群発地震

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2010年、アイスランドで発生した群発地震の震源を載せた地図

群発地震(ぐんぱつじしん、: earthquake swarm)とは、地震活動の一種。比較的狭い震源域において断続的に地震が多発するもので、最大震と余震の関係が余震に関する大森公式(改良大森公式)に従った減衰の経過を辿らない。

概要[編集]

主に火山活動プレートの移動(マグマの移動)が発生の要因である。噴火の直前は相当数の地震が起きる例が観測されている[1][2]。群発地震に関しては、特に「本震」・「余震」といった区別はされず、顕著な被害を伴った場合は気象庁が命名を行うことがある。

無感地震が多発するのみの場合もあれば、震度5や6クラスが立て続けに発生する場合もある。また、短期間で断続的に地震が発生し続けるため、船酔いのような感覚(地震酔い)や寝不足などになる人もおり、さらに強い揺れによる被害の増加などによって日常生活に多大な影響を及ぼす時もある。ノイローゼにかかる人もいる。一方、震源地周辺住民にとっては地震が日常茶飯事となり、地震の少ない地域の住民に比べ、発生時の行動は落ち着いているとも言える。

東北地方太平洋沖地震東日本大震災)や熊本地震などのように、規模が大きな地震が発生した後に多数発生する余震は群発地震とは呼ばない。ただし、群発地震が大きな規模の地震の予兆現象(前震)になることはある。(東北地方太平洋沖地震の前震など)

原因[編集]

火山周辺での群発地震は、マグマの貫入(有珠山普賢岳)や地下水の湧出(松代群発地震)で噴火活動にまで至る場合も有るが、一過性の活動で終息する場合もある。但し、火山直下の微小地震活動は、火山性微動であり群発地震として扱わない[3]
巨大地震による誘発地震として、クローン応力の変化が影響[4][5]や、人間の経済活動が影響する事もあり、ダムの貯水[6]シェールガス採掘に伴う群発地震[7]も報告されている。

群発地震と前震[編集]

時に、大地震には明瞭な前震活動が観測されていることがある[8][9]。しかし、本震の発生後にそれが前震であったことが判明するものであり、ある地域に群発地震の様相を呈する一連の地震活動が始まったとき、それが前震であるのか、群発地震で済んでしまうかは活動が終息してみないと判らない[10]

日本の主な群発地震[編集]

日本で記録に残る代表的な群発地震としては、下記の例が挙げられる。

特に、箱根伊豆半島から伊豆諸島伊豆大島式根島三宅島など)周辺では、1800年代からの発生記録が残っている。また、近代的な観測網が整備された以降でも、1978年以来、20数年間にわたって30回以上の群発地震活動[17]が数えられており、顕著な被害を伴った群発地震も発生している。

焼岳付近でも 1968年[22]、1990年[23]、1998年[24]、2011年[25]、2014年とたびたび群発地震や深部低周波地震が観測されている。


出典[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 有珠山 有史以降の火山活動 気象庁
  2. ^ 雲仙岳 有史以降の火山活動 気象庁
  3. ^ 火山性微動 気象庁 阿蘇山火山防災連絡事務所
  4. ^ 原田昌武、明田川保、伊東博 ほか、「2011年東北地方太平洋沖地震によって誘発された箱根火山の群発地震活動」 地震 第2輯 Vol.64 (2011-2012) No.3 P.135-142, doi:10.4294/zisin.64.135
  5. ^ 飛騨山脈焼岳火山周辺における東北地方太平洋沖地震後の群発地震活動」 地震 第2輯 2012年 65巻 1号 p.85-94, doi:10.4294/zisin.65.851
  6. ^ 寺島敦、松本利松、「ダム貯水と地震活動 (2)」 地震 第2輯 1984年 37巻 1号 p.81-88, doi:10.4294/zisin1948.37.1_81
  7. ^ シェールガス開発の環境リスク 〜地震誘発や環境汚染など (PDF)
  8. ^ 今村明恒:濃尾大地震の前徴に就いて 地震 第1輯 Vol.15 (1943) No.12 P.336-341, doi:10.14834/zisin1929.15.336
  9. ^ 海野徳仁、長谷川昭、小原一成 ほか、「1983年日本海中部地震の前震と余震の震源分布」 地震 第2輯 1985年 38巻 3号 p.399-410, doi:10.4294/zisin1948.38.3_399
  10. ^ 茂木清夫:最近の群発地震研究について 地學雜誌 1984年 92巻 7号 p.547-554, doi:10.5026/jgeography.92.7_547
  11. ^ 羽鳥徳太郎、「1938年福島沖群発地震による津波の発生機構」 地震 第2輯 1976年 29巻 2号 p.179-190, doi:10.4294/zisin1948.29.2_179
  12. ^ 宮崎務、山口勝、増谷文雄、寺尾弘子、「"1975〜1976年"霧島火山地方地域における群発地震活動」 東京大学地震研究所彙報 51(2), p115-149, 1976-12-00, NAID 40002597680, hdl:2261/12612
  13. ^ 高波鉄夫、島村英紀、本谷義信:「1978年函館群発地震初期の地震観測」 地震 第2輯 1980年 33巻 3号 p.269-287, doi:10.4294/zisin1948.33.3_269
  14. ^ 馬場久紀、飯塚進、浅田敏、「1992年西表島群発地震の特徴について」 地震 第2輯 1994年 47巻 2号 p.143-153, doi:10.4294/zisin1948.47.2_143
  15. ^ 飛騨山地の群発地震活動(名大理) 地震予知連絡会 会報 第61巻 (PDF)
  16. ^ 九州地方の主な地震活動 (PDF)
  17. ^ 1978〜1998年の伊東沖における日別地震回数の推移(防災科研データによる) 防災科学技術研究所
  18. ^ 1993年1月伊豆半島東方沖の群発地震活動(防災科研) 地震予知連絡会 会報 第50巻 (PDF)
  19. ^ 伊豆半島東方沖の群発地震活動について 平成7年10月3日 地震調査研究推進本部 地震調査委員会
  20. ^ 伊豆半島付近の地震活動(2000年5月〜2000年10月)(震研) 地震予知連絡会 会報 第65巻 (PDF)
  21. ^ 2009年12月伊豆半島東方沖の地震活動について(気象庁) 地震予知連絡会 会報 第84巻 (PDF)
  22. ^ 尾池和夫、「1968年11月8日焼岳に発生した群発地震の発震機構について」 京都大学防災研究所年報, 1-Mar-1970, 13巻, A, p.133-140, hdl:2433/69492
  23. ^ 和田博夫、伊藤潔、梅田康弘 ほか、「焼岳火山付近の群発地震観測」 京都大学防災研究所年報 1-Apr-1993, 36巻, B-1, p.291-303, hdl:2433/72435
  24. ^ 大見士朗、和田博夫、伊藤潔、「1998年飛騨山脈群発地震後の深部低周波地震群発活動」 地震 第2輯 2001年 54巻 3号 p.415-420, doi:10.4294/zisin1948.54.3_415
  25. ^ 大見士朗、和田博夫、濱田勇輝、「飛騨山脈焼岳火山周辺における東北地方太平洋沖地震後の群発地震活動」 地震 第2輯 2012年 65巻 1号 p.85-94, doi:10.4294/zisin.65.85

関連項目[編集]