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著者 宮尾登美子
発行日 1993年9月
発行元 毎日新聞社
ジャンル 長編小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 上製本
ページ数 357(上)
329(下)
コード ISBN 978-4-620-10484-3(上)
ISBN 978-4-620-10485-0(下)
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』(くら)は、宮尾登美子による日本の長編小説1992年3月から1993年4月まで『毎日新聞』朝刊に連載され、1993年に毎日新聞社より上下巻で刊行された。のち、角川書店から角川文庫版が刊行されている。大正 - 昭和初期、越後銘酒『冬麗』の蔵元・田乃内家を舞台に、跡取り娘の盲目の美少女・烈を軸に苛酷な運命を生きる家族の愛憎と絆を描く。

連載中から大きな反響を呼び、映画・テレビドラマ・舞台作品化もされた。

あらすじ[編集]

大正8年(1919年)、新潟県越後亀田町(現在の新潟市江南区)の大地主で酒蔵『冬麗』の蔵元でもある田乃内家の当主・意造と妻・賀穂の間に女の子が産まれる。夫妻の間で過去8回妊娠した子を全て失い、9人目にしてようやく授かった健康な女子に意造はあえて「烈(れつ)」という力強い名を付ける。出産で健康を害した賀穂に代わり、烈は賀穂の未婚の妹で叔母に当たる佐穂に育てられ、周囲の期待通り賢く美しく成長するが、小学校入学を前に網膜色素変性症でやがて失明すると宣告される。ショックを受けた烈は心を閉ざし、小学校にも行かず、自邸に引きこもるようになってしまう。母・賀穂は自分の生命に換えても烈の眼を治したいと思うあまり、病身も省みず越後三十三ヶ所観音札所巡礼の旅に出て途中で倒れ、「自分が死んだら佐穂を意造の後妻とし、烈の母親として欲しい」と言い残し息を引き取ってしまう。

烈と佐穂は実の母娘同然の絆で結ばれており、佐穂自身義兄の意造にずっと密かに想いをよせており、誰もが佐穂が意造の後妻となるのが最良だと信じて疑わなかった。しかし度重なる家中の不幸に疲れた意造は、それをわかっていながら若い芸妓せきに心を奪われ、無理矢理後妻に迎えてしまう。佐穂はいたたまれずに黙って実家に逃げ帰るが、烈の懇願と意造の誠意に「生涯をかけて烈を守る」と誓い田乃内家に戻る。

間もなくせきは田乃内家の跡取りたるべき男子を産むが、思わぬ事故で死んでしまい、意造との夫婦仲も破綻する。意造自身も病に倒れ半身不随となり、烈も14歳の時に完全に失明してしまう。全てに絶望し酒蔵を手放す決意をする意造。しかし烈は、全盲のハンディをも超えて、自分が田乃内家と『冬麗』の蔵を継ぐと宣言する。酒蔵は女人禁制とされた時代、意造は烈の障害はともかく、いくら賢い娘でも蔵元を継がせる事など考えられなかったが、ついには烈の熱意に押し切られ酒造りを再開する。蔵を受け継ぎ守り抜くことが自分の生き方だと信じる烈。意造は娘を将来の蔵元にふさわしく教育することに生き甲斐を見出すのだった。

年頃の美しい娘に成長した烈は、若い蔵人・涼太に許されぬ恋心を募らせていく。田乃内家の生活に馴染めずこの家を出て自分らしく生きたいと望むせき。意造への想いを押し殺し生娘のまま事実上田乃内家の女主人となっても、自分は意造の妻ではなく烈の本当の母でもないと苦しむ佐穂。家父長制的価値観に縛られ、せきと仮面夫婦を演じ続け、本当に大切な女性である佐穂に何も出来ず、烈の恋を許す事も出来ない意造。それぞれの想いが交錯する中、烈は涼太に想いを伝えるべく家を抜け出す…。

登場人物[編集]

書誌情報[編集]

  • 藏 上(1993年9月、毎日新聞社、ISBN 978-4-620-10484-3)
  • 藏 下(1993年9月、毎日新聞社、ISBN 978-4-620-10485-0)
  • 藏(上)(1998年1月23日、角川文庫)、ISBN 978-4-04-171803-2)
  • 藏(下)(1998年1月23日、角川文庫)、ISBN 978-4-04-171804-9)

映像・演劇化作品[編集]

原作では、佐穂が意造に密かな想いを寄せるようになった経緯や、若い烈と涼太がどのように想いを通わせるようになったのか、等についての詳しい描写はない。映画・ドラマ・演劇化に当たっては、この問題に関してそれぞれが想像をめぐらし、オリジナルエピソードをも交えてストーリーを構成している。

テレビドラマ[編集]

