脊椎動物

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脊椎動物亜門
生息年代: カンブリア紀-現在, 525–0 Ma
Vertebrates.png
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
下位分類群

本文参照

脊椎動物(せきついどうぶつ、Vertebrata)は、動物分類のひとつで、後口動物脊索動物門に属する単系統群である[1]。脊椎動物以外の動物の事を便宜上に無脊椎動物という。


概要[編集]

分類[編集]

脊椎動物とは、哺乳類鳥類爬虫類両生類魚類からなる系統群である。ただし爬虫類魚類側系統群であるので、単系統群のみを系統群として認める立場からは下記の表のように、四肢動物羊膜類双弓類といった単系統群を用語として用いる事になる:

分類群 イメージ 種の数の見積もり[2]
脊椎動物 四肢動物 羊膜類 哺乳類 Squirrel (PSF).png 5,513
双弓類 鳥類 Secretary bird (Sagittarius serpentarius) 2.jpg 10,425
爬虫類

(鳥類以外の双弓類からなる側系統)

Florida Box Turtle Digon3.jpg 10,711
両生類 Lithobates pipiens.jpg 7,302
魚類(四肢動物以外の脊椎動物からなる側系統) Carassius wild golden fish 2013 G1.jpg 32,900
総計(種数) 66,178

表に記載したの数の見積もりは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(2014年3月のもの)[2]から引用した。このリストでは現生の無脊椎動物の数を1,305,075と見積もっているので、脊椎動物の数は全動物中の5%以下ということになる。

特徴[編集]

  • 多数の椎骨がつながった脊椎(背骨)をもつ。
  • 脊髄(あわせて中枢神経と呼ぶ)をもち、それぞれは頭蓋骨と脊椎に守られている。
  • いわゆる“赤い”(ヘモグロビンを含む血液)を持つ。(極地に生息する魚などに一部例外あり)
  • 少なくとも一つの半規管を持つ。
  • 大型の種が多い。魚類の幼生には1mm以下のものがあるが、成熟時の体長としては最小のものでも6 - 8mm程度になる。このため多くの動物門にある間隙性生物が存在しない。また、最大の水棲動物(現生種のシロナガスクジラ。ただし体長だけならマヨイアイオイクラゲが上回る)と最大の陸上動物(絶滅種では竜脚類の一種。現生種ではアフリカゾウ)の両方を含む。

系統分類上の位置づけ[編集]

動物界から脊椎動物に至る系統樹は下記のとおりである[3][4]。なお、脊椎動物から遠い系統群の詳細は省略している。省略部分の詳細は「動物」の項目を参照されたい。

動物

前左右相称動物側系統群[注釈 1]


左右相称動物
前口動物
冠輪動物
扁平動物

(略)


触手冠動物

(略)


担輪動物

(略)



脱皮動物
線形動物

(略)


鰓曳動物

(略)


汎節足動物

(略)




後口動物
水腔動物

棘皮動物



半索動物



脊索動物

頭索動物:一生、全体長に渡って脊索を持つ。ナメクジウオの仲間




尾索動物:一生ないし一時期に尾部に脊索を持つ。ホヤ綱オタマボヤ綱タリア綱(ヒカリボヤ、ウミタル、サルパなど)からなる。



脊椎動物:脊索の周囲に脊椎が形成される。





珍無腸動物






左右相称動物[編集]

左右相称動物」も参照

例外も多いが[129][130]、基本的に下記のような特徴を持つ:

  • 完全な三胚葉性で[125]、体が左右相称(=左右対称)[125]
  • 肛門、およびこれらをつなぐ消化管をもち、体内に体腔ないし偽体腔(線形動物、輪形動物など)を持つ。
  • ボディプランは、前方(運動のとき体の進む方向)と後方の区別、腹側と背側の区別がある傾向があり、したがって左側と右側の区別も可能である[129][130]。運動のとき体の前方へと進むので、進行方向にあるものを識別する感覚器や餌を食べる口が前方に集まる傾向にある(頭化という)。
  • 多くの左右相称動物は環状筋縦走筋のペアを持つので[130]、ミミズのような体が柔らかい動物では水力学的骨格(英語版)の蠕動により動く事ができる[131]
  • 多くの左右相称動物には繊毛で泳ぐことができる幼生の時期がある。


