船舶局

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船舶局(せんぱくきょく)は、無線局の種別の一つである。

定義[編集]

総務省令電波法施行規則第4条第1項第9号に「船舶の無線局(人工衛星局の中継によつてのみ無線通信を行うものを除く。)のうち、無線設備が遭難自動通報設備又はレーダーのみのもの以外のもの」と定義している。

引用の促音の表記は原文ママ
  • 人工衛星局の中継によって無線通信をするものであれば船舶地球局として、遭難自動通報設備のみであれば遭難自動通報局として、レーダーのみ又はレーダーならびに遭難自動通報設備であれば無線航行移動局として免許される。

また、第3条第1項第6号には、海上移動業務を「船舶局と海岸局との間、船舶局相互間、船舶局と船上通信局との間、船上通信局相互間又は遭難自動通報局と船舶局若しくは海岸局との間の無線通信業務」と定義している。

義務船舶局[編集]

電波法第13条第2項に「船舶安全法第4条の規定により無線設備を設置しなければならない船舶の船舶局」を「義務船舶局」と規定している。

特定船舶局[編集]

電波施行規則第34条の6第1号に「国際航海に従事しない船舶で無線電話、遭難自動通報設備、レーダーその他の小規模な船舶局に使用する無線設備として総務大臣が別に告示する無線設備のみを設置する船舶局」を「特定船舶局」と規定し、告示 [1] にその無線設備を規定している。

概要[編集]

文字とおり船舶に設置された無線局であり、移動局の一種でもある。 無線陸上との唯一の通信手段であるため、一定規模以上の船舶には義務船舶局として設置が義務付けられている。

義務船舶局の対象以外の小規模船舶にあってもなるべく設置するものとするために規定されたのが特定船舶局である。 特定船舶局の無線設備として規定されたものは、無線機器型式検定規則による検定に合格した「検定機器」又は特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則により認証された適合表示無線設備である。 特定船舶局は局種別無線局数の統計にも船舶局から独立して計上され、事実上の種別の一つである。

実際[編集]

用途[編集]

局数の推移を見ると、海上水上運輸用および漁業用が多数を占める。これは客船貨物船および漁船のことである。 特定船舶局は、漁業用とスポーツ・レジャー用が多数である。これは小規模な漁船やプレジャーボートのことである。

免許[編集]

無線局の免許人として外国籍の者が原則として排除されることは、電波法第5条第1項に欠格事由として規定されているが、例外として第2項に

  • 第3号 船舶の無線局(船舶に開設する無線局のうち、電気通信業務(電気通信事業法 (昭和59年法律第86号)第2条第6号の電気通信業務をいう。以下同じ。)を行うことを目的とするもの以外のもの(実験等無線局及びアマチュア無線局を除く。)をいう。以下同じ。)であつて、船舶安全法 (昭和8年法律第11号)第29条の7に規定する船舶に開設するもの
引用の促音の表記は原文ママ
  • 第8号 電気通信業務を行うことを目的として開設する無線局

があり、これに該当するものは外国人や外国の会社・団体でも開局できる。

無線設備が検定機器又は適合表示無線設備のみであれば、簡易な免許手続の規定が適用される。 従って特定船舶局は予備免許落成検査が省略されて免許される。

種別コードは特定船舶局を除く船舶局がMS、特定船舶局がMSS

免許の有効期間は義務船舶局が無期限、義務船舶局以外は5年である。

  • 自衛隊の艦船については自衛隊法第112条第1項により免許を要せず、無線局数の統計にも含まれない。
無線局免許状の備付け

電波法施行規則第38条第1項により無線局免許状は無線局に備え付けるものとされ、同条第2項により主たる送信装置のある場所の見やすい箇所に掲げておかなければならない。ただし、掲示を困難とするものについては、その限りで無い。

無線設備

電波法施行規則第12条には「具備すべき電波等」として、デジタル選択呼出装置、無線電話、狭帯域直接印刷電信装置、船舶自動識別装置又は簡易型船舶自動識別装置を搭載する船舶局は、第1項から第6項に規定する電波を送受できなければならないとしている。