ジャンル テレビドラマ
原作 宮尾登美子
脚本 中島丈博
演出 大山勝美
出演者 鹿賀丈史
松たか子
井上真央
河野由佳
高橋恵子
洞口依子
前田耕陽
檀ふみ
ナレーター 柳生博(語り)
音楽 深草アキ
国・地域 日本の旗 日本
言語 日本語
製作
制作統括 大津山潮
村山昭紀
プロデューサー 渋谷幹雄
撮影監督 川田万里
編集 石井由美子
制作 NHKエンタープライズ21(共同制作)
テレパック(共同制作)
製作 NHK
放送
放送国・地域日本の旗 日本
回数6
NHK BS2
放送チャンネルNHK BS2
放送期間1995年6月4日 - 7月9日
放送時間日曜 21:00 - 21:44
放送枠BS日曜ドラマ
各話の長さ44分
NHK総合(水曜ドラマ)
放送チャンネルNHK総合
放送期間1996年5月15日 - 6月19日
放送時間水曜 22:00 - 22:44
放送枠水曜ドラマ
各話の長さ44分
NHK総合(金曜時代劇)
放送チャンネルNHK総合
放送期間2002年2月15日 - 3月22日
放送時間金曜 21:15 - 21:58
放送枠金曜時代劇
各話の長さ43分
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』 1995年6月4日 - 7月9日、NHK衛星第2テレビジョンの「BS日曜ドラマ」枠で放送[1]。全6話。脚本:中島丈博、演出:大山勝美、音楽:深草アキ。

1996年5月15日 - 6月19日、NHK総合の「水曜ドラマ」枠で放送。2002年2月15日 - 3月22日、NHK総合の「金曜時代劇」枠で放送。

『春燈』(1998年)、『』(1999年)へと続く宮尾登美子原作、松たか子主演による3部作の第1作[2]

キャスト(テレビドラマ)[編集]

他に平田満ト字たかお[3]正司歌江大出俊鈴木光枝渡辺えり子

スタッフ[編集]

放送日程[編集]

NHK総合の「水曜ドラマ」枠で放送時の視聴率[4]は、第1回15.7%・第2回16.1%・第3回18.8%・第4回15.6%・第5回16.7%・最終回20.0%。

受賞[編集]

映画[編集]

監督 降旗康男
脚本 高田宏治
製作 亀岡正人
妹尾啓太
川野知介
製作総指揮 松方弘樹
出演者 浅野ゆう子
一色紗英
松方弘樹
音楽 さだまさし
服部隆之
主題歌 さだまさし「烈」
撮影 森田富士郎
編集 玉木濬夫
製作会社 東映
松プロダクション作品
配給 日本の旗 東映
公開 日本の旗 1995年10月10日
上映時間 130分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 10億円[5]
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『藏』 1995年10月10日公開。配給:東映、脚色:高田宏治、監督:降旗康男、音楽:さだまさし服部隆之サウンドトラック:交響組曲 藏(KURA)。日本映画100年記念作品[6]

キャスト(映画)[編集]

製作[編集]

岡田茂東映会長から「アメリカのアクション大作が年に三、四本、日本で大ヒットし、少々の日本映画では太刀打ちできない。アクションものはしばらくやめよう。代わりに日本古来の文化を描いたものをやろう」と指示が出て[7]松方弘樹の企画が採用された[8]。松方が初めてプロデューサーとして参加し[6]、東映と松方の松プロが製作費を折半した[6][8]。監督には東映出身で当時はフリーの降旗康男に依頼[8]。戦後50年記念映画『きけ、わだつみの声 Last Friends』と共にこの年の東映の勝負作として社を上げての大動員をかけ、前売り券各50万枚、計100万枚を売り切った[6]

キャスティング[編集]

もともと烈役は宮沢りえに決定しており、マスコミを通じて発表もされていたが、クランクイン直前に突如宮沢が降板し世間を賑わせた[8]。代役は新人一色紗英[8]。脚本家高田宏治によると、元々2番手だった浅野ゆう子が「トップじゃないとイヤだ」と言い出し、宮沢側が「話が違う」と怒っての降板だったという。この騒ぎの中行われた制作発表の席上で、浅野は「クレジットはあいうえお順かと思った」ととぼけた[9]。なお、宮沢演じる豪姫タイトル・ロールになっている映画『豪姫』では仲代達矢演じる古田織部がトップクレジットとなっているが、このときは問題は発生していない。

撮影[編集]

監督の降旗は田乃内烈のキャラクターは、宮沢りえより一色紗英の方が良いのではないかと秘かに思っていたため、ベテランの浅野ゆう子や松方さんに伍して一色が立派に主人公を演じてくれて嬉しかったという[8]

ロケ地[編集]

作品の評価[編集]

無事ヒット[8]

舞台演劇[編集]

『藏』

1999年に芸術座、2001年に帝国劇場で公演。

キャスト
スタッフ

脚注[編集]

  1. ^ BS日曜ドラマ 藏”. NHK. 2021年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年3月21日閲覧。
  2. ^ 蔵・春燈・櫂 全8枚セット”. NHKスクエア. NHKエンタープライズ. 2021年5月20日閲覧。
  3. ^ 新潟弁指導も行っていた。
  4. ^ 「テレビ視聴率季報(関東地区)」ビデオリサーチ。
  5. ^ 1995年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  6. ^ a b c d 「文化通信情報」『AVジャーナル』、文化通信社、1995年1月、 6–7頁。
  7. ^ “トップに聞く:(映画100年 邦画はどこへ:9) 監督を使う人材が必要 岡田茂東映会長(七一)”. 朝日新聞夕刊 (朝日新聞社): p. 11. (1995年12月12日) 
  8. ^ a b c d e f g 16 残念な劇場離れ 観客が通じ合うたのしさ大事に
  9. ^ 「消えた主役」名作ドラマ・映画の知られざる“交代劇”(1)「鬼龍院花子の生涯」脚本家・高田宏治インタビュー

関連項目[編集]