華麗なる肉のキャンバス

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華麗なる肉のキャンバス」(かれいなるにくのキャンバス)は、官能小説作家・千草忠夫が、三鬼俊の別名義で著した、全8章の中篇SM小説

概要[編集]

本作は、雑誌問題SM小説』(コバルト社)の1972年3月号が初出。挿し絵画家は河本正夫。目次には「現代風俗文芸SM」と謳われるが、そこでは題名が「華麗な肉のキャンバス」と誤植されている。2009年12月現在、書籍未収録。

内容は1970年代前半のアングラ文化を背景に、ボディペインティングに興じる男女らのアブノーマルセックスの交歓や、人間関係の意外な変転を描くもの。

あらすじ[編集]

ある夜、フーテンで芸大浪人の二宮次郎は、恋人のジュリーを新宿のアングラ喫茶「メ」に誘う。そこでは今夜のステージショーとして、若い女性の裸身に絵の具を塗りたくるボディペインティングのコンテストが催されていた。ショーのメインゲストは、次郎の兄貴分で売れっ子デザイナーの唐沢。彼がショーの最後で有志の女性客相手に、裸ペイントの一流の腕前を披露する趣向だ。 初対面の唐沢のキザなまなざしや物腰に挑発めいたものを感じたジュリーは、次郎が止めるのも聞かず、自ら舞台に上がる。勝ち気な彼女は催しに参加することで、唐沢に大人の男と女としての勝負を挑むつもりだった。だが壇上で肉色のパンティ一枚になったジュリーは四肢の自由を奪われたまま、唐沢の悪魔的な筆捌きの技巧に裸身を翻弄され、たちまち妖しい快楽に魅入られた。次郎はその夜、心身がとろけたジュリーを彼女のマンションに何とか連れ帰るが、翌日の晩から彼女は次郎を残して勝手に家を空けた。次郎は、探るまでもなく、ジュリーが唐沢の元に行っていると確信する。

三日目の昼間、ジュリーは次郎が待ち受けるマンションに平然とした態度で帰ってきた。彼女は二晩かけて唐沢と同衾し、次郎とは全く違う大人の男性との情事、そして初めての体験を自分がグロッキーになるまでたっぷり楽しんできた。その肌のあちこちには、唐沢が付けた縄の痕が残っている。嫉妬で逆上した次郎はジュリーを縛り上げてベルトで鞭打ち、パンティを剥ぎ取って股裂きで折檻した。やがて二人はともに燃え尽きたようになり、そのまま和解。興奮した互いの体を重ねた。 セックスのけだるい余韻のなか、誰かがマンションのチャイムを鳴らす。それは次郎の姉で、接客したジュリーが目を瞠るほどの美人・信子だった。信子は家出中の弟の行方を尋ねたが、ジュリーは奥の部屋に潜む次郎当人の意志で彼の所在を秘匿した。そして、あなたの弟はそこにいるかもしれないと、唐沢の住所を信子に教えた。

信子が帰ると、空腹だから何か買ってくると言って外に出たジュリーは、ひそかに公衆電話で唐沢に連絡。それまでの経緯を報告したのち、明日また彼の家に行きたいと願い出る。これに対する唐沢の返事は、特製の刷毛を用意しておいてやる、そして今度こそジュリーを全部剃り上げた上、全身に残るクマなく塗りこんでやるという宣告だった。ジュリーは「いやッ、エッチ」と羞恥の声を上げつつ受話器を固く握りしめ、明日のデートへの期待に瞳を濡らす。つい先まで次郎と和解していたジュリーだが、その肉体と魂はすでに完全に唐沢の虜だった。

翌日の唐沢のアトリエ。そこでは素っ裸のジュリーが後ろ手縛り、大股開きのポーズで、全身をたたみこむように、大型の黒皮の肘掛け椅子に固縛されていた。そんな裸身を唐沢の絵筆があくことなく嬲り、ジュリーは体中から噴き出す汗でその筆先をドップリ濡らして、休むことなく「ヒヒヒーッ……」と悶え続ける。すでに彼女の花芯は昨日、唐沢が約束した通りの行為で綺麗にされ、普段よりなおあからさまだった。 唐沢は、縛られたまま本日のデートのとどめを求めるジュリーの乳房を掴みながらディープキスを満喫。それからいましめを解かれてぐったりのジュリーと、今後の計画を語り合う。それは昨日、弟を捜して自分を訪ねてきた信子の類まれな美貌に魅了された唐沢が、彼女を罠にはめて思う存分凌辱する策謀だった。唐沢が信子を自分より魅力的と評価するので、ジュリーは嫉妬する。だが美人の格が違うと認めざるを得ないジュリーは信子への逆恨みから、唐沢に積極的に協力する意志を見せた。しかしこの計画の先には、彼らにとっても意外で衝撃的な結末が待っていた。

