臨時財政対策債

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臨時財政対策債(りんじざいせいたいさくさい)は、地方債の一種。略称は臨財債(りんざいさい)。

国の地方交付税特別会計[1]の財源が不足し、地方交付税として交付するべき財源が不足した場合に、地方交付税の交付額を減らして、その穴埋めとして、該当する地方公共団体自らに地方債を発行させる制度。形式的には、その自治体が地方債を発行する形式をとるが、償還に要する費用は後年度の地方交付税で措置されるため、実質的には地方交付税の代替財源とみて差し支えない。

制度導入の背景[編集]

地方交付税の財源には、所得税酒税などの一定割合が充てられることが、あらかじめ地方交付税法で定められている。

しかしこの制度では、景気消費の動向によって、地方交付税の原資が大きく変動する弊害を生じやすい。そもそも地方交付税は、自らの税収が基準財政需要額(その自治体の行政活動のために最低限必要な額)に達しない自治体にのみ、差額を交付するものであるため、地方交付税の原資が不足する=全国の大半の自治体が、行政活動をそもそも展開できない[2]ことを意味する。

こうした制度的な欠点に対処するため、国は1975年(昭和50年)度以降、地方財源の不足が予測される場合には、地方交付税特別会計で資金を借り入れ(すなわち国債を発行)して、地方交付税の交付総額が短期間に大きく変動しないようにする措置を講じてきた(これを指して補てんと称する)。しかし、この制度の下で交付税関連の国債残高は50兆円以上にも累増し[3]2001年(平成13年)度以降、根本的な見直しが行われることとなった。

臨時財政対策債の仕組み[編集]

補てんの廃止[編集]

国債を発行して地方交付税の不足額を補う方式を改め、地方交付税の原資が不足した場合には、特に補てんする措置を講じず、交付額が不足した状態のまま地方公共団体に交付することとした。しかし、この状態を放置しては地方財政が成り立たないため、地方交付税の不足分は、地方財政法第5条の特例として、特別の地方債(臨時財政対策債)の発行を認めることとした。臨時財政対策債は、形式的には各地方公共団体の借入となるが、実質的には、元利償還金全額が後年度の地方交付税に算入されるため、地方交付税の代替財源とみてよい。総務省が毎年度実施する「地方財政状況調査(決算統計)」においても、地方交付税と同様に一般財源として扱われている。

このため、この制度改正については、旧来財源不足に対して「前払い」で対処してきたものを、「後払い」に変更したものと捉えることもできる。

影響[編集]

当初、平成13年度から平成15年度までの3か年の臨時的措置として導入された地方債であったが、国において地方交付税の原資不足が解消されないことから、現在に至るまでその措置は延長され、平成28年度まで(出典:平成26年度地方財政計画)とされている。

臨時財政対策債の元利償還金は、後年度の地方交付税に理論的に全額算入されるとはいえ、地方債の扱いであることに変わりはなく、地方債の残高が累積する原因にもなっている。ただし、臨時財政対策債は、あくまで「発行が可能」なものであって「発行しなければならない」わけではなく、地方公共団体の責任と判断で発行されるものである。発行可能額は、地方公共団体ごとの人口に基づく「人口基礎方式」、及び財源不足額に基づく「財源不足額基礎方式」の2つの方法により算出されるが、平成25年度から「財源不足額基礎方式」のみで算出され、普通交付税の不交付団体(単年度財政力指数が1を超える団体)は発行ができなくなる。なお、発行可能団体が臨時財政対策債を発行しない場合、財政構造の弾力性を示す経常収支比率が上昇(悪化)する現象が生じる。

脚注[編集]

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  1. ^ 正式名称は交付税及び譲与税配付金特別会計。特別会計に関する法律に基づいて設置。
  2. ^ 全国の90%以上の地方公共団体は、地方交付税の交付を受けている実績がある。
  3. ^ 平成十七年度特別会計歳入歳出決算書(財務省主計局)

関連項目[編集]

自治財政局”. 総務省. 2014年9月30日閲覧。 - 自治財政局は行政サービスの財源を調整・管理業務を担当している。