後口動物[編集]

後口動物(新口動物)とは歴史的には胚にできた原口が口になる前口動物(旧口動物)に対し、原口が口にならず新たに口が開く動物として定義された分類群である[5]。しかし1990年代に分子系統解析が始まると、この歴史的な意味での後口動物は単系統にならない事が示されたので、毛顎動物有鬚動物などが後口動物から外され、上述の系統樹にあるもののみが後口動物として残された[6]

なお、珍無腸動物 (Xenacoelomorpha) を含むか否かは2016年現在未確定[7][8][9][10][11]

脊索動物[編集]

脊索動物は我々脊椎動物を含む動物門で、(一生のうち少なくとも一時期に)脊索を持つという特徴をもつ[12]。詳細後述。

脊索動物門における脊椎動物の特徴・進化[編集]

脊索動物の特徴[編集]

脊索動物における脊椎動物の特徴や進化したのかを見るため、本節では脊索動物の特徴を簡単に述べる。脊索動物は下記のような特徴を持つ:

  • 消化管と神経管の間に脊索(大きな液胞で満たされた繊維質の組織)というしなやかな棒状の構造を胚の時期に持つ[13]。成体でも脊索を保持する種も存在する[13]
  • 他の動物門の胚では腹側に神経索ができるのに対し、脊索動物の胚では背側に感情の神経索(神経管)ができ[13]、脳と脊髄からなる中枢神経系に発達する[13]
  • 消化管は口から肛門まで伸び[13]、胚の時期に咽頭(口のすぐ後ろの領域)の両側に溝のような構造(咽頭溝)ができ[13]、そこに咽頭裂という裂け目ができる[13]。脊椎動物以外の脊椎動物の咽頭溝は多くの場合懸濁物食の器官として用いられる[13]
  • 他の動物門では消化管が体の後端まで伸びているものが多いのに対し、脊索動物では肛門の後ろに尾が伸びており[13]、水生の種では尾の骨格と筋肉を推進に用いる[13]。ただし胚発生の段階で尾が退化する種も多い[13]


頭索動物(ナメクジウオ)は以下のような特徴を持つ:

  • ガス交換:咽頭裂では殆ど行われず、体表を通して行われる[13]
  • 採餌:繊毛を使って口から海水を取り込み、咽頭裂の粘膜で海水中の餌を捉えて消化管に送り込む。その際海水は咽頭裂から体外に出る[13]
  • 移動:脊索の両側にある筋肉を収縮させる事により脊索をしならせ、体を左右に振る事で移動[13]
  • 体長:成体では6cm程度[13]


尾索動物(ホヤ類)は次のような特徴を持つ:

  • 幼生期:脊椎動物の特徴が顕著であるが、幼生期が数分しかないものもいる[13]
  • 成体:固着性で、幼生期とは著しく姿を変える[13]。尾と脊索は吸収され、神経系も退化[13]
  • 採餌:咽頭裂から海水を入れ、粘液で海水中の餌を捉える。それを繊毛で食道に運び、水と排泄物が肛門から出水管へと出ていく[13]


ホヤ類はナメクジウオのもつ13のHox遺伝子のうち4つを失っており、幼生期のボディープランが他の脊索動物とは異なる機構で形成される[13]

またホヤ類は「他の脊索動物と分岐した後に、成体で脊索動物の特徴を失ったと考えられる」[13]


初期の脊索動物からの進化[編集]

現生種の解析から分かる事実[編集]

現生種の遺伝子の解析等から、以下のことが分かっている。

  • 初期の脊索動物は頭索動物のナメクジウオのような動物であり、口、脊索、背側神経管、咽頭裂、肛門より後方の尾を持っていたと思われる[14]
  • 「ナメクジウオの脳は十分発達しておらず、単に神経管の先端部がいくらか膨らんでいるだけ」[14]だが、この先端部の構造が複雑性を増して脊椎動物の脳が進化したと考えられる[14]。その根拠は脊椎動物の前脳・中脳・後脳の主要部を制御するホメオボックス遺伝子がナメクジウオでも同じパターンで発言している事[14]
  • 心臓や甲状腺のような脊椎動物特有の構造を制御する遺伝子が脊索動物の祖先にすでに備わっていた事がホヤの全ゲノム解析から示唆されている[14]
  • 脊椎動物特有の構造である神経堤に似た性質のある細胞がホヤから発見されているが、ナメクジウオにはこのような細胞がなく、ホヤは神経堤の進化の中間段階にある可能性がある[14]

