群分離

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

群分離(ぐんぶんり、: partitioning)とは、使用済核燃料の再処理により生じる高レベル放射性廃棄物の処分をより安全に行うために、その中から問題となる核種を半減期や化学的性質に応じたグループに分離することを言う[1]

概要[編集]

使用済み燃料の再処理に伴って、放射能高レベル廃液(Highly Active Liquid Waste;HALW)[2] が必然的に生成される[3]。この放射能高レベル廃液には、核分裂生成物(fission product;FP)や超ウラン元素(Transuranic;TRU)などが含まれている[4]。この核分裂生成物の中には1000年程度の長寿命核種であり相対的毒性が高い 90Sr および 137Cs 並びに超ウラン元素の中にはさらにそれを超える超長寿命核種で相対的毒性も高いアルファ核種が含まれており、一口に放射性物質といっても毒性や半減期など性質が異なるものが放射能高レベル廃液に混在して含まれている。

そのため、放射能高レベル廃液を長年月にわたって安全管理するには、放射能高レベル廃液をいろいろなものが混在したままの状態で扱うよりも

  • アルファ核種群
  • 長寿命の主要核分裂生成物核種である 90Sr, 137Cs 群
  • 短寿命核種群

などの群にまず大きく分離し(これを群分離(partitioning)と呼ぶ)、分離したものについて個別に扱う方が良い[5]

群分離することにより、性質に応じた処分法を選択することが可能で、対象によっては核変換技術を適用することにより長期毒性を減らせる可能性があり、放射性廃棄物の処分面積を減らすことが出来ると試算されている。現状は、実験室レベルの技術開発に成功しているが、スケールアップや二次廃棄物の低減などの課題が残されている。[6]

核分裂生成物 (FP) 廃棄物の再利用[編集]

現在、放射性廃棄物からはコバルト60 (60Co)、セシウム137 (137Cs) が医療用ベータ線源及びガンマ線照射用として、テクネチウム99m (99mTc)、ヨウ素131 (131I) がシンチグラフィ及び放射線医療用に単離され用いられている。またストロンチウム90セシウム137が高レベル廃棄物の発熱の大きな原因になっているので、これらを分離して熱源/放射線発生源として利用し、発熱の少ない核分裂生成物だけガラス固化して保管場所を節約する案も検討もされているほか、触媒用の白金族ジスプロシウムなどの高価な希少金属の回収も検討もされている。放射性廃棄物の再利用はメリットもあるが、後述の通り軍事転用の問題があり、また環境汚染リスクもある。また放射性廃棄物の再利用には限界があり、すべて利用できるわけではない。

分離対象[編集]

日本での研究では以下の4種類に群分離することが提案されている。[6]

マイナーアクチノイドは放射性は低いが長寿命核種が含まれる。核分裂性物質であり、高速炉加速器駆動未臨界炉による核変換の対象となり得る。
  • テクネチウムは超長半減期核分裂生成物(LLFP)として核変換の対象として考えられている。
  • 有用元素
白金族等はガラス固化を行う上で障害となる一方貴金属であり枯渇が心配されている。これを分離し貯蔵することで封入して触媒とするなど資源としての活用が考えられる。
  • 発熱する灰
セシウム137ストロンチウム90といった高発熱の核分裂生成物が含まれる。これらはガラス固化体よりも滲出率の小さい焼結体に出来る可能性がある。熱源利用も考えられる。
  • 冷たい灰
長期毒性は低く放射能は低いので、ガラス固化体にして地層処分を行う。発熱物を除去してあるので、群分離を行わない場合より高密度に廃棄することが可能で、保管期間が「万年単位」から「100年単位」に短縮されるため、処分面積の低減につながる。

メリット・デメリット[編集]

  • 従来のガラス固化された高レベル廃棄物が「数万年管理が必要な、発熱するゴミ」と表現されてきたのは、①半減期数万年のMA・LLFP と ③発熱する灰 と ④冷たい灰がゴミ分別されず、ガラス固化されてきたからである
  • ①半減期数万年のMA/LLFPは加速器駆動未臨界炉で燃やして、半減期30年程度の灰にして、
  • ③発熱する灰は、発電所などで30年ほど除熱しながら蒸気発生熱源などに利用して、冷たい灰にして、
  • ④冷たい灰は、ガラス固化して稠密に並べ、100年毎に倉出しして、70%を鉛・ビスマスとして採取することで、下記のメリットがある
  • ワンススルーと違って、環境へ、プルトニウムなど半減期数万年の物質が放出されない。
  • 半減期数万年の核分裂性の廃棄物が転換され、CO2を発生させず熱源が得られ、ウラン使用も節減される
  • 白金族、レアメタル(特にビスマス)、鉛など枯渇が懸念される資源利用の可能性がある
  • 最終保管場の不安・負担が軽減される。保管期間が数万年以上から数百年に短縮され発所要面積も数分の1になる[7]

その一方、プロセスが増えることによるコスト増および、そのプロセスで汚染された低レベル放射性廃棄物が増加することもあり、100年以上原子力を使わない場合のメリットが薄いとされている。

脚注[編集]

  1. ^ 中村(1979) p.1
  2. ^ ATOMICA:HALW
  3. ^ 再処理工場にて、使用済み燃料を処理してプルトニウムとウランのほとんどを回収した残りのものがそのまま放射能高レベル廃液(HALW)となる。クローズド・システム(1973) p.3
  4. ^ ほか、放射性物質以外に、再処理工程中で添加された薬品のナトリウムなど、工程機器、塔槽類、配管からの腐食生成物を含んでいる。 ATOMICA:高レベル廃液の処理
  5. ^ クローズド・システム(1973) p.5
  6. ^ a b 原子力百科事典ATOMICA:群分離
  7. ^ 将来の廃棄物処理処分技術の考案 -分離変換技術による高レベル放射性廃棄物処分場の規模縮小-

参考文献[編集]

関連項目[編集]