虫明焼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
  • 虫明焼(むしあけやき)は、岡山県瀬戸内市(旧邑久町)虫明にて焼かれている陶器。始まりは諸説あり、定かではない。京焼清水焼の流れを汲む。虫明焼の代表的な色合いは、天然の松灰を主原料とした灰釉(はいゆう)と呼ばれる釉薬(ゆうやく、虫明ではなみ釉とも呼ばれる)を掛け、若草色や枇杷(びわ)色に発色したものが代表的な色合いである。中でも、この1本の釉薬で焼成時に焚く松の木の煙の流れや置き場所により若草色と枇杷色が入り混じった色合いに発色する作品は窯変(ようへん)と呼ばれ、最大の魅力とされる。虫明焼では他の産地と違って、酸化焼成や還元焼成など完全に分けた焼成方法を取らず、特殊な焼成方法によって焚くことで、1つの器の中に1本の灰釉で若草色や枇杷色が入り混じった虫明独特の窯変による発色が生まれる。それゆえ、窯変物が取れる量は少ない。
  • 虫明焼は先述の天然の松灰を基調とした灰釉による若草色や枇杷色の色合いが代表的だが、京系統の流れを汲む焼物なので、これ以外にもワラ灰や樫灰などを使用した灰釉物や黒や柿色、油滴調の鉄釉、銅を使った辰砂や織部釉、染付釉など作家独自の多様な釉薬を手掛けて作品制作している。
  • 虫明焼には古くから代表的な写しの作品がある。落雁水指、雪笹手鉢、三島角水指、狂言袴水指月茶盌、12カ月茶盌など時代と共に多少のアレンジを加えながら、今現在も作り続けられている。お茶道具がたくさん造られていったことから、お茶の世界では比較的知名度が高い。
  • 現代の虫明焼作家・黒井千左は、ロクロや叩いて成形した素地を彫って独自に調合した色土を埋め込む象嵌(ぞうがん)技法を得意とする。象嵌して装飾した素地を素焼(800℃)して、その素地に伝統釉である透明な虫明の灰釉を掛けて焼成した彩色象嵌(さいしきぞうがん)といわれる色彩豊かな作品を積極的に発表している。象嵌による作品は線模様やその線模様の上に鉄絵と呼ばれる絵具で花の文様を器全体に緻密に描いた作品、風景を表現した作品など、いずれも高度な技術によるもので、伝統に現代感覚を取り入れた作風は高い評価を受けて、岡山県指定重要無形文化財保持者に認定されている。

概要[編集]

岡山藩家老伊木家によって始められ、6代目忠興の頃には現在の形が出来上がった。その後、京都から清風与平や宮川香山、仁阿弥道八ら名工を招聘し、古田織部らの手法を採り入れつつも、筒描き、流し釉など独自の技法を編み出し、地位を確立させた。

昭和63年(1988年)には県指定の伝統的工芸品に指定されている。

主な作家[編集]

黒井一楽(1914-1996)岡山県重要無形文化財保持者

黒井千左(1945-)岡山県重要無形文化財保持者、瀬戸内市重要無形文化財保持者、日本工芸会正会員、日本工芸会中国支部幹事

黒井慶雲(1940‐)

黒井博史(1974-)日本工芸会正会員 


文化財[編集]

岡山県指定重要無形文化財
  • 黒井千左 虫明焼製作技術(2011年3月4日指定)[1]

脚注[編集]

  1. ^ 平成22年度の岡山県指定重要文化財等の紹介

近年開催された虫明焼の展覧会[編集]

  • 没後100年-宮川香山展 虫明焼と明治の陶芸(2016年、岡山県立美術館)
  • 特別展「むしあげー岡山に花開いた京の焼物ー」(2018年、岡山県立博物館、京都茶道資料館)
  • 特別陳列「虫明焼」(2019年、岡山県立博物館)