登場人物[編集]

ジュリー[編集]

本作のヒロイン。明るく好奇心旺盛なハーフの美少女で、次郎の恋人かつセックスフレンド。南米の富裕な貿易商の父親から、新宿のマンションを買い与えられたお嬢様でもある。服飾は、ライトグリーンのミニスカートなどを愛用し、脚にはペディキュアを施すなど若い娘らしいお洒落をしている。肩まで垂らした長い黒髪、黒くうるんだ瞳の主で、雌獣を思わせるしなやかな四肢、そして日本人にはない、ハーフならではの素晴らしく均整のとれたプロポーションを誇る魅力的な娘。


二宮次郎(にのみや じろう)[編集]

芸大浪人のフーテン青年で、本作の主人公格。実家はホワイトカラーの良家で父親も健在だが、家出中の身。生活費はデザイン関係のバイトで稼いでいる。奔放なラテン系の愛情表現を見せるジュリーに完全にイカれ、ここ一週間ほどは彼女のマンションに同棲中。どちらかというと彼の方が相手に惚れ込んでおり、喫茶「メ」の客席で初対面の唐沢にジュリーがキラキラ輝く眼線で関心ありげな反応を示すと、嫉妬でふてくされた。なお次郎はジュリーに夢中な一方、実姉の信子を聖女のごとく心から崇拝している。ただしそんな信子が自分たちの下俗な世界に関わってこないよう、努めて距離を置いている。

唐沢(からさわ)[編集]

新宿在住の売れっ子インテリアデザイナーで、次郎にバイト仕事を世話する年上の男性。物語序盤の舞台となる喫茶「メ」の、見るからに印象的な内装(黒一色の壁に金と銀と薄桃色の塗料で巨大な眼(メ)をたった一つだけ描いた意匠)も彼のデザインである。相手の腹の底に応えるようなバスで喋る愛煙家で、太い眉毛の、口ひげとあご髭を見事に手入れした長身の伊達男。ボディペインティングを公開ショーとして披露する芸域も持ち、次郎は人間的にも芸術家としても、彼にはとてもかなわないと劣等感を抱いている。ダンディで金持ちだがなぜか周囲に女性の影が見えず、一部では次郎相手の同性愛趣味まで囁かれるものの、実際にはかなり女の扱いに長けている。ジュリーも初対面の時からそのキザぶりに反発しつつ、一方でステキなおじさまと思ってのぼせてしまう。

信子(のぶこ)[編集]

本作のサブヒロインで、次郎の姉。ジュリーが驚くほどの美しい貞淑な人妻で、実家も嫁ぎ先もホワイトカラーの家庭。その物腰には優しさと気品があふれており、家出した次郎の身を案じて彼の行方を捜す。

その他[編集]

トンコ
次郎の元彼女で、何回か寝た間柄の娘。次郎がジュリーに乗り換えて捨てられたが、喫茶「メ」の客席で彼と再会。ジュリーが唐沢の筆でイカれていく図を冷笑しながら、次郎とよりを戻そうと彼に接近してくる。
ボディペインティングの女性たち
ボディペインティングコンテストのショーで、有志の客から裸ペイントされる役目を引き受けた5人の女性たち。唐沢によると、全員が素人だという。みなが肌色の薄いパンティだけで舞台に上がり、各自がグラマーな裸身を客席に挑発的にポーズした。
ボディペインティングショーの司会者
喫茶「メ」の壇上で、ボディペインティングコンテストのショーを進行した男性。軽妙な語り口でショーを盛り上げた。
喫茶「メ」の裏方
ボディペインティングショーで、唐沢の助手を務めた4人の男性 。