電波法第37条により、次の無線機器は検定機器でなければならない。

1. 第31条の規定により備え付けなければならない周波数測定装置
2. 船舶安全法第2条 (同法第29条の7の規定に基づく政令において準用する場合を含む。)の規定に基づく命令により船舶に備えなければならないレーダー
3. 船舶に施設する救命用の無線設備の機器で総務省令で定めるもの
4. 第33条の規定により備えなければならない無線設備の機器(前号に掲げるものを除く。)
呼出符号

無線電信を有する船舶局にはJAAA - JSZZ、7JAA - 7NZZ、8JAA - 8NZZの4字が、それ以外の船舶局はJD - JMに4数字の6字が指定される。

詳細は日本の呼出符号#船舶局を参照。

運用[編集]

電波法第62条は「船舶局の運用」として第1号に「船舶局の運用は、その船舶の航行中に限る。(後略)」とされる。 これは、船舶の航行中は原則として船舶局を運用しなければならないということである。 具体的には無線局運用規則の第3章 海上移動業務、海上移動衛星業務及び海上無線航行業務の無線局の運用による。

操作[編集]

電波法施行規則第34条の2第1号により遭難通信、緊急通信又は安全通信の通信操作は、無線従事者でなければ行ってはならないとされるので、最低でも第三級海上特殊無線技士による管理を必要とするのが原則である。 更に義務船舶局においては、無線従事者のみではなく船舶局無線従事者証明も取得していなければならない。

無線従事者を必要としないのは次の場合である。

簡易な操作

電波法施行規則第33条に規定される。

  • 第5号(3) 無線設備の連絡の設定及び終了(自動装置により行われるものを除く。)に関する通信操作以外の通信操作で無線従事者の管理の下に行うもの
  • 第8号 その他に別に告示するものに基づく告示[2]
無線設備の操作の特例

電波法施行規則第33条の2に規定される。

  • 第1項第1号 外国にある船舶局において無線従事者を得ることができない場合、その船舶が日本国内の目的地に到着するまでの間に次の表の左欄に掲げる国際電気通信連合憲章に規定する無線通信規則第47条の規定により外国政府が発給した証明書を有する者が、それぞれ同表の右欄に掲げる資格の無線従事者の操作の範囲に属する無線設備の操作を行うことができる。
無線通信士一般証明書又は第一級無線電信通信士証明書を有する者 第一級総合無線通信士
第二級無線電信通信士証明書を有する者 第二級総合無線通信士
無線電信通信士特別証明書を有する者 第三級総合無線通信士
第一級無線電子証明書を有する者 第一級海上無線通信士
第二級無線電子証明書を有する者 第二級海上無線通信士
一般無線通信士証明書を有する者 第三級海上無線通信士
無線電話通信士一般証明書を有する者 第四級海上無線通信士
制限無線通信士証明書を有する者 第一級海上特殊無線技士
  • 自衛隊の艦船については自衛隊法第112条第1項により電波法の無線従事者に関する規定が除外される。

検査[編集]

  • 落成検査は、上述の通り特定船舶局には簡易な免許手続が適用されるため省略される。これ以外でも一部を除き登録検査等事業者等による点検ができるので、この結果に基づき一部省略される。
  • 定期検査は、電波法施行規則第41条の2の6第8号により、次に掲げるもの以外について行われる。
(1) F2B電波又はF3E電波156MHzから157.45MHzまでの周波数を使用する空中線電力5W以下の携帯して使用するための無線設備
(2) 簡易型船舶自動識別装置((1)に掲げる無線設備と併せて設置する場合を含む。)
(3) (1)又は(2)に掲げる無線設備及び第13号のレーダー
周期は別表第5号第10号により
(1) 義務船舶局で旅客船又は国際航海に従事する船舶(旅客船を除く。)に開設するもの 1年
(2) 義務船舶局で(1)に該当しないもの及び義務船舶局以外の船舶局で船舶安全法第2条の規定に基づく命令により遭難自動通報設備の備付けを要する船舶に開設するもの 2年
(3) 特定船舶局でF2B電波又はF3E電波156MHzから157.45MHzまでの周波数を使用する無線設備、遭難自動通報設備(船舶安全法第2条の規定に基づく命令により備付けを要するものを除く。)、簡易型船舶自動識別装置、VHFデータ交換装置及びレーダー以外の無線設備を設置しないもの 5年
(4) (1)から(3)までに該当しないもの 3年
一部を除き登録検査等事業者等による検査が可能でこの結果に基づき省略される。
  • 変更検査は、落成検査と同様である。
  • 自衛隊の艦船については自衛隊法第112条第1項により検査が除外される。

