赤潮

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瀬戸内海での赤潮。窒息した魚が浮かぶ(2017年)
赤潮(アメリカのカリフォルニア州ラ・ホヤ沿岸)

赤潮(あかしお)は、プランクトンの異常増殖により運河湖沼等が変色する現象である。水が赤く染まることが多いため「赤潮」と呼ばれるが、水の色は原因となるプランクトンの色素によって異なり、オレンジ色、赤色、赤褐色、茶褐色等を呈する。赤潮を引き起こす生物は、色素としてクロロフィルの他に種々のカロテノイドを持つ場合が多く、細胞がオレンジ色や赤色を呈する為にこう見える。

赤潮の発生[編集]

発生要因[編集]

赤潮の空中写真(淡路島東岸)[1]
国土交通省 国土画像情報(カラー空中写真)を基に作成(1974年)

赤潮は、水域の水温上昇や水の流動性の低下、富栄養化、競合するプランクトンの消滅などの要因が合わさり発生するとされる。 従来、富栄養化が問題視されたが、近年ではプランクトンを捕食する生物の減少(浄化作用の低下)の一因である、埋め立てや護岸工事による浅場の減少が問題視されている。 浅場に住むアサリやカキなどの貝類やエビカニゴカイ等の甲殻類や多毛類は、そこに棲む微生物やプランクトン等や有機物を餌として取り込み海洋への栄養塩や有機物の流入を食い止めるという、いわば自然の浄化槽の役割を果たしてきた。しかし、沿岸の埋め立てや護岸工事などにより、そこにいた浅場の生物の減少(消滅)や沿岸域の水の流動性の低下(停滞水)し、これを一因としてプランクトンが大量発生すると考えられている。 近年、諫早湾の干拓事業においては、干拓に伴う経済的な利害関係と並び、有明海での赤潮発生との因果関係が議論されている。 また、魚類貝類養殖業の発達により、養殖生命体の老廃物、養殖用餌料、死骸による影響を指摘する研究者も多い。

日本においては、有明海の他、瀬戸内海東京湾伊勢湾大阪湾などの内湾部で赤潮の発生が多く報告されている。また、日本の歴史上、文献に残る最初の赤潮に関わる記録は、奈良時代に成立した『続日本紀天平3年(731年)6月13日条に記載されており、紀伊国阿氐郡(現和歌山県有田郡)沿岸で、海の色が5日間にわたり赤く染まった事例であるとされている。

白潮・緑潮・青潮[編集]

長崎県の入り江で発生した赤潮
プリマス沖で発生した白潮
中国四川省の川面に発生したアオコ
アラビア海に発生した水の華 (Phytoplankton flowering)
白潮
プランクトンの異常増殖による現象。白潮は発生回数や研究事例が少なく発生メカニズムには謎が多い[2]。2020年に相模湾で発生した事例では炭酸カルシウムに覆われた円石藻の大量発生が原因であった[2]
緑潮
プランクトンの異常増殖による現象。京都府の丹後地方では春に渦鞭毛藻類の一種のギムノディニウムが原因の緑潮が発生することがある[3]
また、アオサ属の海藻が異常増殖し海岸線に堆積する現象も緑潮という[4]。海域の富栄養化が原因と考えられているが、はっきりとした因果関係は不明である[4]
青潮
富栄養化によりプランクトンが大量発生した後、それが死滅して底層に沈み、生分解される過程で酸素の消費で形成された貧酸素水塊が水面に現れたもの[5]。赤潮などの呈色が増殖した生物自体の色であるのに対し、青潮の色は貧酸素水塊により形成された硫黄化合物に由来する。

その他の呼称[編集]

赤潮とされる現象には性質、現象を見る視点などによりさまざまな名称が存在する。

性質に基づく名称
  • 苦潮、濁水、腐れ潮、菜っ葉水、すすけ潮
さまざまな視点に基づく名称
  • 厄水、役水、薬水、くらげ水

魚介類への影響[編集]

赤潮が魚介類に与える影響は幾つかに分類される。

  • 有害赤潮プランクトンの沈降による底層溶存酸素濃度の低下
  • に有害赤潮プランクトンが詰まる事による物理的窒息

これらの作用により、漁業、特に養殖現場では特に大きな被害が出る。

また、有毒藻である渦鞭毛藻類などの産生する毒素が貝類の体内に蓄積し、それを食べた人間に健康被害を及ぼすこともある(→貝毒)。ただし、貝毒プランクトンは低濃度でも貝を毒化させるため、赤潮から連想される水域のプランクトン増殖による着色現象は伴わない。

こういった赤潮被害が漁業や水産業に及ぼす影響を抑えるため、赤潮の発生時や発生が予想されるときに、都道府県の担当部局は赤潮警報や注意報などを出して関係機関や漁業者に注意を呼びかけることがある。

赤潮の抑制[編集]

富栄養化の抑制等[編集]

湾内の富栄養化を抑制すべく、地方自治体による下水道整備事業が各所で行われている。この他、人工干潟の造成も行われている。人工干潟では微生物が大量発生し、これをアサリなどの貝類が食べる事で湾内の水質改善に期待が寄せられている。また、整備如何によっては、潮干狩りや自然学習を目的としたレジャー施設の創造も期待できる。

近年では生物農薬の一種として、藻類に感染するウイルスを用いて赤潮を防除する技術の開発も進められている。

対策の転換期[編集]

瀬戸内海では過去に赤潮の被害があり、兵庫県では「海をきれいにする取り組み」を長年続けてきた。取り組みの一つが下水処理場の排水基準の厳格化であったが、海域の窒素量が減り海がきれいになるとともに漁獲も減少し始めた。兵庫県は、植物プランクトンの生育に必要な栄養分が減り、漁業に影響が出ていると判断、2018年から独自に県内3カ所の下水処理場で排水基準を緩めるなど「海をきれいにし過ぎない取り組み」への転換を図った[6]

代表的な赤潮構成生物[編集]

日本近海で優占するものを列挙する。★印は大量発生種や有毒種など、防除の観点から特に重要とされる種。有害プランクトンによる赤潮は特に「有害藻類ブルーム」(HABs; Harmful Algal Blooms)と呼ばれる。プランクトンや微細藻類の毒は、貝などに取り込まれ、人に摂取された場合に中毒を引き起こす。また、ヤコウチュウを因とする赤潮の場合は、夜間における発光現象が、観光資源となることもある。

珪藻
ラフィド藻
渦鞭毛藻有毒渦鞭毛藻も参照)
繊毛虫

脚注[編集]

  1. ^ この画像の変色海域が赤潮である根拠は、国土地理院監修、財団法人日本地図センター発行『カラー空中写真判読基準カード集』1978年9月1日発行、148ページにて同画像(Ckk-74-10_c17_16)を赤潮の判読基準サンプルとしている事による。
  2. ^ a b 湘南の海が南国のような色に 相模湾で珍しい「白潮」”. 朝日新聞. 2020年5月23日閲覧。
  3. ^ 丹後の海からの情報(平成23年4月)”. 京都府農林水産部海洋センター. 2020年5月23日閲覧。
  4. ^ a b 石井裕一. “海藻がもたらす環境問題−グリーンタイドの発生と構成種の特徴−”. 国立環境研究所. 2020年5月23日閲覧。
  5. ^ 青潮”. 一般財団法人環境イノベーション情報機構. 2020年5月23日閲覧。
  6. ^ 兵庫県、瀬戸内海への排水基準緩和 魚に「肥料」”. 日本経済新聞 (2019年9月15日). 2020年3月8日閲覧。

関連項目[編集]