手書きによる稿本にも、程偉元自身によるかなりの添削が入っていると一般に思われる。

現存最古の手抄本「甲戌本」が発掘された1927年まで、紅楼夢は一般に活字印刷版の「程本」で流通しており(詳しくは「程甲本(1791)」と「程乙本(1792)」などと区別される)、物語の内容も「程本」で広く認識されていた。一方、手抄本のほとんどがすべて「脂硯斎重評石頭記」と題しており、それぞれ朱筆あるいは墨で本文の上や行間や脇に「脂硯斎」をはじめとする評論家による評論文字を書き足している。これら手抄本は一般に「脂評本」と称されている。

「脂評本」写本の系列の中で最も内容が古く、原稿に近いとされる「甲戌本(1754)」、「己卯本(1759)」、「庚辰本(1760)」などを詳しく調べると、印刷版の「程本」の原文字に対する添竄が明らかになる。このような添竄は、後継者高鶚と程偉元が書いた後40回の内容が、散逸した原作の精神と乖離すると判断するに十分なものとされている。

なお、現存の全ての「脂評本」系列の手抄本は80回以降の内容について本文を残していないばかりでなく、散佚各回の題名「回目」も残されていない。そこで80回以降の原稿内容は、いわゆる「紅学」の中心問題の一つに数えられるようになった。80回以降の原稿の本文や回目は見つからないが、前80回の本文中の詩文や特定事件の表現手法、それに加え特に評論家脂硯斎や奇笏叟などによる評論文字などから、80回以降の少なくとも一部の内容は暗示または明記されているとみるのが定論である。

紅楼夢を基にした作品[編集]

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  • テレビドラマ『紅楼夢』(1984年、中国)
  • テレビドラマ『紅楼夢 〜愛の宴〜』(2010年、中国)
  • 北京娯楽通科技発展有限公司がこの作品を題材にした恋愛アドベンチャーゲームを発売している。
  • 映画『紅楼夢 貴族社会の幻想~悲恋物語~』(2002年 中国)

脚注[編集]

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  1. ^ 『明代小説四大奇書』(浦安迪(Andrew.H.Plaks)、中国和平出版社、1993年)第一章「文人小説的歴史背景」。
  2. ^ 周汝昌著 小山澄夫訳『曹雪芹小伝』汲古書院、2010年7月15日、3-26頁。ISBN 9784762950520。
  3. ^ 蒋和森著 小川陽一訳『紅楼夢入門』日中出版、1985年2月10日。ISBN 4817511303。
  4. ^ 曹雪芹作 井波陵一訳『紅楼夢』巻1-7、岩波書店、2013年10月25日、新訳。ISBN 9784000286626。
  5. ^ 曹雪芹『紅楼夢』伊藤漱平訳、平凡社、1960年12月15日。
  6. ^ 合山究『『紅楼夢』-性同一性障害碍者のユートピア小説』汲古書院、2010年11月10日、209-224頁。
  7. ^ 井波陵一著『紅楼夢と王国維』朋友書店、2008年1月、95-117頁。
  8. ^ 曹雪芹『紅楼夢』伊藤漱平訳、平凡社、1960年12月15日。
  9. ^ 井波陵一著『紅楼夢と王国維』朋友書店、2008年1月、63-94頁。
  10. ^ 曹雪芹『新訳 紅楼夢』井波陵一訳、岩波書店、2013年10月25日、3-5頁。ISBN 9784000286626。
  11. ^ 張明澄『間違いだらけの漢文』久保書店、1971年
  12. ^ 平凡社ライブラリー版12巻P420、訳者解説。
  13. ^ 宮崎市定 『中国文明の歴史9.帝国の繁栄』(新版が中公文庫、「全集」は岩波書店
  14. ^ 合山究『「紅楼夢」新論』(汲古書院、1997年)。著者は、林語堂の訳書もある。
  15. ^ 『紅楼夢』―性同一性障碍者のユートピア小説 汲古書院 2010
  16. ^ 『伊藤漱平著作集 第1~3巻』(研文出版、2005~08年)
  17. ^ 井波陵一著『紅楼夢と王国維』朋友書、2008年1月、725-749頁。
  18. ^ 佐藤亮一訳『ザ・紅楼夢 全一冊』(新版、第三書館 1992年)。『要訳 紅楼夢』(王敏訳著、講談社、2008年)ほか
  19. ^ 伊藤訳の初訳は「中国古典文学全集 第24・25・26巻」(平凡社、1958-60年)で、松枝訳と同様に、伊藤訳も数十年かけ改訳が行われた。

関連項目[編集]