化石調査からわかる事実[編集]

また化石の調査からは、以下のような進化が見て取れる。まず5億3000万年前(カンブリア爆発の頃)には、ハイコウエラというナメクジウオのような全長3cmほどの生物の化石が発見されているが[15]、この生物は脊椎動物の特徴を一部持ち合わせている[15]。具体的にはナメクジウオと同様、懸濁物食をしていたと思われる口を持ち合わせている一方[15]、脊椎動物のようなよく発達した脳、小さな眼、魚類に似た筋節構造を持っている[15]

ミロクンミンギアは頭部を獲得した最古の脊索動物だと考えられており[15]、脳や眼を備えた頭部の獲得により複雑な動きや摂餌行動ができるようになったが[15]、まだ脊椎は獲得していない[15]

最古の脊椎動物は5億年ほど前に現れており、その一つであるコノドント類は、軟骨性の内骨格しか持っていない[15]

オルドビス紀からシルル紀の間に脊椎動物はさらに進化して、半規管を持つ内耳の獲得により平衡感覚を保ち[15]、対鰭も獲得した[15]。また筋肉質の咽頭を持ち[15]、これにより海底に住む生物や有機堆積物を吸い込んで食べていたと考えられている[15]。またこの頃には硬骨の甲皮で身を守る遊泳性の脊椎動物が数多くいたが、デボン紀末に全て絶滅した[15]

軟骨性の骨格が硬骨化したのは、4億7000万年ほど前に甲皮が出現したのが始まりで[15]、4億3000万年前までには軟骨の内骨格を薄い硬骨が覆う種が現れ始め[15]、その後、顎を獲得した脊椎動物で硬骨化が進んだ[15]

脊椎動物の特徴[編集]

他の脊索動物では1つしかないHox遺伝子が脊椎動物では2つあるなど[16]、脊椎動物ではシグナル分子や転写因子をコードする重要な遺伝子ファミリーに対して遺伝子重複が起きており[16]、「この事が脊椎動物の骨格系や神経系の革新に結びついた可能性がある」[16]

他の脊索動物との差異[編集]

脊椎動物においては、他の脊索動物が持つ特徴である脊索や咽頭裂は以下のように変化している:

  • ほとんどの脊椎動物では脊索の周囲に連結した骨格が発達し[13]、成体では脊椎の名残が残るのみ[13]。ヒトでは脊索は退化して椎間板の一部になる[13]
  • 咽頭裂とそれを支持する咽頭弓は四肢動物以外ではガス交換に用いられる[13]。四肢動物では「咽頭溝は咽頭裂として開口しないが、耳などの頭部や頸部の構造の発生において重要な役割を演じる」[13]

脊椎動物の派生形質[編集]

多くの脊椎動物では脊椎骨が神経管を取り囲んでおり[16]、また胚において神経管が閉じつつある際に神経管の背側に神経堤が形成されるという特徴がある[16]。「神経堤は胚の中で移動し、歯、頭蓋骨の一部や軟骨、神経、眼などの感覚器官の原基など、さまざまな構造をつくり出す」[16]

詳細な系統樹[編集]

脊椎動物の系統樹[編集]

脊椎動物の系統樹は以下の通りである[17]。右下に太字で描いた「四肢動物」は「魚類以外の脊椎動物」の事であり、脊椎動物以下で四肢動物を除いたものが「魚類」である。


脊椎動物脊椎骨の獲得)
円口類

ヌタウナギ目



ヤツメウナギ目



顎口類(硬骨の獲得)

軟骨魚類サメエイギンザメ目


硬骨魚類またはその派生物の獲得)

条鰭類


肉鰭類(肉鰭の獲得)

総鰭類(シーラカンス目




肺魚類


四肢動物(指のある肢の獲得)

両生類



羊膜類








円口類[編集]