機能試験[編集]

無線局運用規則第8条の2第2項により、遭難自動通報局の機能試験[3]については、他の種別の無線局の無線設備であっても適用されるので、EPIRB又はSARTを搭載する場合は機能試験を実施しなければならない。

沿革[編集]

1950年(昭和25年)- 電波法施行規則 [4] に「船舶の無線局」と定義された。 義務船舶局も電波法 [5] に規定された。

1972年(昭和47年)- 「船舶の無線局のうち、無線設備が遭難自動通報設備又はレーダーのみのもの以外のもの」と定義された。 [6]

1976年(昭和51年)- 無線局免許手続規則に特定船舶局が「空中線電力1W以下の無線電話を使用する船舶局であって、郵政大臣が別に告示するもの」と規定された。 [7]

1983年(昭和58年)

  • 義務船舶局の無線従事者に船舶局無線従事者証明が要求されることとなった。[8]
  • 特定船舶局は「空中線電力5W以下の無線電話を使用する船舶局であって、郵政大臣が別に告示するもの」と規定された。[9]

1993年(平成5年)- 電波利用料制度化。料額の変遷は下表参照。

2009年(平成21年)- 特定船舶局は電波法施行規則に規定された。 [10]

2018年(平成30年)- 定義が現行のものとなった。 [11]

局数の推移
年度 平成13年度末 平成14年度末 平成15年度末 平成16年度末 平成17年度末 平成18年度末 平成19年度末 平成20年度末
総数 11,535 11,004 10,565 10,166 9,908 9,691 9,610 9,502
海上水上運輸用 4,618 4,392 4,180 4,092 3,956 3,847 3,826 3,798
漁業用 4,883 4,625 4,413 4,133 3,964 3,860 3,763 3,640
年度 平成21年度末 平成22年度末 平成23年度末 平成24年度末 平成25年度末 平成26年度末 平成27年度末 平成28年度末
総数 9,121 8,785 8,496 8,281 8,127 8,055 7,965 7,915
海上水上運輸用 3,600 3,435 3,382 3,321 3,282 3,323 3,308 3,311
漁業用 3,492 3,422 3,279 3,209 3,169 3,153 3,101 3,067
年度 平成29年度末 平成30年度末 令和元年度末    
総数 7,622 7,253 6,857    
海上水上運輸用 3,327 3,292 3,257  
漁業用 2,787 2,523 2,272  
各年度の用途・局種別無線局数[12]による。
特定船舶局局数の推移
年度 平成13年度末 平成14年度末 平成15年度末 平成16年度末 平成17年度末 平成18年度末 平成19年度末 平成20年度末
総数 65,356 63,199 61,446 58,972 57,078 54,839 53,218 51,757
漁業用 60,108 58,332 56,923 54,817 53,225 51,263 49,868 48,551
スポーツ・レジャー用 5,112 4,741 4,392 4,027 3,719 3,422 3,195 3,035
年度 平成21年度末 平成22年度末 平成23年度末 平成24年度末 平成25年度末 平成26年度末 平成27年度末 平成28年度末
総数 50,682 50,742 48,959 48,540 48,140 47,647 46,889 46,008
漁業用 47,173 45,972 43,637 42,600 41,607 40,759 39,872 38,738
スポーツ・レジャー用 3,272 4,322 4,708 5,152 5,588 5,710 5,670 5,681
年度 平成29年度末 平成30年度末 令和元年度末    
総数 45,750 45,304 44,501    
漁業用 38,161 37,291 36,141  
スポーツ・レジャー用 5,815 5,898 5,922  
各年度の用途・局種別無線局数[12]による。
電波利用料額
年月 料額
1993年(平成5年)4月[13] 600円
1997年(平成9年)10月[14]
2006年(平成18年)4月[15]
2008年(平成20年)10月[16] 400円
2011年(平成23年)10月[17] 500円
2014年(平成26年)10月[18] 600円
2017年(平成29年)10月[19]
2019年(令和元年)10月[20] 400円
注 料額は減免措置を考慮していない。

旧技術基準の機器の免許[編集]

無線設備規則のスプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準改正 [21] により、旧技術基準に基づく無線設備が条件なしで免許されるのは「平成29年11月30日」まで [22]、 使用は「平成34年11月30日」まで [23] とされた。

旧技術基準の無線設備とは、

  • 「平成17年11月30日」[24]までに製造された機器、検定合格した検定機器または認証された適合表示無線設備
  • 経過措置として、旧技術基準により「平成24年11月30日」までに製造された船舶の無線航行用レーダー[25]、「平成19年11月30日」までに検定合格した検定機器[26]または認証された適合表示無線設備[27]

である。

2017年(平成29年)12月1日以降の旧技術基準の無線設備に対応する手続き [28] は次の通り

  • 新規免許は不可
  • 検定機器以外の再免許はできるが有効期限は「令和4年11月30日」まで
  • 検定機器は設置が継続される限り検定合格の効力は有効[29]
    • 検定機器は、義務船舶局では当該船舶に設置され続ける限り手続き不要でそのまま使用できる。その他の船舶局でも設置され続ける限り使用可能で再免許もできる。

諸外国の相当種別[編集]

無線局の免許制度は、国によって異なり細部に相違がある。

米国[編集]

米国では、FCC rules title47 Part80 Stations in the maritime services Section80.5 Definition(定義)にある”ship station”が相当する。

脚注[編集]

  1. ^ 平成21年総務省告示第471号 電波法施行規則第34条の6第1号の規定に基づく小規模な船舶局に使用する無線設備として総務大臣が別に告示する無線設備 総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集
  2. ^ 平成2年郵政省告示第240号 電波法施行規則第33条の規定に基づく無線従事者の資格を要しない簡易な操作 総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集
  3. ^ 平成4年郵政省告示第142号 無線局運用規則第8条の2第1項の規定に基づく遭難自動通報局の無線設備の機能試験の方法 総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集
  4. ^ 昭和25年電波監理委員会規則第3号
  5. ^ 昭和25年法律第131号
  6. ^ 昭和47年郵政省令第25号による電波法施行規則改正
  7. ^ 昭和51年郵政省令第7号による無線局免許手続規則改正
  8. ^ 昭和57年法律第59号による電波法改正の施行
  9. ^ 昭和58年郵政省令第20号による無線局免許手続規則改正
  10. ^ 平成21年総務省令第94号による電波法施行規則改正および平成21年総務省令第95号による無線局免許手続規規則改正
  11. ^ 平成30年総務省令第50号による電波法施行規則改正
  12. ^ a b 用途別無線局数 総務省情報通信統計データベース - 分野別データ
  13. ^ 平成4年法律第74号による電波法改正の施行
  14. ^ 平成9年法律第47号による電波法改正
  15. ^ 平成17年法律第107号による電波法改正の施行
  16. ^ 平成20年法律第50号による電波法改正
  17. ^ 平成23年法律第60号による電波法改正
  18. ^ 平成26年法律第26号による電波法改正
  19. ^ 平成29年法律第27号による電波法改正
  20. ^ 令和元年法律第6号による電波法改正
  21. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正
  22. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第2項および平成19年総務省令第99号による同附則同条同項改正
  23. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第1項
  24. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正の施行日の前日
  25. ^ 平成19年総務省告示第513号 無線設備規則の一部を改正する省令附則第3条第2項の規定に基づく平成29年11月30日までに限り、無線局の免許等若しくは予備免許又は無線設備の工事設計の変更の許可をすることができる条件 総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集
  26. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第4条第2項
  27. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第5条第4項
  28. ^ 新スプリアス規格への対応に関する手続き (PDF) p.2 無線設備のスプリアス発射の強度の許容値(総務省電波利用ホームページ - 無線設備のスプリアス発射の強度の許容値)
  29. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第4条第1項ただし書き

関連項目[編集]

情報通信振興会

総務省電波利用ホームページ

  • 船舶局の局名録 (PDF) 免許関係 - 電波利用システム - 海上・航空・衛星通信 - 海上通信 - 海上移動業務用無線局局名録

国際電気通信連合