ヌタウナギとヤツメウナギからなり、脊椎動物の中で顎を持たないという特徴を持つ[16]。脊椎骨を持たないがその痕跡はある[16]。なお、かつてヌタウナギには脊骨がないとされ、脊椎動物から外されていたが、その後分子系統解析が進み、脊椎骨の痕跡が見つかると脊椎動物に分類されるようになった[16]

顎口類[編集]


羊膜類の系統樹[編集]

次に羊膜類の系統樹を載せる[18]。下の系統樹は上のものと違い、絶滅種も含んでおり、絶滅種にはそれとわかるように「†」がつけられている。系統樹には「鳥類」と「哺乳類」を太字で書いた。この系統樹からこれら2つを除いたもののうち現生種が「爬虫類」となる。

羊膜類羊膜卵の獲得)
双弓類
主竜類

カメ目




ワニ目




翼竜類


恐竜類

鳥盤類


竜盤類

†鳥類以外の竜盤類



鳥類








首長竜類



†魚竜類


鱗竜類

ムカシトカゲ目



有鱗類トカゲヘビ




単弓類

哺乳類




脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「前左右相称動物」というのは左右相称動物以外の動物門について述べるための便宜的な名称で、「前左右相称動物」という系統群があるわけではない(藤田(2010), p.113.)

出典[編集]

  1. ^ 藤田(2010), p.113.
  2. ^ a b The World Conservation Union. 2014. IUCN Red List of Threatened Species, 2014.3. Summary Statistics for Globally Threatened Species. Table 1: Numbers of threatened species by major groups of organisms (1996–2014).
  3. ^ 藤田(2010), p.113. pp.174-175.
  4. ^ 馬渡 (2013), p.2.
  5. ^ 藤田(2010) p104
  6. ^ 藤田(2010) p108
  7. ^ Philippe, Hervé; Brinkmann, Henner; Copley, Richard R.; Moroz, Leonid L.; Nakano, Hiroaki; Poustka, Albert J.; Wallberg, Andreas; Peterson, Kevin J. et al. (2011-02). “Acoelomorph flatworms are deuterostomes related to Xenoturbella” (英語). Nature 470 (7333): 255–258. doi:10.1038/nature09676. ISSN 0028-0836. PMC: PMC4025995. PMID 21307940. http://www.nature.com/articles/nature09676. 
  8. ^ 馬渡 (2013), p27-p29
  9. ^ Rouse, Greg W.; Wilson, Nerida G.; Carvajal, Jose I.; Vrijenhoek, Robert C. (2016-02). “New deep-sea species of Xenoturbella and the position of Xenacoelomorpha” (英語). Nature 530 (7588): 94–97. doi:10.1038/nature16545. ISSN 0028-0836. http://www.nature.com/articles/nature16545. 
  10. ^ Cannon, Johanna Taylor; Vellutini, Bruno Cossermelli; Smith, Julian; Ronquist, Fredrik; Jondelius, Ulf; Hejnol, Andreas (2016-02). “Xenacoelomorpha is the sister group to Nephrozoa” (英語). Nature 530 (7588): 89–93. doi:10.1038/nature16520. ISSN 0028-0836. http://www.nature.com/articles/nature16520. 
  11. ^ 分類学:珍無腸動物門はNephrozoaの姉妹群である”. ネイチャー (2016年2月4日). 2018年7月20日閲覧。
  12. ^ 藤田(2010), pp.174-175.
  13. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z キャンベル11版 pp.826-827.
  14. ^ a b c d e f キャンベル11版 pp.828-829.
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p キャンベル11版 pp.831-832.
  16. ^ a b c d e f g h i キャンベル11版 pp.829-830.
  17. ^ キャンベル11版 p.826.
  18. ^ キャンベル11版 p.841


参考文献[編集]

  • [キャンベル11版] キャンベル生物学 原書11版. 丸善出版. (2018/3/20). ISBN 978-4621302767. 
  • [藤田(2010)] 藤田敏彦『動物の系統分類と進化』太田次郎、赤坂甲治、浅島誠、長田敏行、裳華房〈新・生命科学シリーズ〉、2010年4月28日。ISBN 978-4785358426。

さらなる理解のために[編集]

系統分類の詳細: